【第三回・弐】玉。
単独で迦楼羅がやってきた
それも乾闥婆に隠れてきたという
後から地獄を見るとわかっててもこっちにきた理由とは…
「敵将!! 討ち取ったりィ!」
高らかにこだましたのは坂田の声
ガッツポーズを決めて上機嫌でコントローラーを握っている
「次、次ギエーンの武器とるべ。ギエーンの」
その横でペラペラと攻略本を捲りながら南がいった
明日から学校ということで宿題合宿の時にできなかった(というかやろうともしなかった)宿題を一気に片付けてしまおうと再度栄野家に集結したのはいいが、社会の問題に三国志が出てきたことで中島、南、坂田、京助の勉強への入れ込みがゲームへと移ったのはかれこれ一時間前
「おぉ! 操ちゃんが!」
とか
「シャホゥ!」
とか叫び盛り上がりつつ交代制でプレイしていた
ガラッ
いきなり窓が開いた
その音に全員が反応して窓を見たが特に何も無い
「…怪談タイムにはまだ早いよなぁ…ヒマ子さんか?」
中島が立ち上がり窓に近づくとしばらく固まって窓を閉めた
「窓をしめるなたわけッ!」
閉めた窓が再び勢いよく開いて窓のレールに手が掛かった
どうやら登ろうとしているらしいがなかなか登れないらしい
「…なんだかちっこいのが潜入しようとしておりますドウゾ」
中島が無線機を持つマネをして何が起こっているのか知らせる
「何だ何だ」
南がおもしろがって近づく
「うっわ! ちっちぇえ!」
そして笑いながら叫んだ
「どらどら」
続いて坂田も近づき
「おぉ! 金時小豆!!!」
そういって爆笑した
その途端
「やかましい!!たわけッ!!!」
という怒鳴り声と共に紅蓮の炎が噴出した
「ぅおぉぉぉぉ!!?;」
3人が慌ててその場から離れると逆に京助が窓に近づいて下を見た
そこにいたのは
「…鳥類…;」
迦楼羅だった
「で…何の用で?」
迦楼羅を引っ張りあげて部屋に入れると京助は何をしていたのか聞いた
「玉を探しているのだ」
椅子に座り腕を組んだまま迦楼羅が言った
「…玉…」
その迦楼羅の言葉を聞くと3馬鹿と京助は各々の股間に目をやった
「その玉ではない!たわけがッ!!!; 誰がそんな汚いもの探すかッ!」
3馬鹿と京助が何を想像しているのかわかったらしい迦楼羅が怒鳴る
「汚いですって」
「失礼しちゃうわ~ちゃんと毎日洗っているのに」
それを聞いた坂田と中島が女言葉でブーイングした
「やかましぃッ!!!」
迦楼羅の口から再び紅蓮の炎が坂田、中島めがけて出た
「のわぁぁあッ;!」
二人が避けるとふすまに炎がついた
「うおぁ! 水! 水!;」
京助が座布団で鎮火を試みている横で南がズボンのファスナーを降ろそうとしていた
「何してんじゃおのれはッ!;」
「いや…水をばと」
「なるほどお小水だな」
どうやら小便で鎮火を試みていたらしい南に坂田と中島も参戦しようとしている
「やめんかッ!;」
座布団で必死にバフバフやりながら京助が怒鳴った
「何の騒ぎだ…火ーーー!!?;」
騒ぎを聞いて見に来た緊那羅が火をみて叫んだ
「緊那羅! 水! 水!;」
京助が緊那羅に向かって叫ぶと緊那羅は慌てて水を取りにいた
「水ならここに…」
「もうそれはえーっちゅーんじゃーッ!!!;」
尚もまだお小水鎮火をやりたがっている3馬鹿に京助がキレる
「さわがしいな」
迦楼羅が椅子に座ったままでしれっと言った
「誰のせいやねんッ!;」
京助はさっきから怒鳴りっぱなしだ
「もーえろよもえろーよー」
3馬鹿が手を繋いで輪になり歌いだす
「火の士気上昇させるなーーッ!;」
緊那羅が持ってきたバケツの水で火が消えるまで京助の怒鳴り声は止まらなかった
ふすまの焦げたキナ臭い匂いと水を吸い取るための新聞紙が敷かれた畳
大騒ぎして叫び続けた京助はうつ伏せになり伸びていた
その京助の上に南と悠助が腰掛けている
「…迦楼羅一人できたんだっちゃ?」
いつも隣にいるはずの乾闥婆の姿が見えないのを不思議に思い緊那羅が聞いた
「乾闥婆って…そのちっこいのの保護者さんか?」
坂田が壁に寄りかかり足に止まったハエを片足で追い払いながら緊那羅に聞いた
「保護者…ってよりは…制止役兼お目付け役みたいな感じだっちゃ」
緊那羅が説明すると一同『ほぉ~ぅ』と声を上げた
「…乾闥婆に隠れてきた」
迦楼羅がボソッと言った
「隠れて…ってどうしてだっちゃ; ばれると後から怖いのに;」
どうやら緊那羅も乾闥婆の最凶っぷりを知っているらしく…
「たわけッ! ここに来たことがばれるより玉なくしたということがばれた方がやっかいなのだッ!;」
どうやらその玉をなくしたのを乾闥婆にばれる前に探して帰ろうということらしい
「なぁ…」
中島が手を上げて発言権を貰おうとした
「ハイ、中島柚汰君」
坂田が足で指名した
「その乾闥婆ってヤツ…そんなに怖ぇえのか?」
中島のその質問に緊那羅、迦楼羅それにうつ伏せになって伸びていた京助までもが顔を上げ黙って頷いた
「逆らうと後が怖いんだっちゃ;」
緊那羅が何かを思い出しながら苦笑いを浮かべる
「どうなるかわからんからな」
迦楼羅8かるら)も多少引きつりながら過去を思い出しているらしい
「とにかく…強ぇえ…」
悠助と南に上に乗っかられているせいで京助の声は苦しそうだったがその声が乾闥婆の最凶さをよけいにリアルに感じさせた
しばらく沈黙が続いた
3馬鹿は今聞いた乾闥婆の情報からそれぞれ乾闥婆の姿を想像しているようで目が遠い
悠助は京助の髪で最近できるようになった三つ編みをしていたが京助の髪が短いため上手くできないらしく新たなターゲットを探してキョロキョロ周りを見ていたが…
ふと、迦楼羅と目が合ったとたん京助から降りて迦楼羅に近づいた
「…なんだ?」
迦楼羅の長い前髪を目をキラキラさせて見た後、迦楼羅に思いっきり顔を近づけて
「三つ編みしたい!」
と言った
「はぁ?」
いきなり今までの話題とは関係ないことを言われて迦楼羅が変な声を上げた
「長い髪してるから~えと…かる…か…」
「迦楼羅だ」
迦楼羅が『迦楼羅』と言えない悠助に自分の名前を教えた
「かるらん! かるらんの髪長いから三つ編みしてもいい?」
「な…」
悠助が迦楼羅の長い前髪をくいくいと引っ張っている
「かるらん…」
緊那羅がプッと噴出した
「かるちゃんだとランドセルだしな…ナイスネーミングだ悠!」
南が拍手した
続いて坂田、中島も拍手する
緊那羅は後ろを向いて肩を震わせ声を押し殺して笑っている
京助もうつ伏せで南を乗せたまま『うへへへ』と変な笑い声を上げた
「ね~かるらん~」
顔を引きつらせている迦楼羅の前髪をくいくい引っ張りつつ悠助が三つ編みしていいかねだる
「かるらんではなく迦楼羅だッ!;【ん】はいらぬ!! たわけ!!! 誰が三つ編みなど…」
迦楼羅に怒鳴られ一瞬きょとんとした悠助は
「じゃぁこっちの何もついてないほうなら駄目?」
とさっきまで引っ張っていたのとは逆の前髪を引っ張る
と…その悠助の行動を見た緊那羅が何かに気づいて迦楼羅を見た
「…迦楼羅…もしかしてなくした玉って…」
「…宝珠だ」
「緊ちゃん変な顔ー」
くいくいと迦楼羅の髪を引っ張り続ける悠助が緊那羅の顔を見て笑う
「な…なにしてるんだっちゃッ!; 宝珠なくすなんてッ!! 乾闥婆に知れたら…」
なくした当本人の迦楼羅より慌てふためいている緊那羅
「だから探しに来たのだ。って…何をしている栄野弟」
自分より慌てている緊那羅にさも他人事のように言う迦楼羅がなにやら三つ編みを開始した悠助を見る
「三つ編み」
三等分した迦楼羅の前髪を交互にゆっくり編んでいっている
「やめんか!たわけッ!;」
迦楼羅が怒鳴って髪を引っ張ると悠助がしょぼくれる
「あ~…悠、ホレ俺のでやれ俺ので」
見るに見かねた結構面倒見のいい坂田が髪を解いて悠助を手招きした
「で…どこでなくしたのか大体の見当とかついてるんだっちゃ?」
「たぶんここだ…と思う。【天】にはなかったからな」
当の本人がアッケラカンとしているのに対し何故か焦っている緊那羅
「もしこのまま見つからなかったら…」
「…乾闥婆に殺されるかもしれんな」
「それもあるっちゃけどッ; でもそれ以上に大事なことあるじゃないっちゃ!?」
3馬鹿と京助はなかなかどうして話に入っていけずただ緊那羅と迦楼羅のやりとりを傍観している
「…俺等無視ですねぇ~」
南が天井を見てボソッと言った
「蚊帳の外ですねぇ~」
中島も南に続いて言った
「南…どけろ…;」
京助が南に言った
「でーきたっ」
悠助の嬉しそうな声に一同振り向くとちょっと斜めではあるが立派に『三つ編み』をされたおさげの坂田がいた
「おぉ! 上手いじゃん悠!」
中島が坂田の三つ編みを持って悠助を褒めると上機嫌で
「今度は緊ちゃん!」
と緊那羅の腰に抱きついた
「わ…私もだっちゃ?;」
悠助のキラキラしてる目を見ると嫌とは言えず苦笑いを返して髪を解き緊那羅が座った
「緊ちゃん髪坂田より長い~」
嬉しそうに三つ編みし始めた
「…あいかわらず嫌とは言えない性格だな緊那羅」
呆れたように言う迦楼羅に緊那羅はまた苦笑いを返した
「…とにかく…コレと同じ玉をさがしているのだ」
片方の前髪についている赤く小さな玉を一同に見せた
「どれどれ…」
玉に近づきまじまじと玉を見る
「…ビー玉っぽいな」
ちょっと大き目のビー玉にふさふさした飾りがついており結構高級そうな玉が光の加減でキラリと光る
「どこかで見たこと無いか?」
迦楼羅がたずねると3馬鹿と京助は顔を見合わせた後思い出そうとしているのかからかっているのか『う~ん』と声を上げながら腕を組み考え込む(皆同じ格好)
「あ! 思い出した!」
いきなり南が手を叩いて声を上げた
「見たかけたのか!!?」
迦楼羅が期待いっぱいの顔で南を見た
「テンちゃんだ!」
「は?」
「ホラ! ラムちゃんのイトコだかで火ィ吐くジャリッコいたじゃん! そいつテンちゃんっていわなかったか?」
どうやら何か別なことを思い出したらしい
「おぉ! そうそう! テンちゃんだ!」
中島が迦楼羅を見てプッと噴出しながら手を叩く
「火ィ吐くし、ちっこいし…ラムちゃんもいるし…完璧じゃん!!」
坂田がおさげをいじりながら緊那羅を見て親指を立てる
「…一体何の話なのだ?」
一向に3馬鹿の会話が理解できない迦楼羅が京助に聞いた
「…まぁぶっちゃけお前の期待している玉の話題ではないのが事実だな」
緊那羅も頷いた
「緊ちゃん、動いちゃ駄目ッ」
「あ、ごめんだっちゃ;」
悠助が怒ると緊那羅が謝った
「…ワシは…」
迦楼羅の肩が震え始めた
「ワシは玉を見たことがなかったのかときいているのだ!たわけーーーーーーッ!!!」
迦楼羅が大声を上げるとともに金色の羽根が部屋いっぱいに広がり辺りのものを散らばらした
「こんな狭い所でキレるな阿呆ーーー!!;」
京助の怒鳴り声が再び響いた
キィキィと音を立てて揺れている室内灯
ハァハァと息を切らせている京助の片手には何かの雑誌が丸められて握られている
どうやらソレで迦楼羅をぶっ叩いたらしい
「何をする! 痛いではないか! このたわけッ!」
「そりゃぁこっちのセリフじゃ! この鳥類ッ!; チビ! ジャリッコ!!!」
迦楼羅が怒鳴ると京助も怒鳴る
「あ~…ビックリした…」
机の下にすばやく非難していた南が這い出してきた
「もしかして緊那羅の言ってた【天から来る誰か】ってコレか?」
座布団をかぶって防御していた坂田が迦楼羅を『コレ』と指差し緊那羅に聞いた
「坂田…お前なんだか終戦記念日」
悠助に編まれたおさげと防空頭巾の様に被っていた座布団…坂田の姿はパッと見戦時中の女学生だった
京助が坂田のその格好に突っ込むと坂田は
「蛍…何ですぐ死んでしまうん?」
と言い小首をかしげた
「節子ーーー!」
中島が両手を広げる
「にぃちゃん!」
坂田がそれにしっかと抱きつく
どうやらアニメのワンシーンを演じているらしい
「えぇ話や…」
南と京助が涙を拭う演技をした
「…コイツらはいつもこうなのか?」
迦楼羅が片眉をヒクヒクさせながら緊那羅に聞いた
「まぁ…そうだっちゃ;」
再び悠助に三つ編みをされながら緊那羅が呆れ笑いで答えた
「で!」
いきなり坂田が振り向いて緊那羅を指差した
緊那羅がビクッと目を丸くすると中島と抱き合ったまま迦楼羅に近づき迦楼羅の頭をポフポフと叩いた
「コレは?」
ポフポフと叩きながら緊那羅に聞く
迦楼羅の怒りゲージが溜まっていくのが何となく見えるような気がする
「え~…と…迦楼羅はその…ただ玉を探しにきただけだっちゃ;」
怒りゲージを溜めていく迦楼羅を気にしながら緊那羅が答えた
「つかさぁ…その玉見つけて俺等に何か利益あるわけ?」
南が立ち上がり京助に寄りかかりながら迦楼羅を見下ろす
「…上から見下ろすなッ! このたわけども!」
小さく炎が出た
「見下ろすなといわれましてもな」
中島が坂田を見る
「だってちっこいから」
坂田が隣の京助を見る
「それに鳥類だし」
京助が更に隣の南を見る
「ちっこいし」
「うん、ちっこいし」
「そうとも、ちっこいし」
「何はなくともちっこいしな」
「鳥類鳥科だし」
「テンちゃんだし」
「シャホゥだし」
「いや、ソレ関係ねぇし」
3馬鹿と京助は『ちっこい』を連呼し迦楼羅を見下ろす (一部関係の無い語句有)
「やかましいわ!たわけーーーーーッ!!!!!!!!」
迦楼羅が怒鳴ると紅蓮の炎が吐き出された
「うおおお! 火炎放射!!;」
3馬鹿と京助がしゃがんでソレをかわした
「…馬鹿だっちゃ…;」
悠助に三つ編まれながら緊那羅が呟いた
「でーきたっ!」
悠助が嬉しそうに声を上げて緊那羅の前に回ると満足そうに満面の笑みを浮かべた
「緊ちゃん可愛いー!」
「ははは…ありがとだっちゃ;」
坂田と同じようにおさげにされた緊那羅は『可愛い』といわれて複雑な心境で悠助の頭をなでた
「俺には負けるがなかなか似合ってるじゃん緊那羅」
坂田がしゃがんだままそういうと一同緊那羅に注目したが悠助だけは迦楼羅(の髪)に注目していた
なにやら痛いくらいの視線を感じて迦楼羅がチラリと横を見ると悠助がそぉっと迦楼羅の髪を触ろうとしていた
「…何をしている…」
悠助が迦楼羅の一言にビクっとして手を止め、エヘヘ~と笑う
「諦めの悪い輩だな…三つ編みなど…」
ぐきゅるるるるる~…
迦楼羅の言葉がその音にかき消された
その音…それは腹の虫の鳴き声
「…誰だ今のでっけぇ音」
一同腹の虫の飼い主を探して『お前か』を連呼している
「…ワシだ」
『お前か』の嵐の中、迦楼羅が言った
「…体のわりにでっけぇ音…」
京助が呆れ顔で言った
「宝珠なくしたのに羽根出したり火吹いたりするからだっちゃ」
緊那羅も呆れ顔でそう言った
「何々? その【ホウジュ】とかいうの無いとどうなんの?」
南が迦楼羅と緊那羅に聞く
「宝珠にはワシの力がそれぞれ分割して蓄えられてあるのだ」
迦楼羅が答える
「そしてそれは4つあり、ワシの力のバランスをとる役目もしている」
「その宝珠が一つなくなったから迦楼羅は無駄に力出していることになるんだっちゃ」
緊那羅が付け足す
「…さっぱりワッカリマセーン」
京助と3馬鹿が【マイッタネ☆】という顔をして首をかしげた
「えと…つまり…4つの戸のが一つなくなってそこから中身がもれてるって感じだっちゃ」
エセ外国人になっている4馬鹿に緊那羅が更にわかりやすく説明する
「おぉ! そうか! 俗にいうアレか、垂れ流し?」
中島が ポン! と手を打っち言った
「で、力を垂れ流してるから腹が減ったと…そうなのか鳥類」
京助が迦楼羅を見ると迦楼羅はムスっとして
「そうだ」
と答えた
「かるらん、おなか減ってるの? 何か食べる?」
悠助が心配そうに迦楼羅の顔を覗き込んだ
「待ってて今何か持ってくるから」
そう言うと悠助は立ち上がって駆け足で台所へ向かって行った
「…この間のときはまだあったんだっちゃ?」
緊那羅が迦楼羅に小さい声で聞いた
この間とは【ヘンテコリンなこと】のことだろう
「…わからん」
迦楼羅が言い切ると緊那羅はガックリと肩を落とした
「じゃあもしあの時矜羯羅と闘うことになっていたら…;」
「途中で力が切れていたかもしれんな」
しれっと言い切った迦楼羅に緊那羅は力なく床にへたり込んだ
ぐきゅ~くるるる…
迦楼羅の腹の虫が再び鳴いた
「…食いモン何かなかったっけか?;」
あまりにも体とは不釣合いな腹の虫の鳴き声に迦楼羅に何か食い物を与えようということにした京助と3馬鹿は辺りを見回したが先ほどの迦楼羅がキレた際の大騒ぎでしっちゃかめっちゃかになっている室内から食い物を探し出すのは…
「お、飴発見!」
サクマ式ドロップの缶を中島が発見した
「ろろっぷ、ろろっぷ~!」
坂田が再び座布団を被って映画のワンシーンを演じている
中島が缶を拾い上げ蓋を取ろうとすると
「駄目~!」
部屋に丁度入ってきた悠助に止められた
両手でなにやらお盆を持っている
匂いからしてこれは
「…昨日の晩飯の残りか」
きゅるるる~くぅ~…
匂いに反応したのか迦楼羅の腹の虫が『早く食わせろ』とばかりに大きく鳴いた
「はい、かるらん!」
迦楼羅にお盆を押し付けて悠助はにっこり笑うと続いて中島から缶を取り上げた
「これ、僕の宝物なの!勝手に開けないでよぅ!」
と言って怒った
「…食べないんだっちゃ?」
お盆とにらめっこしている迦楼羅に緊那羅が声をかけた
「…何だコレは」
お盆の上の皿にのっているのは昨日の栄野家の食卓の残り物を電子レンジで温めなおしたものだった
きちんと爪楊枝もついている
「毒なんか入ってないっちゃ。私も昨日食べたし」
緊那羅を横目で見ながらツンツンとしばらくソレを爪楊枝で突付いていた迦楼羅だったが腹の虫を鳴きやませるために意を決して口に入れた
「…なんという料理だ?」
口に入れてしばらくしてから迦楼羅が聞いてきた
「竜田揚げ。美味いか?」
京助が横から口を挟む
迦楼羅がコクリと頷いた
「ケフッ」
迦楼羅が竜田揚げを綺麗に平らげ軽くゲップをし何もなくなった皿を黙って見ている
「…満足したか? 鳥類」
京助が声をかけると迦楼羅が皿を差し出して
「もう無いのか?」
と言ってきた
どうやら竜田揚げがお気に召したらしい
「それで終わりなんだ~…ごめんねかるらん。でもでもね!またハルミママに作ってもらうから! 今日頼んでみるから!」
悠助が【宝物】が入っているという缶を持って迦楼羅に謝った
そんな悠助を迦楼羅は少し驚いた顔で見ていた
「悠、皿置いて来い。栄養補給した鳥類がまた何かやって割られたら俺が母さんにどやされるからな」
「はぁいっ」
京助が迦楼羅から皿をとって悠助に渡すと嬉しそうに受け取りパタパタと部屋を出て行った
「…あやつ…栄野弟はいつもあんな感じなのか…?」
迦楼羅が緊那羅に聞いた
「悠助のことだっちゃ? …そうだっちゃよ? 悠助はいっつもああだっちゃ」
「…そうか…」
迦楼羅は目を細めて悠助の出て行った後を見た
そんな迦楼羅を見て緊那羅がフフッと笑った
「でさぁ…玉はもういいのか?」
南が竜田揚げに負けて忘れ去られつつあった本題を掘り起こした
「あ~…玉ね~…」
京助が迦楼羅をチラリと見た
「この辺りで変わったこととかなかったか?宝珠の力で何か起こっているかもしれんからな」
迦楼羅がそう言うと3馬鹿と京助の視線が迦楼羅と緊那羅に注がれた
「…なんだっちゃ?;」
緊那羅がその視線を受けてたじろく
「変わったことっていえば…なぁ?」
南が視線を逸らさず他の三人に言った
「一番変わったことっていやぁなぁ?」
中島も同様
「…コイツらだよなぁ?」
そして坂田も
「羽根生えて、火吐いて、だっちゃだしなぁ?」
京助がそういい終わるとそろって深く頷いた
「何が言いたい?」
3馬鹿と京助の行動に迦楼羅がムスっとして問いかける
「…あ~…つまりはですねぇ~君たち以上に変わった人…というか変わったことは特に無いということなんですねぇ~」
中島が某有名推理ドラマの主人公のモノマネをしながら言った
「中島、それ結構古いぞ」
坂田が突っ込むと
「名作なんだしいいじゃ~ん!」
と中島がヘラヘラ笑った
「…緊那羅…」
迦楼羅が静かに、でもきっと (絶対)キレているであろう口調で緊那羅の名前をよんだ
「…何も知らないみたいだっちゃね…宝珠のことは; それ以上に真面目に探す気あるのか無いのか…;」
緊那羅が迦楼羅から少しずつ離れながら言った
「…お前ら…」
迦楼羅が拳を握り締め方を震わせている
3馬鹿と京助は気づいていない
迦楼羅の背中に光が集まり始めた
「お前等いいかげんに…!!!!!!!」
ガラッ
迦楼羅が怒りを爆発させようとしたその時歴史が動いた
「京様。ハルミ母上様がお昼そうめんでよろしいかと聞いておられるのですが」
窓が全開に開いてヒマ子が顔を出した
「お、いいねぇ! そうめん最高!」
中島が『グッ!』と親指を立てる
「あぁ、いいって伝えて」
京助が言うと
「わかりましたわ」
ヒマ子は上機嫌で窓を閉めて去っていった
「…迦楼羅?;」
緊那羅が固まっている迦楼羅の肩をポンポン叩いて名前を呼ぶとハッと我に返った
「な…なんだ今のは…」
迦楼羅が青い顔をして緊那羅とその他に聞く
「ヒマ子さん」
すると一同口をそろえて返した
「3サイズは上からオール14cm」
「趣味は光合成」
「京助大好きなお茶目な向日葵だ」
3馬鹿が順にヒマ子について説明をしていく
「…私も最初腰抜かしたっちゃ…」
今だ青い顔をしている迦楼羅に緊那羅が遠い目で話しかけた
「アレは…変わったことにはいらんのか?」
迦楼羅が3馬鹿と京助を振り返り聞くと
「だって向日葵だし?」
と坂田が返す
「うん、向日葵だし」
南もそういって頷いた
「ちょっとお茶目なだけだよなー?」
と中島も言った
「動くけどな」
京助も付け加えた
「…動いて話す向日葵が変わってなくてワシらの方が変わっている…わけが…あるかーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!」
「っどわぁぁぁああッ!!;」
迦楼羅の口から紅蓮の炎が最大火力で吐き出された
「おそらくあの向日葵の鉢の中に宝珠があるのだろう」
「ヒマ子さんの鉢の中に? 何でわかるんだ?」
迦楼羅の推測に京助が突っ込む
「たわけ! 宝珠の力で動いたりしているとしか考えられんだろう! さっさと見てこんか!」
迦楼羅が怒鳴る
「お前もこいよ; お前のなんだから; 中島!」
京助が中島の名前を呼ぶと中島が迦楼羅を小脇に抱えた
「な…おぃ!; こら! 降ろさんか! たわけ!!! 降ろせって!」
「ハイハイ、いいこでちゅねー」
じたばたと暴れる迦楼羅を幼児言葉でなだめ(あおり?)つつ一同はヒマ子のいると思われる庭に向かった
「どこいくの~? 僕も行く~!」
皿を置いて戻ってきた悠助も坂田のパーカーを掴んで【ヒマ子の鉢の中にあるだろう宝珠を探せツアー】に参加した
「あら、皆様おそろいで…どうなさいましたの?」
庭で光合成をしていたヒマ子がゾロゾロとやってきたツアー参加者を見てきょとんとした
「あ~…ホラ京助!」
坂田が京助を肘で突いた
「なんで俺よ; 南!」
京助が南を呼ぶと南は顔の前で手を振って『パス』の合図をした
「…中島…」
中島は京助と目を合わせないように遠くを見ている
「緊那羅…」
緊那羅も中島と同様目を合わせないよう明後日の方向を見ていた
「京様?」
わけがわからないヒマ子が京助の名前を呼んだ
「さっさと聞かんか! たわけ!」
中島の小脇で迦楼羅8かるら)が怒鳴った
「わーかったよッ!; 聞きゃぁいいんだろ聞きゃぁッ!;」
京助がもうどうにでもなれという感じで縁側にしゃがみヒマ子と目線を合わせると辺りがしん…と静まってサワサワという風の音だけになった
「…ヒマ子さん」
「はい?なんです?京様」
サワサワ…
「あの…」
「はい?」
サワサワサワ…
「その…鉢の中…」
「鉢?」
サワサワサワサワ…
「長い」
スパーンと坂田が京助の後頭部を引っ叩いた
「一気に言えよ一気に」
南も引っ叩く
「じゃぁお前等が言えっちゅーんじゃッ!;」
京助が二人に食って掛かった
「京様? 私の鉢の中がどうなさいましたの?」
ヒマ子が京助に聞くと
「お前の鉢の中が見たい」
と迦楼羅が中島の小脇から言うとヒマ子が一瞬劇画風の顔になった
「な…何とおっしゃいまして? そこの小脇の方…わ…私の…」
「鉢の中が見たいと言ったのだ」
動揺するヒマ子を迦楼羅が少し睨みつつ言うとヒマ子は京助を見てそして迦楼羅を見た
「私は京様に操を立てましたの! 京様以外の男性にそうやすやすと肉体を見せてなるものですか!」
ヒマ子が声を張り上げて宣言した
「愛されてるねぇ…京様」
坂田が京助の方をポンと叩いた
「…んなもん立てるなよ…」
京助が半分灰色になりながら遠くを見た
「向日葵の分際でなにたわけたこと言っている! さっさと見せんか!」
中島の小脇からするりと抜けた迦楼羅がヒマ子に近づく
「きゃぁぁぁぁぁ! 痴漢ですわーーーーー!」
ヒマ子が身をくねらせて叫ぶと迦楼羅が凍った
「…痴漢…」
緊那羅がボソッと言った
「かるらん痴漢なの?」
悠助が緊那羅の服を引っ張って聞いた
「誰が…誰が痴漢だ!!!たわけーーーーーーーーッ!!!!!!!!!」
迦楼羅が怒鳴ると金色の羽根が屋根より高く大きくあらわれ同時に強風が吹き荒れた
「やめんかーーーーぃッ!;」
「のぉわぁぁぁあ;!!!」
「きゃーーーー!!」
巻き起こった強風で木々が揺れ葉が飛び、窓はガタガタと音を立てている
「迦楼羅! 迦楼羅ストップだっちゃーーーッ!;」
緊那羅が悠助を庇いながら声を張り上げて迦楼羅を止めようとする
「きゃぁッ!」
ヒマ子の悲鳴が聞こえゴトリ、と何かが倒れた音がすると風が止まった
コロコロコロコロ…
ヒマ子の鉢から赤く小さな玉が転がり出てきた
「ウチを壊す気か! この阿呆鳥ッ!!;」
京助が怒鳴ったが迦楼羅は京助を見ようともせずヒマ子の鉢から転がり出てきた赤い小さな玉を拾い上げた
「迦楼羅…それ…宝珠だっちゃ?」
迦楼羅の拾い上げた赤い玉を見て緊那羅が迦楼羅に聞いた
「…ヒマ子さん?」
緊那羅にしがみついていた悠助が倒れたまま動かないヒマ子の名前を呼んだ
「ヒマ子さん…ねぇどっか痛くしたの? 立てないの?」
悠助がヒマ子に駆け寄る
ヒマ子から返事は無い
「京助…ヒマ子さん動かない…よ…?」
「あたりまえだ」
泣きそうな顔で京助を見た悠助に迦楼羅が言った
「その向日葵が動いていられたのはワシの宝珠の力でだからな。宝珠がなくなったとなれば動かなくなるのは当然だろう」
ヒマ子の鉢からこぼれた土が風で少し飛んだ
「じゃぁ何か? ヒマ子さんは…」
つっかけを履いて庭に降りた京助は迦楼羅の横に立ちヒマ子さんを見た
「…もう動かない…の?」
目に溢れそうなくらい涙を溜めつつ必死にそれを流すまいとしている悠助がヒマ子を抱きしめたまま聞いてきた
「…そうだ」
迦楼羅がどこか気まずそうに言った
3馬鹿も何とかこの重苦しい空気を軽くしようとしているらしいが…顔を見合わせるだけだった
「…悠助…」
緊那羅が裸足で庭に降りて悠助の横にしゃがんで頭をなでた
「う…っく…」
途端に悠助は涙と鼻水を少し流して緊那羅の服に顔をなすりつけた
「やら…ヒマ子さん喋ってくれないとやらぁ…」
ズズっと鼻水を啜りながら悠助が泣き出した
「…迦楼羅…」
悠助の頭を撫でながら緊那羅が迦楼羅を見上げた
「…そんな顔してワシをみるな!;」
迦楼羅が怒鳴る
「なぁ…なんとかならねぇのか?」
坂田が迦楼羅に聞いた
「何とかとは何だ?何とかなるならその何とかを言ってみろ」
迦楼羅が坂田に聞き返した
「あ~…例えば代用品つかうとか?どうよ?」
南が横から提案する
「ナイス南!それいいねぇ! どうよ!」
坂田が南を指差してその後迦楼羅を指差した
「ようは乾闥婆に玉なくしたことバレなきゃいいんだろ?」
京助が迦楼羅の持つ宝珠を指で突付いて言った
「…コレ…少し貸しておいてくれねぇ?」
「な…ッ!!?」
再び怒鳴りそうになったが緊那羅に頭をなでられながら泣いている悠助が目に入り怒鳴るのをやめた
「…悠をあんまり泣かせたくないんだ…」
京助が聞き取れるか聞き取れないかの声で言った
「母さん昼間は神社の仕事で家にはいないし、俺は学校で悠より帰りが遅いだろ? 悠はずっと『おかえり』って言ってくれるヤツが欲しかったんだ…その相手が何であれさ…」
自分が悠助くらいのときはまだ赤ん坊だった悠助のために母ハルミは神社に行かず家にいて京助が学校から帰るといつも『おかえり』という言葉が迎えてくれた
「緊那羅が来て…ヒマ子さんが家にいるようになって悠がすっげぇ嬉しそうだった」
迦楼羅が目を細め無言で悠助を見る
「…無垢だな」
ボソっとそう言い放つと迦楼羅は悠助に近づいた
「…か…りゅらん?」
ぐしょぐしょになった顔をあげて迦楼羅を見あげた
「迦楼羅…?」
緊那羅も迦楼羅を見る
「…えぇえい! 泣くな! 鼻水を拭け! たわけッ!!!」
迦楼羅が怒鳴りながら自分の服で悠助のぐしょぐしょになった顔をゴシゴシ拭いた
「かりゅらん~いたい~;」
もの凄い勢いで悠助の顔を拭く迦楼羅を止めるに止められない緊那羅はただオロオロしている
「あのテンちゃんは悠を新ジャガ芋か何かと間違えてねぇか?」
中島が言った
「一皮剥くつもりなのかしらん?」
南が中島に寄りかかりながらその様を見ている
「俺等あんまり突っ込めねぇなぁ…」
坂田がおさげを触りながら遠い目をした
「あんま関わらん方いいかもだぞ」
京助が呟いて縁側に腰掛け柱に寄りかかった
「…俺に近づくと怪我するぜ」
京助が3馬鹿を見上げてそう言って笑った
その言葉は3馬鹿には冗談にも本気にも聞こえたが今は前者にしておいて笑い飛ばした
「ホレ!」
迦楼羅が悠助に向かって何かを差し出した
「…かるらん…?」
迦楼羅に思い切り拭かれたせいで赤くなっている顔で悠助は迦楼羅を見上げた
「…さっさと受け取らんか! たわけ!」
なかなか手を出そうとしない悠助の手をとって無理矢理その手の中に【何か】を入れた
「かるらん…コレ…」
悠助の手の中にあったのは小さな赤い玉…宝珠だった
「…貸すだけだからな…なくすなよ」
迦楼羅が踵を返し悠助に背を向けた
「…乾闥婆には何て説明するんだっちゃ?」
緊那羅が静かに怒れる乾闥婆の姿を想像して迦楼羅にたずねた
「…な…んとかなるだろう;」
迦楼羅が引きつりながら答えた
悠助は迦楼羅と緊那羅を交互に見た後いきなり立ち上がると家の中に入っていった
「…さんきゅ」
京助が迦楼羅に声をかけた
「…フン」
迦楼羅が照れくさそうにそっぽを向いて鼻を鳴らした
「かーるーらーんー!」
という声と共に悠助が玄関の方から走ってきて迦楼羅の前で止まった
「…何事だ栄野弟…;」
息を切らせてでも笑顔の悠助を見て迦楼羅が少し後ろに下がった
「はいっ!」
悠助が差し出した手の中には赤い小さな玉があった
「これは…宝珠か…?」
「ううん。かるらんの貸してくれたのはこっちだよ。これは僕の宝物」
悠助がもう片方の手にある迦楼羅の宝珠を見せた
「掃除した時に見つけたんだ~…綺麗だから宝物にしたの。でね、かるらんも宝物貸してくれるから僕も貸すよ」
迦楼羅の手をとって【宝物の玉】を渡した
「…迦楼羅8かるら)の宝珠そっくりだっちゃね…」
緊那羅が玉を見比べて呟いた
「これなら乾闥婆にも…」
「僕がなんです?」
迦楼羅と緊那羅、そして京助が固まった
屋根の上からした聞き覚えのある最強 (凶)人物の声
「…乾闥婆…いつからそこに…」
「たった今来たばかりですが…何か僕のこと話していたみたいですね」
ストンと屋根から地面に着地すると3馬鹿から拍手が巻き起こった
「なんだ。とにかく最強とかいうからすげぇゴッツイ奴想像してたのに普通の奴じゃん」
坂田が乾闥婆を見ていった
「…最強なのは中身だっちゃー…;」
京助が遠い目をしながら緊那羅の口真似をした
「迦楼羅」
乾闥婆に名前を呼ばれると気まずそうに迦楼羅が顔をそらした
乾闥婆はにっこりと笑うと迦楼羅の前髪を引っ張った
「何してるんですか? こんな所で。僕がどれだけ探したと思っているんですか…ッ」
「いだだだだだだだだだッ! 痛いわ! たわけっ!!!;」
「たわけは貴方でしょう。まったく…っ」
乾闥婆が最凶オーラを出しつつ迦楼羅の両方の前髪を思いっきり引っ張る
「痛いといってるだろうがッ!;」
迦楼羅が怒鳴ろうが乾闥婆は動じず尚もどこか怖い笑顔で前髪を引っ張り続ける
「…つえぇ…;」
「…な?」
3馬鹿が乾闥婆の最凶っぷりに思わず拍手をした
「で…宝珠は見つかったんですか?」
全員がドキーンとし固まった
「な…何故それを知っている…?」
迦楼羅がたずねると
「…有るべきものが無かったら誰だって気づくと思いますけど」
乾闥婆が呆れたようにいった
「いや…まぁ…その…;」
乾闥婆から視線を逸らし手の中にある【悠助の宝物の玉】を握った
「かるらん…」
悠助が心配そうに迦楼羅を見つめる
「…貴方は…栄野悠助くんですね? はじめまして僕は乾闥婆と申します」
乾闥婆は悠助に自己紹介をすると再び笑顔だけどどこか禍々しい目を迦楼羅に向けた
迦楼羅は乾闥婆と目を合わせないようにしながら手の中で玉を転がす
「けん…け…」
「いいずらいのならば省略して呼んでくれていいですよ」
乾闥婆の名前を言えずにいた悠助に乾闥婆が微笑みながら言った
「けんちゃん…あのね…かるらんは…」
カツーン…コロコロ…
悠助が何か言おうとしたその時迦楼羅の手から【悠助の宝物の玉】が落ちて乾闥婆の前まで転がっていった
「…なぁ…今の状況、かなりやばくね?」
中島がボソッと言った
「…ヤバイヤバイ…」
坂田と南、そして京助も頷きながら口をそろえた
「…これは…」
乾闥婆が転がってきた玉を拾い上げると迦楼羅と緊那羅が雷に打たれたような顔をした
「…ヤヴァイっスね…;」
坂田がその様子を見て言った
「これからどうなるんでしょうか…栄野さん」
南が手でマイクを作り京助に向けた
「…血の雨かなにかが降ると思われます」
京助が遠い目をしながら答えた
「けんちゃん! あのね! かるらんは…」
悠助が乾闥婆に駆け寄りさっき言いかけた何かを言おうとしている
乾闥婆は玉を見たあと悠助を見てそれから緊那羅のそばにある倒れている向日葵を見ると悠助を撫でた
「…迦楼羅が貴方の育てた向日葵を台無しにしてしまったんですね?すいません何しろ短気なものですから」
にっこりと笑って乾闥婆が悠助に言った
「迦楼羅」
そして顔を上げると迦楼羅に近づき
「宝珠が見つかったのならばさっさと戻りますよ」
といいながら迦楼羅の前髪を引っ張った
【悠助の宝物の玉】を【宝珠】と言っている乾闥婆を見て
「…バレてない…?」
坂田が呟いた
「…みたいだな」
中島が坂田の肩に寄りかかりながら言った
「まったく…」
乾闥婆は溜息をつくと迦楼羅の前髪に【悠助の宝物の玉】をつけた
「ほら、帰りますよ。お騒がせしました」
「髪を引っ張るな!たわけっ!;」
迦楼羅の前髪を手綱のように引っ張りながら乾闥婆は緊那羅を見
「…早くそこの向日葵、起こしてあげたらどうですか?」
と言った
「けんちゃん…あのね…」
悠助が乾闥婆の服を掴んでやっぱり何かを言おうとしている
「…大事に…してくださいね? くれぐれも失くさない様に」
悠助の頭を撫でにっこり微笑む乾闥婆を迦楼羅は黙って見た
「乾闥婆…お前…」
「さぁ、帰りますよ迦楼羅」
「いだだだ!!; 引っ張らなくとも帰るわ!!! たわけッ!;」
ギャーギャー騒ぐ迦楼羅の前髪を引っ張ってスタスタと歩く乾闥婆の様はまるで犬かなにかを連れて散歩に行くようだった
「…ペットとご主人…」
南が呟いた
「…けんちゃん…かるらん…」
乾闥婆はチラリと後ろを振り返り微笑むと迦楼羅と共にスゥっと消えた
「…驚かないのか」
京助が3馬鹿に聞いた
「…今更…」
3馬鹿が口をそろえた
「動いて話す向日葵に口から火を吐くテンちゃん、だっちゃラムちゃん、最強飼い主…こんだけ色々ありましたから」
中島が指折り言った
「これ以上何に驚けと」
南が京助の頭に顎を乗せて聞く
「実は俺ムガムッチョ星人だったんだ」
京助が言った
「うわーそりゃぁびっくりだー」
坂田が棒読みの言葉でわざとらしく驚くと4人そろって笑い出す
「ヒマ子さん起こしてやらないとな」
京助が立ち上がると3馬鹿も庭に裸足で降り倒れているヒマ子の周りに集まった
ヒマ子を起こしてこぼれた土を手で掬い入れそこに悠助が【宝珠】を埋めた
「…何も起こらないっちゃね」
緊那羅がヒマ子を突付いた
「…ヒマ子さん…」
悠助の眉毛が下がってきた
「よし! こうなったら最終手段だ!京助!」
中島が勢いよく立ち上がり京助を指差した
「…嫌な予感がするんですけども」
京助が中島を見上げ嫌そうな顔をする
「目覚めのキスだーーーッ!!」
中島が叫んだ
「やるかーーーーーーッ!!!;」
京助が拒否の大声を負けじと張り上げたが3馬鹿に押さえつけられたのと悠助のお願いの眼差しに負けて半泣き半怒りの顔でヒマ子にキスをした
するとなんということでしょう!
葉がピクリと動きヒマ子が目を開けた
「ヒマ子さんっ!!」
悠助がヒマ子に抱きつくと歓声が上がる
「私…一体何が…?」
悠助に抱きしめられきょとんとしているヒマ子
「…愛の力は偉大だな」
坂田が白くなっている京助の肩を叩いた
「愛は地球を救う…か…」
中島が同じく京助の肩を叩くと京助がパタリと倒れた