仮想世界に集う者達
「すまない二人共。遅くなったのだ」
「破耶さん遅いですよ!」
「悪い、緋。手間取ってしまってな」
「いちいち緋の言うことに構っていたら、時間がいくらあっても足りませんよ、破耶先輩」
「それってどういう意味だ!? 七菜」
「そのままの意味さ、緋」
「……仲が良いのは結構だ……だが、遅れた身分で言うのはシャクだが、早くログインするのだ」
破耶はマシンに乗り込む。
「「はい!」」
緋と破耶もマシンに乗り込んだ。
※ ※ ※
「……スタート地点だよな?」
レッドが言う。
「公平を保つ為だろう」
クールが言う。
「わたし的には助かった。キイラの件の後も、なかなか来る時間が無かったからな。一斉スタートはありがたいのだ」
「……おう。これで揃ったかな?」
「アンタ……誰だ?」
「このゲームの開発者の一人で、最高責任者をやらせてもらっている、O.D.と申します」
「リッド社の社長の愛称がO.D.だったはず……」
「私が、その社長だよ」
「エーーー!?」
レッドが思わず一歩退く。
「早速だが、わたし達は何で勝負を着けるのだ?」
「とりあえず……サバイバルかね」
「ここに居る者達でか?」
「いや。これからモンスターが沢山出現するので倒してほしい。一時間後に残っていた者達が次のステージに進めるとする」
「面白いじゃねえか! 燃えてきたぜ!」
「君がこれ以上燃えたら暑苦しいだけさ」
「んだとクール! お前は少し熱くなれよ!?」
「性に合わない」
「……それでは、また一時間後に」
そういうとO.D.はログアウトした。
「この地響きは!」
クレナイが見渡した方向から、ヴァロンの群れがやって来る。
「ヴァロンなら……どうにかなるだろう」
クールは専用武器を取り出す。
「来やがれヴァロン!」
レッドも背中の刀を抜いた。
「いくぞ、二人共!」
「「了解!」」
三人は、ヴァロンに向かって走り出した。
※ ※ ※
「どうなっているのかしら……これ?」
「まさか夏郷の仕業か?」
高校に玲衣を送るのに来た千景と新田は、校庭での騒ぎを見る。
「校長に顔を出しに行くね」
玲衣が走っていった。
「とても囮とはいえ、誘拐された人には見えないわね。玲衣は」
千景が校庭を歩きながら言う。
「んー。どこにいるんだあ? 夏郷の奴」
「夏郷くんなら平気でしょ。それよりもアンタ、焼きそば買ってくれないかしら」
「なんで俺なの?」
「彼氏じゃないの。たまには奢ってよ」
「奢るのは構わないんだが……そのよう……俺、並ぶのが嫌なんだけど」
焼きそばの模擬店には、三十人程の列が出来ていた。
「分かったわよ。一緒に並べばいいんでしょ?」
千景が新田の手を取って列に並んだ。
※ ※ ※
「ギャアア!!」
ヴァロンの群れが次々と倒されていく。
【アタック】
「究極豪炎」
ヴァロンの群れを炎が焼きつくしていく。
「あれは……究極殿か!」
レッドが見る先に、仮面タイプの黒い姿に、手から炎を繰り出す戦士が居た。
【アタック】
「フィナーレ・ムーン」
ヴァロンの群れの周囲に三日月の様な刃が現れ、瞬時に群れに降り注いだ。
「……あれが皇帝。成る程、月のように輝く姿に、見る者を虜にする剣さばき。仮面タイプ最高の美しさは伊達ではないね」
クールが感心した。
【アタック】
「ジョーカーナックル!」
ヴァロンの群れに、徒手空拳の攻撃が浴びせられる。
「おお! あやつは最近、噂になっている……確か……キリフダーだったのだ」
「なんか負けてらんねえぜ!」
【アタック】
「レッド・紅蓮斬」
レッドの刀がヴァロンを切り裂いていく。
「僕も決めようか」
【ファイナル】
「エンド・ナックル」
クールの拳がヴァロンの群れを粉砕していく。
「わたしも倒すのだ」
【ファイナル】
「仮面キック……なのだ!」
クレナイの飛び蹴りがヴァロンに炸裂した。
「あらかた片付いたか」
「わたし達はな」
【アタック】
「トロピカル……バズーカ」
ヒーロータイプのフルーツマン……。
【アタック】
「ベジタブル インパクト!」
ヒーロータイプのトマトちゃん……。
【アタック】
「ゴッドライズ」
ヒーロータイプのハイパーサバイバル神ゴロー。
「僕たちの他にも、いっぱい強者が残りそうだ」
「心配要らないぜ、七菜。漢が守ってやるからよ!」
「それなりに期待しておくさ」
クールがレッドに背を向けながら言った。
「どうやら片付いたようなのだ」
ヴァロンの群れは全滅した。
※ ※ ※
「なんなんだ!? おっ……お前は!!」
高校に潜伏していた男が、校庭に手をつけながら訊く。
「安心しろ。大人しくしていれば、これ以上何もしない」
「誰が大人しくするか! 黒田派の邪魔をしたことを後悔しろ!」
黒田派の男が銃を構える。
「銃の使い方、分かるのか?」
「お……脅しじゃない!」
男が引き金を引いた。
「どうしたんだ?」
「な……なんで引き金が引けない!?」
「セーフティが、掛かったまんまだ」
銃身が斬り落とされる。
「うっ……」
「わざわざエアガンを改造したみたいだけど、使い方が分かってなければ意味がないな」
「なにを……した!?」
「普通では見えない刀で銃身を斬っただけだ」
「ちくしょー! 何なんだよ!!」
「俺は飯沼 夏郷。この高校の生徒会、副会長だ」
夏郷が勝ち誇った顔で名乗った。




