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絶対宣言~妹は生意気な方が可愛い~  作者: 南条仁
絶対宣言~妹は生意気な方が可愛い~
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第8章:美人過ぎる兄

【SIDE:七森桜華】


 私がなぜ春日の事を兄貴と呼ぶのか。

 間違いなく言える、私の兄は世界で一番“兄貴”という言葉が似合わない。

 女顔で髪さえ整えれば美人な女の子にさえ見える。

 性格も男の子っぽくなくて、世間一般の兄貴のイメージではない。

 私は考えたの、せめて名称だけでも彼を男としてあげようって。

 ちなみに本人は当初、ものすごく嫌がっていた。

 あまりにもその嫌がりようが可愛くてそれ以来ずっと彼のことを兄貴と呼んでいる。

 兄貴の嫌がる事をする、私は彼をいじめるのが楽しい。

 ……好きな子をいじめをしちゃうのは仕方ないことでしょ?

 

 

 

 

「……どれにしようかしら」

 

 リビングに置いてあるパソコンで私は画像の選別中。

 明日、私は和音達に兄貴の昔の写真を見せなくちゃいけない。

 

「あっ、これなんていいかも……。こっちは可愛すぎるから見せたくない」

 

 見せてもいい写真って探すのは結構大変。

 彼の魅力あふれるものを見せる気はない。

 だからと言って適当なものを見せるわけにもいかないもの。

 兄貴の小学生の頃の写真、女の子そっくりな彼に私が女物の服を着せている。

 この頃は学校でも女の子扱いされていたんだ。

 名前も女の子っぽいので、違和感もなかった。

 私は何枚かの画像に見入りながら、

 

「ホントに可愛いなぁ……」

 

 今もそうだけれど、彼は美人だと思う。

 私好みに成長させてきたから文句はないけども、もう少し、男の子っぽく成長していたらよかったのかもしれない。

 兄貴の欠点は自信のなさ、気弱なところだもの。

 

「あれで強気になられても面白くないわ」

 

 大人しいからこそ、あの容姿の良さが引き立つんだ。

 

「この写真……いつ撮ったやつだっけ?」

 

 そこに写っているのは美少女と言っても過言ではない幼い頃の兄貴。

 地毛も伸ばして長かったので、本物の女の子に見えるの。

 

『ねぇ、春ちゃん。女の子みたいだからお姉ちゃんって呼んでもいい』

 

 とか言ったら半泣きで「やめて」と言われた。

 しょうがなく、兄貴と呼び始めたんだよね。

 嫌がらせと意地悪は似ているようで違うもの。

 私は彼に意地悪したいのであって、嫌がらせはしたくない。

 彼は自分が女扱いされるのが本気で嫌みたい。

 女装させた春ちゃんモードは冗談の類に入るので問題なしよ。

 

「これでいいや。人に見せられる程度の写真だもん」

 

 私は他に数枚の写真を携帯電話に転送しておく。

 そうだ、たまには兄貴の今の写真でも撮ろうかな。

 私はデジカメを取り出すと、彼の部屋へ行くことにした。

 

「兄貴、いる?勝手に入るわよ」

 

 私が部屋に入ると、彼はベッドで寝ていた。

 

「すぅ……」

 

 寝ころんで雑誌でも読んでいたのかも。

 その寝顔に思わず化粧でもさせたくなる。

 

「っと、そうだ。この寝顔を激写しておこっ」

 

 私はデジカメで彼の寝顔を撮ることにした。

 ぐっすりと寝ているのか、こちらが少し物音を出しても目を覚ます気配はない。

 しかし、その寝顔も綺麗なもので、私より可愛いんじゃないかって嫉妬してみたり。

 

「でも……本当に男の子なのかしら」

 

 とか疑惑を抱く私はペタペタとその頬を撫でてみる。

 

「……美人過ぎる兄って感じ?冗談じゃないから厄介なのよね」

 

 男らしさとか、そういうのとは無縁の兄貴。

 だからこそ、彼に興味を抱く女子も多い。

 見た目もそうだけど、兄貴は女性が苦手なくせに女性に優しい。

 私にはあんまり優しくないのに、他の子には結構評判がいいのはどうよ。

 とにかく、年下の子からはそれなりの人気があるみたい。

 

「兄貴は私だけのものなのよ、そこは自覚しておいて」

 

 彼の耳元にそう囁いてみる。

 私が貴方の恋人だってことをもっと本気になって考えて欲しいの。

 

「もしも、他の子になびいたりしたらひどい目に合わせてやるわ、ふふっ」

 

 だけど、それは可能性として消えていない。

 私はきっと彼に妹として好かれてはいるけど、女として愛されてはいないから。

 その辺はこれからどうにかしていかないといけない。

 いつか、彼から私を好きだというセリフが聞きたいな。

 私は彼に布団をかけてあげて、その寝顔を見つめていた。

 

 

 

 

 翌日の教室、私の周囲には兄貴の興味を持つ数人の女の子が集まっていた。

 そんなに皆、彼の過去が知りたいの?

 彼が人気なのは複雑だ、恋愛的なライバルが増えるのは本意じゃない。

 

「写真は持ってきてくれたの、桜華?」

 

「えぇ。厳選したのを持ってきた。ほら、見なさい。これが昔の兄貴よ」

 

 私が携帯電話を見せると、彼女達はきゃーっと騒ぐ。

 可愛いから叫びたくなる気持ちは分かるな。

 

「ちょっと、桜華。これってホントに先輩なの?貴方じゃなくて?めっちゃ可愛いっ」

 

「私じゃないわ。服装とか見れば分かるはず」

 

「いや、スカートとか履いてる写真もあるんだけど」

 

「それは私の趣味で着せた奴よ。可愛いでしょ?」

 

 超絶プリチーな兄貴の写真、彼女達は楽しそうに笑う。

 

「着せた、ねぇ。ふーん。でも、先輩って今も美人だけど、昔は美少女って感じじゃない。男の子とは思えない可愛さね」

 

「童顔ってわけじゃないの。それなのに、とても綺麗な顔をしている。私の自慢の兄よ」

 

「……え、桜華って先輩の事、ちゃんとお兄さんって思っているんだ」

 

 とても意外そうに言われたので私は苦笑いをするしかなかった。

 

「それはどういう意味?」

 

「ほら、合コンの時、すごく笑っていたでしょう。お兄さんとしての先輩の事、嫌いなのかって思っていたの」

 

「別に。あれは本当に意外だったから。女の子が苦手なくせにそんな場に来ることが信じられなくて爆笑しただけよ」

 

 合コンなんてくる勇気もないはずの彼。

 あの場所で見たのはホントに驚かされたわ。

 それと同時に危機感も覚えたの。

 兄貴は私以外の女の子を好きになる可能性。

 だから、私は……。

 

「そう。兄妹仲はいいのね。いいお兄さんだもの、嫌いになるわけはないか」

 

 和音は兄貴のことが気になっている。

 あの合コン以来、私の知らないところでもよく会ってる事も知っている。

 

「七森先輩って本当に優しいわ。桜華が羨ましいわ。私もあんなお兄さんが欲しかった。うちの兄はスポーツバカだし」

 

「男として頼りないわよ。優しいところだけが取り柄の兄もどうかと思うけど……?」

 

「そこがいいのに。それに美人だからいいじゃない」

 

「男の子にも美人って表現使う自体、おかしいでしょ」

 

 私は友人たちの前ではブラコンな姿を見せない。

 学校でのイメージを守るため、仕方なく兄貴を否定することも多々あるの。

 

「あっ、こっちの写真の先輩もいいな。桜華、この写真、携帯に送ってよ」

 

「私も欲しいな。この写真とその次の写真」

 

「分かったわ。すぐに送ってあげる」

 

 皆にねだられて、携帯に写真を転送することにした。

 それがまずかったんだよね、すぐに他の子たちにも出回ってしまう。

 兄貴を人気者にしたくなかった私の思惑は自らの行為で潰れてしまった。

 気がつけば、昼休憩までには学校中にその写真が広まってしまっていた。

 ……別に私としては面白くないだけなんだけど、この話を知ったら兄貴が泣くかも。

 あー、悪気はなかったんだけどなぁ、止める間もなく広まっちゃったし。

 今頃、兄貴、泣いちゃってるかもねぇ……。

 というわけで、しばらくの間、「美人過ぎる兄」として兄貴は学校の女子の間で有名&人気になってしまうんだ。

 

「……まぁ、いいか。それにしても、情報化社会って怖いわぁ。私も気をつけないと」

 

 家に帰ったらたまには優しく慰めてあげることにしよう。

 


  

 

 ちなみに、その頃、春日は……。

 

「おい、春日。実はお前って超美少女だったんだな」

 

「何の話だ?城之崎?悪いもので食べて幻覚でも見ている?」

 

 城之崎に話しかけられた春日。

 どうせまたくだらないことでも見つけたのか、と彼は呆れた顔をする。

 

「城之崎、今度は何?僕が美少女って意味不明だし」

 

「隠すな、隠すな。今、学校中に回っているこの写真だよ。すごい美少女ぶりだな」

 

 彼はにやけながら春日に携帯電話の画面を見せる。

 そこには春日の幼き姿が写っていた。

 彼の中で封印しておきたい姿の数々……。

 

「んなっ!?な、何で、その写真がっ!?」

 

「いやぁ、女顔だとは思っていたが、昔はホントに美少女だったんだな?まさか、実は春日は女の子だったというオチじゃないよな?……女装ならぬ男装趣味?」

 

「そんなわけない!それをどこで手にいれた?ていうか、学校中に回ってるって?」

 

「あぁ。発信源は後輩だが、今じゃ学校中の生徒が知ってるぞ。ほら、教室内を見てみろよ。皆、お前の方を見てるだろ。ものすごい勢いで広まってるぞ、お前の美少女伝説……。ん、春日?おーい、春日?大丈夫か?」

 

 クラスメイトからの好奇の視線に春日は絶望する。

 

「まさか、桜華が……なんていうことを、ぐすんっ」

 

 予想通り、愕然と肩を落としてうなだれている春日の姿を桜華はまだ知らない。

 

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