2話 出逢い
自宅を後にした私は、
自分が通っていた高校に足を運んでいた。
何故まだ私がこんなところにいるのか。その理由は簡単だ。
死後の世界に行く、といっても、
私は勿論死んだ経験はない。
だから、どこから、どうやって行けばいいのかなんて
知っているはずもない。
その術を見つけるために、自分の生まれ育った街を歩いていたら、
いつの間にかここに来てしまった、というわけだ。
まだ登校時間前の学校は、静かで、それでいてどこか優しさを感じた。
私は陸上部で、3週間後には地区大会も控えていた。
切ない想いを胸に、
朝日を浴びて輝いている校庭に向かった。
そして、誰もいないスタートラインに、静かにたたずんだ。
「用意、スタート!」
私は、きっとこれが最後になるであろう、一人きりの部活を、
体全体で味わうことができた。
教室にも足を運んだ。
3階の、2年1組。一番前の席。私の居場所。
明日あたり、菊の花でも飾られるのかな。
そんなことを考えていると、誰かが入ってきた。
チラッと見たところ、「相葉猶」と言う、
あまり話したことのない、隣の席の男子だった。
・・・と言っても、今の私は誰にも見えないわけだから、
相葉のことは放っておいて、机に寝そべることにした。
死んでしまったわけだから、眠気はないけれど、
よくこうしていて、先生達に怒られたな、と思うと、
少し寂しくなって、また泪が流れた。
今度は静かに、ゆっくりと・・・。
「・・・楠本・・・?どうしたんだ?私服で来たりして・・・
なんで、泣いてる?」
私は驚いて振り返った。そこには相葉がいた。
相葉は心配そうに、そして、まっすぐに・・・
私の目を見ていた。