コーラ
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秋が深まる頃、自転車を使って遠出することを計画した。自宅マンションの駐輪場から、休日愛用している自転車を走らせる。ペダルを漕ぎながら、走り続けた。目的地は山の中の公園で、ゆっくり行くつもりでいたのである。
ちょうど途中のコンビニでお弁当を一つとコーヒーを一缶買ったのだけれど、あえてコーラも一缶買ってみた。糖分ゼロで、それこそ学生時代以来だから、十年ぶりぐらいに口にしたのである。
飲んでみて思ったのは、たまにはいいなということだ。コーラは健康に悪いというけれど、あたしなんかそれこそ十年ぶりぐらいに飲み、別に悪くないなと感じていた。缶をコンビニ出入り口の缶入れに捨て、自転車を山の方へと走らせる。
普段ずっとコーヒーだ。しかもブラックである。会社に詰めている時は、飲み物は持ってきているペットボトルの水か、フロア隅にあるコーヒーメーカーで淹れるコーヒーしかない。だから、いつもはずっと口にするものが決まっていた。
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山中の公園は上り坂がきつい。若干勾配があるから、少し疲れるのだ。だけど、上るしかない。自転車で上り切って、その後、額に浮かんだ汗をタオルで拭く。今年の秋は幾分暑さすら感じてしまう。まあ、仕方ないとは思っていたのだけれど……。
公園でお弁当を開き、食べる前に買っていた缶コーヒーを一口飲む。そして食事し始めた。普通の幕の内だったのだけれど、ご飯とおかずを交互に食べるという、いい習慣が付いている。食べながら、時折景色を見つめていた。
食事を取り終えてから、鳥の鳴き声を聞き、ゆっくりとした雰囲気を味わう。いつもはずっと仕事に追われていた。まあ、人間だから、稀に寛ぎの時間が欲しい。そう思って過ごしているのだった。
色とりどりの山中の花をスマホのカメラで撮る。カメラはデジカメも持っていたのだけれど、主に使うのはスマホの方だ。画質は同じだ。デジカメだろうが、スマホだろうが……。そして撮った写真を整理し、後でパソコンに入れてフラッシュメモリにバックアップを取ってから、気に入ったものを現像しようと思っていた。写真立てに入れて、飾っておきさえすれば、いつでも見れるのだし……。
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山中で小一時間過ごし、停めていた自転車の方へと行って、ロックを解除した。そして飛び乗り、走らせる。別に付き合っている彼氏はいなかったのだけれど、それでも今のライフスタイルで十分だと思っていた。あたしも仕事と結婚してしまったのである。
ゆっくりと自転車を走らせた。林道は狭い。木がかなり生い茂っていて幾分暗かった。だけど、ライトを灯すほどのことはない。自転車に跨り、時折途中で体を休めていた。また缶コーヒーが欲しくなったのだけれど、今から山の下側まで降りれば自販機がある。そこで買うつもりでいた。
それにしてもコーラを飲んだのは、実に久々だったのだけれど、たまに飲む分は美味しい。コーヒーと同じく嗜好品だ。あまり飲まない方がいいと、昔、両親から言われていたのだけれど、今のコーラはそう健康に影響がない。これから先、もしかしたらまた買うかもしれない。もちろん糖質がゼロの物を、だ。
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山道を降りて自販機で缶コーヒーを一つ買い、飲んだ。そして自転車を走らせ続ける。自宅までずっと、だ。街へと行けば、住んでいる自宅マンションまですぐだった。別に一口に遠出と言っても、そう遠くまで行ったわけじゃない。単に距離にして二キロぐらいを往復しただけだ。現に街と山は隣接している。遠くまで行ったという感じは全くなかった。
マンションに戻ってきて、自転車を駐輪場に停めてから、部屋へと向かう。確かに幾分疲れていた。いつもはマイカー通勤していて、何かと運動不足気味だったからだ。電車やバスなどに乗る機会は滅多にない。車を利用し続けていた。今の会社に入社する前だから、学生時代に運転免許を取っていたのである。
ふっと今日飲んだコーラの味を思い出す。ビールと同じ炭酸飲料だったけれど、たまに飲む分はいいと思っていた。気分転換にもなるのだし……。普段コーヒーばかりで胃をやられていたのだから、飲み物を替えるのもいいと思える。まあ、あたしも社に持っていくペットボトルには浄水器で綺麗にした水しか持っていってないのだけれど……。
部屋に戻り、着替えを用意して、バスルームへと向かった。今日はたまたま会社が非番で休みだったのだけれど、明日からは通常通り出勤だ。うちの社は交代で休むのである。いつもは仕事がハードだったのだし……。
シャワーを浴びてから部屋着に着替え、ベッドに横になる前にルイボスティーを一杯飲む。神経を休めるにはいい飲み物だ。愛飲している。夜間、熟睡できないことがあったりすると、翌日の仕事に差し支えるからである。まあ、別に寝不足でも普通に出社するのだけれど……。
秋の夜は幾分冷える。毛布を重ね着してから眠った。ゆっくりと。
(了)