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【第十回・参】タリラリタララ

【神様の言うとおり】どこの地域にもあるこの呪文のような言葉。その後ろにつける言葉に緊那羅が悩まされてそして…

「ど・れ・に・し・よ・う・か・な・て・ん・の・か・み・さ・ま・の・い・う・と・お・り・に・し・ま・す・よ・なのなのなすびのかきのたね~あぽぺの~ぺっ!! これっ!」

悠助がテンポよく歌いながら指を動かしてそして止めた

「ハイ! ハッズレ~」

南が笑う

「む~ぅ…」

悠助が膨れた

「んでコレとコレ…あっがり~!!」

南が畳の上にあった四枚のトランプをめくってそして手持ちにする

「いや~…久々にやると楽しいね神経衰弱!」

南がハッハと笑って手持ちトランプを数えだす

「てか【神様の言うとおり】ってのもあったっけナァ…たしかコレ地域地域でちがうんじゃなかったか? こないだテレビでやってた」

中島が同じく手札を数えながら言う

「あ~俺も見た見た! たしかさ~…【桜島ドカーン!】とか言うのなかったか?」

坂田が言う

「あったあった!! 俺ソレお気に入り!」

数え終わった南が坂田を指差して言った

「…なんなんだっちゃソレ…ドカーン?」

ストーブの前を陣取っていた緊那羅きんならが聞く

「あのね~コレはね~選ぶ時に使うの」

悠助が笑顔で言う

「選ぶ時?」

悠助の隣で慧喜が聞く

「そーホラ、よくあるじゃん? どれにしようか迷う時。そん時に歌っちゃうのがコレ」

南が答えた

「いろんなのあるんだっちゃ?」

緊那羅きんならが膝で歩いてきて聞いた

「神様の言うとおりまではなんだかドコもわりと一緒だけどその後が違うんだよ」

中島が答えた

「俺らは【なのなのなすびのかきのたねアポペノペ】だけどな」

京助が言う

「…最後のアポペノペってなんだっちゃ?」

緊那羅きんならが聞く

「…アポペノペ…」

南が繰り返して隣にいた坂田を見た

「…アポペノペ…」

坂田が悠助を見た

「アポペノペはね~アポペノペだよ緊ちゃん」

悠助が緊那羅きんならに言った

「あ…そうなんだ…っちゃ?;」

「うん~」

いまいちよくわからない答えを貰った緊那羅きんならが納得いかないようなカンジで言うと悠助が満面の笑みで頷いた

「…緊那羅きんならの【どうして?】には悠が使えるな…」

京助が口の端をあげて言った


「アポペノペ…」

3馬鹿が帰った後の茶の間で緊那羅きんならが小さく繰り返す

「お前ナァ;」

そんな緊那羅きんならに京助が呆れたように言った

「だって…気になるんだっちゃッ!;」

緊那羅きんならが声を大きくして言う

「だから悠が言っただろ? アポペノペはアポペノペだっつーの」

京助が側にあったタマゴボーロを数個口に運んだ

「うあ~…;気になるっちゃ~; かゆい~;」

緊那羅きんならが言う

「アポペノペくらいでんなに考えるなよ; 深い意味はないと思うぞたぶん」

口の中でタマゴボーロを溶かしながら京助が言った

「俺はその前の【なのなのなすびのかきのたね】の方が気になるぞ…なすびなのに何でかきのたねがでてくんのかさー…」

京助がまたタマゴボーロを口に入れた

「なのなのなすび…アポペノペ…」

緊那羅きんならがボソボソと繰り返す

「…不思議な言葉沢山あるっちゃね」

少し間を置いて緊那羅きんならが呟いた

「そか?」

聞こえたのか京助が聞いた

「うん…言葉だけじゃないっちゃけど…物でもなんでも…」

緊那羅きんならが言う

「そりゃ…そうだろ俺だってこないだ【天】だか行った時は回り全部不思議だったんだ…お前がコッチで不思議と思わない方が不思議だろ」

一個のタマゴボーロを指でつまんで転がしながら京助が言った

「まぁ…そうかもだっちゃけど…」

緊那羅きんならが言う

「…アポペノペ…」

「もうええっちゅーん;」

しばらく間を開けて緊那羅きんならがまた呟くと京助がタマゴボーロを緊那羅きんならにぶつけた

テーブルの上に置かれた青い包みの四角い箱


「…やっちゃったっちゃ…;」

まだボサボサ頭の緊那羅きんならが溜息をついた

「珍しいわね緊ちゃんが寝坊なんて…何かあったの?」

母ハルミが洗い物をしながら緊那羅きんならに聞く

「昨日アポペノペが気になって気になって眠れなかったんだっちゃ~; ゴメンだっちゃ;」

緊那羅きんならが謝る

「アポペノペ? …何ソレ」

母ハルミが洗い物の手を止めて聞く

「えっと…何かを選ぶのに困った時に歌う歌の…最後…とか言ってたっちゃ」

緊那羅きんならが昨日きいたことを思い出しながら言う

「ああ! 神様の言うとおりね?」

母ハルミが笑った

「うん…;それで…このアポペノペの意味を考えてたら…っく…ふぁぁ」

緊那羅きんならがあくびをした

「弁当後から届けにいくっちゃ…」

のらくらと洗面所に向かいながら緊那羅きんならが言った


ぐきゅるるる~…

「ぅあ”~~~~~~~~~~~~~…;」

机に突っ伏して京助が腹を押える

「何? 今日は弁当ナシか京助」

浜本が京助の頭を教科書で叩く

緊那羅きんならまた帰ったんか?」

隣の席の坂田が聞く

「…いや…いるけど…起きてこなかったんだよ;」

京助が頭だけを動かして言う

「喧嘩か?」

浜本がしゃがんで京助の顔を覗き込んだ

「…なんもしてねぇぞ俺;」

しばらく何かを考えた後京助が言う

「…なぁ京助」

「あ?」

浜本が意味深な顔で京助に耳打ちしてきた

「ラムちゃんて…」

「京助---------------!! お客さん連れてきてやったっぴょん------------!!」

ガラッと戸が開いてリコーダーを片手に持った南が大声で言うと教室中が南の方に注目した

「ホレ」

南の後ろから顔を出した中島が手招きすると京助へのお客=緊那羅きんならが現れた

「弁当!!」

ガタンっと立ち上がった京助が戸口へと走る

「ごめんだっちゃ~;」

緊那羅きんならが謝りながら弁当を京助に手渡す

「寝坊したんだって? ラムちゃん」

南がリコーダーで肩をトントン叩きながら緊那羅きんならに聞いた

「うん;」

緊那羅きんならが苦笑いで答えた

「…どうせアポペノペの意味とか考えてたんじゃねぇのか?」

弁当に付属されていたおにぎりのアルミを剥がしながら京助が言う

「え?; なんでわかるんだっちゃ?;」

緊那羅きんならが聞く

「…マジか;」

冗談で言ったらしい京助が呆れる

「よかったでちゅねー京助君昼休み中に御飯届いて」

坂田がやってきて京助の頭を撫でた

「は~…いただきますおにぎりさん…」

京助が目を閉じて言うとおにぎりにかじりついた

「うらやますぃーな京助~」

どこからか戻ってくる生徒がからかい気味に京助達に声をかけていく

「彼女に弁当届けてもらってさ~」

「…彼女?;」

掛けられた言葉に京助が緊那羅きんならを見る


「かの…じょかぁ」

中島が同じく緊那羅きんならを見る

「まぁ…見えるよな」

坂田が頷く

「へ?;」

マフラーを巻き直していた緊那羅きんならが首をかしげた

「すっかり【京助の彼女】で定着だねぇ【かのじょ】で」

南が彼女のじょの部分を強調して言う

「いんでない? じょでこの際」

「んだな」

中島が言うと南と坂田が頷いた


「箸折れると思うけど」

本間が雑誌をめくりながら言う

「なっ…;」

その本間の言葉に阿部が驚く

「彼女ねぇ」

本間が言うと阿部がぴくっと反応した

「…何よ」

そしてジト目で本間を見る

「別に?」

そんな阿部に本間がにっこりと笑顔を返した


「今日五時間だから待ってりゃいいじゃん」

帰ろうとしていた緊那羅きんならに坂田が声をかけた

「あ、そうそうそうしなよラムちゃん! 俺ら次音楽だから教室にいないからさ~ストーブもついてるしあったかいっちゃーん」

南がリコーダーを軽く回しながらいった

「え…; でも…;」

緊那羅きんならが手づかみで弁当を食っていた京助を見る

「いんじゃね?」

ペロっと指を舐めた京助が言う

「一時間待ってられるなら」

くいっと口を拭った京助が教室の中に歩いていった

「俺の席ストーブのすぐ近くだからさ~」

京助を目で追っていた緊那羅きんならに南が言う

「見つかっても別に怒られんの京助か俺等だし」

中島が言う

「でもホラ、祭りん時結構顔知れてるから…」

坂田が言った

「戦う彼女として」

「はっ!?;」

坂田の言葉に中島が笑いながら付け足すと緊那羅きんならが素っ頓狂な声を出した

「誰の彼女だ;」

戻ってきた京助が中島の尻を叩いた

「イトコだろ~? なぁ坂田君?」

京助が笑顔で坂田に言う

「…京助君…関係はいつも進化するものなのだよ…」

そんな京助に坂田がエセっぽい爽やか笑顔で肩を叩いた

「昨日のイトコは今日の彼女…それもまた~じんせぇぃ~」

後半を美空ひばりの名曲に変えながら南が言う


キーンコーンカーンコーン…


「あ~ぁ~川の流れのよぉ~にぃ~ゆぅるぅやぁかにぃ~」

昼休み終了5分前のチャイムとハモりながら3馬鹿が歌う

「てことで後ろから二列目の廊下から参列目が俺の席だからラムちゃん」

南が後ろ歩きしながら言った

「あ…うん」

緊那羅きんならがどもりながら頷いた後京助を見た

「…いんじゃね?」

頭を掻きながら京助が言う

「廊下側だからあんま外から見えねぇし…眠いなら寝てりゃあっという間だし」

2組の戸を開けながら京助が言った

もう皆音楽室に出向いたらしい2組の教室の中に恐る恐る入った緊那羅きんならが教室を見渡した

「ここが南の席で…そっちが中島。好きな方に座ってろ」

南の席の椅子を引いて京助が言う

「じゃぁ…こっち…」

緊那羅きんならが南の席に歩いてきた

「授業終わったらくっから」

そう言い残して京助が2組の教室から出て行った

「ラムちゃん帰ったん?」

戻ってきた京助に浜本が聞いた

「いんや~…南の席に座ってる」

京助が席について5時間目の授業国語の教科書を面倒くさそうに机の上に出した

「健気だねぇ旦那の帰りを待つ妻…」

坂田が言う

「…また進化したんですか坂田君」

京助が口の端をあげて言った

「…俺チョイ保健室いってくるわ」

浜本が立ち上がった

「行ってくるわって…もうすぐチャーリー (国語教師)くんぞ?」

坂田が言う

「なんか腹痛くてさ~; 出産してから保健室に直行してくんわ」

浜本が腹を撫でながら歩き出した

「…ありゃ仮病だな」

坂田が浜本の出て行った教室の後ろの戸を見ていった

「あからさまにそうだろ; 誰でもわかるちゅーん」

京助が軽くゲップ混じりに言った

「まさかと思うけど…まさか…ナァ;」

坂田がボソッと呟きながら京助を見た

「…なんだよ;」

京助が坂田を見返す

「…いや…たぶん違う…うん!; 違う違う! ヨシッ!」

坂田が自問自答して一人納得した後大きく頷いた


チャーリー (国語教師)が3組の教室に入ったのを見ると階段脇の掃除用具入れから浜本が出てきた

「きりーつ…」

号令が掛かりガタガタと椅子の音が聞こえる中浜本がそぉっと掃除用具入れの戸を閉め歩き出しそして2組の教室の後ろの戸の前に立った

「…落ち着け~; 落ち着け~;」

ボソボソと自分に言い聞かせて浜本が戸に手をかけた

「…アレ?;」

ゆっくり開けた教室の戸の開いた部分から教室内を覗いたがソコには誰もいなく

「何の用だっちゃ」

「ヒッ!;」

コツンと後頭部に固いものが当たり独特の話し方が聞こえた

「…あれ…? あなたは確か…京助の…」

止まった浜本の後頭部かに当たっていた固いものが離れ浜本がゆっくり振り返った

「ラ…ムちゃん?;」

教室の中にいると思ってた緊那羅きんならが浜本のすぐ後ろに立っていた

「どうしたんだっちゃ?」

右手に持っていた武器笛を下げながら緊那羅きんならが浜本に聞く

「あ…や…ハハハ;」

浜本が作り笑いをして緊那羅きんなら見た

「…と…とりあえず中はいろ?;」

浜本が戸をあけて2組の教室の中に入った

「授業とかいうのもう終わったんだっちゃ?」

中に入った緊那羅きんならが戸を閉めながら聞いた

「いやまだだけど…ちょっと…」

ボソボソと言った浜本に緊那羅きんならが首をかしげる

「まだ…なのにどうしてあなたはここにいるんだっちゃ?」

緊那羅きんならが聞くと浜本が振り返って自分の頬をポリポリ掻きながら言葉を捜す

「え~…っと…; …サボり」

そして小声で言った

「サボり?」

緊那羅きんならがきょとんとして聞き返した

「あの…だから…あ~…;」

耳を赤くした浜本をきょとんとしたまま緊那羅きんならが見る

「ラムちゃんって……」

「へ?」

段々俯き加減になりながら浜本が何かを言った

「ごめん; 聞こえなかったっちゃ;」

聞き取れなかった緊那羅きんならが謝る

「だからっ; …ラムちゃんってその…京助の……」

「は?;」

また最後の方が聞き取れなかった緊那羅きんならが聞き返す

「あの…もう少し大きな声で…お願いするっちゃ; 私が京助の?;」

緊那羅きんならが浜本に近付く

「だから…!!; …ッ!?;」


顔を上げたすぐ側に緊那羅きんならがいて浜本が固まった

「この距離ならたぶん聞こえ…って離れたら意味ないじゃない;」

緊那羅きんならから後ずさって離れていく浜本に緊那羅きんならが言うと浜本が黒板めがけて駆け出しチョークを掴んだかと思うと勢いよく黒板に文字を書き出した

「え…」

黒板を見ていた緊那羅きんならが少し驚いた顔をした

「…そんなこと急に言われても私…;」

困った顔をした緊那羅きんならが言う

「だ…よね; あ…あはははは~…ぁあ;」

浜本がわざとらしく笑った後溜息をついた

「ごめんだっちゃ…私…」

「いや! いいって! 謝らなくていいって; 俺のほうこそいきなり変なこと聞いてゴメン;」

謝った緊那羅きんならの言葉を止めて浜本が謝った

「馬鹿だよな俺~…困るよね本当いきなりこんなこと聞かれちゃァさ~;」

浜本が苦笑いで言う

「う…ん…でも私…」

「もういいから! 忘れて忘れて!;」

浜本がヒョイと教卓から降りてきた

「…本当馬鹿だよナァ俺;」

浜本がそう言ってチラッと見た黒板に書かれていた言葉

『京助の今日のパンツの色は何色?』

「そうだよねいくら一緒に暮らしててもおんなじ部屋じゃマズイもんね; 着替えなんか見ないよな~;」

浜本が黒板消しで文字を消しながら言った

「別にまずいことじゃないと思うんだっちゃけど…部屋があま…」


ゴトッ


緊那羅きんならが言うと浜本が黒板けしを落してチョークの粉が舞った

「…えっと…一緒の部屋でもまずくない…の?;」

浜本が黒板消しを拾いながら聞く

「うん」

緊那羅きんならが首をかしげながらも頷いた

「そ…うなんだ; へー…一緒の部屋でも別にまずくないんだ~…;」

浜本が棒読みで言う

「…あのさラムちゃん」

「なんだっちゃ?」

パンパンと手についたチョークの粉を払いながら浜本が緊那羅きんならを見た

「…京助のこと…ど…う思ってる?」

「どうって…いうのは?」

どもりながら聞いてきた浜本に緊那羅きんならがさらりと聞き返した

「どうって…いうのは…ホラ…好きとか嫌いとか…あんじゃん」

浜本が緊那羅きんならから目をそらしてボソボソと言った

「好きとか…好きとか…さぁ;」

執拗に好きを繰り返す浜本をきょとんとした顔で緊那羅きんならが見る

「あの…」

緊那羅きんならが声をかけた

「つまりあなたは私が京助を好きかってこと知りたいんだっちゃ?」

緊那羅きんならが聞くと浜本が一気に赤面した

「あ…え…っと…そう…です;」

赤い顔の浜本が答えた

「好きだっちゃ」


「ベックショォッ!!!;」

「汚ッ!!!;」

「バッチィッ!!;」

教室中に響いた京助のクシャミに両隣の阿部と坂田が同時に飛びのいた

「手で押えなさいよ馬鹿ッ!;」

阿部が怒鳴る

「風邪か? 京助」

チャーリー (国語教師)が黒板の手を止めて振り返った

「誰か噂してんじゃねぇの?」

坂田が言う

「ウワサねぇ…まぁ京助に対するウワサだからロクなことじゃないと思うけど」

阿部がずれた机を直しながら言った

「ホラ言うじゃない? 馬鹿は風邪引かないって」

「てめ;」

阿部の言葉に京助が鼻を啜りながら言う

「阿部に座布団三枚」

チャーリー (国語教師)が言った


「京助は大事だっちゃし…好きだっちゃよ」

固まっている浜本に緊那羅きんならが笑顔で言った

「私は京助を守りたいんだっちゃ」

おそらく聞こえてはいないであろう放心状態の浜本に緊那羅きんならが言う

「…そ…っか…はっは~」

しばらく無言だった浜本があからさまな作り笑いをして顔を上げた

「アナタは京助が嫌いだっちゃ?」

緊那羅きんならが聞く

「俺? …は…ってかあの…俺さ【浜本】って名前」

浜本が自分を指差して言った

「浜本…だっちゃ?」

緊那羅きんならが言うと浜本が頷いた

「結構京助と一緒にいたじゃん?」

浜本が苦笑いで言う

「そう…だっちゃけど名前聞いたことなかったんだっちゃ; 浜本…もう覚えたっちゃ」

緊那羅きんならが笑顔で言った

「…っ…の…」

顔を赤くした浜本が顔をそらした

「…あのさ…ラムちゃん…」

少しためらいながら浜本が自分のポケットに手を入れた

「何だっちゃ?」

緊那羅きんならが返事をした

「…写真とらせてくんねぇ?」

そう言いながら浜本がポケットから赤いデジカメを取り出した

「写真…って…このくらいの四角い絵みたいのだっちゃ? こう…ぴぃすとかしてる…」

緊那羅きんならが前に悠助から聞いた【ピースは写真の時のポーズ】という話を思い出して指を二本立てた

「そうそう!! …でもピースはしないで欲しいんだ」

浜本が緊那羅きんならの真似をして指を二本ピースにして言う

「え…しなくても写真とれるんだっちゃ?」

緊那羅きんならが少し驚いた顔で浜本を見る

「え…うん; そうだけど…ラムちゃんもしかして写真撮ったことない…?」

浜本が聞くと緊那羅きんならが頷いた

「そっか…そういやラムちゃんって別なトコから来てるっていってたよな…」

浜本が祭りの時に起こった出来事を思い出したのか緊那羅きんならを見ながら呟いた

「なら丁度いいや! 一枚とらせてくんね?」

浜本がデジカメを構えた

「え…っ;」

緊那羅きんならが少し後ずさる

「大丈夫大丈夫一瞬だから~…ハイ! 笑って~」

「わっ;」

ピピンという音と共に明るく光ったフラッシュに緊那羅きんならが驚いて目を閉じた

「あ~…; 目ぇ閉じちゃった~;」

浜本がデジカメの画面を見て言った

「…なんなんだっちゃ…?;」

恐る恐る目を開けた緊那羅きんならが聞く

「写真とったの。ホラ」

浜本がデジカメの画面を緊那羅きんならに見せた

「え…私…?; でも悠助の写真は四角い…薄かったっちゃけど…」

緊那羅きんならが手で四角を作って言った

「コレを現像したら四角くて薄くなるの」

浜本が笑って言う

「…へぇ~…」

緊那羅きんならが再びデジカメの画面を覗き込んだ


「俺写真撮るの好きでさ~…景色とか結構撮ってるんだ」

「そうなんだっちゃ?」

浜本が何気に言うと緊那羅きんならが顔を上げて浜本を見た

「写真って一瞬しか一回しかないものを残しておけるじゃん?」

浜本がデジカメを構ながら言う

「昔とか…だっちゃ?」

緊那羅きんならが聞く

「そう! もう二度と戻れない時を残しておけるしさ…俺はビデオとかより写真派」

ピピンという音がしてまたフラッシュが光った

「俺は好きなものをこうして写真に収めてンだ」

浜本が言う

「好きなもの…?」

「そう! 好きな…」

緊那羅きんならが聞くと浜本が言葉の途中で止まった

見る見る真っ赤になった浜本をきょとんとしたまま見る緊那羅きんなら

「好きなものを写真にとるんだっちゃ?」

緊那羅きんならが聞くと意味もなく浜本が何度も頷く

「じゃあわた…」

「違うんだッ!!;」

何か言いかけた緊那羅きんならの言葉を浜本が止めた

「俺はただ笑顔がッ!; だからあの俺はラムちゃんがッ!;」

「…へ?;」

「そう!! あの! 笑顔が好きで! そうそう!!」

浜本がやたら大きな声で言った

「や~! 笑顔っていいよね!! うん!!」

「あの…;」

赤い顔で何度も頷きやはり意味もなく声を大きくして言う

「…あの…;」

「じゃ俺授業戻るからッ!;」

緊那羅きんならの呼びかけを打ち消して浜本がソソクサと戸口に立った

「またねッ!」

「あ…;」

あからさまな作り笑顔を緊那羅きんならに残して浜本が2組の教室を出て行った

「…私にも写真の撮り方…教えて欲しかったんだっちゃけど…;」

浜本を呼び止めようとしたらしき緊那羅きんならの手が空しく宙をかいた


「あ、仮病人が帰還した」

坂田が後ろの戸から入ってきた浜本を見て言う

「いや~出産したらだいぶ楽になってさ~」

「ずんぶふんばったんだな~顔真っ赤じゃん」

戸のすぐそばの席の男子生徒が言った

「そりゃもう難産で難産で…あ、でもケツは切れてません!!」

浜本が言うとアチコチから噴出したらしき笑いが漏れた

「わかったから早く席に着け」

チャーリー (国語教師)も笑いながら言った

「手洗ってきたか?」

「男の子? 女の子?」

自分の席に向かう浜本に生徒達が面白がって聞く

「一本だったから男だな」

「何を基準にそれは決まるんだ」

浜本が言うとそれに突っ込んだ言葉に教室中がドッと笑った

「旦那は誰だ?」

京助も笑いながら浜本に聞いた

「それは秘密です」

自分の席に座りながら浜本が答える

「真面目にウンコだったのか?」

坂田が斜め後ろの席に座った浜本にこそっと聞いた

「…そうだけど?」

少し間を置いて浜本が答えた

「他にどこ行くっちゅーんだよ」

「まぁ…そうだけど……うん;」

何かふに落ちない坂田が自分を納得させるためなのか少し考えた後頷き前を向いた

「……」

浜本が自分のポケットをそっと触った後京助の後姿を見てそれから教科書を机の上に出した

「いいか~? じゃ続きだ文法には…」

ようやく笑いと雑談が治まってきたのを見計らってチャーリー (国語教師)が黒板に向かった


授業終了のチャイムがやはり雑音混ざりで正月中学校の校舎内に鳴り響くと同時に二年三組の教室からは伸びとあくびそしてざわめきが聞こえはじめた

「…終った…んだっちゃ?」

二組の教室にいた緊那羅きんならが椅子のがたがたという音を聞いてひょいと廊下に顔を出した

「…まだ誰も来ない…っちゃね…」

再び体を引っ込めて緊那羅きんならは教室を見渡した

「…写真…」

「写真?」

「ぅわ;」

突然聞こえた京助の声に緊那羅きんならが身構えたまま振り返った

「きょ…うすけ;」

顔の前で構えた手を下げて緊那羅きんならが安堵の溜息をついた

「帰りのホームルームあるから先に玄関で待ってろ二組も帰ってくるし」

笑い声や雑談が廊下や教室から聞こえはじめる

「あ…うん…」

頷いた緊那羅きんならが廊下に出た

「逆逆!!;」

「えっ;」

廊下に出たはいいが玄関とは逆方向に進もうとした緊那羅きんならを京助が呼び止める

「こっちだっちゃ?;」

「こっちだっちゃ;」

緊那羅きんならが振り返って方向を指差すと京助も真似をした

「校内で迷子になんなよな;」

「あははは;」

呆れる京助の横を緊那羅きんならが苦笑いで通る

「…あ、ラムちゃん」

本間が緊那羅きんならの姿を見て言うと阿部が顔を上げた

「…と栄野」

京助の名前をいいながら阿部を見る

「…何よ」

むすっとした阿部が本間を見返した

「別に?」

そんな阿部に本間がにこりと笑みを返す

「…別にアタシは…そりゃ…気になるけど…」

鞄に教科書一式を入れながら阿部がボソッと言う

「気にしなさい気にしなさい」

「ッ…!!;」

本間が頷きながら言うと阿部が顔を赤くした


緊那羅きんならは?」

席に戻ってきて教科書を机の上に一式出した京助に坂田が聞いた

「玄関で待ってるように言ってきた」

落ちたノートを拾いながら京助が答える

「やっぱ寝てたのか?」

鞄の止め具を止めて坂田がまた聞く

「突っ立って…写真がどうの言ってたん」

「しゃ……しん…ですか」

京助の返答を聞いた坂田がチラリと浜本を見た

「浜本」

椅子ごと移動して坂田が浜本の机の側にやってきた

「…お前まさかさっき二組にいたか?;」


ドサッ


浜本の耳元で坂田がボソボソ聞くと浜本が鞄を床に落した

「な…ッ;」

口をパクパクさせて慌てる浜本を見て坂田が額に指をついて溜息を吐いた

「…大当たりかよ;」

「なんで知ってんだよッ;」

小声だけど怒鳴っているようなカンジで浜本が坂田に聞く

「俺は何でも知っている」

坂田が胸をはって言うと浜本がうっと少し体を後ろにそらした

「一目惚れご苦労さん」

ポンポンと坂田が浜本の肩を叩いていると担任教師・通称ウニが教室に入ってきた

緊那羅きんならは男だっていっただろが;」

坂田がボソボソと浜本に耳打ちする

「信じられッか!; あんなキラキラした男がどこにいる!!」

浜本が小声で怒鳴った

「…何してんだお前ら;」

鞄を肩にかけた京助が坂田と浜本を上から見下ろした

「ありん?; 帰りのホームルームは?;」

坂田が苦笑いで京助を見上げた

「終ったぞ?;」

京助の言葉に坂田と浜本が周りを見回すと生徒達が帰れる嬉しさでキャッキャと話しながら教室を出て行っていた

「うっはー; 浦島太郎気分だねぇ浜本君!!」

坂田が椅子をがたがた言わせて自分の席に戻ると鞄を持って立ち上がった

「なぁ京助」

浜本が京助に声をかけた

「へいほ?」

京助が返事をする

「…やっぱいい」

少し間を開けて言った後浜本が立ち上がり歩き出した

「浜ちゃーん; 鞄忘れてっぞー;」

京助が浜本の鞄を手に浜本の後を追いかけると坂田もそれに続く


「あ、旦那様ご登場」

玄関少し手前の角を曲がったところで南が手を振ってきた

「2組移動のクセに早かったんじゃねぇ?;」

坂田が中島と南に言った

「音速の戦士と言ってくれ」

南がキラーンポーズで言う

「青いハリネズミか」

京助がそれに突っ込む

「南、中島ちょいカム」

坂田が南と中島を呼ぶと顔を見合わせた二人が首をかしげながら坂田の元に歩み寄った

「俺は仲間はずれですか~ぃ;」

京助がジト目で3馬鹿を見た

「…帰りにスーパー寄ってくのか?」

「へっ?; あ…うんできれば」

黙っていた緊那羅きんならに京助が聞くと緊那羅きんならが慌てて返事をする

「もしかしてお前まだアポペノペのこと考えてんのか?;」

京助が聞く

「アポ……ッ; 折角忘れてたのにまた思い出しちゃったじゃないっちゃかッ!!;」

呟いてから声を大きくしながら緊那羅きんならが京助に言った

「気にしなせぇ気にしなせぇハッハ」

「阿呆ッ!!;」

スパン!

エセ爽やか笑顔で頷く京助の頭を緊那羅きんならが軽快な音をさせて引っぱたいた


「…マジで?;」

中島と南がハモって聞くと坂田が頷いた

「あんなキラキラした男がどこにいるってさ」

坂田が言うと南と中島がゆっくりそぉっと振り返り緊那羅きんならを見た

「…まぁ…ねぇ;」

体を元に戻した南が眉を下げた笑顔で言う

「最初あったときはもうちょっとこう…男! って感じだったんだけどナァ…」

南より少し遅れて体を戻した中島も言った

「平和ボケ?」

南が言う

「…ありえる…」

坂田がメガネを光らせた

「ハルミさんの影響カナァ; すっかり栄野家の主婦…あ夫の方の主夫ね? になっちゃって…」

南が言う

「でもしっかりチンコはついてたし」

坂田が言うと三人揃って緊那羅きんならを見た


「…何か見られてるんだっちゃけど;」

三人の視線を感じた緊那羅きんならが3馬鹿を見返した

「お前に関することを話してるっぽいなありゃ」

壁に寄りかかっていた京助が口の端をあげて言う

「私?;」

そんな話をされることに覚えのない緊那羅きんならが驚いて自分を指差した


「…でもこうみると立派なカポーに見えんだよナァ;」

中島がボソッと言う

「ちょいお前 緊那羅きんならと並んでこいや」

「イエッサー!!」

坂田が南に言うと南が緊那羅に駆け寄った

「ハイハーイ!!」

「ぅわ;」

そして緊那羅きんならと腕を組んで坂田と中島に向かって手を振る

「…何しとんじゃ;」

呆れ顔で京助が聞く

「ん~? 男と女のラヴゲーム (仮)? とにかくそんなん」

「…わかんねぇよ;」

ハッハと笑いながら南が答えると京助が南の頭を軽く叩いた


「ど?」

戻ってきた南が坂田と中島に聞いた

「よくわからんけど…しっくりきてないな…次中島行って来い」

「ラジャー」

坂田が中島を指名すると中島が敬礼ポーズをした後 緊那羅きんならの隣に立った

「…何なんだっちゃ;」

自分より背の高い中島を緊那羅きんならが見上げる

「マァマァ」

そんな緊那羅きんならの肩をを中島がハッハと笑いながらポンポン叩いた

「…お前等は一体何がしたいんだ;」

京助が突っ込むと中島が戻って来い合図をしている南に気づき京助に向けて片手を上げた後小走りで戻っていく

「…謎だ;」

緊那羅きんならと目があった京助が呟くと緊那羅きんならも頷いた


「で?」

戻った中島が先ほどの南と同様坂田と南に聞く

「やっぱりしっくりこねぇんだよなぁ…」

そう言いつつ坂田が緊那羅きんならを京助の方に目を向けた

「…しっくりきてる」

坂田が呟くと南と中島も京助と緊那羅きんならに目を向けた

「…キテマスキテマス」

南が軽く頷きながら言うと中島も頷く


「…また見られてるんだっちゃけど;」

3馬鹿の視線を受けながら緊那羅きんならが言う

「…今度は俺もかぃ;」

京助が口の端をあげて言うと3馬鹿が足並み揃えてやってきて京助と緊那羅きんならを取り囲んだ

「お前らは二人で一つだ! ウム!!」

「はっ!?;」

坂田が言うと南と中島も頷き同時に緊那羅きんならと京助が素っ頓狂な声を上げた

「ラムちゃんと京助でワンセットってこ・と・さ」

南がキャルンポーズで言う

「人をファーストフード店のセット物と一緒にすな;」

京助が言う

「なんだかサァ…いつからか京助の隣には緊那羅きんならってイメージが定着しちまってるみたいなんだよな俺ら」

中島が言うと坂田が頷く

「見た目は立派にカップルに見えるから安心したまへ!!」

「何をじゃ;」

南がハッハ笑いながら京助の肩を叩くと京助が南にチョップを繰り出した

「…何だよ;」

隣にいた緊那羅きんならが黙って自分を見ているのに気づいた京助が緊那羅きんならを見た


「いい加減帰らない?」

歓談の手すりに肘をついた本間が足を組みなおしながら声をかけたのは阿部

「…気になるなら側に言って聞いてくれ…」

「たらこんなことしてないわよッ!!」

本間の言葉を阿部がかき消した

「ぱっぱと告白でもなんでもすればいいのに」

「ッ!?;」

本間が言うと阿部が眉を吊り上げて真っ赤になる

「かっわいい」

そんな阿部を見て本間がふっと笑った

「うるさいッ!!;」

阿部が怒鳴って立ち上がる

「帰るよッ!;」

「はいはい」

大股で歩き出した阿部の後を本間が楽しそうについていく

「邪魔ッ!!」

「わッ!!;」

京助たちの後ろで阿部が怒鳴ると一同が驚いて身をすくめた

「あ…阿部?;」

「通路でギャーギャーやってんじゃないわよッ!邪魔でしょッ!!」

名前を呼んだ京助に阿部が声を荒げて食って掛かる

「ご…めんだっちゃ阿部さん;」

「こっちこそごめんねラムちゃん」

吃驚した顔のまま緊那羅きんならが誤ると本間が横から謝り返した

「香奈ッ!;」

本間に向かって阿部が怒鳴る

「阿部ちゃんどーどー;」

南が阿部を宥め様と手を上下させると坂田と中島そして京助も同様に手を上下させ始める

「アタシは馬じゃないわよッ!!」

「痛ってぇッ!!;」

顔を赤くした阿部が坂田の足を思い切り踏んだ

「…うっわぁ痛そう;」

南が声なく痛がる坂田を見て言うと阿部が南を睨んだ

「どいて」

肩で風を切るように歩き出した阿部に一同がまるでモーゼのアレのように道を作った

「じゃぁね」

大股で歩く阿部を追いかけていく本間が京助達に向かって軽く手を振った


「ラムちゃーんモヤシ安いよモヤシ! 10円だって」

南が緊那羅きんならを呼んだ

「今日モヤシか?;」

京助がカゴを持つ緊那羅きんならに聞く

「え?; まだ何にしようか考えてないんだっちゃけど…;」

緊那羅きんならが答える

「カレーとか?」

中島が言う

「俺肉じゃが食いたい」

坂田も言う

「俺魚がいいな~」

南がモヤシを手に持ちながら言った

「お前ら晩飯食っていくのか?」

京助がさりげなくカゴの中に薄焼きせんべいを入れながら聞く

「あっ; コラ余計なもの入れるなっちゃッ!!;」

緊那羅きんならがペンッと京助の頭を叩いた

「いいじゃん100円だし」

「駄目だっちゃッ!; ホラ! 戻してくるっちゃ!!」

ブーッと口を尖らせた京助に緊那羅きんならが言う

「ママ~僕たけのこの山がたべちゃいの~」

南が指をくわえて幼稚化して言った

「自分で買えっちゃッ;」

緊那羅きんならが怒鳴る

「じゃパパ~」

南が今度はママをパパに変えて再度強請った

「言い方変えても駄目だっちゃッ!!; あーもう!買い物進まないじゃないっちゃかッ!!;」

何も入っていないカゴを振って緊那羅きんならが言う

「っとに…; …あ…」

「どうしたよ緊那羅きんなら?」

何かを見つけた緊那羅きんならに中島が声をかけた

「あれ…」

緊那羅きんならが指差した方向に3馬鹿と京助が目を向けた

「…写真…現像? 一枚10円…?」

レジの側にかけてあったポスターを坂田が読み上げた

「…がどうかしたの?」

南が坂田の言葉の後に続けて聞く

「アレって写真…だっちゃよね?」

緊那羅きんならが聞きかえした

「そうだけど…そういやお前さっき写真がどうの言ってたっけな?」

京助が言う

「写真って…好きなもの撮るんだっちゃよね?」

緊那羅きんならがまた聞くと少し間を開けた後3馬鹿と京助が頷いた

「まぁ…そうだな嫌いなものを撮るってのは少ないかな」

中島が言う

「…中島達はどんなの写真に撮りたいって思うんだっちゃ?」

「俺等…?」

緊那羅きんならが聞くと3馬鹿と京助が考え出した

「俺は…そうだなぁ…やっぱ楽しこととか?」

南が言う

「でも何で急に写真?」

言った南が緊那羅きんならに聞いた

「んと…私も写真撮りたいんだっちゃ」

緊那羅きんならが答えた

「何を撮るんだ?」

中島が聞く

「…え…っと…」

そのまま緊那羅きんならがしばらく黙り込んだ

「な…なんでもいいじゃないっちゃか;」

緊那羅きんならが苦笑いで言った

「まさかラムちゃん盗撮?」

南が言う

「何を」

中島が突っ込む

「…何にしようか」

「オチを考えてから発言しろオチを;」

答えた南に中島がテンポよく再度突っ込んだ

「でもさ写真撮るにはカメラいるっしょ」

坂田が言う

「カメラねぇ…バカチョンでいいか」

「ば…かちょん?;」

京助がレジの方に向かって歩き出す

「…バカチョンって何だっちゃ?;」

緊那羅きんならが3馬鹿に聞いた

「あ~…使い捨てカメラのこと」

坂田が答えた

「何で使い捨てをバカチョンって言うんだっちゃ?」

緊那羅きんならが聞く

「ん~とねぇ……どうしてだっけ;」

答えようとした南が中島の方を見た

「俺かよ; あ~…何でだっけ?;」

中島が今度は坂田を見た

「…知らん!!」

坂田が気持ちいいくらいキッパリ言い切った


「…ばかちょん…」

スーパーから出た3馬鹿と京助と使い捨てカメラをまじまじと見る緊那羅きんなら

「フジカラーで写そッ」

南が懐かしいCMソングを歌った

「…でもコレ…なんだか形が違うっちゃ」

カメラを上から下から見た緊那羅きんならが言う

「なんだか違うっちゃっても…カメラだぞ」

買い物袋を下げた京助が突っ込む

「ばかちょんだけどな」

坂田が言う

「たぶん緊那羅きんなら言ってんのデジカメのことなんちゃうかなと俺は思うんだけどさ」

坂田が緊那羅きんならを見た

「…お前そんな高級なもん買えねぇし正月町じゃ取り寄せて買うしかねぇぞ;」

中島が言う

「デジ…カメ…こう…光るんだっちゃ」

緊那羅きんならが指で四角を書きながら言った

「あ~あ~…デジカメだねぇ…でもこのばかちょんも立派なカメラなだよ~ラムちゃん」

南が緊那羅きんならの持っていたカメラを手に持った

「巻いて~巻いて~巻かれて~たいて~ぇ~」

某演歌の替え歌を歌いながら南がカメラのアレをジャコジャコと指で巻きそしてフラッシュのツメを立てた

「ハイハ~イ!! 駆けつけるのも撮るのも早い天才写真家でーす! 思い出の一枚撮りますよ~!」

そして某大人も子供もおねーさんもなゲームに出てくるキャラのセリフを言うと南がカメラを構えた

「チーズ!! サンドイッチ!!」


パシャッ


「わっ;」

南がシャッターを切ると同時に緊那羅きんならが声を上げた

「…実に新鮮な反応だ緊那羅きんなら君」

しっかりピースを作って写った坂田が言う

「でもお前前に写真撮られてなかったか? 文化祭ン時」

こちらもやはりしっかりバッチリピースで写った京助が言った

「…文化…祭…」

緊那羅きんならが考え込む

「コレ心霊写真とかだったら怖いねぇ」

フラッシュのツメを畳んだ南がハッハと笑いながら緊那羅きんならにカメラを手渡した

「心霊写真ってなんだっちゃ?」

カメラを受け取った緊那羅きんならが聞く

「霊が写ってる写真」

手を幽霊ですよな形にした中島が答えた

「あなたの知らない世界の方が写ってる写真」

京助も答えた

「私の知らない世界…ってコッチの…世界のことだっちゃ?」

緊那羅きんならが言うとハタと3馬鹿と京助が止まった

「…じゃ何か? …俺等って緊那羅きんなら達とかからすると…あなたの知らない世界の住人なワケ?」

坂田がチラッと南を見ていった

「…まぁ…そうなるみたいねん;」

南が苦笑いで言った

「じゃぁ俺らの知らない世界の住人の緊那羅きんならもそうなんじゃないか?」

「え?;」

中島が緊那羅きんならを見ると他の三人も揃って緊那羅きんならを見た

「誰かの知らない世界…」

京助がボソッと言うと坂田がゆっくり静かに手を上げた

「ハイ深弦君」

その坂田を中島が指名する

「この話題は季節柄今時期には合わないと思います」

坂田が言うと京助と南が右に同じというカンジで拍手をした

「今の季節には合わないってことでこの話題はここでカ-----------ット!!」

中島が上から下へ手を手刀! といわんばかりの勢いで振り下ろした

「では次のニュースです」

南が話題転換を試みながら一歩足を進めるとそれに一同が続き緊那羅きんならも首をかしげながらも足を一歩進めた


お湯の中に昆布の入った鍋がクツクツと音を立てだした

「…ばかちょんカメラ…かぁ…」

右ポケットから使い捨てカメラを取り出した緊那羅きんならが小さく呟いた

「思い出…か…」

カメラをそっと撫でた緊那羅きんならがカメラをポケットにしまい側にあった箸に手を伸ばす

「……」

箸を持ったまま緊那羅きんならが止まってそしてきゅっと唇を噛んだ


「はぁ?; マジで?;」

京助の部屋から京助の声がした

「あんなキラキラした男はいないと申しておられました」

坂田が柿の種を一つ放り投げてそれを見事口で受け止めた

「あれは本気だよ本気」

南も坂田を真似てやってみたが失敗して柿の種が落下したっぽい周りを探しながら言った

「ライバル出現京助君」

バンホーテンのココアをストローで吸いながら中島が言った

「あのな; …ってか…緊那羅きんならは男だぞ; 正真正銘」

京助が中島を一発叩いた後呆れたように言った

「俺様もそういいましたが全くと言っていいほど信じてくれないんですよこれがまた」

坂田がお手上げポーズで溜息を吐く

「そりゃラムちゃん…あんなんだしねぇ…初めて見た姿が女子の制服を着たのってのもあるかもだけど」

南がこりず柿の種を放り投げまたも落して探しながら言った

「似合ってたもんな金名羊子~…女子まで女子と思ってるしな」

中島が言う

「宮津さんだっけ? あのホワホワした先輩とか阿部とか…」

坂田が湯気の立つ湯飲みに手を伸ばした

「でもま…別にいいんじゃねぇ? 緊那羅きんなら緊那羅きんならだしよ」

京助がズズっと湯飲みの中の茶を飲みながら言う

「そりゃそうだけど…浜本どうするよ」

ココアを飲み干した中島が今度は湯飲みに手を伸ばしながら突っ込む

「どうするっても…一発 緊那羅きんならの裸でも見せろってのか?」

「キャー!! ヌード!!」

京助が言うと南が頬に両手を当てて身をよじった

「おもしろいから放っておくって手もある」

坂田が言うと一瞬部屋が静まり返り各々顔を見合わせたあと揃ってニヤリと笑った

「今日告白逃したみたいだし? また何か一騒動起こしてくださるような?」

中島がフフフと笑いながら言う

「一騒動どころか二騒動?」

京助が中島と同じような笑いを浮かべながら言った

「いや~新しいおもちゃができて嬉しいわ」

南がハッハと笑った

「しかも浜本 緊那羅きんならが京助の彼女だと思ってるしな」

「は?;」

中島が言うと京助がちょっと待てというカンジで中島を見る

「浜本だけじゃないっしょ? たぶん」

「オイ;」

坂田がさらっと言うと京助が今度は坂田に目を移した

「だねぇ…真実を知る俺等にもどっからどう見てもカップルにしか見えないしねぇ」

南がウンウン頷いた後笑いながら京助を見た

「歌って戦って家事もできる彼女って最高じゃん京助! 男だけど」

「ちょっと待て;」

坂田がエセ爽やか笑顔で京助の肩をポンっと景気よく一回叩いた

「誰が誰の彼女ですって…?」

まるで井戸の底から搾り出すような声に一同が止まった


「行くんだ慧光えこう

「嫌ナリ!!」

かすれた声に答えた声は震えていた

「ここは僕が食い止める…そして僕がいかせない…」

「…様!!!」

バチィィ!!!

何かを弾く音と重なった声が聞き取れない

「…そこまでだ…いくらお前でもこの人数…そしてコイツには敵うまい?」

逆光の中に浮き出た影は3つ

「放すナリ!! 鳥倶婆迦うぐばかッ!!!」

「放しちゃ駄目だよ…鳥倶婆迦うぐばか

慧光えこうと呼ばれていた少年の腰に捕まっていた鳥倶婆迦うぐばかが頷いた

「駄目だよ慧光えこう!」

「でもだってッ…!!」

全体重をかけて鳥倶婆迦うぐばか慧光えこうを引き止める

「僕は大丈夫」

カチャリと腕についている腕輪が鳴った

「僕が止めなきゃいけないんだよ…」

白い布がふわっと靡いた

「いい加減にしろ…いつからそんなに聞きわけがなくなった…?」

声が響く

「わかるね…? アイツを止めるのが僕の役目…」

矜羯羅こんがら様…ッ!!」

涙を浮かべた慧光えこうが手を伸ばした

「行けッ!!!!」

矜羯羅こんがらの声と同時に開いた扉

矜羯羅こんがら様-----------------------------ッ!!!!!」

頷いた鳥倶婆迦うぐばか慧光えこうを掴んだまま開いた扉の向こうへ飛び込むと扉が閉じた


ドサドササ---------------------------…

「…室内雪崩注意報…」

カップラーメンができそうなくらいの間沈黙が続きそれを南の一言が終らせた

「本日栄野家の天気予報は嫉妬時々ばかのち誰か知らんヤツが降ってくるでしょう…ってか?;」

中島が言う

「ってか下敷きになってるヒマ子さん生きてるのか?;」

坂田が言うとヒマ子の葉がぴくっと動いた

「いたたた…;」

一番上になっていた鳥倶婆迦うぐばかが頭を振って顔を上げた

「重いですわ!!!」

続いてヒマ子が叫ぶ

「お~…生きてた」

南が拍手をする

「お前らはフツーにこれんのかフツーに;」

京助が鳥倶婆迦うぐばかを引っ張ってヒマ子の上から下ろした

「そんなヒマなかったんだよ」

帽子を引っ張って直しながら鳥倶婆迦うぐばかが答えた

「で…コッチのちょうちんブルマーっぽいのはいてるヤツ誰?」

坂田がヒマ子の鉢に頭をぶつけて気絶しているっぽいヤツを指差して聞いた

「ソイツは慧光えこう

鳥倶婆迦うぐばかが答える

「えこう? エテコウ? 猿?」

南が慧光えこうをツンツン突付きながら言う

「…矜羯羅こんがら様!!」

「どぅわッ!!;」


ガスッ!!


気がつき飛び起きた慧光えこうと南の頭が衝突した

「イッテェッ!!!!!;」

南と慧光えこうが同時に叫んだ

「星が出たな星が」

ハッハと中島が笑う

「おぉおお…;」

南が頭を抱えて蹲る

「何するナリ!!;」

涙目で頭を抑えた慧光えこうが怒鳴った

「…今コイツ【ナリ】っうたよな…?」

京助が坂田を見た

「…だっちゃに続いてナリか…」

坂田が口の端をあげて言う

「おいちゃんの計算ではまたくだらないこと考えてるだろ」

鳥倶婆迦うぐばかが京助を見上げて言った

「で…? 何しにきたんよ? 暇潰しか?」

京助がしゃがんで鳥倶婆迦うぐばかを目線を合わせて聞く

「ちが…」

「違うナリッ!!」

答えようとしていた鳥倶婆迦うぐばかの言葉を慧光えこうが声でかき消した

「私は矜羯羅こんがら様が…ッ!! 制多迦せいたか様が…ッ!!」

慧光えこう!!」

叫びに近い声で慧喜えきが言葉を綴っていると騒ぎを聞きつけた慧喜えきが部屋に入ってきた

慧喜えきッ!!」

慧喜えきの姿を見た慧光えこうが目つきの悪い目をさらに吊り上げた

慧喜えき…ッ!! 矜羯羅こんがら様が…制多迦せいたか様が…ッ!!」

「ぐぇッ!!;」

ヒマ子を踏んで慧光えこう慧喜えきに駆け寄る

「落ち着けコロ助!;」

慧喜えきの胸倉を掴んだ慧光えこうを京助が止めた

矜羯羅こんがら様と制多迦せいたか様…が…?」

慧喜えきが京助に捕まっている慧光えこうを目を見開いて見た


「上が…上が…ッ…!!」

吊り上った慧光えこうの目から涙がこぼれた

「まま…座って座って」

中島が座布団を敷きそこに慧光えこうを招いた

「泣きながらしゃべるとわけわかんねーからとりあえず落ち着け? な?」

京助が慧光えこうをずるずると中島の敷いた座布団へと引きずって座らせる

「…矜羯羅こんがら様と制多迦せいたか様が…どうしたんだ? 慧光…」

小さく震えながら慧喜えき慧光えこうに聞いた

慧喜えき…寒いの?」

震えに気づいたのか悠助が慧喜えきを見上げた

「上に背いたんだ」

キィキィと京助の机に椅子を鳴らして鳥倶婆迦うぐばかが答えた

「【時】に対して…【時】がおかしいって…そしたら上が…」

ハァっと息を吐きながら慧光えこうが続きを答えた

矜羯羅こんがら様は気づいたんだ…【時】を重ねていく度上がおかしくなってたこと…【時】が一体どんなものになろうとしているのか」

鳥倶婆迦うぐばかが椅子から降りた

「おいちゃんたちは今まで【時】に関わったけど【時】を直接見ちゃいなかったんだ」

くいっと帽子を直しながら鳥倶婆迦うぐばかが言った

「ちょっと待て?; 【時】って…一体…」

坂田がチョイ待ちポーズで話を割って質問する

「【時】は【時】だよ」

鳥倶婆迦うぐばかが答える

「あ…そ;」

坂田が手を下ろした

「私達が【時】と呼んでいるもの…その正体はおそらく誰も知らないナリ」

慧光えこうが言う

「でも【時】には正体があるんだ…矜羯羅こんがら様はそれに気づいた…でも遅かった」

鳥倶婆迦うぐばかがぎゅっと手を握った

「…慧光えこう鳥倶婆迦うぐばか…」

慧喜えきが俯いたまま二人を呼んだ

「…お二方は…?」

震える声で慧喜えきが聞く

矜羯羅こんがら様は私達をコッチに逃がして…」

制多迦せいたか様は…」

慧光えこうが言葉に詰まった先を鳥倶婆迦うぐばかが言おうとして口を紡いだ

「タカちゃんとコンちゃん…どうしたの? ねぇ?」

悠助が慧喜えきに聞くと慧喜えきが思い切り悠助を抱きしめる

「…おいちゃんの計算では…矜羯羅こんがら様…空への扉を閉ざしてる…」

鳥倶婆迦うぐばかが言った

矜羯羅こんがら様の力で閉ざされた扉は私では開けられないナリ…慧喜えきでも鳥倶婆迦うぐばかでも無理ナリ…」

慧光えこうが俯いた


「…えーと…あのチョイ話をまとめていいか?;」

坂田が挙手した

「つまり何か? 【時】がどうの云々って事に何か気づいた矜羯羅こんがらが上だかにボコられるってことか?」

京助が言う

「タカちゃんは?」

中島が突っ込むと慧光えこうが唇を噛んだ

「…制多迦せいたか…どうしたんだ?」

それに気づいた京助が慧光えこうに聞く

「…アレは制多迦せいたか様じゃないよ慧光えこう…」

慧喜えきが顔を上げた

「あんなの制多迦せいたか様じゃない…俺の好きな制多迦せいたか様じゃない…」

自分に言い聞かせるように慧喜えきが言う

「…何がなんだか;」

南がボソッと言った

「…私のことお忘れになっていませんこと?」

倒れて自分で起きられない夏の妖精がしばしの沈黙を破り私はここにいることを主張した

迦楼羅かるら様やけんちゃん様に頼めばよろしいのではないですこと?」

「おお! 今まで黙っていた分を取り返す勢いでいい提案を! ミス・ヒマ子!!」

坂田がぽんっと手を叩きヒマ子を起こした


「無理だね」

鳥倶婆迦うぐばかがキッパリと言い切った

「無理…って」

鳥倶婆迦うぐばかに視線が集まった

「もし迦楼羅かるら乾闥婆けんだっぱが来て矜羯羅こんがら様の閉めた扉を開けられたとしても…敵なんだよ? 空が受け入れると思う?」

鳥倶婆迦うぐばかが言う

「でも…じゃぁどうしたらえーねん;」

中島が言った

「おいちゃんの…計算…じゃ…わからないよ…」

ずるっと鼻水を啜る音がお面の下から聞こえた

「うぐちゃん…我慢してた?」

慧喜えきから離れた悠助が鳥倶婆迦うぐばかの頭を撫でる

「お面被ってるから泣いてんだか笑ってんだかわかんねぇからなお前;」

側にいた坂田が鳥倶婆迦うぐばかを自分の膝に座らせた

「どうしょう矜羯羅こんがら様が制多迦せいたか様が…っ」

ヒッヒッと泣きしゃっくりをし始めた鳥倶婆迦うぐばかを見ていた悠助の目も潤んできた

「…ヤヴぁくないか?; このまま行くとアレだ…連鎖がはじまんぞ?;」


【解説しよう。この場合の連鎖とは一人が泣くことにより回りも次々つられて泣き出すという現象を現すのである】


「うわ-----------------------んッ!!」

「お前がきたかッ!!;」

鳥倶婆迦うぐばかでも悠助でもなく一番先に泣き始めた慧光えこうに3馬鹿と京助が揃って突っ込む

「相変わらず泣き虫なんだな慧光えこう…泣いても何も始まらないだろッ!」

ペンっと慧喜えき慧光えこうの頭を叩いた

「だってッ…矜羯羅こんがら様…ッ制多迦せいたか様…」

「今の泣き声な……に事何だっちゃ?;」

慧光えこうの泣き声が聞こえたのか箸を持ったままの緊那羅きんならが戸を開けて顔を出しそして部屋の中を見て状況把握しようとしている

緊那羅きんなら様! 踏んでますわ踏んでますわ-----------ッ!!」

「うっわ; ヒマ子さん;」

ヒマ子の葉を踏んでいたらしくヒマ子が声を上げると緊那羅きんならが慌てて足を退けた

「で…一体さっきの泣き声は…なんなんだっちゃ?」

ヒマ子を起こしつつ緊那羅きんならが聞く

「そちらにいらっしゃるコロ助様のものですわ」

ヒマ子が慧光えこうに葉を向けて答えた

「コロ助様…?;」

慧光えこうだよ緊那羅きんなら

緊那羅きんなら慧光えこうを見ると慧喜えきが言う

「あ…そうなんだっちゃ?; …もしかしてまた京助達が何か…」

「ひっど------------い!!;」

緊那羅きんならがジト目で京助達を見ると南が声を上げた

「俺らは逆に慰めてたんだぞ;」

京助がブーイングで緊那羅きんならに言う

「慰め…? …本当一体何があったんだっちゃ?」

緊那羅きんならが首をかしげた

矜羯羅こんがら様が上に背いたんナリ」

慧光がボソッと言うと緊那羅きんならがバッと慧光えこうを見た

「そして…扉を閉めたナリ…」

「鼻水鼻水;」

顔を上げた慧光えこうの両鼻から流れ出ていた鼻水を見た中島がティッシュを投げた

矜羯羅こんがら様を…助けて欲しいナリ…ッ…」

中島が投げたティッシュを掴んで鼻と口に当てた慧光の目からまた涙が流れだす

「緊ちゃん…こんちゃん助けられれる?」

つられ泣きしていた悠助がうまく回らない口調で緊那羅きんならを見上げた

「おいちゃんの計算では…ここにいるヤツ全員ででも…扉すら開けられないと思う」

坂田の膝の上で鳥倶婆迦うぐばかが鼻を啜って言った

「助けて…ッ…」

畳に突っ伏した慧光えこうの背中を慧喜が撫でる

「助けて…やりたいけど…さ…」

中島が苦い顔を京助に向けた

「…お前らにすらどうしょうもできないこと俺らには…」

南もやるせない悔い顔で俯くと部屋中が沈黙した

「…大丈夫だっちゃ」

慧光えこうの隣にしゃがんだ緊那羅きんならが小さく言った

「大丈夫って…緊那羅きんならお前…」

緊那羅きんならの言葉に目を丸くした慧喜えき緊那羅きんならがにっこり微笑んだ



「…ごめんね…制多迦せいたか…」

笑った口元にうっすらとにじんだ赤い血がゆっくりと顎を伝った


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