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絶対宣言~妹は生意気な方が可愛い~  作者: 南条仁
絶対宣言2~白雪姫と悪い魔女~
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第55章:お試し恋愛実施中

【SIDE:七森桜華】


 多少、強引ながらも私は春ちゃんとのお試し交際を開始。

 ふふふ、ここから先、私は必ず本命になってやるわよ。

 私はこれまでの経験から彼の問題点をいくつか見つけた。

 まず、春ちゃんは恋愛をしたことがないゆえに「恋愛ってなぁに?」と言う感じだ。

 だから、私の想いをいくらぶつけても向き合ってくれない。

 他にもいろいろと細かく分析を重ねて私は対応を練っていた。

 

「……夏休み残り1週間。新学期までに何とか彼を落とす」

 

 私との関係を確実なものにするためには時間をかけていられない。

 というわけで、デートの予定を立てながら私は春ちゃんの部屋を訪れることに。

 ずいぶん前の事件以来、私は彼の部屋に夜間立ち入り禁止にされているけど、こっそりとアタックする。

 彼は部屋で何かの雑誌を見ている様子。

 

「こんばんわ、何をしているの?」

 

「桜華?あぁ、雑誌を読んでたんだ。ガーデニング系の雑誌をね」

 

 そう言って、彼は雑誌を片付ける。

 怪しいわ、もしや、変な本を読んでいたんじゃ。

 私は彼の部屋に入るやすぐにその本を取ろうとする。

 

「ダメ。その本には触らないで」

 

 だけど、その前に春ちゃんからストップがかかる。

 

「何よ、何で?怪しいじゃない。別にいいよ、お兄ちゃんがどんな性癖でも気にしないって前にも言ったでしょ?」

 

「そんな本じゃないから。心配せずとも僕に変態趣味はありません」

 

 断固として拒絶する彼の態度に私は不快感を示す。

 

「ええいっ。私に逆らうなんて10年早いわっ。私が出せと言ったら出せばいいの」

 

「……いやだってば。こんな、うわぁ!?」

 

 私達はもつれ合うようにベッドへダイブ。

 数秒触れ合うだけで春ちゃんは逃げるようにその本を抱えて部屋から逃げて行く。

 

「何で逃げるわけ……?」

 

 私はポツンっとするだけで何も身動きできない。

 ベッドに寝転がりながら他の本を探す。

 何かないかな~っ。

 おおっ、変な服を着たおねーちゃんの本が……何だ、ただのモデル雑誌か。

 私の趣味とは違う、多分、宗岡先輩経由で渡された本だろう。

 春ちゃんは私の知らないところで彼女に会って話とかしてるみたいだし。

 一応、私が春ちゃんの恋人(仮)になったので彼女にはお引き取り願う。

 チャララ~♪

 いきなり携帯電話の着信音が鳴ってびびる。

 脅かさないでよね、って相手が『白雪さん』と書かれている事に気づく。

 

「むむっ、さっそく浮気!?」

 

 私は春ちゃんがいない事をいいことに携帯を勝手に見る。

 どうやらメールの様子、内容は……?

 

『件名:パンフレットの件』

 

 パンフレットって何だろ?

 私はメールを読み進めて、さらに謎につきあたる。

 

『今日、会った時に渡したパンフレットは役に立ちそう?春日クンが“夢”を追い求めてる姿ってカッコいいと思うよ(はぁと)』

 

 はぁと、だと!?

 いや、そこに突っ込むんじゃなくて、夢って何なの?

 私の知らない夢って何なのかものすごく気になる。

 

「何のパンフレット?映画?しかも、夢を追い求めるって……?」

 

 私はそのメールの文面を眺めながら思案する。

 ワケが分からない、夢って何なの?

 春ちゃんにそんなものがあるなんて聞いてないよ。

 いつもぽや~っとしてる彼が未来の事を考えている。

 その事が私にはいまいち理解できずにいた。

 

「何で、私の知らない夢の話を宗岡先輩としてるのよ」

 

 そこが一番、ムカつくんだって。

 春ちゃんの事で私が知らないことはあっちゃいけないの。

 それなのに……私には夢の話なんてしてくれた事ない。

 彼がなりたい職業の話だろうか?

 気になった私はメールを送り返してみる。

 

『僕にその夢を叶えられるでしょうか』

 

 春ちゃん風にメールの文章を返す。

 しばらくすると彼女から返答がある。

 

『当然じゃない。春日クンならきっとその夢を叶えられるわ。あと、ちなみにその夢の話だけど、まだ桜華には内緒よね?私と春日クンだけの秘密だね』

 

 何が秘密だ、何が内緒だ。

 私には何もかもお見通しだっての、内容はよく分からないけど。

 私はイライラしながら、手近にあった枕に八つ当たりする。

 ボコボコと殴ったあと、もう一度、文章を送り返す。

 その夢って誤魔化されて実際に何の話か分からないし。

 

『僕の夢は“宗岡先輩”から見てどうですか?』

 

 この文章なら夢についても、何か語ってくれるに違いない。

 そう考えた私は先輩にメールをしたんだ。

 けれど、その考えが私は甘い事に後で気づかされる。

 

『……さぁて、どうかな?お兄ちゃんの携帯を黙っていじる悪い妹には教えてあげませーん。桜華、春日クンのフリをしてもバレバレだっての。春日クンは私の事を“宗岡先輩”なんて呼ばないの。白雪さんっていうのよ、あははっ』

 

 メールで笑われた私は自分のミスに気づいた。

 しまった、名前で間違えたんだ……。

 すると、今度はメールではなく電話がかかってきた。

 私はため息をつきながらその電話にでる。

 

「意地が悪いんですね、宗岡先輩。知ってましたけど」

 

『人のメールを勝手に見ちゃダメでしょうが。春日クンはどこ?』

 

「パンフレット持って逃亡しました。何のパンフレットだったんですか?」

 

『新作映画のパンフレットでしょ』

 

 おい、嘘つくなよ、違うんだって自分で言ってた。

 私はさらに言葉をかけて問い詰める。

 

「夢って何ですか。どうして、先輩が春ちゃんの夢を知ってるんです」

 

『……夢を人に語る時ってどういう状況だと思う?それだけ私たちが親しいってことでしょう。好きな人の夢も知らない桜華ってどうなの?ダメダメだねー』

 

「うっ、春ちゃんの夢なんて知らなくても私達は恋人なんですっ!」

 

 そう、私と彼の関係はただの兄妹じゃないもの。

 先日の夜から恋人(仮)になったのよ。

 

『恋人……?あれでしょ、勝手に恋人とか名乗ってるんでしょ?私も春日クンから相談されたもの。どうすれば、桜華の暴走を止められるのかって。はぁ、桜華も大概にしておきなさいよ。どれだけ春日クンを苦しめれば気がすむの。いやだわぁ、そういう愛情の屈折した妹って』

 

「苦しめてませんっ。失礼な、彼も認めてくれたもんっ」

 

『……好きだって言われたの?』

 

 致命的な一言に私は黙りこむ。

 うぅ、やっぱりこの人は苦手、敵に回ると嫌なタイプだ。

 

「そ、それより、彼の夢って?」

 

『さぁね。私から教える事はありえない。これは私と春日クンだけの秘密だもの。自称恋人なら、夢くらい知っておきなさい』

 

 彼女は私を笑うと電話を切る。

 私は発散できない怒りを抱えて、枕に再度八つ当たりをする。

 私はメールの痕跡を消したあと、元の場所に携帯を戻す。

 そして、リビングに逃亡した春ちゃんを見つけて自室に引きずり込んだ。

 既にパンフレットはどこかに隠したのか所持していない。

 

「吐け、あのパンフレットは何?ネタはあがってるのよ」

 

「し、知らない、全く持って知りません」

 

「へぇ、この私に逆らうなんてお兄ちゃんらしくない。素直に吐けば、許してあげる。けどね、私は隠し事されるのが大嫌いなのよ。しかも、それが私以外の人間が知っていて隠される事柄ならなおさらね?」

 

 春ちゃんはそこでようやく、宗岡先輩との繋がりに気づいたようだ。

 気まずそうな顔をしてこちらの顔色をうかがう。

 

「えっと、白雪さんから何か話でも?」

 

「えぇ。夢があるんだってね、お兄ちゃんには?その事で思いっきり、優越感に浸られました。何よ、あの態度、ムカつくわ。それで、私はどうして教えてくれないの?」

 

 襟首をつかむ勢いで迫ると彼は「だって……」と言葉を濁す。

 

「桜華に夢の話なんてしても興味ないだろ?」

 

「興味なくても知りたいの。教えてよ?」

 

「嫌だ、桜華に話したら笑うから。僕は夢をバカにされたくない。だから、桜華には言わない。気にしなくてもいいから、この話は終わりにしよう」

 

 そう言って話を終えようとする彼を私は止める。

 

「何で私が夢をバカにするって決めつけているの?私だって自分のモデルになりたい夢を叶えてるんだから、夢に関しては笑ったりしないよ?女装モデルになりたいっていうなら話は別だけど違うんでしょ?」

 

「……それだけは違います」

 

 半ば呆れつつ彼は言うと、そのまま黙り込んでしまった。

 彼の態度に私は言葉を荒げて威嚇する。

 

「何よ、宗岡先輩に話せて私に言えない理由を言いなさい。私に隠し事をするなんて、よっぽど怪しい内容なの?どうなのよ、お兄ちゃんっ!」

 

 せっかくの恋人候補に慣れても喧嘩ばかりの私たち。

 結局、彼は最後まで私に夢を教えてくれなくて部屋に戻ってしまう。

 私はひとり、自室でぬいぐるみを抱きしめながら天井を見上げる。

 

「――春ちゃんのバカ」

 

 夢くらい教えてくれてもいいじゃな、ぐすっ。

 ちょっぴり切なくなり、拗ねて夜を過ごすことに。

 春ちゃんが私に隠し事なんて……気になる事もあるけど何だか寂しいよ。

 

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