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絶対宣言~妹は生意気な方が可愛い~  作者: 南条仁
絶対宣言2~白雪姫と悪い魔女~
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第43章:想いを繋ぐ花《前編》

【SIDE:七森桜華】


 私に残された選択肢はきっとそう多くない。

 これまでいろいろと試しても春ちゃんは私に振り向いてくれなかった。

 けれど、そんな私に最後の方法。

 それは単純なこと、相手好みの容姿や性格で接するということ。

 誰だって好みタイプはある、それにこちらから合わせるということだった。

 信吾さんから最初聞かされた時、私は思わず「嫌よ、そんなのっ!」と反対した。

 当然、私が春ちゃんに合わせるなんて嫌だもの。

 

「……それに前もそれしたじゃん。お兄ちゃんって呼んであげて甘えてみたら、妹扱いされただけだったのよ?二の舞をするつもりはないわ」

 

「あれはお前の中身が何も変わらずにいたからだろう?今度は外見から変われ」

 

「むぅっ、嫌ったら嫌っ!そんなの私が負けた気になるじゃない」

 

 私の小さなプライドがそれを許さない。

 ここまで結構、私的には折れるところまで折れているの。

 これ以上は私の矜持が許さないのっ!

 春ちゃんが私を好きになれば解決する話なんだもの。

 

「あのなぁ、お前はもうとっくに負けているんだということに気づけ。今日だって春日は宗岡とデートしていたぞ?いいか、お前は負けたんだ」

 

「ま、負けてないもんっ。結婚して赤ちゃんできるまで負けていないもん」

 

「お前はいつの時代のお姫様だよ。お世継ぎ争い中の殿様の正妻気取りか?」

 

「だって……本気で負けたとか思いたくないし」

 

 私はシュンッとうなだれてしまう。

 むくわれない想いにいい加減疲れてきたのも事実。

 私は彼の話を素直に聞くことにした。

 

「で、今度こそホントに春ちゃんからキスしてもらえるようになるんでしょうね?」

 

「……そういや、俺も仕事あるからそろそろ戻るか」

 

「待って!!何でそこでいきなり真面目な教師に戻る!?」

 

 私はスーツを引っ張ると彼は面倒くさそうな顔をして、

 

「俺はお前にタイプの女を彼女にはしたくねぇな」

 

「何でよ?こんなに美人で人気の高いモデルの私を恋人にしたくないなんて、男じゃないでしょ?普通の男なら誰でも落とす自信があるわ」

 

「今まで何人もの男と付き合っているような恋愛経験豊富な言い方しているわりには付き合った恋人はゼロだろうが。この恋愛素人め」

 

「うぐっ……最近、ちょっと気にしだしている事を……」

 

 恋愛経験=初恋=春ちゃん、だけにこの恋の成就しないと多分、他に恋はできない。

 信吾さんは私に男性側の本音を言ってくる。

 

「お前みたいに我が強いタイプの女は男にとっては好みが激しく分かれる。春日も苦手なタイプだな。よく見てれば分かるだろ。春日の周囲には結構女の子が多いが、基本は扱いがいい。衝突しているのはお前だけじゃないか」

 

「そう言われたらそうかもしれない」

 

「妹とか言う以前の問題に桜華は春日の好みのタイプじゃない。つまり、好きになるにはものすっごく性格がいいとか、そう言うんじゃないとダメだ。ていうわけで諦めなさい。他にいい恋をしてくれ」

 

 って、だから、話を勝手に終わらせないでよね。

 そこで終っちゃダメなんだ。

 この恋はハッピーエンドじゃないと完結しないのっ!

 私は「うぅ」と唸りながら信吾さんに屈辱を感じつつ頼み込む。

 

「……は、春ちゃんの好みのタイプを教えてください」

 

「何だ、ついに自分から折れる気になったか?」

 

「ホントにそれで春ちゃんが振り向いてくれるなら、もう何でもするわ。自分のプライドも大事だけど……春ちゃんが好きな気持ちの方が大きいもの」

 

 嫌われるよりはマシ、ある程度はこちらも我慢する事を覚える。

 それでダメなら拉致監禁でも何でもしてやるわ。

 

「春日の好みは清純系だ。清楚な顔立ち、穏やかさと気品溢れる振る舞い。お淑やかな大和撫子のような和風美人を好む。と、聞いたことがある……。桜華って春日の好みを普通に反対にしたような感じだよな」

 

「……今、ここで泣いてもいい?ぐすっ」

 

「だから、俺の前で泣くな。ホントに打たれ弱いやつだな。だから、お前もそういう大和撫子を目指して努力しろ。性格は……すぐには無理だろうから、まずは見た目から変えろよ。その茶髪を黒色に戻して、髪型も変なクルクルじゃなくて、ストレートにしておけ。いいか、清純系だぞ?言葉遣いにも気をつけろ」

 

 清純系って……何よ、思いっきり地味じゃない。

 今の私からは想像すらできない。

 

「この髪だって毎月、結構お金をかけて綺麗に維持いるんだけど……。しかも、下手に変えたらお仕事にも影響あるし。モデルをやめる事になったら、どうしてくれるのよ?責任とってくれるの?ん?」

 

 モデルにとっては髪ってかなり大事なの。

 髪型ひとつとっても人気を左右すると言っても過言じゃない。

 それを迂闊に変更しちゃうのはこちらとしてもモデル生命的なものがかかってる。

 

「……恋を取るのか、仕事を取るのか、どちらも取るのか。最後は自分で決めろ。恋愛は自己責任だ」

 

 彼はそれだけ言って私の頭をポンっと叩いて歩いき去っていく。

 恋愛は自己責任、うまくいかなくても責任は自分にあるものなんだ……。

 


  

 

 結局、私は自分の髪を黒色に戻すことにした。

 仕方ないじゃない、それで春ちゃんの気が引けるのなら私は自分を変えてやる。

 これで何も変わらなかったら、春ちゃんを事務所のモデルに推薦してやるわ。

 もちろん、女装モデルでね……ふふふっ……。

 

「……ふぅ、髪型も変えちゃったら何だか別人みたいね」

 

 鏡に映るのは知らない私がそこにいる。

 自分でも変わったと思えるような印象。

 中学の頃の髪色は確かに黒ではあったけども、髪型も変えていたのでやはり印象が違う。

 茶髪でツインテール姿の以前からはずいぶんとお淑やかさ度はUPしたはず。

 だけど、どうしても服装を変えることには抵抗がある。

 自分の好みと違う服を着ても楽しくないのはつまらない。

 

「とりあえず、ファーストインパクトだけ与えられたらいいか……」

 

 あまり細かい事は考えないことにする、お金は下ろしたばかりで余裕があったのですぐに新しい服をいくつか購入する。

 全ての準備を終えた私は家に帰るとまず、ママにびっくりされた。

 

「あら、おかえりなさい。……え?お、桜華よね?」

 

「何よ、自分の娘のことすら忘れちゃったの?」

 

「えっと、娘のはずなんだけど……その姿は何?あっ、そうか。モデルでそういう格好しているとか」

 

「違うわよ。ちょっとしたイメージチェンジを……」

 

 そこまで言って私は信吾さんに指摘された言葉づかいを気をつける。

 

「たまにはこういうお淑やかさも必要でしょう?私に似合います?」

 

 そっと上品さをイメージして言葉を使ってみる。

 

「やだ……桜華が変だわ?夏の暑さで頭がおかしくなったのかしら」

 

 それは実娘に対してあまりにもひどい言い方だと思うの。

 だけど、そこで反論するといつも通り、見た目変えても中身変わらずじゃダメだ。

 これは私にとっても試練なのよ、頑張らないといけないのっ。

 

「ひどいですよ、ママ。私だってお淑やかにもなりますわよ?」

 

「やめて!?それ以上、壊れないで。貴方を産んでから初めてみる姿だもの。子供の時からおてんば娘の我が侭やりたい放題だったのに、何を今さら?ホントにどうしたの?何か悩みとかあるのなら相談にのわよ。それってもしかして、青春の悩み?」

 

「ひどっ!?」

 

「私は桜華のお母さんだもの。何でも相談にのるから自分を追いつめないで」

 

 容赦のない言葉にへこむ私は「……違います」とだけ否定して自室に戻る。

 うぅ、何よ、あの感じ……ちょっとは私のお淑やなお嬢様っぽさを褒めなさいよ。

 これまでのイメージが強すぎてダメかもしれない。

 こっちは自分のモデル人生を賭けての戦いなの。

 ここで負けるわけにはいかない。

 絶対に負けられない戦いがここにあるのよ。

 

「私は春ちゃん好みになれたのかな?」

 

 自分的にはそんなに悪くはないと思うけど、やはり何だか自信がない。

 地味だわ、服装も髪型も……これじゃダメなんじゃないの?

 そんな時だった、私の部屋にノックをして春ちゃんが入ってきた。

 負けられない運命の戦いが始まる……。

 私は春ちゃんが唖然とした顔でこちらを見ている事に気づく。

 

「くすっ、お兄ちゃん。そんなに慌ててどうかしたのかしら?」

 

 一応、頑張って大和撫子的な上品さを持って話す。

 言葉使いが下手なのは仕方ないので、努力でカバー、お淑やかさって難しい。

 

「お兄ちゃん。びっくりしているね?私の本気、見せてあげるんだから」

 

 彼は私の方をジッと見て驚きを隠せない様子だ。

 そりゃ、今までと違うから驚くのは仕方ないと思うけど……。

 

「……お兄ちゃん?」

 

 春ちゃんの反応がないので私は不安になっていた。

 だが、彼の口から発せられたのは思いもよらない言葉だった。

 

「か、可愛い……」

 

 ……可愛いって、私のこと?

 彼はハッとすると、すぐに言葉を続ける。

 

「どうしたんだ、桜華。ずいぶんと可愛らしくなったじゃないか」

 

「可愛い……何だかそう言ってもらえると、嬉しいな」

 

「うん。前よりすごくいいと僕は思う。色だけじゃなくて髪型も変えたんだ?桜華ってストレートがよく似合うね。黒髪も新鮮な気がする。印象がガラリと変わったな。いいよ、すごくいい」

 

 つい3ヶ月前まで黒色だった時は何も言ってくれなかったくせに。

 見た目重視なそこの所はちょっとだけショックだったりする。

 

「いきなりどうしたんだ?モデルのお仕事の関係かな?」

 

「え?あ、うん……そうなの。ほら、浴衣のシーズンだからね?」

 

 ちなみにモデルの仕事は季節先取りが当たり前、浴衣系の写真は春には撮り終えている。

 浴衣だってこの時期に着ることは滅多にしないんだけど、その辺の事情を春ちゃんは知らないから誤魔化すことにした。

 

「そっかぁ。いいよ、今の桜華は清楚な感じがして可愛らしいから」

 

 春ちゃんにこれだけ容姿を自然に褒めてもらうのは何年ぶりかな?

 ものすごく嬉しい反面、逆にそれまでの自分のダメさが露呈した気がして辛い。

 男の子って好みの格好しただけでこんなにも反応が違うものなの?

 

「……ずっと、桜華にはそういう姿でいて欲しいな」

 

 これまで下がり続けていた春ちゃんの好感度が上昇中。

 見事に信吾さんの作戦は的中したのだけど……これでいいの?

 素直に喜ぶべきなのかちょいと迷うけど、今は春ちゃんに可愛いと言われた事を喜ぶことにした。

 ……だって、大好きな人に認められたんだもん。

 今年の夏はまだ始まったばかり。

 自然に仲直りもできたし、これから反撃開始よ!

 

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