表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/70

全国大会

「あれ? 破耶さん」


「緋。お前にも話があるのだ!」


オレに?」


 緋は破耶に促され、教室を出た。


「矢吹さん。私ね、紅蓮くんに訊いてみたのよ。矢吹さんを好きなのかを」


「別に。緋が僕のことをどう思っていようが、僕には関係ないさ」


 七菜が自分の席に座る。


「紅蓮のやつ、嫌いなら一緒に居ない……って言ってたんだぞ!?」


「当然だ。君は、嫌いなのに一緒に行動するのか?」


「そりゃそうだけどよ……何かお前達は違うんじゃないか?」


「……緋は友達だ。それ以上でも以下でもない」


 七菜は、本を読み始めた。


※ ※ ※


「全国大会!?」


「うむ。今年の新祝祭の目玉企画なのだ」


「でも、そんな事、無理なんじゃ?……全国のプレイヤーが納得するわけ!?」


「案ずるな、我が校の校長はゲームの開発メーカー全社と縁が有ってな。明日の新祝祭では全国大会が可能なのだ」


「……メーカーは良くても、プレイヤーは反発するはずだぜ? いくらなんでも高校限定の全国大会なんて!」


「心配には及ばん。既に策は整っている」


「え!?」


「明日、ログインしなかったプレイヤー達には、報酬として百回分のログイン権が与えられるのだ!」


「百回分が無料タダってこと!?」


「まあ、チームでの共有だがな」


「それでも凄い大盤振る舞いですね!」


「これも校長に理事長、何よりも我が校の信頼あってのことなのだ」


 破耶が誇らしそうに腕を組む。


「……オレに用って、以上ですか?」


「いいや。ここからが本題だ」


「何ですか?」


「今回の全国高校対抗戦に、我が校の代表として出場してほしいのだ!」


 破耶が頭を下げる。


「ええ!? オレが代表!? 無理ですって!! てか頭を上げてください」


「……やはり代表は荷が重いのか?」


 破耶が頭を下げ続けながら訊く。


オレなんかじゃ、直ぐに負けます。よっぽど破耶さんや七菜が出たほうが……」


「わたしは出るぞ。だが七菜には断られたのだ」


「あいつ……何で?」


「『緋に迷惑を掛けれない』……そう言われたのだ」


オレとの噂が原因か」


 緋が教室に向かう。


※ ※ ※


「矢吹さん。ちょっとお願いが有るんだけど?」


「また僕を探るのかい」


 七菜は、本を読みながら答える。


「違うわよ、私の髪を束ねてほしいの」


「自分でやればいいじゃないか」


「両手が塞がっているの」


 女子の両手はペンキだらけになっていた。


「作業前にまとめればよかったはずだ」


「仕方ないじゃない! 流れでこうなったのよ」


「まったく。仕方がないね」


 七菜は本を閉じると、女子の髪を束ねる。


「後ろで一本にお願いね」


「……長い髪だな」


「自慢の髪よ」


「そうか。ほら、出来たぞ」


 七菜は再び、席に着いた。


「ありがとう、助かったわよ。矢吹さんも伸ばせばいいのに……伸ばさないの?」


「切ったんだ。部活のために」


「いろいろ勿体ないわね……素材は良いのに」


「誉め言葉と受け取っておくよ」


「七菜ぁぁぁ!!」


「騒がしい。本ぐらい静かに読ませてくれ」


「何で代表の件、断ったんだよ!」


「これ以上、君との仲を誤解されたら困るだろう?」


オレは気にしないぜ? だから代表になってやってくれ!」


「僕は気にする……誤解の目で見られたくない」


「……なら……お前に恋人が出来れば良いんじゃないか?」


「!?」


「そうすれば代表になれるんだろ? お前が出るんならオレも数合わせにはなるぜ?」


「……馬鹿あああああ!!」


「痛ったーーー!!」


 七菜が本で緋の頭を叩いて、勢いよく教室を出ていった。


「大丈夫!? 緋くん」


「う~……!」


※ ※ ※


「廊下を走るのは誉められんな」


「……破耶……先輩」


 破耶が廊下で立っていた。


「人前で泣いているとは、らしくないな」


「僕にも……分からないんです。キイラの件から分からないんです……」


「二ヶ月前から?」


「僕は……緋にとって友達なんだろうか!?」


「七菜。お前はどうなんだ?」


「僕は……」


 七菜が自分の胸に手を当てる。


「どうなのだ?」


「……僕は……友達じゃ嫌だ……」


 七菜が涙を流す。


「なんだよ、廊下に居たのかよ」


 緋が二人に近づく。


「僕は……緋が好きなんだ」


「……七菜……なんて言ったんだ?」


「あ……か!?」


 七菜の涙声が廊下に消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ