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【第十回・弐】おふくろさんよ

母ハルミが話すまだ知らない父のお話

「ほら!! おとなしくするっちゃッ!!」

「ギャー!!; お前!一気にかけんな!!; しみるしみる!!;」

京助の足に消毒液 (マキロン)を思い切りかけた緊那羅きんならに京助が喚いた

「男ならコレくらい我慢しろっちゃ」

ガーゼで垂れた消毒液を拭いながら緊那羅きんならが言う

「っおおぉおおお…;」

京助が意味のよくわからない手の動きをして痛さを訴える

「おもしろいんだやな」

コマがその様子を見て言う

「コレで主の羽根が生えたまんまだったらもっと笑えたかもなんだやな」

イヌも言う

「お前等…人事だと思ってぇおぉう!!;」

むすっとした顔で二匹に言っていた京助がまた声を上げた

「ハイ! 終わりだっちゃ」

緊那羅きんならが余った包帯をクルクルと巻いて救急箱にしまった

乾闥婆けんだっぱの手当ての方が優しかったぞ;」

包帯の巻かれた足を見て京助が言う

「ハイハイ」

緊那羅きんならが言いながら救急箱を持って立ちあがった

「…お前段々母さんに似てきてねぇか?;」

京助が緊那羅きんならを見上げて言うと緊那羅きんならがきょとんとした顔で京助を見返した

「ソレはゼンゴも思ってたんだやな」

コマが言う

「だよな?」

京助がコマとイヌに向かって指を指した

「そんなことはないと思うっちゃけど…うーん…」

緊那羅きんならが救急箱を抱えたまま考え込む

「行動がおばさん臭くなってきたというか…」

「誰がおばさん?」

「母さん…」


ペンッ!!


「ハルミママさん…;」

緊那羅きんならの目線の先には洗濯物が山になっているカゴを小脇に抱えたまま京助の頭を今まさに叩きましたな母ハルミ

「全く失礼な…」

ブツブツ言いながら母ハルミが京助を横切って和室に入っていった

「地獄耳…;」

京助が頭をさすりながらまたボソっと言う

「何か言った!?」

和室から母ハルミが叫んだ


緊那羅きんならがコッチに帰ってきたのは昨日

今日は日曜日で外ではコレでもかというくらい雪がもっさりと降り続いている

「今日買い物いけないっちゃから…カレーでいいちゃね」

窓の外を見て緊那羅きんならが言う

「僕カレー好きー!!」

慧喜えきとトランプをしていた悠助が緊那羅きんならの言葉に万歳をして言った

「うずら入れてね」

悠助が目をキラキラさせて緊那羅きんならに言う

「たしか水煮の缶詰があった…っちゃから」

緊那羅きんならがにっこり笑った

「僕も手伝う~」

「悠助が手伝うなら俺も」

悠助が立ち上がると慧喜えきがトランプをまとめはじめる

「ありがとだっちゃ」

悠助の頭を緊那羅きんならが撫でると慧喜がジト目で緊那羅きんならを見、ソレに気づいた緊那羅きんならがパッと手を離した


「ないっちゃ; …あれ~…?;まだ確か一つ残ってたような気がしてたんだけど…」

床下の室を覗き込んで緊那羅きんならがうずらの水煮の缶詰を探す

「ないの?」

緊那羅きんならを見下ろして悠助が聞いた

「仕方ない…買ってくるっちゃ;」

室の戸を閉めて緊那羅きんならが立ち上がる

「でも緊那羅きんなら…雪降ってるよ」

慧喜えきが言うと一瞬 緊那羅きんならがうっと止まった

「…緊ちゃん寒いの嫌なんでしょ? 僕が行く」

悠助が言う

「悠助が行くなら俺も行く」

慧喜えきも言った

「ダメだっちゃ; こんな天気の時…」

「俺が行ってきてやるか?」

緊那羅きんならの後ろを通り冷蔵庫をあけた京助が言った

「義兄様」

慧喜えきが京助を呼んだ

「でも足…」

緊那羅きんならが言うと慧喜えきと悠助も揃って京助の足を見た

「走らなきゃいいんだろ?」

冷蔵庫からチーカマを一本取り出して京助が戸を閉める

「まぁ俺は体動かす手伝いしかできねぇからよ…んじゃいってくる」

チーカマを齧りながら京助が台所から出て行った


「よッ!」


ガラララ…


気合一発玄関の引き戸を開けるとソコは一面の白

そんな景色を見て京助がしばし止まった

「…【時】」

京助が【天】で見た真っ白な空間を思い出す

たぶん夢だったんだろうけど夢で終わらせるにはなんとも後始末が悪いような

「きょうすけ~!!」

パタパタという足音とともに悠助がやってきた

「これもっていって~」

「何?」

開けっ放しの玄関の戸から悠助の方に歩き出した京助に悠助が手渡したのはホッカイロ

「ちゃんとクシャクシャしたからすぐあったかくなるよ~」

手渡されたカイロは確かにもまれた後があってほのかにあったかい

「さんきゅ」

京助がそのカイロをゴソゴソとズボンのポケットに入れた

「気をつけてね~いってらっしゃい~」

玄関の戸の隙間から悠助の見送りの声が聞こえた


「…見えねぇ;」

さっきまではただのもっさもさ降る雪だったのに日本海の波が呼んだ風がついて俗に言う吹雪という事になっていた

「…さって;」

京助がほんのりあったかい右ポケットを二回叩いて足を動かした

しばらく歩いて石段を石段を一段降りようとすると雪かきをする音が聞こえた

「母さん?」

社務所の前で赤いじょんばを手に雪かきをしていたのは母ハルミ


【解説しよう。『じょんば』とは方言で『雪かきスコップ』の事を指すのである】


「母さん;」

京助が母ハルミに声をかけた

「あら京助」

巫女服の上から一枚上着を羽織っただけの母ハルミが顔を上げた

「雪かきしないと出られなくなるからね~…アンタはこの雪の中どこ行くの」

雪で濡れて顔にくっついていた髪を耳にかけながら母ハルミが京助に聞いた

「うずらの卵買いに…ってか手袋はけよ; ったく…」

京助が赤くなった母ハルミの手を見て言った

「大丈夫よ感覚ないから」

「そうじゃねぇだろ;」

母ハルミが笑って言うと京助が自分のポケットから黒い手袋を取り出した

「俺軍手あるから」

そう言いながら母ハルミに手袋を差し出す

「あら…ありがと…じゃついでに後ろ向いてくれる?」

手袋を受け取りながら母ハルミが言うと京助が首をかしげた後言われたとおりに後ろを向いた

「ぎょぉあああ!!!!!;」

境内に風とともに京助の悲鳴が響いた

「は~…あったかい」

「なにすんだッ!!;」

京助の背中に手を突っ込んだ母ハルミがふぅっと息を吐いた

「人肌が一番なのよ」

「のあっ!!;」

今度は反対の手を背中に突っ込まれた京助が再び悲鳴を上げる

「…アンタ…背ぇ伸びたわねぇ…」

母ハルミがいきなり言った

「いくつあんの?」

「…165…あるかないか; ってかもういいだろ;」

京助が母ハルミの腕を掴んだ

「大きくなったわね京助」

「へっ?;」

「さっ! 気をつけていってくるのよ? 帰ってきたら雪かき手伝って頂戴」

小さく聞こえた母ハルミの言葉を聞き返そうとした京助の背中を母ハルミが叩いた

「あ…ああ;」

吹雪の中母ハルミに見送られて京助は石段を降りていった


「これは?」

慧喜えきが指差した

「これは保育所の遠足~」

悠助が答える

「これ…もしかして京助だっちゃ?」

「そうだよ~」

緊那羅きんならの指差したものに対して悠助が答えた

「昔の悠助も可愛いっ」

慧喜えきが悠助を抱きしめた

「不思議だっちゃね…これ…」

緊那羅きんならがまじまじと見ているのは悠助が広げたアルバム

「ここに悠助がいるのに…こっちにも…しかも昔の悠助が…」

緊那羅きんならが悠助と写真の悠助を交互に見て言う

「カメラでねハイチーズっていったら撮れるんだよ~」

悠助がピースして説明する

「どうしてみんなこう…指を二本立てた手の形で写ってるんだっちゃ?」

緊那羅きんならが悠助に聞く

「それはね~ピースって言ってねー写真のポーズ」

悠助がピースして笑った

「…ぴーす…」

緊那羅きんならが写真を見て呟いた


「っだー!!;」

「あ、京助だ!!」

玄関先から聞こえたなんだか知らんけど気合の入った京助の声に悠助が戸のほうを見た

「帰ってきたみたいだっちゃね」

緊那羅きんならが立ちあがると廊下からゴトゴトと音が聞こえてきた

「緊那羅」

慧喜えき緊那羅きんならを見上げた

「何だっちゃ?」

「早く行かないとヒマ子義姉様に先こされるよ」

「はっ!?;」

慧喜えきが素で言うと緊那羅きんならが素っ頓狂な声を出した

「ほら~緊ちゃん早く早く~」

悠助が笑いながら言う

「早く…って; 別に私は…;」

「顔凄く嬉しそうだったけど」

緊那羅きんならが言うと慧喜えきが突っ込んだ

「おかえりなさいませ京様」

「あ~…タダイマ;」

玄関先から会話が聞こえた

「あ~ぁ…」

慧喜えき緊那羅きんならをチラっと見た

「何だっちゃ;」

ソレに対し緊那羅きんならが返す

「ほら~早く行かないからだ」

慧喜えきが悠助の頭に顎を乗せて言った

「だから…何…」

「うらウズラ」

ガラッと開いた戸に一同が振り返った

「おかえり京助~」

悠助が手を振った

「おぅ」

そう言った京助の腕にしっかり絡められた緑のしなやかな葉

「…脱ぎてぇんですけど;」

京助がゆっくりその葉を剥がす

「京助鼻水~」

悠助が京助の顔を指差して言うと京助が鼻を啜った

「ほっぺ真っ赤だっちゃね」

緊那羅きんならが笑う

「…母さんは?」

ズビッと再び鼻を啜った京助が聞く

「ハルミママさんはまだ来てないっちゃけど…」

緊那羅きんならが答えると京助が買い物袋を差し出してまた廊下に出た

「…京助?」

緊那羅きんならが小走りで京助の後を追って廊下に出る

「どこ行くんだっちゃ?」

そして京助の背中に聞いた

「雪かき」

振り向かずに京助が答える

「雪…かき…あ私も…」

「お前はカレーを作るという使命があんだろ」

今度は振り向いて京助が言った

「それに寒さハンパねぇぞ」

ヘッと笑った京助に緊那羅きんならの顔が少し引きつった

「お気をつけて京様~!!」

ヒマ子が茶の間から半分体を出して言った

「…いってらっしゃいだっちゃ」

緊那羅きんならも小さく言うと聞こえたのか聞こえてないのか京助がヒラヒラと手を振った

「面倒くさいね緊那羅きんなら

慧喜えきが言う

「何がだっちゃ;」

買い物袋を持ったまま緊那羅きんならが慧喜を見る

「イロイロ…ね~ー? 悠助ー」

慧喜えきが悠助を抱きしめた

ストーブの上にかけてあるカレー (味付け前)の鍋がコトコトといい始めた


まだ吹雪がやまない外に再び出た京助が買い物前に母ハルミがいた社務所前までやってきた

「スゲェ;」

暴風雪の中京助が呟いた

社務所入り口から家の玄関先まで綺麗に雪が掻いてあった

「…手伝うことねぇじゃん;」

京助が頭を掻いてそして社務所の戸に手をかけた

戸を閉めるとオォオオンという風の泣き声が耳に付きそして鼻には香ばしいコーヒーの香りがついた

ギシっと音をさせて京助が玄関にしかれているスノコに靴を脱いで上がるともう片足で社務所に上がる

入ってすぐにあるのは給湯室とかこつけた小さな台所

少しいくと物置になっている部屋が一つ

その向かいの少しレトロなガラス戸の向こうに母ハルミの姿があった

「よぃっす」

少し建付けが悪いレトロなガラス戸がキュキュキュと言いながら開けられ京助が片手を挙げた

「あらおかえり」

母ハルミが振り返って言う

「雪掻き終わってんじゃん」

京助が上着を脱いで丸く小さな昔ながらの石油ストーブに両手を向けた

「アンタが遅いからよ」

再び机の方に体を向けた母ハルミが言う

「ヘイヘイ…さようですね;」

京助が口の端をあげて言った

「で? なにしにきたの?」

何か書類を書きながら母ハルミが聞いた

「別に…」

京助がボソッと答える

「コーヒーは?」

「いらねぇ」

「そう」

トントンと進んだ会話が途切れてストーブの上のヤカンがシュクシュク言い出した


「…カレーにさ」

京助が口を開いた

「カレーにうずら入れるっていうのウチだけなんだか?」

京助が言う

「ああ…そうかもね私が好きだから入れるの」

母ハルミが言った

「俺も好きだけどさ」

京助が言う

「…母さんってさ…」

「なぁに?」

京助の言葉に返事をした母ハルミの言葉から少しの沈黙

「…母さんが何?」

ふぅと溜息をついて母ハルミが振り返った

「…父さんがその…少し違うやつだって知ってたのか?」

京助がぼそぼそと聞く

「知らなかったわよ? たぶん…でも変わってたのは知ってたと思うわたぶん」

母ハルミが言う

「…その二つはどう違うんだよ; そんでたぶんってなんだよたぶんって」

京助が突っ込む

「たぶんだからたぶんよ。そんな昔のこと覚えてるわけないでしょ? アンタの母親なんだから」

何故か誇らしげに母ハルミが言った

「昨日…さ…見たろ?」

今は何もなくなった自分の背中を京助が指差した

「俺と悠の背中の…」

「見たわよ? だって見せにきたじゃないの」

母ハルミが言う

「どう思った?」

京助が聞く

「寝にくそう?」

母ハルミが言うと京助が阿呆面で止まった

「仰向けに寝られないじゃない? 小さい時アンタいつも仰向けから寝始めてたからねぇ…よかったわね消えて」

母ハルミがにっこり笑った

「…そんだけ?;」

少し間を置いて京助が聞く

「他に何か…キモいとか思わなかったわけ?;」

「思わなかったわよ?」

京助の言葉に母ハルミが即答する

「こんなの生やしたのが自分の息子で…嫌…だとか…」

躊躇いがちにそして凄く小さな声で京助が言った

「アンタねぇ…そんなこと気にしてたの? 意外に繊細に出来てるのねぇ…」

少しきょとんとした後母ハルミが呆れ顔で言う

「悠ちゃんが緊ちゃん拾ってきてかるらん君やけんちゃん…タカちゃん矜羯羅こんがら君、慧喜えきちゃんに…コマイヌ…ゼンゴの方がいいかしら」

母ハルミが名前をあげていく

「どこでやってきたのかすごい怪我してきたこともあったわねぇ…あと桜がココだけ咲いたとか」

思い出しながら母ハルミが言う

「すごいじゃない?」

そして最後にそう言った


「…は?;」

京助が少し間を置いて言った

「それってアンタじゃなきゃ体験できなかったことじゃない」

母ハルミが言う

「いや…まぁ…うん?;」

京助が首を捻りながらも返事をする

「よかったじゃない? 【栄野京助】だったから緊ちゃん達に会えたんでしょう?」

母ハルミが言うと京助がゆっくりと顔を上げた

「それとも【栄野京助】として生まれてきたくなかった?」

なんとなくどことなく元気のないような声で母ハルミが聞いた

「私と竜之助の子供に生まれてきたくなかったかしら? 折角私が腹痛めて生んだのに」

母ハルミが自分の腹を叩いた

「…すこし太ったわね…」

そしてボソっと付け足す

「私はアンタ産んでよかったと思うわよ? 今私アンタと悠ちゃんのおかげで凄く楽しいもの」

母ハルミが言う

「京助」

黙ったままだった京助を母ハルミが呼んだ

「きなさい」

ポンっと膝を叩いた母ハルミの右手には梵天付きの耳掻き棒があった


緊那羅きんならがオタマでグルグルと鍋の中をかき混ぜている

「今日はカレーなんだやな~!」

コマが台所に入ってきて鼻を動かした

「普通のワンコは食えないんだやな~…ゴ等は幸せなんだやな」

イヌもうっとりしながら言った

「…緊那羅きんなら?」

コマが緊那羅きんならを呼んだ

「きーんーなーらー?」

イヌも緊那羅きんならを呼んだが反応がなくただオタマを持った手がグルグル動いているだけだた

「…どうしたんだやな?」

「さぁ…」

コマとイヌが顔を見合わせて首をかしげる

「変なんだやな」

「変なんだやな」

コマとイヌがそう言って頷いた

「…はぁぁ…」

ぴたっと手が止まったかと思うと緊那羅きんならが大きな溜息をついた

「…緊那羅きんなら?」

「なんだっちゃ?」

イヌが緊那羅きんならを呼ぶと今度は返事が返ってきた

緊那羅きんなら変なんだやな」

イヌが言うとコマが頷く

「え…?;」

指摘が図星だったのか緊那羅きんならが驚いた顔をした

「や…あの…;…そう…だっちゃか?;」

緊那羅きんならがしゃがんでコマイヌの目線で真顔で聞いた

「うん」

コマイヌが揃って頷く

「…はぁあ…;」

緊那羅きんならがまた大きな溜息をついてそして立ち上がった

「どうしたんだやな」

コマが聞くと緊那羅きんならがガスコンロを止めて鍋のふたを閉めた

「私にもよくわからないんだっちゃ…はぁ;」

鍋のふたの取っ手に両手を添えて緊那羅きんならがまた大きな溜息をつく

「でもなんだか…溜息ばっかりでるんだっちゃ…」

顔を上げた緊那羅きんならがまた溜息をつく

「幸せが逃げるんだやな」

イヌが言う

「溜息はしちゃだめなんだやな」

コマも言う

「…はぁ;」

「言ってる傍からしないで欲しいんだやな;」

緊那羅きんならがまた溜息をつくとイヌが突っ込む

「本当…なんなんだっちゃ…」

緊那羅きんならが肩を落としてまた溜息をついた


「あ、今カサッっつーた」

京助が言う

「アンタ…耳掃除くらいちゃんとしなさい?;」

母ハルミが京助の耳からゆっくりと引き上げた耳掻き棒の引っかき部分にはこんもりの耳クソ

「昔は嫌がってたのにねぇ」

こんもりの耳クソをティッシュにこすり付けて母ハルミが再び耳掻き棒を耳に入れた

「昔は…俺も若かった」

京助がフッと笑った

「何いってんの」

母ハルミが突っ込む

「相変わらず固い髪ねぇ…」

母ハルミが京助の髪を撫でた

「生まれた時は本当に毛が生えてくるのかって思うくらいキューピーちゃんだったのにねぇ」

「あのな;」

京助の髪をツンツン軽くひっぱって母ハルミが溜息混じりに言った

「本当…でっかくなっちゃって」

耳掻き棒が再びゆっくり京助の耳の中で動き出した

「いつかアンタも男になってお嫁さん貰ってくるのかしら」

「は?;」

母ハルミが言うと京助が少し上を向いた

「ホラ! 動かないの!!」

京助の頭を掴んだ母ハルミがまた横を向かせる

「京助はアレよ? …アンタの父さん…竜之助みたくお嫁さん置いていっちゃダメよ?」

耳掻き棒を耳から抜きながら母ハルミが言う

「精一杯幸せにしてあげないと母さんが怒るわよ?」

「あのな; 俺まだ14歳です母さん;」

母ハルミが言うと京助が突っ込んだ

「あっという間よ…ついこの間まで抱っこできてたんだもの」

ふわっと髪に母ハルミの手が置かれそれがゆっくり動いた

「今じゃ膝枕くらいしか出来ないでしょ」

京助の頭を母ハルミがゆっくり撫でる

「アンタ…こうやって頭撫でてるとすぐ寝てたのよ」

母ハルミが笑った


「寝ちゃった」

慧喜えきがやんわり笑顔を向けた先には自分の膝の上で寝息を立てている悠助

「悠助ね頭撫でるとすぐ寝るんだ」

慧喜えきが嬉しそうに言った

「安心するんだっちゃね」

緊那羅きんならが煙突の空調を調節しながら眠る悠助を見て笑った

緊那羅きんなら

慧喜えき緊那羅きんならを呼んだ

「なんだっちゃ?」

緊那羅きんならが首をかしげた

「…難しいよね」

慧喜えきが真顔で言った

「へ?;」

それに緊那羅きんならが疑問系の返事を返す

「義兄様甘えるのヘタだから」

「あ…えっと;」

慧喜えきが俯いて悠助の髪を撫でた

「悠助と正反対…義兄様って」

モゾモゾと悠助が動く

「…だから緊那羅きんならが必要なんだよ義兄様には」

慧喜えきが顔を上げた

「でも…京助には沢山友達とか…私の他にも誰か…」

「馬っ鹿じゃない?」

緊那羅きんならの言葉を慧喜が切り捨てた

緊那羅きんならは一人しかいないんじゃない俺でも悠助でも緊那羅きんならにはなれないんだよ? なんでわからないのさ」

慧喜えきが強く言った

「どうして置いていったんだよ義兄様を」

緊那羅きんなら慧喜えきが睨む

「置いていかれる辛さ…知らないんだろ…ッ…」

慧喜えきの言葉が詰まった

「どんなに心細いか辛いか悲しいか苦しいか…っ」

俯いた慧喜えきの言葉に嗚咽が混ざり始める

慧喜えき…」

緊那羅きんなら慧喜えきの顔を覗き込もうと膝をついた

「俺は…もう嫌だ…」

慧喜えきが鼻を啜りながらいった

悠助を起こさないためなのか声を押し殺して涙を流す慧喜えき

慧喜えき…」

そんな慧喜えき緊那羅きんならがおろおろしながらただ見ている


緊那羅きんなら…俺はね…捨てられたんだ…宝珠に選ばれた瞬間に」

慧喜えきの肩に伸ばしかけていた手を緊那羅きんならが止めた

「また来る…俺が聞いた最後の親の言葉」

慧喜えきが小さく言った

「でも来なかった…俺はずっと待っていた…」

鼻を啜った慧喜えきが赤い目をして顔を上げた

「来てくれたのは…お二方だった…」

矜羯羅こんがらと…制多迦せいたか…?」

緊那羅きんならが言うと慧喜えきが頷いた

「初めは恐れ多くてロクに話もしなくて…でもお二方はずっと傍にいてくれて…」

慧喜えきが微かながら微笑んだ

「お二方はね…俺の中で失礼かもしれないけど『親』なんだ…俺にとっての」

悠助の頭を撫でて慧喜えきが言う

「だから…お二方が悠助や義兄様に構うのが俺は嫌で…あんなことしたんだよ…」

慧喜えきが言うあんなこと

悠助と京助…【時】の鍵となる二人を消そうとしたこと


「俺さ…【時】は来なくていいと思うけど…【時】がなければ悠助にも出会えなかったんだって…思う」

【時】という言葉に緊那羅きんなら慧喜えきを見た

緊那羅きんならだって…【時】がなければここにはいない…全ては【時】なんだよね…」

慧喜えきが静かに言うと悠助がもぞっと動いた

「親が俺を捨てた原因の宝珠も【時】が生んだもの…」

緊那羅きんならが自分の腕を見た

「【天】じゃ宝珠持ちはどう思われてるか知らないけど【空】ではね…禍々しいものと恐れられてるんだ…だから俺の親は俺を捨てた」

慧喜えきが自分の左中指についている宝珠を見た

「恐れとソレを避けるための崇拝…それが【空】での宝珠持ちへの応対…」

緊那羅きんならが顔をしかめた

「宝珠…」

ボソッと緊那羅きんならが呟く

「どうしてこんなモノが生まれたのか…って俺は何度も宝珠を捨てようとした…でも…」

「でも…?」

少し間を置いて緊那羅きんなら慧喜えきに言う

「誰のため何のためにこの力があるか…考えて俺なりに答えを出した」

慧喜えき緊那羅きんならを見た後ふっと笑って悠助を見た

「俺はこの力…悠助を守る…ただそれだけのためにあるって…答え」

小さい声で言った慧喜えきの言葉に緊那羅きんならがまた自分の宝珠を見てそして唇をキュッと噛んだ

「俺は…悠助を守るよ…」


時刻はとっくに晩飯の時間をすぎていた

「…遅いっちゃね…京助もハルミママさんも」

先に済ませた悠助と慧喜えき緊那羅きんならと一緒になって時計を見た

「ゴ等がみてくるんだやな」

イヌが伸びをして言った

「私が行って来るっちゃ」

そのイヌの横を緊那羅きんならが素通りして戸をあけた

「寒いよ? 緊ちゃん」

悠助が緊那羅きんならを見上げた

「大丈夫だっちゃよ;すぐソコだし…」

一瞬うっという顔をした緊那羅きんならが今度は苦笑いを悠助に返した

「まだ吹雪いてるから気をつけるんだやな~」

ストーブの前でゴロゴロしながらコマが言う

「わぷ;」

玄関を開けた瞬間 緊那羅きんならの全身に浴びさられたのはほんのり磯の香りが混ざった雪と風

「っ;」

キッと気合を入れた顔をして緊那羅きんならが足を進めた

社務所には明かりがついていなかった

「…あれ…?;」

首をかしげながらも戸を開けた緊那羅きんならが中に入る

「靴は…二人ちゃんとあるっちゃ…」

無造作に脱ぎ捨てられた靴と揃えられた靴を見て緊那羅きんならが社務所の廊下の奥を見るとユラユラとほんのり暖かな明かりが見えた

ギシッと音を立てた廊下に少しびくつきながら緊那羅きんならが明かりを目指し足を進める

少しレトロなガラス戸の向こうに見えたのは何かを見下ろして優しく微笑んでいる母ハルミ

その下はガラス戸の模様でよく見えなかった

「…緊ちゃん?」

気配に気づいたのか母ハルミが緊那羅きんならのいるガラス戸を見た

「あ…はい;」

緊那羅きんならが少し驚いた後返事をした

「寒いでしょう? ホラ入ってきなさい」

母ハルミが手招きをすると緊那羅きんならがガラス戸を開けた

「あ…京助…」

緊那羅きんならがガラス戸を閉めながら目に入った母ハルミの膝枕で寝息を立てている京助に気づいた

「寝ちゃったの」

母ハルミが笑った

「ああ…だからこれなかったんだっちゃね」

納得というカンジに緊那羅きんならが笑った

「あらもうそんな時間?」

母ハルミが体を捻って壁に掛けてある時計を見た

「京助起こすっちゃ?」

緊那羅きんならが聞く

「…もう少ししたら…にしようかしら」

少し考えて母ハルミが言う

「悠助も…慧喜えきに頭撫でられてさっきまで寝てたんだっちゃ」

京助の寝顔を覗き込んで緊那羅きんならが言う

「やっぱり兄弟ってそんなモンなのかしらね」

母ハルミが京助の髪を撫でた

「…安心できるんだっちゃね」

緊那羅きんならが京助の寝顔を見て微笑んだ

「何年ぶりかしら…京助に膝枕するのって」

母ハルミが言った

「してなかったんだっちゃ?」

緊那羅きんならが聞く

「少なくとも…悠ちゃんが生まれてからは…してなかったと思うわ」

母ハルミがゆっくり京助の髪から手を離した

「悠ちゃんが生まれて竜之助がいなくなって…」

静かに母ハルミが言う

「この子には『お兄ちゃんなんだから』って言葉でずいぶん我慢してもらったの」

苦笑いで母ハルミが緊那羅きんならを見た

「だからなのかしら…妙なところで大人で妙なところで子供で…甘え下手になっちゃって…」

黙ったまま緊那羅きんならが母ハルミの話しを聞く


「私ね…京助が泣いたところってあんまり見たことないのよ;」

「え…?」

母ハルミの言葉に緊那羅きんならが京助を見る

「その様子じゃ緊ちゃんは見たことあるのね」

母ハルミが言うと緊那羅きんならが躊躇いながらも一回頷いた

「自分がしっかりしなくちゃ、お兄ちゃんなんだから泣いちゃダメなんだってきっと今でも思ってるんだと思うわ…昔のまんま」

母ハルミが京助の母を軽く突付いたが一向に京助には起きる様子がない

「昔の…まんま…」

緊那羅きんならがボソッと言う

「…馬鹿だけど…いい子に育ってくれてまぁ…」

母ハルミが嬉しそうに言った

「ねぇ…緊ちゃん…男の子にこんなこと言うのはおかしいと思うけど聞いて頂戴」

母ハルミが緊那羅きんならを見た

「母になるって凄く幸せなの」

「母…」

「そして母でい続けることはもっと幸せでね」

間に緊那羅きんならの呟きを挟んで母ハルミが話す

「京助と悠ちゃんがいる限り私は母でそれはとっても嬉しいことでね…」

ストーブの灯りだけの部屋の壁にユラユラと二つの影が揺れる

「守りたいの」

母ハルミが静かに言った言葉に緊那羅きんならが顔を上げる

「ハルミ…ママさん…」

「時だかなんだか知らないけど…幸せを守りたいって思うのは私だけじゃないと思うわ」

母ハルミが言う

「私の幸せは京助と悠ちゃんと…そして」

母ハルミの手が緊那羅きんならの頭に伸びた

「みんながいること」

緊那羅きんならの頭を撫でながら母ハルミが微笑んだ

「誰が欠けても幸せになれないわ」

「私も…っ」

緊那羅きんならが声を上げた

「私も…守りたいっちゃ…幸せ…」

少し驚いた顔をした母ハルミがまた微笑んだ

「…京助は私が守ります」

緊那羅きんならがまっすぐ母ハルミを見た

「でも無理はしないのよ?」

母ハルミがあっけらかんと言った

「え…っ;」

「そんな力まないで」

思わず立ち膝になっていた緊那羅きんならにカラカラと笑いながら母ハルミが言う

「ありがとうね緊ちゃん」

少し照れながら座りなおした緊那羅きんならに母ハルミが言った

「竜之助はみんな知ってたのかしら」

ふと母ハルミが言った言葉に緊那羅きんならが顔を上げた

「あの…えっと…たぶんだっちゃけど…」

緊那羅きんならがしどろもどろしながら言う

「やっぱり…知ってたのね…」

母ハルミが俯いた

「ハルミママさん…」


「っ…あんのたくらんけ-----------ッ!!!」

俯いた母ハルミの肩に手を置こうとした緊那羅きんならがいきなり叫んだ母ハルミに目を丸くして手を引っ込めた

外でドササッと屋根から雪が落ちる音が聞こえた

「はー!! もう!! 腹立つったらありゃしないッ!! 目玉焼きは完熟じゃないと食べいないとかトイレの水を流さないとかのレベルじゃないわ!! っとにもう!!」

「は…るみママさん?;」

怒鳴り散らす母ハルミを緊那羅きんならがおろおろしながら見る

「京助のオシメ取り替えてっていっても取り替えたままでズボンはかせないし…ッ!!」

「…あの…;」

「あーもう! 生きてるんなら一回くらい顔出しなさいよ!! ねぇ!?」

「ハイッ!!;」

眉を吊り上げて母ハルミが言うと緊那羅きんならが背筋を伸ばして返事をした

「そして説明しなさいってのよ!! どうして生きてるのか! 」

なおも母ハルミが声を上げる

「っとにッ!!」

「…どーどー…;」

フンっと鼻息を出した母ハルミの肩をポンポンと京助が叩いた

「あら起きたの」

京助を見て母ハルミが言う

「あんだけでっけぇ声だしゃいくら俺でも起きるわ;」

京助が体を起こした

「おはようだっちゃ」

緊那羅きんならが言う

「…おす」

京助が頭を掻きながら返した

緊那羅きんならに怒鳴ったって仕方ねぇじゃん;」

「それはそうだけど…そうよねぇ;」

京助が突っ込むと母ハルミが苦笑いを浮かべた

「でもま…俺も一回は見てみたいかな」

京助が言う

「思い出せないっていうの…やっぱ何かあるんだろうな」

京助が緊那羅きんならを見た

「あ…えと…私は…ごめんだっちゃ…」

緊那羅きんならが俯く

「鳥類や乾闥婆けんだっぱは絶対教えてくれねぇだろうけど…」

京助が溜息をついた

「…竜は…迦楼羅かるら以上の力を持つ…【天】の要のような存在だったって…聞いたことがあるっちゃ…でも変わった志向を持って上からは目の敵にされていたって…」

緊那羅きんならが小さく言った

「あの竜之助が?」

母ハルミが信じられないという顔で言う

「ナメコをのっこり入れた味噌汁出したら半べそかいた竜之助が?;」

「…はぃ?;」

母ハルミが言うと京助と緊那羅きんならがハモった

「あ、竜之助ねナメコ大ッ嫌いだったの」

母ハルミがチョイトという手付きをして笑いながら言った

「…ナメコ…;」

京助が口の端をあげた

「ナメコって…あのヌルヌルしたキノコだっちゃ?」

緊那羅きんならが京助に聞いた

「んだ;」

京助が口の端をあげたままで答えた

「悠助大好きじゃなかったっちゃ?;」

緊那羅きんならが再び聞く

「…まぁ…な;」

京助が再び答えた

「ヌルヌルしたのが大嫌いでねー…ナメクジ一匹に対して鷲掴みにした塩をかけたこともあったわー…」

母ハルミが言う

「…なんだか…全然弱そうに思えてきたっちゃ;」

緊那羅きんならが呟く

「弱かったわよ?」

母ハルミがさらっと言った

「だからさっき驚いたの…要っていったじゃない?」

母ハルミが言うと緊那羅きんならが頷いた

「でも…強いって…みんな言ってるんだっちゃ; 宝珠も…」

ソコまで言って緊那羅きんならがはっとして口を閉じた

「宝珠…やっぱ父さんも宝珠あったんだな」

京助が緊那羅きんならを見た

「…あ…う…ん……最高位の宝珠を持ってたらしいっちゃ」

「らしいかよ;」

緊那羅きんならが言うと京助が突っ込んだ

「私も阿修羅あしゅらから聞いただけ…だ…っちゃし…私は直接竜に会った事はないんだっちゃ;」

所々躊躇いながら緊那羅きんならが言った

「初めてあったときから変わったやつだとは思ってたけどねぇ…」

フフッと母ハルミが笑った

「そういや…どうして母さんと父さん…どうやって出会ったんだ?」

京助が聞くと緊那羅きんならも母ハルミを見た

「聞きたい?」

母ハルミが笑った

「あ…まぁ…」

京助が頭をかきながら言う

「じゃぁ…家で話すわ。お腹減ったしね」

母ハルミが立ち上がってストーブのスイッチを切った


「初めて竜之助を姿を見たのは私が小学生の時」

カレーの盛られた皿にスプーンをさして母ハルミが話し始めた

「小学六年生のとき…の夏休みだったかしら」

ウズラを口に運びながら母ハルミが言う

「ずんぶ昔だなぁ;」

京助がカレーを口に運びながら言った

「たまたま友達がラジオ体操休んでね。私が一人で待ってた時に変な格好した人が黙って私を見ててね…それが竜之助」

「変…」

京助が緊那羅きんならを見た

「なんだっちゃ;」

緊那羅きんならがスプーンをくわえたまま京助を見返した

「お父さん変なの?」

風呂から上がった悠助が言った

「竜は変わってたって聞いたことある」

同じく風呂上りの慧喜えきが悠助の頭をタオルで拭きながら言った

「しばらく私の竜之助も動かないまま黙って見ていて…友達が来て振り向いたらもうソコにはいなくてね」

母ハルミが言う

「そして次にあったのが中学一年のやっぱり夏休みでね…その時初めて声をかけられたの」

「ほ~…なんて?」

京助が聞いた

「いい天気だね」

「…いつの時代のナンパだ;」

京助が肩を落とした

「で…? なんて返したんだ?」

京助が聞く

「たしか…昼から雨だったかしら? そしたら困ったなーって言うもんだから…家に来る? っていったの」

母ハルミが言った

「で…なんか知らないけどそれからずっといたのよ」

「は?;」

母ハルミの言葉に京助を緊那羅きんならが声を揃え慧喜えきを悠助はきょとんとした顔で母ハルミを見た

「住み着いてたわけじゃないんだけど…気づいたら境内とか木の上とか…私の隣とかにいつもいてね…なじんでたの」

母ハルミが笑った

「私の父さん…ジジちゃんとババちゃんが高校の時にいなくなっても竜之助だけは側にいてね」

左手を撫でながら母ハルミが言う

「奥の部屋にしまってあったあの布と一緒に私を抱きしめてくれたの」

母ハルミが幸せそうに笑った

「で…ゴールイン?」

京助が聞く

「そ。そしてアンタが生まれて悠ちゃんが生まれたの」

話し終えた母ハルミが京助と悠助を見て頷いた

「…なんか」

京助がボソッと言った

「…まともに父さんの事…初めて聞いた」

「そりゃそうでしょ初めて話したわよ竜之介のことなんて」

京助が言うと母ハルミが即答した

「俺…七年…くらいは一緒にいたんだよな?」

京助が母ハルミに聞く

「そうね…悠ちゃんが生まれて…そんなもんかしら」

母ハルミが答える

「でも…私も変なのよね…私の中では…竜之助はしんでるの…確かに…でも生きてるの…よね?」

母ハルミが緊那羅きんならを見た

「えっ; …あ…そう迦楼羅かるらが言ってたっちゃし…」

いきなり話を振られた緊那羅きんならが焦りながら答えた

「どうしてこんなに記憶があやふやなのかしらね」

母ハルミが溜息をついた

「…俺どうして父さんの記憶ないんだ?」

「私に聞かれても;」

京助が緊那羅きんならを見て聞くと緊那羅きんならが苦笑いを浮かべた


「僕…」

悠助が小さく言葉を発した

「僕は…お父さん知らない…」

悲しそうに悠助が言う

「俺だって知らんがな;」

京助がしゅんとなっている悠助の頭に手を置いた

「悠助…俺が知ってるだけでいいなら竜…悠助と義兄様の親のこと教えてあげるよ」

悠助の頬にキスしながら慧喜えきが静かに言った

慧喜えき…うん…」

悠助が嬉しそうに慧喜えきに頬刷りする

「ッて言っても…前の【時】の時の話になるんだけどね…」

「前の…」

「【時】…」

慧喜えきの言葉に続いて京助と緊那羅きんならがいった

「俺が見た竜はハルミママ様が言うようなヤツじゃなかったよ。四枚の羽根を持って四本の角があって…」

「ちょっと待て;」

慧喜えきの話に京助が手を前に出してストップをかけた

「何義兄様?」

慧喜えきがきょとんとした顔で京助を見た

「角に羽根って…何者?;」

「竜」

京助の質問に慧喜えきがさらっと答えた

「いや…ハイ; ワカリマシタ;」

何のためらいもなくさらっと答えをもらった京助が引っ込んだ

「…悠助より少し濃い目の緑の髪を長く編んで…ただ一人 制多迦せいたか様と互角に…」

制多迦せいたか?;」

慧喜えきの言葉にまた京助が突っ込んだ

「アイツ…つえぇの?」

「うん」

京助が聞くと慧喜がまたさらっと答えて頷いた

「人は見かけによらないわねぇ…本当」

母ハルミが笑う

制多迦せいたか様は…でも…あの制多迦せいたか様は俺の知ってる制多迦せいたか様じゃないんだ…」

慧喜えきの知らないタカちゃん?」

小さく言った慧喜えきに悠助が聞いた

「何それ; なんだか聞いてて本当こんがらがるんですけど;」

京助が口の端をあげて言う

「とにかく竜は強いんだ…ううん強かった」

慧喜えきが言い直した

「最高位の宝珠を持ってた」

慧喜えきが言うと緊那羅きんならがハッとして自分の腕についてる宝珠を掴んだ

「最高…ほー…やっぱソレで階級とかきまるん?」

慧喜えきに聞く京助を緊那羅きんならが見た

「あるよ。どうやって決まってるのかわからないけど…赤、金が最高だって」

「…慧喜えき…」

慧喜えきが言うと緊那羅きんならが小さく慧喜えきの名前を言った

「…だよね緊那羅きんなら

何かを隠しているのを隠すかのように慧喜えき緊那羅きんならにふった

「あ…そうだっちゃ確か」

緊那羅きんならがソレを感じ取ったのか頷く

「竜の持ってたのは金」

慧喜えきが言うと京助が何か変なことを思いついたのか一瞬止まった後顔をそらした


「…母さんアンタが言おうとしてることわかるのがいま少し悲しいわ」

母ハルミが言った

「わかった私もなんだか悲しいっちゃ…;」

緊那羅きんならが溜息をつく

「きんたま?」

「ナイス悠」

京助が言わなかった言葉を悠助が笑顔で言った事に京助が親指を立てた

「…悠助が言うと下品に聞こえないのが不思議だっちゃ」

緊那羅きんならが京助を見て言う

「どーゆーこってすか緊那羅きんならさん」

「まんまよまんま」

京助が緊那羅きんならを見て聞くと母ハルミが言った

「うんそのまんまだっちゃ」

緊那羅きんならも頷く

「とにかく…竜は強かったんだよ…変わってたらしいけど」

慧喜えきが言った

「そんなに変わってたのか?」

京助が慧喜えきに聞く

「うん…なんかね…【時】を…【時】が来るのがおかしいって言って上に逆らったとか…したらしいよ」

慧喜えきが悠助の頭を撫でながら言った

「…でも俺も今は竜の考えに賛成なんだ」

顔を上げた慧喜えきが言った

「どうして【時】が来なきゃダメなのか【時】なんか来なければいいって思ってる…」

慧喜えき?」

自分を抱きしめる慧喜えきの腕に力がこもったのがわかったのか悠助が慧喜えきを見上げた

「悠助と…義兄様に出会ってから」

慧喜えきが京助を見た

「俺は別に何もしてぇねぞ;」

見られた京助が手を顔の前で振った

「私もだっちゃ京助」

緊那羅きんならも言った

「私も…前にも言ったけど京助と悠助に会ってから…【時】までじゃなく…【時】から京助を守りたくなったんだっちゃ」

緊那羅きんならがまっすぐ京助を見た

「いや…あの…あ~…?;」

緊那羅きんならから目をそらしながら京助が頭を掻いた

「お願いだっちゃ京助…私に守らせて欲しいっちゃ…」

緊那羅きんならが畳に両手をついて頭を下げた

「竜の分も…守るからッ…」

そんな緊那羅きんならを京助がぎょっとした顔で見てそれから溜息をついた


「京助」

母ハルミが京助を呼んだ

「…緊ちゃん」

そして今度は緊那羅きんならを呼ぶ

「馬鹿息子をよろしくね」

「なっ!?;」

母ハルミが笑顔で緊那羅きんならに言うと京助が声を上げた

「ハルミ…ママさん…」

顔を上げた緊那羅きんならが母ハルミを見る

「でもさっきも言ったけどあんまり力まないで」

母ハルミがにっこり笑った

慧喜えきちゃんも悠ちゃんをよろしくね」

「うん!!」

慧喜えきにも言うと慧喜えきが大きく頷いた

「俺なんだか嫁がされてる気分なんですけど母上;」

京助が言う

「アンタはいつから嫁にいける体になったの」

母ハルミが突っ込む

「…いやしっかりいけない体ですが;」

京助が自分の股間に手を置いて言う

「俺は悠助に嫁ぐ」

「うん~」

慧喜えきが悠助を抱きしめて言うと悠助が嬉しそうに返事をした

「緊ちゃん」

ぽかんとしている緊那羅きんならに母ハルミが声をかけそして微笑む

「…はいっ」

緊那羅きんならが嬉しそうに返事をして笑った

「俺ハルミママ様みたいなお母さんになる」

慧喜えきが悠助をぎゅっと抱きしめて言った

「あら嬉しい」

母ハルミが笑う

「ねぇ慧喜えき

悠助が慧喜えきを見上げた

「子供ってどうやって作るの?」

和やかなホノボノ空気がピシッと固まった

「今日作る?」

「うん!」

「コラコラコラコラコラ!!;」

何の戸惑いもなく慧喜えきが聞くと悠助が満面の笑みで返事をして京助がそれに突っ込む

「何さ義兄様」

慧喜えきがブーッと膨れて京助を見た

慧喜えき…;」

緊那羅きんならが苦笑いで慧喜えきを見た

「ねぇ京助~子供ってどうやって作るの?」

悠助が今度は京助に聞いた

「…あー…しゃあねぇなぁ…緊那羅きんなら

京助が緊那羅きんならを呼んだ

「なんだっち…わっ;」

呼ばれて京助に近付いた緊那羅きんならの両足を京助が持った

「まずはだなこう…」

「何教えようとしてんのアンタはッ!!」


バフッ!


母ハルミの投げた座布団が京助の頭に乗っかった

「何をする母上」

京助が母ハルミを見る

「こう?」

いつの間にか寝転がった慧喜えきの両足を持っていた悠助が京助に聞いた

「んで次にだな…」

「やめなさいッ!!」


スパ-----------------------ン!!


今度は容赦ない母ハルミの平手が京助の頭にクリーンヒットした

「いってぇッ!; 俺はただ可愛い弟の今後のためにだなっ;」

京助が喚く

「今後も何もないッ! まだアンタもつくれないでしょッ!!」

母ハルミが怒鳴る

「…あの…;」

そんな二人の言い争いを緊那羅きんならが見上げる

「ねぇ次は~?」

悠助が痺れを切らして口を尖らせた

「子供ですって-----------------!!?」


シュパ-----------------------------------ン!!


「あ」

勢いよく開いた襖の方向を一同が見た

「ヒマ子義姉様…」

「ヒマ子さん…;」

慧喜えき緊那羅きんならが同時に言う

「な…」

ヒマ子の目が大きく見開かれる

「あ~ヒマ子さんだ~」

悠助が暢気にヒマ子に手を振った

「な…な…」

ヒマ子の震える両葉がゆっくりと上がっていく

「…義兄様…」

慧喜えきが京助を見ると持っていた緊那羅きんならの両足を離して京助が自分の両耳をふさいだ

「悠助耳ふさいで」

「うん?」

慧喜えきが悠助に言うと悠助が慧喜えきの足を離して耳をふさぐ

「母さんも緊那羅きんならもふさげ;」

京助が言うと首をかしげながらも母ハルミと緊那羅きんならが耳をふさいだ

それから間もなく


「なにをなさっているのですか------------------------------------------------------------------------!!!!!!!!」


ドサササササササ…


ヒマ子の叫び声に家が少し揺れた気がしたかと思うと屋根にあった雪が一斉に落ちる音がした



「まごっちょ~;落ち着いてくりゃれ…ッ;」

阿修羅あしゅらが吹っ飛んできたツボのようなものを避けながら言った

「俺は知らないぞ…緊那羅」

上から下まで黒く長い衣装を纏った後姿が言う

「いい加減 緊那羅きんなら離れしたらどうですか?」

阿修羅の少し後ろで乾闥婆が言った

「うるさいッ!!」

「どぁっ!;」

怒鳴り声とともに今度はなにやら壁掛けらしきものが吹っ飛ぶ

緊那羅きんならは宝珠をもったんだろう!? ならどうしてコッチに帰ってこない!? どうしてアッチに行ったっきり…戻ってきたと思えば…もういない…」

阿修羅あしゅらに【まごっちょ】と呼ばれた黒尽くめの人物がうなだれた

緊那羅きんならは自分の居場所を見つけたんです」

乾闥婆けんだっぱが言う

「竜のボンがいるトコ…か」

「…栄野京助」

阿修羅あしゅらがボソッと言うとまごっちょが京助の名前をフルネームで言った

「あ、そうそうまごっちょ~…竜のボンになんかしたら緊那羅きんならがひっぱたくっていってたん」

阿修羅あしゅらがぽんと手を叩いて言うとまごっちょがびくっと体をすくませた

「…ひっぱたく…?」

「おうとも」

まごっちょが小さく聞き返すと阿修羅あしゅらが大きく頷いた

緊那羅きんならが俺を…」

まごっちょがフルフルと震えた

「…ヤレヤレ;」

阿修羅あしゅらが溜息をつくと乾闥婆(けんだっぱ9もその後ろで大きな溜息をついた


午後九時半を指した時計が尚も時を刻む茶の間にほのかに香る消毒液のにおい

頭にタオルを乗せた京助の視線の先には足に包帯を巻く緊那羅きんなら

「…痛いっちゃ?」

「うんにゃ」

包帯の巻き加減を聞いた緊那羅きんならに京助が答える

「昼間は痛かったけどな」

京助が鼻クソをほじりながら言った

「京助…」

しばらく間を置いて手を止めた緊那羅きんならが俯いたまま京助を呼んだ

「何だ?」

フンッと鼻息を出しながら京助が返事をした

「……」

京助の返事に緊那羅きんならの返事はなく

「…何だっつーの;」

京助が言いながら緊那羅きんならの頭を突付いた

「膝枕…」

「は?」

緊那羅きんならが小さく言うと京助が聞き返す

「膝枕なら私にもできるっちゃ」

「は?;」

顔を上げていった緊那羅きんならに今度は京助が疑問系で聞き返した

「ハルミママさんにはなれないっちゃけど…でも膝枕なら私にも出来るっちゃ」

間抜け面した京助の頭からタオルが落ちた

「…何言ってんだお前;」

京助が言う

「…私の前ではわがままでもいいっちゃ…だから我慢しないでいいんだっちゃ」

緊那羅きんならが言った

「我慢って…何をだよ;」

包帯巻きたての足であぐらをかいて京助が聞く

「京助は私が守るっちゃ…体はもちろん心も」

京助をまっすぐ見ながら緊那羅きんならが言う

「…あのな…俺は別に我慢なんてしてねぇし…それに…」

「私が男でハルミママさんじゃないからだっちゃ?」

京助が言い終わらないうちに緊那羅きんならが言った

「私は京助の全部を守りたいんだっちゃ」

緊那羅きんならが真顔で京助に言う


「…なんでだよ」

間を開けて京助が緊那羅きんならを見た

「京助が京助だからだっちゃ」

それに緊那羅きんならが何の躊躇いもなく答える

「…ソレ答えか?;」

「そうだっちゃ」

京助が聞くと緊那羅きんならが即答した

「京助が京助じゃなかったら私は守りたくないっちゃ」

緊那羅きんならが微笑む

「…なんだソレ…」

京助が顔をそらして頭を掻いた

「私が京助を守りたい理由だっちゃ」

緊那羅きんならが言うと京助が頭を掻いていた手を止めチラッと横目で緊那羅きんならを見た後 緊那羅きんならの膝めがけて頭を倒した

「…もう少し肉つけろ」

「悪かったっちゃねッ;」

「…さんきゅ」

京助がボソッと言った


「ねぇ慧喜えき~」

悠助が隣にいる慧喜えきを呼んだ

「何?」

慧喜えきが返事をする

「僕ねいいお父さんになるからね」

満面の笑みで悠助が言う

「そして慧喜えきといっぱい子供作るの」

寝ていた布団から体を起こして悠助が嬉しそうに言った

「悠助…」

慧喜えきが少し驚いたような顔をした後嬉しそうに微笑む

「俺…悠助に会えてよかった」

起き上がった慧喜えきが悠助を抱きしめた

「悠助…俺を置いていかないでね…」

「うん!!」

小さく言った慧喜えきの言葉に悠助が強く返事をした


「何とか言いなさい?」

母ハルミの声がした

「…まったく…明日ナメコの味噌汁供えてやるからね」

話しかけている相手は仏壇

置かれているのは中年の男女の写真と黒い位牌と火のともされた蝋燭と線香

「生きてるなら…私がこうして元気なうちに会いにきなさいよ…」

答えの返ってこない位牌に母ハルミが話しかける

「私だけじゃなくヨシコちゃんも泣かせて…馬鹿野郎」

コィーン

母ハルミがリンを叩く棒で位牌を小突いた

「私におかえりを言わせて頂戴…」

どこからか入ってきた隙間風で蝋燭の火が揺れた


「何なさってるのですか---------------------------------!!!」

「シーッ!; ヒマ子さんシーッ!!;」

叫んだヒマ子に緊那羅きんならが慌てて言う

「今何時だと思ってんだッ;」

京助も言う

「だッ…だだだだだだってですけどッ! 今ッ!! ひ…ッ!!」

ヒマ子が青い顔で葉をプルプル震わせて二人を見る

「膝枕だっちゃ?」

緊那羅きんならが言う

「そうですわ! 膝枕!!」

ヒマ子がびしっと葉を緊那羅きんならに向けた

「そういうことは妻がすることですわ!!」

「誰が妻だ; 誰の妻だ;」

ヒマ子が息を荒げて言うと京助が突っ込む

「妻じゃなくてもしていいと思うんだっちゃけど;」

緊那羅きんならがボソッと言うとヒマ子が緊那羅きんならに鋭い視線を向けた

「ソレは宣戦布告ですか緊那羅きんなら様」

「へ?;」

キラーンと光ったヒマ子の目

「…どうしてそうなるか;」

混乱してる緊那羅きんならの代わりに京助が突っ込む

「愛人から妻への宣戦布告ですわね…ッ!!」

「誰が愛人だ誰の愛人だ;」

おそらく聞く耳には言っていないであろうと思いつつも京助が言う

「私はただ京助を守りたいだけで…愛人とか…ってそういうのじゃ…;」

緊那羅きんならが苦笑いで言う

「お だ ま り に な っ て く だ さ い ま せ !!」

ヒマ子がペシペシと葉で緊那羅きんならの頬を軽く叩く

「わかりましたわ…緊那羅きんなら様がその気なら…」

「いや…だから私はその気だとか…っていうかなんの気だっちゃ?;」

「…知るか;」

一人の世界に入ってしまったヒマ子に小さく突っ込んでいた緊那羅きんならが疑問を京助に聞く

「私も考えがありますわ!!」

「だから私は…;」

例えるならエースを狙えのヒロイン、ヒロミを見下すお蝶婦人の様にヒマ子が緊那羅きんならの前に立った

「あの…だから…;」

「…諦めろ;もうアカン;」

必死でヒマ子に何かを言おうとしている緊那羅きんならの肩を京助が軽く叩く

「京様!!」

「はッ!?;」

いきなり名指しされた京助が自分を指差して驚く

「はっきりなさってくださいませ!! 私と緊那羅きんなら様! どちらの膝枕をお求めですの!?」

ヒマ子が京助を見ると緊那羅きんならもチラッと京助を見た

「俺を巻き込むなよ…;」

京助が頭を抑えて溜息をついた

「さぁ!!」

ヒマ子が緊那羅きんならの隣に立って京助に答えを催促する

「…てか…ヒマ子さん膝ってどこだっちゃ?」

横に立っていたヒマ子の全身を見た緊那羅きんならが突っ込むとヒマ子が止まった

「…膝…」

ヒマ子が自分の茎を見る

「つぅか…横になっても土こぼれるからできねぇんじゃねぇ?」

更に京助が突っ込むとまたヒマ子が止まる

「…ヒマ子さん…?;」

数分間動かないままのヒマ子に緊那羅きんならが声をかける

「…ショックで気ィ失ってる;」

ヒマ子の顔の前で手を振った京助が言った

「…お前ももう少し肉つけろな」

「やかましいっちゃッ!!;」

京助が緊那羅きんならを指差して言った

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