波乱
「さあ、どうする? 黒田派の皆さん」
玲衣が正門の前で仁王立ちしている。
「真後ろが管理室だからって、いい気になるなよ」
「校長室も真後ろの校舎だ。走れば二分と掛からねえ」
黒田派の一人が、玲衣を横切って校舎に走る。
「あ~あ。行っちゃった……」
「君も余裕をかましてる場合じゃないぜ?」
黒田派の一人が玲衣の腕を掴む。
「へー。乱暴するんだ?」
「君は人質として、じっとしていればいいんだ」
「誰が……大人しくしてやるか!」
玲衣が黒田派の一人の股間を蹴る。
「……んのおお!?……よくも……ヤれ!」
股間を蹴られた男が、ほかの仲間に指示する。
「悪いが一緒に来てもらうよ」
「楽しもうか」
黒田派たちが玲衣を捕らえると、停めてあった車に乗り込んだ。
「何処に連れていく気!?」
「言っただろう。人質として、大人しくしてもらうとよ」
「ついでに、アニキの蹴られた股間を癒してもらったらどうです?」
「俺は未成年には興味ないんだ」
男は運転手の手下に車を出すように指示した。
「……良いのか? 仲間は」
「敵の事より、君自身の事を気にしたらどうだ」
男の手にはナイフが握られていた。
(とりあえずは作戦その一成功!)
玲衣は心の中で呟いた。
※ ※ ※
「うむ。分かったのだ」
破耶が電話を切る。
「……ということなのだ、校長。黒田派の連中は玲衣を連れ去ったのだ。奴等の目的が本当に校長なら、その場で校長に連絡をとり、呼び出すことも出来たはず……なのに奴等は玲衣を連れ去った。校長よ、何を隠しているのだ!?」
「……私は覚悟を決めている」
校長は辞表を見せる。
「今、夏郷から電話があった。校長が予め手配していた警察官が黒田派の一人を捕らえたと。けど何故わざわざ正門から侵入しようとしたのだ? 今日は新祝祭なのだ、沢山出入りする人に紛れば、もっと簡単に侵入出来た筈なのに」
「何が言いたいのかね?」
「校長が手配したのは、正門に居る警察官二人だけのようだが、ハッキリ言って警備はずさんではないのか!? ……まるで正門から来ることを判っていたみたいなのだ」
「どういう意味かね」
「校長と黒田派が……グルと考えているのだ!」
破耶が校長の机を叩く。
「理由が無い」
「……有るのだ。去年の黒田の件から一年、黒田の息が掛かっている黒田派が黙っている訳が無いのだ。校長は脅されているのだろう?」
「……やはり君は、生徒会長の鑑だよ」
「奴等の、黒田派の目的は何なのだ?」
「昨日も言ったが、一つは私の死。そして二つ目は……理事長の死だ。それも、理事長は同じく黒田が殺し損ねた生徒会長の手によって死すべきというわけだ」
「わたしが……理事長を!?」
破耶は驚きを隠せないでいた。
※ ※ ※
「遅いぜ、破耶さん」
「生徒会長としての役目があるんだ。僕たちは僕たちの準備をしよう」
緋と七菜はマシンの前で気合いを入れた。




