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6話  予感

相葉は、私を支えようとしてくれる。

今の私にとっては、そんなことを言ってくれる人が居る、ただそれだけで救われる。

救われることが嬉しくて、幸せな気分になれる。

そんな暖かい気持ちをくれる、かけがえのない存在、相葉。

彼をこれ以上困らせたくなくて、私はこれから、

決定的に辛いことでもなければ、泪は使わないようにしよう。

そう、心に誓う。


「じゃぁ、とりあえず、ここ出るか。」


相葉はポツリと、それでいて少し嬉しそうに、そう言った。

その笑顔に少しばかり疑問を抱いたが、そんな私を尻目に

相葉は階段を下り始めていた。



♪キーンコーン カーンコーン  ・・・・



一時間目の予鈴が鳴り響いた。


――――そういえば、今日は平日。

だから相葉は教室にいたわけで、授業ももちろん通常通りあるわけで・・・。

私は、相葉に質問をしてみた。

「相葉・・・?あのさ、・・・授業は・・・?」


相葉は何食わぬ顔で、

「へ??そんなのいいよ。どーせつまんねーし。楠本だって暇だろ??」


・・・・確かにそうかもしれないけど・・・・

やっぱり授業をサボるのは良くないことだし。

さっきだって、自分の気持ち、言えたんだ。今だって言えない筈はない。


「私は、授業出たい・・・けど。」


・・・言えた!そう心の中で喜んでいると、


「んー・・・。楠本がそういうなら・・・まぁ良いか・・・。」


――――良かった。

私のせいで、相葉をサボらせるなんて、嫌だった。

授業に出るって事は、必ずしもプラスにはならないかもしれないが、

マイナスになることは、ないから。

「じゃぁ、行こうか。」

私は頷いて、相葉についていった。

 


私と相葉は、席についた。

・・・といっても、周りからしてみれば、‘相葉がいつも通り遅刻してきた’だけなのだが。


やはり、みんなに気づかれないことは、寂しい。

だけど、相葉がたまに私のほうを見てくれるので、そのつどそのつど安心した。


――――放課後――――


(んじゃ、行くか。)

相葉が私にしか聞こえないような小さな声でそう言った。

私は頷き、席を立とうとした。

それと同時に、未優が相葉のもとに来た。

「相葉、この間の話のことなんだけど今からちょっと、屋上で・・・良いかな?」

「あぁ・・・。分かった。」


そう言うと、相葉は小さな紙に何かを書いて、私がいる方向に、

少しだけその紙を滑らせて、未優についていった。


(私に、書きおきかぁ。)

未優との距離も近かったし、

私と話しているところを聞かれてはまずいと判断したのだろう。


その紙にはこう書いてあった。


[すぐ終わると思うから、先に昇降口行ってて。]


私は、荷物を持っていなかったので、すぐに教室を出ようとしたら、

誰かの話す声が聞こえた。


「あれ、ノート忘れてる。相葉のか。そういえば、もうさっき帰ったよな。」

「あぁ。でも、これないと、宿題できなくねぇ?」

「だなぁ。」


それを聞いて、私はノートを手に取ろうとしたが、

そうすると、ノートが浮いているように見えてしまうのではないか、

と、考えを改め、相葉に口で伝えることにした。


(確か、屋上にいるって、言ってたっけ。)

私は屋上に向かって歩き出した。



なんだか、嫌な予感がした。



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