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おかあさんな夢
意外に覚えていない痛みの中で見た夢。
おもちゃの兵隊が前をならえをしてラッパを鳴らす。
青い帽子が空に溶けて、鳥が歌を歌った。
きゃあきゃあと笑う赤ん坊の声がする。
あぁ、出産は明日だというのに、もぅでてきてしまったのね。
名前は赤ちゃんの顔を見て決めようと家邦さんと話していたけれど、長い間私とずうっと一緒だったんだもの。顔を見なくたって、その子にふさわしい名前は決めてあるわ。
「やっぱり……」
かわいいわ。目を閉じてもまぶたの裏に映る赤ん坊は今ぬいぐるみで遊んでいる。仕事を辞めて有り余った時間に作った首の長いキリンのぬいぐるみ。
私は母親から物を貰った記憶がなかったから。昔から自分に赤ちゃんができたらささやかでもいい、愛情がこもったものをと考えていた。なんて、少しセンチメンタルね。
少し前に完成したそれはもう赤ん坊のヨダレまみれになってしまっていた。でもいいの。あれは私の赤ちゃんのために作ったんですもの。
薄ぼやけた痛みと意識が夢と現実をかき混ぜる。
少しの痛みと泣き声が聞こえて私はようやく目を覚ました。