5話 「良かった」
あれから暫く泣き続けた私は、
やっと落ち着きを取り戻して、
相葉に今、私が置かれている状況の説明を始めた。
「――――・・・今の話から察するに、お前はもう・・・死んでるってこと・・・?
だって楠本は今ここに居て・・・俺と話してるのに・・・」
「私にも、良く分からないよ。
さっきも言ったけど、朝起きたら急にこんなことになってて・・・」
―――――相葉は気を悪くしただろうか。
無理もない話だ。いきなりこんなに現実離れした話を訊いて、
信じる人などそうはいないだろう。
・・・訊かれたとはいえ、何故私は真実を語ってしまったのだろうか?
それがお礼をする、という行為になる訳がないということを、
私は・・・知っていたのではないだろうか。
それでも、自分が楽になりたくて、弱い私はこの人に頼ろうとしている。
優しさに、甘えているだけ。
私はやっぱり弱くて、情けない人間なんだ。
暫く、重い沈黙が続いた。
それを破ったのは、相葉だった。
「俺って・・・さ、頼りないかもしんねーけど、一緒に居て、手伝うくらいは・・・
できると思うんだ。・・・って、やっぱ俺じゃだめかぁ?」
そう笑いながら、言ってくれた。
私は、驚いたのと嬉しいのとで、間髪入れずに、
「頼りなくなんかないよ・・・っ!私・・・相葉の優しさには本当に救われてて・・・
申し訳ないくらい・・・なの。これ以上は、求めちゃいけないって思ってる・・・」
私はなんだか急に恥ずかしくなって下を向いた。
こんなに、自分の気持ちを素直に言ったのも、これが初めてかもしれない。
すると相葉は不思議そうに、
「何で申し訳ないの?俺、暇人だから。手伝いくらい何ともねぇよ。」
「「死」」は、冷たい。
実際に死んでみて、やっと分かったこと。
だけど、死んで初めて知った人の優しさや、温もりもある。
相葉に逢えて、良かった・・・。