作戦
「破耶さん!」
「愛生ちゃん、頼んで悪いな」
「いいえ。玲衣さんが囮になると聞いたときは驚いたけど、新祝祭を無事に成功させる為ですから」
愛生はパソコンに標示されるマークを目で追う。
「どうなのだ?」
「これは!? ……マークが止まりました!……場所は大学です」
「星季大学だと!? 何故、大学なんかに」
「解りませんけど、場所が判ったのなら向かったほうが……」
「いや、星季なら二人に任せよう」
「二人……ですか?」
愛生は、誰のことか分からないでいた。
※ ※ ※
「……着きましたよ、アニキ。さっさと入りましょう」
「ああ。ほら降りろ!」
黒田派の男が玲衣に言う。
「なんで大学なんかに来たの?」
「ここが、黒田さんの聖地だからだ」
黒田派の三人と玲衣は、キャンパス内に入ると迷うことなく、古びた部屋に入った。
「!?」
黒田派の男たちが驚く。
「驚かれてもね~、こっちも反応困るよ」
「誰だ、貴様!」
玲衣を捕まえている男が言う。
「星季の生徒だけど?」
「何故、生徒がこんな所に居るんだ!」
「もちろん……」
部屋の扉が開く。
「黒田派を捕まえるためよ!」
「誰だ!」
「星季大学、生徒会長……侍頼 千景です!」
「生徒会長に何が出来る?」
男がナイフを玲衣にちらつかせる。
「うぉ!」
「ぐっ!」
黒田派の一人が吹き飛ばされる。
「玲衣! 頭下げて!」
「ハイ!」
玲衣が頭を下げる。
「……こっちだ!」
「……しまっ!?」
玲衣を捕らえている男が、千景に気配をとられている隙に、ナイフを蹴飛ばした。
「ナイスよ新田!」
田は運転手を務めていた男を捕らえながら親指を立てた。
「二人共、どうして!?」
「破耶から連絡があってね。黒田派を捕まえる作戦が少し変わったから手伝ってくれってね」
「……まあ、本来なら夏郷くんが、GPSを追って来る段取りだったからね」
玲衣が、身に付けていたGPS機器を見ながら言った。
「でもよ。なんで誰も協力しなかったんだ?」
「警察に通報したら、新祝祭に紛れ込ませている黒田派によって高校を制圧するって言われているからみたいなんだ」
「……っておい! それって今も高校に黒田派が居るってことじゃねえか!」
「校長は脅しによって十分な警備態勢をとれなくて……。正門に手配できた警官も、なんとか気付かれずに出来たくらいだし」
「俺達の仲間には、もう合図した。残念だったな」
ナイフの男が言った。
※ ※ ※
「夏郷、無茶しないでくれ」
破耶が電話を切る。
「校長、黒田派の事は夏郷がなんとかするのだ。だから警察に通報を!」
「油断はできん。黒田派が私に言ったことだけが全てとは限らん」
「校長。奴等の言葉を全て鵜呑みにすると、対策が後手後手になってしまうのだ! 本当に生徒を守りたいのなら最善の策をとるのだ!」
「……わかった。警察に通報しよう」
校長が警察に通報する。
「理事長には話を通してあるのだ。だが、わたしは校長の判断で実行してほしかったのだ」
そう言うと破耶は校長室を出た。
「……さてと、黒田派の事は夏郷と警察を信じて、わたしは……代表を果たさないと!」
破耶は体育館に向かった。




