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越えてはいけない一線

「海乃さんは得意なジャンルはあるの?」


 七菜が訊く。


「ジャンルというか……なんというか……私は小さい画面を見続けるのが苦手だよ」


「それじゃあ、スマホとかでのゲームはキツイですね」


「電池は持ちが悪いしね」


 海乃は目当てのブースに行く。


「シューティングですか?」


「こういう当てる系のゲームは得意だよ」


 海乃は、画面に表示される敵をライフル形のコントローラーから覗く。


「へー。覗くと立体に見える3Dのシューティングなのか」


 海乃はトリガーを引く。


「流血表現が無いし、余計な挑発もしてこない。しかし当てる部位によって点数が変わるし、敵も程よく歯応えがある。フィールドを活用すれば上手く進めるようになっているし、なかなかに纏められてる作品だよ」


(凄い……。少し体験しただけで、あれだけの感想を言えるなんて!)


「矢吹もするか?」


「僕はあっちの体験型のがやりたいです」


「良いよ」


 七菜と海乃が別のブースに移る。


「へー。時間内にボタンを押していくのか」


「やっぱり僕は身体を動かす系統に惹かれるみたいです」


 七菜が所定位置につく。


【START!!】


「はっ!」


 七菜がランダムに光るボタンを押していく。


「このゲームも奥が深い。ただ単にボタンを押せばいいけど、ランダムに光るから予測が出来ない。無駄な動きが体力の消耗に繋がるから迂闊な行動は取れない。何より、時間が決まっているから難しい。シンプルだが一筋縄ではいかないよ」


 海乃は独自の論を述べた。


「……はっ! ……はっ! ……はあ!!」


【TIME UP】


 七菜が三分間のゲームを終了した。


「ご苦労だよ」


「ありがとう海乃さん! ……久々に激しく動きました…… !」


 七菜は汗をかきながらも満足気な表情をした。


「いい顔だよ。紅蓮が矢吹を選んだ理由わけも解る気がするよ」


「緋が!? ぼぼぼ……僕を!?」


 七菜が紅くなる。


「羨ましいかぎりだよ」


 海乃は腕時計を見る。


「紅蓮たちと合流しようか?」


「そうですね」


 七菜と海乃は、緋たちの元に向かった。


※ ※ ※


「おお! 夏郷との相性が96%と出たのだ!」


「破耶さん。それなんです?」


 緋が気になって訊く。


「相性を占う機械なのだ。異性、同性を問わずにさまざまな相性を占えるのだ。どうだ? 緋も七菜との相性を占ってみたらどうだ?」


「ちなみに破耶さんは何の相性を占ったんです?」


「決まっている。恋愛の相性を占ったのだ」


「だからそんなに嬉しそうな顔をしてるんだ」


「……分かるのか?」


 破耶が不思議に思っている。


「七菜との相性ねえ~」


【友情】


【運動】


【仕事】


【運勢】


【恋愛】


「どうなるかな?」


 緋は恋愛を選択した。


「えーと……名前と年齢と生年月日と血液型と……好きな色?」


 緋は少し考えて打ち込む。


【測定中】


「……あ、結果出た」


 緋が結果を見る。


【恋愛相性92%】


「ふーん。よく分からん」


「この占いでは90%以上は最強らしいのだ」


「最強って響きは悪くないぜ!」


 緋は最強の相性が出たのを喜んだ。


「緋らしいな」


「破耶さん、次はどうします?」


「七菜たちと合流しようか」


 緋と破耶は七菜たちのところに向かった。


※ ※ ※


「美岬ちゃん。まだ終わらないの~?」


「静かにして! 集中してるんだから!」


 美岬の指先が震える。


「もう……少し……!」


「残念だったね~美岬ちゃん」


「あーー!! 悔しいぃぃ!!」


「そろそろ行こうよ? みんな待ってるはず~」


「いつか絶対リベンジするわよ! ミラクルジェンガ!!」


「その時は上手く出来るといいね~?」


 美岬と偵徒はブースをあとにする。


※ ※ ※


「準備は良いか!」


「「イエス」」


 グランドスタジアムの全ての電気が落ちる。


「暗視スコープ、ON!」


「「オン」」


「行動開始!」


 グランドスタジアム内に何かが撒かれる。


※ ※ ※


「いきなり電気が落ちたけど、どうしたんだ?」


「分からないが、普通なら予備電源が入るはずなのに!?」


「気をつけるのだ! 慌てては駄目だ」


「破耶先輩!」


「七菜! 海乃!」


 緋たちと七菜たちが合流した。


「七菜。とりあえず手を繋ごうぜ?」


「緊急事態だからってそれは!?」


オレとお前は最強らしいぜ?」


 緋は七菜の手を握った。


「馬鹿か君は!? こんな公衆の面前で!?」


 七菜が紅くなる。


「何を今さら?」


 緋がキョトンとする。


「おっと? お喋りはそこまでだよ。会場が混乱してるし、様子が変だね」


 海乃が異変を感じる。


「七菜ちゃん!!」


 到着した美岬が声を掛ける。


「美岬、偵徒! 良かった。無事に合流出来たのだ」


「それよりも大変だよ! グランドスタジアムの入口とか他の扉も外から鍵が掛かってるのよ!」


「それは穏やかじゃないね。それでこのパニックなんだね?」


「海乃さんは流石に冷静なんですね!?」


 美岬が感心する。


「慌てても仕方ないしね。こういうときに慌てたら早死にするよ?」


 海乃が天井を見る。


「スタジアムだから天井が無い。なのに電気を落として、外から鍵を掛けている。こんな事が起きているのに警備は全く動いてない。嫌な予感がするよ」


「流石は海乃だな。大した分析力なのだ」


「それはこっちの台詞だよ? 紅もこの状況で冷静にいて、尚且つ色々と考えている」


「わたしは色々と経験しているからな」


「そうか。同い年として頼もしく思えるよ」


「その言葉、そのまま返すのだ」


 七菜と海乃が褒め合う。


「うっ~!?」


 偵徒が膝をつく。


「ちょっと! どうしたのよ!」


「苦……しい!!」


 偵徒が倒れこんだ。


「偵徒!?」


「美岬。口と鼻を布で覆うのだ!」


「はっ……はい!?」


 混乱しながら、美岬は持っていたハンカチで口と鼻を覆う。


(これは毒系の煙か?)


 海乃が予想する。


(多少吸った位なら命に別状は無いだろう。とはいえ危険なのは変わりないのだ……ならば!)


 破耶と海乃の視線が合う。


(七菜!! オレが傍にいる!!)


 緋が無言で七菜の手を握った。


(まったく、君は。嬉しいけどさ)


 七菜は緋に身体を寄せる。


(多分、紅は……)


 海乃が足を踏み出す。


(海乃なら……同じことを考えている!)


 破耶も踏み出した。


(なるほど! 考えたぜ二人共!)


 緋が破耶と海乃のあとを七菜を引っ張り付いていく。


(もう! 世話焼かせないでよ!)


 そう思いながらも、偵徒を背負い美岬も破耶たちを追った。

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