オフ会
(ここで良いんだよな?)
緋が喫茶トランプに入る。
「えーと」
緋が客席を見渡す。
「どうしたのだ?」
「え!?」
「待ち合わせか」
「まあ。会ったことは無いですが」
「もしかして……オフ会か?」
「えっ……えと……」
「クレナイ、と言えばよいか?」
少女が笑顔を見せた。
「クレナイ!?」
二人は席につく。
「どうしたのだ? やはり緊張するのか?」
「あ……いや!?」
緋は目の前の異性に緊張していた。
(まさか、こんなに可愛い人がクレナイとは!?)
「さて、お主はどっちなのだ」
「あ、ああ……レッドです!」
「そうか。なら、あとはクールだな」
(そういえばクールも来るんだよな。どんな野郎か確めてヤラアアア!)
ガランと扉が開く。
(来たか!)
緋が扉のほうを向く。
「女か。違いますね」
「こっちに来るが?」
「え!?」
入ってきた女は、緋とクレナイの席に来た。
「あの、オフ会は?」
「わたしはクレナイだ」
「では、ここです」
女がクレナイの隣に座る。
「……えっ!? ……クールなのか?」
「あなたがレッドですか。イメージと少し違う」
「その喋りの感じ。クールだ!」
「幻滅した?」
「それはない。驚いてはいるけど……その……男だとばかり思ってたから」
「無理もない。アバターの声は男性にしているし、一人称は〝僕〟だし」
「だが会えて良かったぞ。レッドは意外としっかりしてるし、クールは可愛い娘だしな」
「漢が、しっかり?」
「うむ」
クレナイが緋の胸ポケットを指さす。
「ああ……このバッジは高校の校則で如何なるときも身に付けてけてないと駄目らしくて」
「それなら僕も付けてる」
クールが袖に付けたバッジを見せる。
「同じバッジ……同じ高校なのか!?」
「レッド、学年は?」
クールが訊く。
「一年だけど」
「僕も一年だ」
「二人共、一年なのか。わたしの後輩なのだな」
「クレナイ。どういう事?」
「僕も知りたい」
「本名を言ってくれれば、教えてやるのだ」
「漢は、紅蓮 緋」
「僕は、矢吹 七菜だ」
「緋に七菜だな。分かったぞ」
「約束だ、教えてやろう。わたしは二人と同じ高校で生徒会長をしている。二年の紅 破耶だ。よろしくたのむ!」
「生徒会長!?」
緋が驚く。
「すごい偶然」
七菜も驚いた。
「一年とは、あまり交流がないからな。気付かなくても無理はないぞ」
「気付けなくてすんません!」
「僕もゴメンです」
「気にやまないでくれ」
破耶が落ち着かせた。
「コーヒーのおかわりは、いかがですか?」
店員が訊く。
「頼む」
破耶がコーヒーをもらう。
「僕はいい。足りる」
「漢は紅茶を」
「かしこまりました」
店員が紅茶を淹れにいく。
「このあと、どうするの」
七菜が訊く。
「行きたいところはあるか?」
破耶が聞き返す。
「漢は特には」
「……なら、お蕎麦を食べに行きたい」
「何処の蕎麦屋だ?」
破耶が訊く。
「紅、です」
「そうか。なら飲み終えたら行くのだ」




