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絶対宣言~妹は生意気な方が可愛い~  作者: 南条仁
絶対宣言2~白雪姫と悪い魔女~
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第46章:花火の華《前編》

【SIDE:七森桜華】


 プールデートを満喫した私達は家に帰ってそれぞれ浴衣に衣装替え。

 今年新調した新しい浴衣に着替えて気分が高まる。

 

「……あのー、何で僕はこれを着なきゃいけないんでしょうか」

 

「なぜ?理由は簡単よ。お兄ちゃんはプールで散々、私にセクハラしたでしょ!」

 

「してないって。誤解だ、お腹をぷにっとしただけだ」

 

「あれだけ私の胸を揉みしだいておいてそういう発言するんだ……いい度胸ね?」

 

 私がグイッと詰め寄ると彼は冷や汗を浮かべた顔で言う。

 

「え?その前に……桜華って揉むほどサイズないよね」

 

「グサッ。とりあえず、お兄ちゃんは私刑決定!」

 

「ちょ、待ってくれ、今のは失言でした。ごめんなさい」

 

 私だって揉むだけ十分な大きさの胸があればファッション系雑誌以外の仕事も宗岡先輩みたいにこなすことができる。

 胸が何よ、たかが脂肪の塊じゃない。

 私だってまだ16歳、これから成長していくのよ。

 言うならば、まだ未完成、未成熟の果実なわけ、OK?

 どうして男の子ってそこばかり目が行くのかしら。

 目線を向ければ女の子の胸、話をすれば女の子の胸、最低だわ。

 大体、大きければ正義なんて問題じゃないでしょ?

 世の中において大事なのは何よりもバランスよ。

 大きすぎたら気持ち悪いじゃない、型崩れで将来の危険が容易に想像できるわ。

 私だって小さいほうだけど、形には自信があるの。

 そりゃ、水着を着た時にこっそり上げ底パッドを使ったのは私よ!

 えぇ、自信ないからサイズをこっそりワンランク誤魔化しましたよ、ごめんなさい。

 どうもすみませんでした、そう謝ればいいわけ?

 だって、仕方ないじゃない。

 “乙女のプライド”と“真実”を天秤にかけたら当然、プライドを守りたいと思うのは普通のことだもの。

 何なら、一度、生で見せてあげましょうか?

 そうしたら、春ちゃんだって私の良さに気づくのよ、バカっ。

 

「……あの、桜華?素直に傷つけたらごめんなさい。そんな半泣きの顔で小声で拗ねられると非常に困ります」

 

「わ、分かればいいのよ。ぐすっ」

 

 私は心の中で号泣中、泣きかける瞳をハンカチでぬぐう。

 乙女のプライドを土足で踏みつけられたこの屈辱は忘れない。

 春ちゃんにはそれ相当の罰が必要なのよ。

 私は彼をキッと睨みつけて言い放つ。

 

「というわけでお兄ちゃんには罰ゲームをしてもらうわ。それ、私が去年まで着てた浴衣なの。花柄がとても可愛いけど、私の趣味じゃなくなったからいらないもの。その浴衣を春ちゃんにプレゼントするわ。……さっさと着なさい」

 

「ちょ、ちょっ、ちょっと待って!それは無理、激しく無理、お願いだからマジで勘弁してください。こんなの着れるわけないじゃないか。そもそも、女物だろ?」

 

「……着るのよ、これは命令。発言において、否定する事は許さない。」

 

 私は無理やり彼の服を脱がせてその浴衣を着せた。

 昔よりもほんの少しだけ筋肉はついたようだけど、全然、体格が似た私の浴衣が着れる。

 

「しくしく……僕は女装趣味の変態じゃないんです」

 

「心配しなくても可愛いからね?」

 

「そんな心配はしてないよ、桜華のバカ!」

 

「……ば・か?この私を?へぇ、お兄ちゃんの分際でこの私をバカ呼ばわり。ふーん。勇気と無謀をはきちがえるにも程があるわ。そんなに私の熱烈な“愛情表現”を受けたいの?」

 

 私はお兄ちゃんの頬に指先をそっと触れさせる。

 それだけで彼はビクッと反応を示し、身動きできない。

 子供の頃からたっぷりと春ちゃんには身体で覚えさせてきたものがある。

 

「ごめんなさいは?」

 

「ご、ごめんなさい」

 

「素直に謝れるいい子は私は好きよ」

 

 春ちゃんの頭を撫でてあげる、ものすごく嫌な顔をしていた。

 

「こんなの嫌だよ、うぅ……」

 

 すっかりとしょげてしまった春ちゃん。

 女物の浴衣なので可愛いなぁ。

 

「さぁて、次はお化粧よね?ふふっ、私もメイク術が向上しているから可愛く仕上げてあげるわよ。任せてちょうだい」

 

「……メイクなんてしなくていいよ」

 

「文句は言わせませんよ?いいから黙っておいて」

 

 私は化粧用品を使って春ちゃんにメイク開始。

 うわぉ、やっぱり春ちゃんって肌がすべすべで女の子みたいだ。

 私よりも可愛いく思えてしまう……羨ましいな、もうっ。

 

「はい、お化粧終了!最後はウィッグで仕上げてあげる」

 

「そのつけ毛嫌いなんだけど……いたっ、髪をひっぱらないで」

 

 春ちゃんの愚痴など無視、今回は罰ゲームなのよ。

 おおっ……可愛いよ、春ちゃん。

 

「……どう?めっちゃくちゃ可愛いでしょう?」

 

 全てのセッティングを終えて私は鏡に春ちゃんを連れて見せた。

 鏡に映る春ちゃんはどこからみても美少女そのもの。

 誰が見ても、黒髪浴衣の美少女がここにいる。

 ……予想以上に可愛くなりすぎたかも。

 女顔ってホントに便利よねぇ、男にでも女にもなれるんだから。

 

「お兄ちゃんはね、きっと生まれてくる性別を間違えたのよ」

 

「や、やめてくれ。そんな一部の変な思考の持ち主じゃないし。僕は正常な精神の持ち主です」

 

「こらっ。偏見の目はいけないぞ?お兄ちゃん」

 

 そーいう趣味や思考の人を偏見しちゃダメだと私は思うの。

 誰だって望んだ自分になりたくて生きているんだもんっ。

 

「桜華って実は姉が欲しかったのか?昔から僕を女装させたりして、楽しんで……その辺のところはどうなの?」

 

「私?あははっ、違うって。お兄ちゃんが欲しかったの。だって、自分より可愛い同性って敵でしょう?私、お姉ちゃんがそれだけ可愛かったら“許せない”よ。当たり前でしょ?」

 

 その言葉により一層、春ちゃんの顔色が強張る。

 自分より可愛い同性を敵対するのって当然じゃない?

 

「お兄ちゃんが男の子だから“可愛い”って私は言ってあげるのよ?」

 

「お、女だったら敵扱いですか?」

 

「もちろん。自分より綺麗な女の子は大嫌い。だから、私はお兄ちゃんが大好きなの」

 

 思わず「男でよかった」と呟く春ちゃん……ちょっと言い過ぎちゃったかな?

 

 

 

 

 良い時間になったので花火を見に行くことにした。

 仲良く手を繋いで二人で歩くとどこからどう見ても姉妹にしか見えない。

 

「お兄ちゃん……浴衣、きつくない?大丈夫?」

 

「何とか……。桜華の浴衣って大人っぽくなったね」

 

「そりゃ、そうでしょう。そういうのを選んでいるんだもの」

 

 私がわざわざ選んだ浴衣の柄は自分を年上に見せたくて、そう言う柄を選んでる。

 

「年上っぽい服を着たからって桜華は年上っぽく見られないと思うけど」

 

「ひどいよねぇ、春ちゃん。私の魅力に気づいてくれないなんて?」

 

「い、痛いです。あの、桜華さん?思いっきり足を踏んでおりますよ」

 

「うん、知ってる。だって、わざとだからね、わざと……ふふっ」

 

 せっかく選んだのに否定されるのはすごく悔しい。

 春ちゃんに認めてもらえないのって意味ないじゃん。

 

「桜華には可愛い服がよく似合うと思うけどな。だって、本当に可愛いんだから。黒髪に戻してから余計にそう思えるようになったよ。桜華は落ち着いた印象の方が似合うね」

 

 ……褒められるのは素直に嬉しい、えへへっ。

 お祭りの会場は賑わっていて、人が沢山いる。

 

「こういうお祭りの雰囲気って大好き」

 

「僕は人ごみが苦手かな。……何で睨みつけるの?」

 

「気分を損なう事を言うからよ。はい、行きますよ」

 

 春ちゃんを連れて歩いていると、目の前に二人の姿がある。

 

「可愛いお嬢ちゃんじゃん。俺達と一緒にこない?」

 

 ちっ、きやがったな、ナンパ野郎め。

 定番のナンパ野郎に私は敵意むき出しで対抗しようとする。

 

「こっちの子の方が可愛いなぁ。俺も好みかも」

 

 そう言って私よりも春ちゃんに声をかける。

 ……あれ、おーい、私じゃないの?

 男たちが口説き始めたのは春ちゃんで、私は無視状態。

 これでも現役人気ファッションモデルなんですけど、私に興味はないの、ねぇ?

 

「へぇ、高2なんだ?どこの学校?」

 

 って、春ちゃん、こんなの相手にしてるんじゃない。

 普通にナンパをされて困ってる弱々しい女の子に見える。

 

「や、やめてください……」

 

 ちょっと涙目の春ちゃん、可愛い……かなり胸キュンっ。

 これでホントに“ついてるもの”が“ついている”のかしら?

 

「くぉらっ、私の春ちゃんに手を出すんじゃないっ!」

 

 ハッと我に返った私は怒りながら男たちを追い払う。

 その場から逃げだすように人ごみから離れる。

 

「助かったよ、桜華。まさか男に詰め寄られるとは……」

 

「お兄ちゃんの変態。私になびかないと思ったら男が好きだったなんて」

 

「ち、違うからっ!それだけは違うからね?」

 

「……ふーん。そうなんだ?へぇ?」

 

 私はずれた春ちゃんの浴衣を直してあげながら言う。

 

「信じてください。ホントなんだから……僕はノーマルです」

 

「いいよ、信じてあげても。私にキスしてくれたらね?」

 

「は、はい?」

 

 私が詰め寄ると彼は非常に戸惑う顔をして言うの。

 

「だって、春ちゃんが男好きじゃないって言うなら証拠見せてよ」

 

「だからって桜華にキスするのは違うって……って、どこに行くんだよ?」

 

「ん?春ちゃんがそっち系だって皆に話そうかなって」

 

 私が携帯電話をちらつかせると彼は仕方なくこちらの誘いに乗る。

 

「頬で勘弁してください」

 

「それでもいいよ、はい、どうぞ?」

 

 春ちゃんは渋々、こちらに唇をゆっくりと近づけてくる。

 私はチャンスとばかりに唇を尖らせてそのまま唇に触れさせた。

 ほんのわずかな瞬間だけ、触れる唇と唇。

 

「うーん、満足。でも、何だか女の子同士でキスしているみたいで恥ずかしかった」

 

「な、何で?頬にって言ったじゃないか」

 

「……私が満足したからそれでいいでしょ?」

 

 私は満面の笑みで答えると春ちゃんはただ顔を赤らめるだけ。

 夜空を見上げると、まもなく花火が始まろうとしていた――。

 

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