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絶対宣言~妹は生意気な方が可愛い~  作者: 南条仁
絶対宣言3~我が侭お嬢様のお気に入り~
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第61章:美少女転校生の誘惑?

【SIDE:七森春日】


「私、ずっと我慢していたの……。ねぇ、いいよね?」

 

 そんな意味深な言葉と共に彼女は僕に近づく芙蓉さん。

 

「あ、えっと、芙蓉さん?あ、えっと、あぅ……」

 

「咲耶と呼んでくれない?芙蓉はイメージが強すぎるから」

 

「咲耶さん。ちょっと、顔が近いんだけど」

 

 僕がそう言うと彼女は今気づいたように、距離を離した。

 

「あっ。ごめんなさい。別に変な事をするつもりはなくて。私ね、人に化粧をさせるのが好きなの。メイク、分かる?」

 

「……はい?」

 

 思わず間抜けな声が出てしまう。

 人の顔を見て、化粧がしたいってどういうこと?

 

「私の家がそう言う関係っていうのもあるんだけど、小さな頃からメイクが大好きなの。それで、私は美人な子を見るとついメイクしたくなるの。ダメかな?」

 

 メイクとか、美人な子って、どこから突っ込めばいいのか。

 とりあえず、僕は気になる事を告げる。

 

「美人って僕は男なんだけど?」

 

「あははっ、男だって美人な子は美人でしょ。貴方は美人なの。それも私がお気に入りになったくらいにね。ねぇ、させてくれない?」

 

「させるも何も、すぐに始業式も始まるし……あと5分もないよ?」

 

 そうなのだ、これから体育館の方で始業式がある。

 5分後には移動しなければならないっていうのに。

 だけど、彼女は自信満々に言う。

 

「大丈夫。5分あれば、簡単なメイクならできるわ。心配しないで、下手なメイクをする気はないから。可愛くして見せるわよ」

 

「そういう問題ではなくて……あ、あの、咲耶さん?」

 

「我慢できないって言ったでしょ。貴方が悪いのよ、可愛すぎるんだもの」

 

 彼女は僕の意見など虫と言った感じでメイクを開始。

 クラスメイトの見つめる中で僕はなすすべなくジッとしているしかない。

 化粧は桜華に「春ちゃんモード」にさせる時ぐらいしかしたことない。

 当然だけど、僕自身には女装趣味なんてまったくない。

 ……それなのに、断固として断りきれない自分の弱さに嘆く。

 女の子に詰め寄られると僕ははっきり断れない性格なのだ。

 

「……はい、完成。ちょうど、時間内にできたでしょ」

 

 何をされていたのかも分からないうちにメイク終了。

 僕はどうなってしまったのか。

 

 ざわ…ざわ…。

 

 あっ、この効果音ってこう言うときに流れるんだ。

 僕の顔を見てクラスメイトのざわめく光景に僕は唖然とすることに。

 

「……春日くんがついに女の子になっちゃった。どーしよ、反則すぎる」

 

「元々女顔だけどアレは冗談を超えてるって。可愛すぎるわ」

 

「ていうか、私たち、女として完全敗北ってどうよ。悔しいけど、負けを認めるしかない」

 

 女子の反応は大体、そんな感じです。

 ものすごく嫌な予感がするが咲耶さんは満足そうだ。

 

「やっぱり、素材がいいって言うのは違うわ。お化粧のノリも段違い。そのお肌、最高っ。想像以上の素材で私的にはもっと時間をかけて本格的なメイクをしたい」

 

 彼女に手渡された手鏡に写る僕。

 そこに映るのは……自分でも驚く女の子の姿の僕だった。

 おーい、これはホントに僕ですか?

 思わず自問自答、遠い目をしたくなるのを押さえつつ、僕は皆と視線を合わす。

 

「可愛いぞ、七森。お前、性別間違えて生まれたんだよ」

 

「春日、本気で女の子になっちゃえば?似合うって、お前なら許す。何を、とは聞くなよ?」

 

 などと言う、からかいが飛び交うクラス。

 僕はと言えば、完全に沈みきった心になっていた。

 おぉ、僕の男としてわずかな尊厳が踏みにじられております。

 

「……このまま女装モデルにならない?」

 

「なりません。僕は咲耶さんのメイクを受けるのはこれが最後です」

 

「えぇー!?どうして、もっとしたいのに……ていうか、何で敬語?」

 

 いきなり僕の口調が変わったので彼女としては疑問なんだろう。

 僕は基本的に自分が年上は敬語だが、同世代でも怖いと思った相手にも敬語を使う。

 クラスメイトにも何人かの女子には敬語口調なのだ。

 彼女は僕をどうにかしそうで怖いから。

 

「そろそろ、始業式が始まるみたいだし、移動しましょう。案内してよ、春日」

 

「……春日?」

 

「あら、ダメ?春日って名前を呼び捨てちゃ。私は基本的に好きな相手は呼び捨てるの」

 

 つまり、桜華の事は呼び捨てていたから彼女のお気に入りでもあるのだろうか。

 その辺を聞いてみると、案外好印象な意見が返ってくる。

 

「当然じゃない。桜華はオーディションをした時、私も一緒にいて同世代に圧倒的な人気を誇る彼女ならうちの看板を任せられると思い、モデルとして採用したの。嫌い相手なら門前払いでしょ?私は桜華の事も気に入ってるわ」

 

 彼女は僕に優しく微笑みかけて言う。

 性格は優しく穏やかな様子……。

 でも、趣味がメイクだというのは……うーむ、惜しい。

 僕はまだ警戒を解けずに敬語口調を続けることに。

 

「体育館に移動します。ついてきてください、咲耶さん」

 

「……敬語口調が気になるなぁ。それって、春日的な“壁”なの?だとしたら寂しい」

 

「さぁ、どうでしょう?」

 

 僕はその言葉に笑みで返す。

 誤魔化したつもりだったのだが、彼女からは別の反応が帰ってくる。

 

「うっ、今の笑みはとても可愛すぎる……。あんまり、私をドキドキさせないで」

 

「僕、顔を洗ってきてもいいですか?」

 

「残念。そんな時間はないの。ほら、春日~っ。拗ねないで?本当に可愛く出来たと自分でも自信があるの。誰も責める人間なんていないわよ」

 

 彼女に連れられるように体育館を案内する。

 僕が連れて行く人間なのに、連れられるようにという矛盾は言葉通りの意味で。

 

「……そうだ、春日。教えてほしいことがあるんだけどいい?」

 

 体育館までの道の途中で彼女は僕に尋ねてくる。

 

「教えてほしい?何ですか……?」

 

「春日は部活って何をしているの?」

 

「部活?あぁ、部活は園芸部です。一応、今期から部長になりました」

 

 夏休みが明けてから僕が正式な部長に選ばれる。

 と言うのは夏休み前から決まっているので、明日の集合の時に正式な話をする。

 3年生は引退するので、後は僕らが引き継ぐんだ。

 

「そうなんだ。春日はお花が好きなの?私と一緒、と言っても私は育てる方じゃなくて、生け花をする方なんだけどね」

 

「へぇ、咲耶さんって生け花をするんですか?」

 

「メイク以外にも華道が趣味なのよ。季節の花を生けるのが好きなんだ」

 

 それは意外と言ってはアレだが、白鳥女子高の出身者ならあり得る話だ。

 彼女もお嬢様なのでイメージとしても悪くない。

 ただ、髪の色が金髪なのでイメージとして思い浮かばなかったけど。

 そういう偏見はよくないね、改めるとしよう。

 

「この学園にも華道部はありますよ。人数が少ないですけど、文科系の部活として」

 

「そうなんだ?だとしたら、そこに入ろうかなぁ……。春日も興味ある?」

 

「いえ、そこまでは。ただ、華道部の生ける花は園芸部が用意することもあるので」

 

 年間を通して季節の花を育てるうちの部活には華道部を含めて依頼がよく来る。

 華道部からの注文品も育てているのだ。

 体育館にたどり着いた僕らは注目の的だ。

 初めは金髪美人の転校生、咲耶さんに目を向けて驚く声が大多数。

 しかし、隣にいる僕の方を見て大半の生徒があっけにとられる。

 

 ざわ…ざわ…。

 

 ……だから、それはもういいっちゅうねん(なぜか関西弁)。

 

「新学期デビューって言うのはよく聞くけど、まさか本当に女の子に……?」

 

「やだぁ、花の王子様がお姫様になっちゃった」

 

「でも、マジで可愛いよね。惚れるわ。すごいなぁ……」

 

「乙女になっても、私は春日先輩のファンだからね!」

 

 おーい、誰も乙女化はしてません。

 僕の声は届かず、周りの人間からからかわれてしまった。

 ぐすっ、人間不信になりそうだ。

 僕は泣きたい気持ちを我慢しているのに、なぜか咲耶さんは……。

 

「さすが春日。私の見る目は間違いではなかったわねぇ」

 

 と、なぜか誇らしげにさえ見えた。

 その後、信吾お兄ちゃんからも、「従弟が従妹に?」とマジで別の意味で心配をされ、桜華からは「お兄ちゃん、どうしたの!?」と僕を心配するメールが来ていた。

 どうしたのって、僕が一番、この状況がどうしているのか知りたい。

 ただ、すれ違った白雪さんだけは反応が違った。

 僕の事は「可愛いじゃない」とだけ言うと、隣の咲耶さんの方が気になっていた様子だ。

 とにもかくにも、本当に疲れる始業式になった。

 

 

 

 

 放課後、本日は始業式のみで終わりだ。

 僕は終わった後の校舎内を案内する。

 

「ここが特別校舎、音楽室や美術室なんかはこの校舎にあります。以上ですけど、何か質問とかありますか?他にどこか知りたい場所でも?あれば連れて行きますよ」

 

「うぅ、春日が素っ気ないわ。出会った頃はもっと親密だったのに」

 

 ……親密っていうか、ただ敬語口調ではなかったけどね。

 僕の男のプライドが傷ついたことについて、彼女には警戒中なのです。

 

「それじゃ、最後は屋上に連れて行って……?」

 

「屋上?分かりました、ついてきてください」

 

 僕は屋上へと彼女を連れて行く最中。

 こちらに歩いてくる女の子の姿に気づく。

 

「あっ、ようやく発見!もうっ、携帯に電話しても繋がらないし探したじゃない」

 

 明るい声の義妹、桜華がこちらに接近中。

 僕はドキッと心臓が高鳴る、何てタイミングでの登場だ。

 

「始業式の事も聞きたくて……って、隣の女の子は誰?」

 

 すぐに僕の隣を歩いていた咲耶さんに気づくと、表情を強張らせる。

 あぅあぅ、マズイ場面を桜華に目撃されたような……。

 僕が慌てて何か言おうとすると、それより先に咲耶さんは言い放つ。

 

「別に、貴方には関係ないでしょ?私の春日に何か用事でも?こちらはデート中なの」

 

「私の春日……な、何で!?で、でぇと!?どういう意味なのよ、こらぁ!!」

 

 敵意むき出しの桜華、からかうつもりなのか咲耶さんは余裕の微笑。

 このふたりの出会い、まさに恐れていた嵐発生の瞬間だった。

 

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