3話 もう二度と・・・
何故なのだろう。
私の姿は、誰にも見えないはず。
その証拠に、私は、自分の母親にも気付いてはもらえなかった。
それなのに、何故?
正直に言って、私と相葉の接点は「席が隣」
・・・ただそれだけ。
私は言葉が出ず、ただ相葉を見つめていた。
ガラッ
またしても誰かが教室に入ってきた。
その人は他でもない、私の親友の、宮入未優だった。
もしかしたら、お母さんは寝ぼけていただけで、
本当は私は誰にでも見えるのではないか・・・?
そんな考えが頭をよぎった。
私は、思い切って、未優に声をかけてみることにした。
「未優・・・?」
未優は、私の方を向いた。
気付いてもらえた! 私は嬉しさのあまり、泣きそうになった。
しかし未優は・・・
「あれ?相葉じゃん。早いねぇ〜いつもは遅刻寸前くらいなのに!」
そう嬉しそうに話す未優。
・・・未優は私ではなく、相葉を見ていた。
そういえば、未優は相葉のことが好きって、言ってたっけ。
それは、好きな人と2人きりになれたら、誰だって嬉しいよね。
でも、違うよ、未優。私は、ここに居る。
私も、ここに、この教室に居るんだよ?何で、気付いてくれないの?
私は、耐えられなくなって、教室を飛び出した。
私は、どうかしている。
ついさっき、見たはずなのに。
現実を、受け入れたはずなのに。
何故、こんなにも哀しいのだろう?
何故、泪が止まらないのだろう?
気付くと、私は校舎の最上階、つまり屋上に立っていた。
ここには、未優とよくお弁当を食べに来たっけ。
おかず交換も、したなぁ。
未優の家の卵焼き、すごくおいしくって、
毎回毎回一切れもらってたっけ。
そうだ、「「死」」はこんなにも冷たい。
あの日々に、私はもう二度と出会えないんだ。