大特訓
「いち、にい、さん、しい、ごー」
「……あ、あの~」
「何だレッド?」
「これラジオ体操だよね」
「それがどうしたのだ?」
「漢は特訓を頼んだんだぜ?」
「まずは、何をするにも準備体操だ」
レッドは渋々、ラジオ体操をする。
「クレナイと言ったか。君のレベルは65。Sヴァロンを倒せるのも頷けるが、レベル15のレッドに付き合うとは、どういう了見だ?」
「べつに企みはないぞ。ただ、強くなりたいと思っているレッドに興味が湧いたのだ」
「ふーん」
「お前はどうする。一緒に特訓をつけてやるぞ?」
「僕は結構。ただ、特訓の内容は気になるんで見させてもらいますが」
クールは岩に座る。
「分かった」
クレナイはリストを呼び出して、回数計を出した。
「何をすればいいんだ?」
「腕立て伏せをするのだ」
「腕立て?」
「わたしが回数を数える。レッドはギリギリまで腕立て伏せをするのだ」
「分かったゼエエ」
レッドは腕立て伏せを始める。
「……29……30!」
レッドが地面に伏せる。
「だらしがないぞ! レッド、強くなりたいなら根性みせるのだ!」
「勝手が違うんじゃ……」
「戦闘は平気で腕立て伏せはダメとは……。変わった奴だ」
クレナイが辺りを見渡す。
「ならば、アレだ」
「岩?」
クレナイが指さした場所に岩があった。
「まさか漢に岩を壊せと?」
「違うよ、レッド。おそらく……クレナイは岩を」
「待ってくれ。答えはレッドが出すのだ」
クレナイは岩を見つめる。
「レッドは、あの岩をどう思う。砕くのに向いてるのか、動かすのに向いてるのか?」
「どういう意味だよ?」
「戦いは強くなれば有利だが、力を付けただけでは意味がない。時には頭脳も使わなければならないのだ。戦いは状況判断がものを言うぞ」
「頭を使うのは苦手だぜエエエ」
「だから特訓なのだ」
クレナイがリストから砂時計を出す。
「この砂が落ちきるまでに決断をするのだ」
「砕くのが手っ取り早いよな」
「レッド、よく考えるんだ」
「クール?」
「多分、正解は無い。それでもレッドに選ぶように言うならば、何か意味があるだろう」
「うーん」
レッドは考える。どちらが正しいのかを。
「あと三分ほどだな」
「くっそオオオ!」
レッドが頭を掻く。
「決めたのか?」
クールが訊く。
「悩んでもしょうがねえ! 漢は突撃あるのみだぜエエエ!」
レッドが岩に向かう。
【ファイナル】
「レッド・紅蓮斬!」
レッドが背中から刀を引き出して岩を斬った。
「なるほどね」
「クレナイ、アレが漢の答えだ」
「うむ。自ら新たな答えを見つけだすとは見事だぞ、レッド!」
「えっへっへ」
「さて、特訓は終わりにしよう。お前も疲れただろう?」
「なんか……強くなった気がするぜエエ!」
「気のせいだよ……レベル15のレッド」
「てめえ、クール! 毎度のように馬鹿にしやがってエエエ」
「ホントのことだろう?」
【ログアウト】
「帰るのか?」
クレナイが訊く。
「ええ。面白いものも見れたし」
「……レッド、クール……実際に会わないか?」
「クレナイ、何を唐突に!?」
レッドが驚く。
「駄目か?」
「何処で会うんだよ?」
「三人のアクセスから近いのは……」
クレナイが考える。
「喫茶トランプはどうだ?」
「近いぜ」
「了解」
レッドとクールが同意した。
「では明日、同じ時間に」
クレナイの号令で解散した。




