ゼロスト×ロードバスターズ×仮面英雄伝 闘 ーREAL大戦ー Ⅷ
「誰か来たのか」
キイラが人の気配を感じて部屋の扉を開けた。
「よう」
緋が挨拶をする。
「き……貴様ら、何故!?」
キイラが後退る。
「決まってるだろ。ミカノ達を助けに来たんだ」
「悪いが邪魔するよ」
夏郷が断りをいれて部屋に入る。
「夏郷、来てくれたのか!」
「当たり前だろ? ……三人共、怪我はないか?」
「わたしは大事ないが、七菜がな」
破耶が、小石が当たって頬から血を流す七菜を気遣う。
「こんな傷、僕には怪我に入らない」
「なに言ってるんだ。女の子が顔に傷を付けられて平気なわけないだろう」
夏郷がハンカチで七菜の血を拭った。
「……ありがとう」
「礼なんて要らないよ。ムロ、七菜ちゃんの傷を治してあげて」
「任せとけ」
ムロが部屋に入り、七菜の傷を治す。
「ちょっと! 勝手に人様の部屋に入らないでよ!!」
「おいおい。勝手に人様の学校を滅茶苦茶にしといてよく言うぜ」
緋が眉を吊り上げる。
「調子に乗らないことね。ワタシはライズ様と共に理想の世界の為なら何だってする!」
「気絶してる奴と協力できるのか?」
緋が気絶しているライズを指差す。
「……どういう訳よ!!」
「少し説教しただけだ。お前の為に頑張ってたけどな」
「どうして……どうして、ワタシの夢を邪魔するのよ!?」
キイラが緋の肩を掴む。
「ワタシ〝達〟じゃないのかよ?」
「黙れ!!」
キイラが緋を押し倒し、馬乗りのまま殴りだす。
「……気が済んだか?」
「思い通りならない……だから現実は嫌いなの!!」
「その辺にしておくんだ!」
夏郷が止めに入る。
「ライズ様! ワタシの為に協力してくれるんじゃなかったのでは!? ワタシの理想を叶えてくれるのではなかったのですか!!」
「諦めるんだ。もう終わりにしよう」
夏郷が説得をする。
「嫌よ!!」
キイラの声に反応したかのように部屋の様子が変わっていく。
「ぐっ!?」
「夏郷!?」
破耶が近寄る。
「……此処は……ラッキーラズベリー畑!?」
緋が言う。
「そうよ……此処はライズ様と出会い、夢を誓い合った、約束の場」
キイラが畑を舞い踊る。
「ラッキーラズベリー畑は稀に表れる場所。ゲームでも僕は行ったことがない……」
「わたしもだ」
「痛てて……」
「治してやるよ」
「大丈夫だぜ。女に殴られて参ってたまるかよ!」
緋が頬を叩いて気合いを入れた。
「キイラ! ゲームの世界を具現化しているのは他ならぬ君じゃないのか?」
夏郷が訊く。
「ワタシは只のハッカーよ。世界を創るのはライズ様の役目」
「おい! ゲームのプレイヤーが一時的に戻ってこれなかったのは、お前の仕業か!?」
「そうよ。実際にプレイヤーが居たほうが詳しいデータが得れるからね」
「……妙だ……お前が盗んだデータを元に、ライズがゲームの世界を具現化していく……。じゃあ、どうやってライズは具現化してんだ?」
「知らないわよ。それだけライズ様は凄いの」
「ライズとはラッキーラズベリー畑で出会ったんだよな? ならライズの属性は? ライズのレベルは?」
「失礼ね。ワタシとライズ様は此処で会ったの! 初めてのときから、あのお姿よ!」
「……夏郷さん。夏郷さんの予想は当たってると漢は思います。けど、それだけじゃないと漢は思います!」
「どういうことだ?」
「……ライズ自身もキイラが無意識に具現化したゲームのデータってことです!」
「なんだって!?」
「もっといえば、キイラがゲームのデータを元に作り上げた……キイラの為のオリジナル。それならライズがゲームのデータを具現化出来たのも理由がつきます」
「はあ? 冗談もいい加減にしなさい! ライズ様がワタシが作ったデータ?」
「お前は具現化したラッキーラズベリー畑で、自分の理想の人物、ライズを創り具現化した。当然、お前の理想の塊だ……お前が望むままに現実を壊し、理想を創造していく……」
「ライズ様を侮辱するなあ!!」
キイラが虹色のオーラに包まれる。
「まさか!?」
緋に嫌な予感が過る。
【変身】
「……うぅ……邪魔だ!!」
虹色のオーラから現れたのは、虹色とはかけ離れた、漆黒の姿のキイラだった。
「「デビルモード!?」」
緋、七菜、破耶が同時に言葉にした。
「何だ、そのデビルモードって?」
ムロが訊く。
「ゲームでも禁断の姿で、経験値が入らず、アイテムも使えない……おまけにレベルも1に戻る代わりに、一定時間レベルがMAXの状態で戦える」
緋が説明した。
「よく解らないけど……バランスが崩壊しないか?」
「いまも発動条件が判明してないから……それがボス戦前だったりしたら最悪。それで通称がデビルモード」
「うぅ……!!」
キイラが緋に向かってくる。
「二人共、お喋りはそこまでだ」
「ああ。さっさと終わらせるぜ!」
ムロが武装石発動状態になる。
「行くぞ!」
夏郷も刀を手にして、ムロと共にキイラに向かう。
「緋。君は見ているだけか?」
「……そうか!? キイラが成れるなら漢も!」
「そこは漢〝達〟もでしょ?」
「七菜、大丈夫なのかよ。また怪我したら!?」
「君が僕の心配なんて……生意気さ」
緋と七菜の目が合う。
「「変身!」」
緋と七菜の姿が変わる。
「漢の名はレッド!! 正義の炎を身に纏い、悪の野望を焼き尽くす!!」
「僕はクール。以後お見知りおきを」
レッドとクールもキイラに向かって走り出した。




