七菜/謎のアバター
「これでフィニッシュ!」
物凄い勢いでボタンとレバーを入力する。
【You Win】
「よし、二十連勝!」
野球帽を被り直すと、七菜は立ち上がった。
「!?」
七菜は思わず固まった。
「あら、ワタシを見て驚いてくれるなんて嬉しいな」
「どうして、君が!?」
「やれやれ。さっき話したばかりなのだけれど」
「……聞いておきたい」
七菜とキイラは、自販機コーナーの席に座った。
「ワタシは警察に協力することになったの。正義のハッカーよ」
「そうなのか。どんな能力でも正しいことに使うのが一番さ」
七菜は自販機でお菓子を買う。
「なんだか雰囲気が変わったんじゃない?」
「そうかい? 僕は僕だけど」
七菜のケータイが鳴る。
「ワタシに構わずに、どうぞ」
「手短に済ます」
七菜は電話に出た。
「君は何を言っているんだい! ……夏を舐めちゃダメさ。……僕の事は心配する必要ない。……連絡は感謝するよ……。バカか君は!? 無茶するな……」
(なんだか痴話喧嘩を聞いてる気になるわ)
「……ああ、また」
七菜は電話を切った。
「なーに? 彼氏でも出来たの? 前は居ないって言っていたけれど」
「キイラ。君のおかげで気付くことができたのさ。そういう意味では感謝している」
「誰なの? 相手は」
「緋だよ」
「そうなんだあ……緋とね……」
キイラは指で唇に触れる。
「君が緋の頬にキスをしたのが、恋心に気付いたキッカケさ」
「安心して。奪わないわ」
「そう簡単に奪わせないさ」
「おアツいこと」
キイラが立ち上がる。
「行くのかい?」
「少し涼みに入っただけだから」
キイラは手を振りながらゲームセンターを出た。
「ハッカーは忙しいのか」
七菜はお菓子を食べ終わると仮面英雄伝の大型モニターを観る。
「……なんだアレは?」
モニターに見知らぬアバターが映っている。
「ヒーロータイプでも仮面タイプでもない!?」
マシンから人が出てくる。
「チクチョー!! 何なんだよありゃ!?」
「すまないが一つ訊きたい。アレは強いのか?」
「ありゃ反則だ!! コードネームもタイプも所属チームも不明。おまけにレベルは∞ときた!!」
「∞だと!?」
「今月には新作が稼働するのに、これが仕様なら無茶苦茶だ!!」
そう言いながら、その人はゲームセンターを出ていった。
(おかしい……デビルモードにしても、ラズベリー畑にしても公式に発表されてきた)
七菜がログインした。




