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絶対宣言~妹は生意気な方が可愛い~  作者: 南条仁
絶対宣言~妹は生意気な方が可愛い~
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第15章:桜華の本気

【SIDE:七森桜華】


「……眠れないわ」

 

 隣でぐっすりと眠る兄貴。

 同じベッドに寝そべり熟睡している彼と違い私は眠れずにいた。

 理由は簡単だ、眠れないほどの悩みを抱えているから。

 

「ホントに今日は散々な日ね。あ、もう昨日になってるか」

 

 昨日の和音とのデートで危機感を抱いた私は今まで言わずにいた告白をした。

 恥ずかしさを我慢して、兄貴の事が好きだってことを伝えたんだ。

 それで私達の関係は大きく変わるのだと本気で信じていた。

 しかし、現実はそんなに甘くなどない。

 私の告白は世間で言う『フラれた』という部類に入る返答だったのだ。

 まさか「妹でしかない」と直接兄貴に言われてしまうなんて。

 めっちゃくちゃショックだったの、つい寝たふりで聞いてませんって逃げに走るくらい。

 自分では愛情を持って、接していたつもりなの認識にズレがあったのか、彼の好感度は全くと言っていいほど上がっていなかったらしい。

 ……これはホントに私にとっての屈辱だ。

 ハッピーエンドルートに入ったと思っていたのに、どこの選択肢を間違えたのかバッドエンドルートに突入していた。

 

「はぁ、私はどうすればいいわけ?」

 

 力づくでこれまで同様に兄貴を支配するのも一つの手ではある。

 だけど、それでは彼が愛情を抱いてはくれない。

 このままじゃいけないんだ。

 私はもう暴力(言葉を含む)という手段を用いて彼を支配しないと決めた。

 兄貴に愛されたいよ、当然じゃない。

 フラれた事実に傷ついて私は変わろうと決意したんだ。

 


  

 

 翌日、朝から私は和音に連絡を取って遊びに行く約束をしていた。

 電話をした時の彼女の様子。

 

『あ、あのね、桜華。昨日のアレは別に他意があったわけじゃ……』

 

『詳細な説明は会ってからにして』

 

『うぅ、それが怖いわ……ぐすんっ』

 

 何やら私にビビっている感じもあったけど、友達だからひどい目に合わすことはない。

 まぁ、これ以上兄貴に近づかないように釘を刺す事はするけども。

 

「おはよう、兄貴」

 

「ん。おはよう……どこかに行くのか?」

 

 リビングで食事をしている兄貴。

 私が目を覚ました時には彼はすでに自室に戻っていた。

 昨日の告白でなんとなく気まずい雰囲気が流れている。

 私はそれを気にしていないという風に、

 

「えぇ、今日は出かける予定があるの」

 

「出かけるって……また合コンとか?」

 

「さぁ、どうでしょう。あっ、ママには今日の昼と夜はご飯はいらないって言っておいてね……。いただきます」

 

 私は兄貴の視線に見つめられながら朝食をとる。

 お互いに言葉が出ない。

 やはり、告白というのは関係を壊してしまうものなんだろうか。

 

「あのさ、桜華……まだ合コンとか行くつもりなんだ?」

 

 その沈黙を壊したのは兄貴の方だった。

 どうやら私が合コンに行くと思ってるらしい。

 

「だとしたら?それは兄貴に関係があることなの?」

 

「い、いや……だって、その、昨日は……」

 

「私の行動にいちいち口を挟まないで。兄貴のくせに」

 

 私は普段の強気を崩さずにそう言い放つ。

 ホントは内心、結構辛いものがある。

 それに耐えながら私はさらに言葉を続けた。

 

「……私は恋がしたいの。彼氏が欲しいの。何か文句でもある?」

 

「ないよ。楽しんでくればいいさ」

 

「そうね。頑張って彼氏を作らなきゃいけないもの」

 

 まるで昨日の事は何でもないと見せかけてその場を過ごす。

 兄貴もそれ以上は何も言ってこなかった。

 それはそれで寂しい、気にしてくれるだけマシかな。

 兄貴は私を好きじゃない。

 女の子としても見てくれていない。

 それが昨日の夜に分かった事だから……。

 

「ごちそうさま。後片付けはよろしく。私はもう時間だから行くわ」

 

「あぁ、いってらっしゃい……遅くならないようにね」

 

「さぁ?それは今日の展開次第かもね?」

 

 私は意味深にそう答えて彼の前を去る。

 妹としてしか見てくれない相手を振り向かせるのは大変だ。

 私は廊下に出て、自分の行動に苦笑いをするしかできない。

 もっと可愛い女の子らしく素直になれたらいいのにね。

 

 

 

 

 和音との待ち合わせ、ショッピングモールの入口で彼女は私を待っていた。

 

「こんにちは。あの、昨日の件について何だけど」

 

 彼女は私の顔色を伺うように言うので思わず笑ってしまう。

 

「あははっ。そんなに怖がらないでいいって。和音に何かするつもりはないから」

 

「……私に、という事は先輩には?」

 

「まぁ、それは想像にお任せするわ。その話を引きずるつもりはないの。行くわよ」

 

 和音はそんな私の態度に疑問を抱いたようだ。

 

「あらあら、何かありました?桜華にしては珍しく引き際がいいわね。何があったのか、根掘り葉掘り聞いてくると思ってたのに……今朝の電話もちょっと怖かったわ」

 

「うぐっ。そんなことないわよ」

 

「ていうか、何で昨日はここにいたの?ハッ、もしや昨日の先輩とのデートについてきていたとか?……あれ。ん、それってどういうこと?」

 

 私は和音の思考を停止させようと慌てて話をそらす。

 

「それよりも、今日はどこに行く?買い物でもする?」

 

「……七森先輩とのデートが気になるのは妹心なのかしら?」

 

「いや、ありえないし。その話はお終いっ」

 

「怪しいわね。桜華のその態度が怪しすぎるわ。桜華って七森先輩に対して……」

 

 私は彼女を無視するように歩きだす。

 ここで私がブラコンだと知られてはいけないの。

 中学以来の友人に恥をさらすつもりはない。

 

「あっ、ちょっと待ってよ。桜華は七森先輩の事、お兄ちゃん以上に思ってるとか?」

 

 核心に触れる彼女の言葉に私は思わず足を止めてしまう。

 

「……あんなに女っぽい男の子を兄なんて思ってない」

 

「それでもお気に入りなんでしょう?そうか、何となく分かってきたわ。桜華の好きな男の子。合コンしていても、最後まで踏み込まないことにずっと不思議に思ってたのよね。彼氏欲しいって言っておいて作る気がない素振りも時々見せてたし……」

 

「だから、違うってば。ほら、このアクセ可愛くない?」

 

 私はお店の前に飾られているアクセサリーを指さす。

 どうにか和音の話をそらそうと頑張るものの、無駄な努力に終わったようだ。

 彼女は私の指をそっと掴んでにっこりと笑顔。

 

「認めちゃえよ、私はブラコンだって」

 

「――あんまり調子に乗ってると、痛い目に合わせるわよ?」

 

 イライラしたのでつい語尾を強めて恫喝する。

 

「ご、ごめんっ。そんなに怖い顔をして睨まないでよぅ」

 

「……ふんっ。ブラコンだと悪いわけ?犯罪なのかしら?誰にも迷惑かけていないじゃない」

 

「そこまでは言っていないから。単純な興味よ、興味」

 

 結局、買い物をしてから入ったファーストフード店で私は全てを話す事に。

 だって、和音が「話してくれたら、先輩からは身を引いてあげる」と言われてつい……。

 今の現状、ライバルを一人でも減らすことが私には必要なの。

 

「先輩と桜華って義理の兄妹なんだ?へぇ、そういう事情なら好きでもいいじゃない。そっか、私は秘められた禁断の兄妹愛かと思ってたわ」

 

「付き合いで言えば軽く10年越えだから本物の兄妹と大差はないけど」

 

「ふーん。で、桜華は告白してフラれたんだ。それでも諦めきれないから、どうすればいいのかって?桜華もバカだよねぇ。好きな子いじめって男の子がよくやるけど、そういう子の恋が実るって滅多にないからさぁ」

 

 ……それは言われなくても実感してるっての。

 私は何も言い返せないでいると和音はいくつかのアドバイスをくれた。

 

「私は先輩の傍にいてちょっと気づいたんだけど、あの人って普通の男の子と違うじゃない。いきなりデートとか誘ってきても、そこに下心なんかない。彼は恋愛を知らないんだと思うんだ」

 

「それは言えているかも。兄貴には女の子と付き合う気はないから、どんな子にも普通に優しく接することができる」

 

「それは逆を言えば、きっかけひとつで恋愛スイッチを入れられるチャンスでもある」

 

 とりあえず、私の現状は好感度はマイナスで恋人になるためのフラグもない。

 どうしよう、どうすれば形勢逆転できるのかな。

 

「まず、言えるのは妹から卒業することよ。女として見てもらうのが第1条件。先輩だって男の“本能”っていうのがあるはずなの。それを目覚めさせてあげればいい」

 

 彼女はハンバーガーを食べながら私に助言する。

 私は苦手なピクルスを丁寧にとり除いてからじゃないとハンバーガーは食べられない。

 

「……これまでも十分、意識はさせてきたつもりなのに?」

 

「それでも妹って言われたのはなぜ?人の心にグッとくるものがなければ意味はない」

 

「痛いところをついてくる。で、第2条件は?」

 

「彼に優しくてしてあげなさいよ。今まで散々怖がらせて、可哀想じゃない。案外、優しくしてあげたらギャップで桜華の見方を変えてくれるかもしれない」

 

 そんなにうまくいくのかな、私にはそうは思えない。

 長い時間をかけて歪んでしまっている関係を正すのは簡単じゃないわ。

 

「今のままじゃダメなんでしょう。やるだけやってみなさいよ」

 

「そうね。それもいいわ。……んぐっ。うぇっ、まだピクルスが残ってたぁ」

 

 私は苦手なピクルスの味に咳きこみながらも、兄貴の事を考えていた。

 どうにかして、彼を振り向かせてやりたい。

 

「私の本気、兄貴に見せつけてあげるんだからっ!」

 

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