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【第九回・四】くり・栗・みっくす

スポーツの秋、読書の秋…色々あるけどやっぱり【食欲の秋】が一番だろうということで開催された秋の味覚祭りIN栄野家

「絶対アカンと思う」

中島が言う

「絶対そうだよな!! 夏場とか絶対アカンよな!!」

坂田が中島に賛同する口調で言った

「いや夏場どうこうより基本的にアカンとおもいますよ俺は…ねぇ?」

京助が3馬鹿に同意を求めた

「そうだよねぇ…外にいてしかもモロに風とか受けてるしねソレを食わせるってのも…」

南が目を向ける先にあったのは黒板に書かれたご存知愛と勇気の顔を人に食わせる正義のヒーローアンパンマンの絵

「絶対硬いよな」

坂田が言うと一同が頷いた

「顔やってソレ食ったやつが食中毒とかありそうだよな…現実にいたら」

京助が言う

「ってか現実にいたらかなり怖ぇえと思いますよん; 頭取れるんだよ? 頭;」

南が言う

「…アンパンマン実写とかになったらスプラッタホラー映画のなにものでもないよな…アレはアニメだからなぁ…顔食うんだし顔」

京助が口の端をあげて言った

「考えてみろ…アンパンマンの身長が180㎝で8頭身だとして」

坂田が言うと京助、中島と南がしばし黙った後

「怖ッ!!;」

揃って言った

「そしてソレで【さぁ! 僕の顔をお食べよ】だぞ?」

さらに坂田が言う

「ギャー!!; 想像したら鳥肌立っちゃったよ俺;」

南が腕をさすりながら言う

「でもサァ…そう考えると天丼マンとかって…中身食わせてるよな…人で言う脳みそ?」

京助が言った

「…もう俺アンパンマンが幼児向け番組だってこと忘れそう;」

中島が苦笑いで言うと黒板の上についている古いスピーカーからザザ…ッとノイズが聞こえ


キーンコーンカーンコーン…


とチャイムが鳴った

「お…もうそんな時間なんだ…」

中島が見た時計が指し示していた時刻は午後五時十五分

「外まっくらけ」

南が窓の外を見て言う

「いやいや…熱く討論していると時が経つのを忘れますな」

坂田が立ち上がり黒板に書いてあったアンパンマンを消し始めた

「小腹もすいてきたし…切り上げるか」

京助がギーっと音をさせながら椅子を引いた

「んだねー…そうだ!!」

京助に同意した後南が声を上げた

「何だ;」

中島が聞く

「栗!」

「はぁ?;」

南が言うと他三人が疑問系に聞き返した

「おばちゃんが栗送ってきたんだけどウチじゃ食いきれないからやれって言われてたんだ!」

南が言う

「栗? 甘栗?」

坂田が聞き返す

「いんやイガついた栗」

南が答える

「タワシか」

京助が言う

「そうそう! タワシ!! …でも忘れてきたんだわコレが」

南が【イヤ~申し訳ない】的に頭をかきながら言った

「駄目じゃん;」

そんな南に坂田が突っ込む

「明日取りにこいよ休みだし」

南が言った

「もってこいよなー…ムフー; 面倒くせぇ…」

「私か弱いですもの…ミナミ…女の子だもん」

坂田が言うと南が人差し指を唇に当ててポーズを取りながら可愛らしく言った

「そういうことは下を取ってから言いなさい」

中島が突っ込む

「いやーん! 柚汰くんのえーっちーッ!」

「くっつくな!!;」

南が京助に抱きついた

「俺お前が将来本当ソッチの仕事に行かないか不安だよ南君…」

中島が遠い目をして言うとまたスピーカーからノイズが聞こえてきた


「何してるんだっちゃ…?;」

茶の間の隅にある鞄やパーカーがかけてある物掛けをコマとイヌがじーッと見ているのを不思議に思った緊那羅きんならが聞いた

「…何かあるんだやな」

コマが見上げたまま言う

「何かって…なんなんだっちゃ?」

緊那羅きんならが近づいてきて一緒になって見上げた

「何かなんだやな」

イヌが言う

「…まさかまた…」

緊那羅きんならが祭りの夜に起こった出来事を思い出して目つきを鋭くして物掛けを見た

「京助のパーカー…」

コマがボソッと言うと緊那羅きんならがすかさず立ち上がって京助のパーカーを掴む

「のポケットなんだやな」

イヌが付け足すと頷いた緊那羅きんならがパーカーのポケットに手を入れた

「…コレ」

ポケットの中で手にした物体を緊那羅きんならがゆっくりと引き出した

「コレは確かこの前…京助が持ってた…」

取り出した袋を見て緊那羅きんならが何かを思い出した

「よこすんだやな!!」

コマが緊那羅きんならの足に捕まって立ち上がりいわゆる「ちんちん」をしながら言う

「早くよこすんだやな!!」

イヌも緊那羅きんならのもう片方の足につかまりちんちんして言った

「あ…うん?;」

緊那羅きんならが袋を下に提げると二匹がその袋を爪で破いた

「やっぱりなんだやなー!!」

イヌが嬉しそうに尻尾を振った

「…コレ…何だっちゃ?;」

緊那羅きんならが袋から出てきた物体を摘み上げた

「カミカミサラミなんだやな」

コマがソレを口に入れて嬉しそうに噛みだした

「飼い犬の健康を考えたおやつなんだやなvV」

イヌも同じくおいしそうに頬張りながら言う

「…おやつ…;」

二匹が振り切れんばかりに尻尾を降りながら食べるさまを見ていた緊那羅きんならが手に持っていたカミカミサラミを少し齧った

「…美味いか?;」

後ろから声をかけられてカミカミサラミを口にくわえたまま緊那羅きんならが振り返る

「ひょーふへ…;」

カミカミサラミをくわえたまま緊那羅きんならが言った

「おかえりなんだやな~ん」

満足したのか前足を舐めりながらコマが言う

「もっと欲しいんだやな」

イヌが京助を見た

「…乞うな;」

京助が薄手のウインドブレーカーを物掛けにかけて制服のボタンを外しながら言う

「ケチーなんだやなー」

イヌがむくれた

「…食べるっちゃ?」

緊那羅きんならが自分のくわえていたカミカミサラミをイヌに差し出した

「食うんだやな」

イヌが緊那羅の手からカミカミサラミをもらうと嬉しそうに噛みだした

「美味かったか?」

京助が靴下を脱ぎながら聞く

「特においしいとは…;」

緊那羅きんならが苦笑いで答えた

「…そういやお前って好き嫌いあんの? 何でも食ってるよな」

京助が言う

「え? 私…は…」

緊那羅きんならがそう言った後しばらく黙った

「…京助は?」

「俺はエビフライと…まぁエビフライだ」

緊那羅きんならが聞くと京助が答えた

「私の好きなもの…うーん;」

緊那羅きんならが考え込んだ

「いや; アナタそんな無理して答えなくてもいいですから;」

京助が脱いだ制服を持って立ち上がった

「ところで」

まだ考えている緊那羅きんならに京助が声をかけた

「なんだっちゃ?」

顔を上げた緊那羅きんならが聞き返す

「晩飯何?」

京助の声を同時に京助の腹の虫も鳴いた


「イモか」

京助が並べられた皿々を見て言った

「ハルミママさんが誰かから箱いっぱいもらったらしいんだっちゃ…それで」

緊那羅きんならがお盆からオカズを並べながら言う

「僕イモ好きー」

悠助がサツマイモご飯の盛られた茶碗を慧喜えきから受け取りながら笑った

「俺もまぁ好きだけど…こうも素敵にオンパレードだと…」

席に着いた京助が箸をもって言う

「まだまだ沢山あるのよねぇ…」

母ハルミが茶の間に入ってきた

「さすがに飽きるだろ;」

傍にあった大学イモを箸でつまんだ京助が言う

「私も作っててちょっとそう思ったっちゃ;」

緊那羅きんならが苦笑いで言った

「しっかし…本当イモイモだナァ; …美味いけど」

大学イモを飲み込んだ京助が言う

「悠助ご飯粒ついてる」

慧喜えきが嬉しそうに悠助の頬からご飯粒を取るとためらいもせずにソレを食べた

「あらあらラブラブねぇ」

そんな二人を見て母ハルミが笑う

「今更だろ;」

京助がサツマイモご飯をかき込みながら言った

「にしても…イモ…誰かに上げないとわるくなるわねぇ」

母ハルミが言う

「結構使えるんだけどね甘いし…お菓子にもなるけどモンブラン…スイートポテト…」

母ハルミがサツマイモでできるお菓子を挙げていった

「モンブランって栗じゃないっけ?」

京助が端をくわえたままで聞く

「あら? 知らないの? モンブランって栗だけじゃないのよ?」

母ハルミが言う

「俺上に栗が乗ってるケーキがモンブランだと思ってるし…栗…あ」

サツマイモコロッケを端に刺した京助が何かを思い出したらしく声を上げた

「何だっちゃ?;」

隣で醤油に手を伸ばそうとしていた緊那羅きんならが手を止めて京助を見る

「南が栗くれるっていってた」

「南君が?」

京助が言うと母ハルミが聞き返した

「僕栗ご飯好きー」

サツマイモご飯をおかわりしていた悠助が言った

「明日取りに行くんだけど…イモと交換でもしてくっか?」

京助が聞く

「あら!! いいじゃない! たまにはアンタもいいこと思いつくのねー」

母ハルミが言った

「たまにってなんだよたまにって;」


ピルルルルルルル…


京助が口の端を上げて言うと電話が鳴った

「ハイ一番近い人」

母ハルミがすかさず京助を指差して言う

「ヘイヘイ;」

京助が箸を置いて立ち上がった

「栗?」

慧喜えきがきょとんとした顔で言う

「こんな形しててね~…甘栗とか僕剥くの遅いけど凄く好きなの」

手で栗の形を作った悠助が笑いながら言った

「なんだよ中島かよ…は? サンマ?;」

電話の相手は中島だったらしく京助が話している

「…秋の味覚万歳だなぁ; …いやウチもイモがさぁ…」

片足でもう片方の足を掻きながら京助が言う

「…うん……おお!! ソレナイスじゃん!!」

受話器を持った京助がいきなり大声を出すと一同が顔を上げた

「ウチなら落ち葉もわんさかあるし! いいねー!! 明日丁度休みだし! …うん…じゃ俺は坂田にかけるからよ」

京助が誰もいない方をむいて手招きのような仕草をしながら話している

「…またなにかやるみたいだっちゃね」

緊那羅きんならがそんな京助を見てボソッと言う

「いいんじゃない? 楽しいことはしたほういいと思うわ」

母ハルミがモヤシの味噌汁を啜りながら言った

「ごちそうさまでしたー」

悠助が小さくゲップをしながら両手を合わせた


「栗にサンマにイモにウサギ」

新聞紙の上に並べられた秋の味覚を見て坂田が言う

「ウサギはアカンだろウサギは;」

京助がクロを抱き上げながら言った

「クロ食べちゃ駄目だよー!!」

悠助が坂田の尻をパスンと叩いた

「境内も綺麗になって一石二鳥ね~たすかるわ~」

栗を鍋に入れながら母ハルミが言う

「ですよねッ!!」

坂田が声を大きくして母ハルミを見た

「…って京助君京助君」

そしてその後すぐ京助にカニ歩きで坂田が近付いていく

「なんだよ」

京助が言う

「なんなんだアイツはよッ;」

小声で言いながら坂田がくぃっと親指で指した先には母ハルミにべったりの鳥倶婆迦うぐばか

「ハルミおいちゃんも手伝う」

鳥倶婆迦うぐばかが長い袖をイガのついた栗に伸ばした

「しかも呼び捨てかよッ!!;」

坂田が小声で怒鳴る

「あらあらありがとうでも怪我するわよ?ほら痛いのよ~?」

母ハルミが鳥倶婆迦うぐばかに笑いながら言う

「大丈夫だよおいちゃんは」

鳥倶婆迦うぐばかが言う

「いや…なんだか妙に母さんに懐いてんだ」

京助がクロを撫でながら言う

「そりゃ見ればわかるッ!!;」

坂田がよくわからない動きをしながら小声で叫んだ


「ハルミは優しいからおいちゃん好きなんだ」

「うおぉおお!!!?;」

すぐ隣から聞こえてきた鳥倶婆迦うぐばかの声に驚いた坂田が京助に抱きついた

「おいちゃん知ってるぞお前はハルミ馬鹿なんだよな」

鳥倶婆迦うぐばかが気の抜けたあのお面の顔を坂田に向けた

「だから勝負だ!!」

そして無駄に長い袖を坂田に突きつけた

「なッ…;」

坂田が京助に抱きついたままで眉を上げた

「おいちゃんとどっちがハルミ馬鹿なのか勝負だ!!」

「オイオイオイオイ; 人の母親で勝負するなよ;」

鳥倶婆迦うぐばかが言うと京助が突っ込む

「ふ…いいだろう…」

坂田が京助から放れながら言う

「オイってば;」

京助がクロを片手に坂田に突っ込む

「おいちゃんの方がハルミ馬鹿なんだからな」

鳥倶婆迦うぐばかが言う

「俺の方が長いんだもんなー!! ヘッ!!」

坂田が腰に手を当てて勝ち誇ったように背の低い鳥倶婆迦うぐばかを見下した

「ハルミの胸は柔らかいんだよ」

鳥倶婆迦うぐばかが言うと坂田が止まった

「そしてハルミはいい匂いがするんだ」

鳥倶婆迦うぐばかが更に言う

「おま…」

まるで油の切れたロボットのような動きで坂田が鳥倶婆迦うぐばかの方を見る

「うぐちゃんちょっと来てくれる?」

母ハルミが鳥倶婆迦うぐばかを呼んだ

「うんいいよ」

鳥倶婆迦がソレに答えて母ハルミの元に走っていく

「…オーィ?;」

京助が坂田に声をかけた


「…お館さヴぁあああああああああああああああああああン!!!!!!!!」

「グハッ!!;」

坂田が叫びながら京助に抱きついた

「負けたのか!? 俺は負けたのかッ!!?」

坂田が京助の首根っこを掴んで喚く

「知らんわッ!!;」

京助が怒鳴る

「俺もう出家する-------------ッ!!!」

オイオイと坂田が嘆いた

「京助と坂田君もいいかしら?」

「ハイ!!」

「オイ;」

母ハルミが京助と坂田に声をかけると坂田がすかさず返事をしたのに京助が口の端を上げて突っ込んだ


「…見てるなら手伝え;」

母ハルミに栗のイガ剥きを言いつけられた京助が背中に視線を感じ振り向かずに言う

「…ん」

相変わらず初めの一言が聞き取れない話し方で制多迦せいたかが返事をした

「…どうした? 制多迦せいたか

イガ付きの栗をじーッと見ている制多迦せいたかに坂田が聞いた

「…れウニ?」

制多迦せいたかがイガ栗を指差して聞く

「栗」

京助がイガをペイっと庭に落としながら答える

「…り…」

制多迦せいたかが栗をまたじーっと見る

「…にじゃなく栗…」

ボソッと言った制多迦せいたかがわしっと勢いよく栗を掴んだ

「…痛ぇんだろ;」

そのまましばらく止まったままだった制多迦せいたかに坂田が言う

「…ん;」

制多迦せいたかが頷いた

「思いっきり掴んだしな;」

京助がまたイガをペイっと庭に落としながら言った

「…ニ踏んだときも痛かった…;」

制多迦せいたかが海水浴で思い切りふんずけたウニのトゲの記憶を思い出しながら言う

「ウニはトゲで栗はイガ」

坂田が箱の中のイガ付き栗を取り出して言う

「似てるけど微妙に違うんよな」

京助が足を組みなおしながら言った

「…ゲとイガ…」

ボソッと言った制多迦せいたかがまたイガ栗をじーッと見る

「…だから…見てるなら手伝えっちゅーん;」

京助が制多迦せいたかめがけてイガ投げるとソレが制多迦せいたかの頭に乗っかった

「…たい;」

イガを取って頭をさすりながら制多迦せいたかが言う

「コレはいてんで剥き剥き」

坂田が制多迦せいたかに軍手を差し出しながら言うと制多迦せいたかが少し前のめりになる

「ハイ起きる」

そんな制多迦せいたかの頭に後ろから矜羯羅こんがらがクロを乗せた

「…んがら;」

頭の上のクロを押さえながら制多迦せいたか矜羯羅こんがらを見上げた

「お前いつの間にきてんだよ;」

京助が矜羯羅こんがらを見て言う

「今だけど…何コレ」

矜羯羅こんがらが京助の手の中のイガ栗を見て顔をしかめた

「栗」

坂田と京助がハモって答える

「…ニじゃないんだって」

制多迦せいたかが頭にクロを乗せたままヘラリと笑って言う

「ウニ? 何ソレ」

矜羯羅こんがらがしかめっ面のままで制多迦せいたかを見た

「ウニってのは~こう…トゲトゲOK? あ~ン…栗!! え~…イガイガOK?」

坂田が何故かエセ外国人に出くわしたときにするような口調で説明する

「…わかんないよ」

矜羯羅こんがらが言う

「だーかーらー; …ちょっと待ってろ」

京助が立ち上がり和室に入っていくと紙とペンを持って戻ってきた

「あのだな…コレが…ウニ!! んで…コレ…が栗だ!!」

京助が広告の裏に書いたのはどうみても同じものにしか見えない絵

「…コッチが栗か?」

京助の書いた絵を見て坂田が聞く

「ソレはウニ」

京助が答える

「…わかんないよ」

矜羯羅こんがらが言った

「わかるだろー!; コレどう見てもまんま栗じゃん!! この立派なイガ!! ゴッホもビックリして咳がゴッホゴッホだ!!」

京助が言う

「お前さっきソッチがウニって言ってなかったか?」

坂田が突っ込む

「気のせいだ」

京助が言った

「…結局なんなのさコレは」

矜羯羅こんがらが栗を一つ持って聞く

「…り」

制多迦せいたかが言う

「栗?」

矜羯羅こんがらが聞き返すと制多迦がヘラリ笑って頷いた

「…お前よく制多迦せいたかの言いたいこと一言だけでわかるな;」

京助が言う

「最初なんて全然聞き取れねぇのによ」

手に持っていたペンをクルクル回しながら京助が言った

「そりゃね…わかるさ」

矜羯羅こんがらがふっと笑って言う

「えっらい自信だナァ」

坂田が言った

「まぁね」

にっこり笑った矜羯羅こんがらが裏手拳で制多迦の頬をパンチした

「…たい;」

制多迦せいたか矜羯羅こんがらに殴られた頬をさすりながら言う

「…以心伝心か;」

京助が口の端を上げて言った


神社の境内正面にテンコ盛り山盛りに集められた落ち葉の山に向かってやってくるのは中島

「よっこら…せっと」

バサバサと袋から落ち葉を出してまた積み上げる

「だいぶ集まったっちゃね」

周りに散らばった落ち葉を緊那羅きんならが箒でかき集めながら言った

「垣根の垣根の曲がり角ぉ~っと」

後からやってきた南も中島同様袋から落ち葉を出しながら歌う

「ふぃ~…いやいや…すっかり秋だぁね」

集めた落ち葉を一枚持って南が言った

「肌寒くなってきたしナァ…ついこないだまでは暑くて暑くてウダウダしてたのに…北海道の夏って本当短ェよなぁ…」

そう言って中島が見上げた空は高く青かった

「イモの準備はできたんだやな!!」

ゼンが頭の上にアルミ箔に包まれたイモが入ったザルを乗せてゴと共に駆けてきた

「お! イモ班一番乗りでご苦労さん!!」

中島が言う

「…ちゃっかり一番大きいイモに自分等の名前かいてる辺りしっかりしてるよねぇ;」

一番上に乗っていた一番大きなイモであろうそのアルミ箔にはマジックでしっかり【ゼンゴのイモ】とミミズ文字で書かれていた

「早い者勝ちなんだやな」

ゴが笑いながら言う

「こんなデッカイイモ食ったらお前…屁連発すんじゃねぇ?」

中島がそのイモを手にとって言う

「武器になるからいいんだやな」

ゼンが胸を張って言う

「嫌な武器だっちゃね;」

緊那羅きんならが苦笑いで突っ込んだ

「屁ってサァ…スカシだとやたら臭ェよなぁ…」

中島がイモを落ち葉の山に埋めながら言う

「そうそう!! やたらシリの穴の周りが熱くてさ!!」

南が笑いながら言う

「音がすれば臭くないってアレ絶対嘘だよな」

イモを次々に落ち葉の山に埋める中島がしみじみと言った

「そうなんだっちゃ?」

中島にイモを手渡しながら緊那羅きんならが聞く

「俺もそう思う~…俺栗食って屁ェしたらでっかい音したから臭くないと思ってたんだけど…きたんですよね後からジワジワと臭気が」

南が遠い目をして言う

「それがもう臭いのなんのって…よくコントとかで屁したら黄色い空気になるじゃん? あんなカンジでさ~; 家族で食ったからもうブップブップ音はするわ臭いわで…ネェ?」

南が【チョイと奥さん】的手つきで緊那羅きんならにふった

「京助の屁も臭いんだっちゃ;」

緊那羅きんならが言う

「前にこう…握った手を顔の前に出されたかと思ったら…あの時は本気で引っ叩いたっちゃよ;」

緊那羅きんならが溜息をついた

「京助の屁は本当臭いんだやな」

ゼンがウンウン頷く


ざく


「人の屁を話題に上げるな;」

「痛いんだやな-------------!!!!;」

声を上げたゼンの頭の上にはイガが乗っていた

「お! 栗班もあがりか」

イモを落ち葉の中に埋め終わった中島が立ち上がった

「ゼンが言いだしっぺじゃないんだやなー!!」

ピーピーゼンが京助に向かって喚く

「よしよし;」

そんなゼンの頭からイガを取って緊那羅きんならが撫でる

「ぁう~;」

ゼンが自分でも頭を撫でた

「痛いの痛いの~…京助に倍になってとんでけ~なんだやな」

ゴが京助に向かって言う

「飛んでこない飛んでこない」

京助がハッハと笑いながら言う


ざく


「痛いの痛いの飛んできた飛んできた」

「…お前ナァ;」

ハッハと笑いながら坂田が京助の頭の上にイガを乗せた

「おまけで」

坂田がそう言いながらもう一個イガを京助の頭に乗せる

「きゃー可愛い~!! 京子ちゃん」

丁度中華娘のお団子ヘアーの様に乗せられたイガを見て南が言う

「体を張って秋を演出してみました」

坂田が言うと京助が坂田の頬を引っ張った

「おいちゃんが持つよハルミ」

鳥倶婆迦うぐばかが母ハルミを見上げて言う


「大丈夫なの? うぐちゃん」

母ハルミが鳥倶婆迦うぐばかを見た

「大丈夫だよ」

鳥倶婆迦が軽く胸を張って言ったすぐ傍にあるのはお外で焼肉には欠かせないアウトドアコンロ

「結構重いのよ?」

母ハルミが物置の中の鳥倶婆迦うぐばかに向かって言う

「やっぱり京助達に…」

「駄目ッ!!」

母ハルミが京助を呼ぼうとすると鳥倶婆迦うぐばかがとめた

「おいちゃん大丈夫だから!! 大丈夫だからおいちゃんに任せてよハルミ!!」

鳥倶婆迦うぐばかが長い袖で隠れて見えない手をブンブン上下に振って言う

「うぐちゃん…でもね…」

母ハルミが苦笑いで鳥倶婆迦うぐばかと目線を合わせる

「おいちゃんは決めたんだ! おいちゃん坂田よりハルミ馬鹿になるんだって!!」

鳥倶婆迦うぐばかが言うと母ハルミがきょとんとした顔をした

「…坂田君?」

唐突に鳥倶婆迦うぐばかの口から出た坂田の名前を母ハルミが繰り返す

「坂田はハルミが好きなんだよ。そしておいちゃんもハルミが好きなの」

鳥倶婆迦うぐばかが言う

「あらあら」

ソレを聞いた母ハルミが笑った

「ありがとうねうぐちゃんおばさんとっても嬉しいわ」

母ハルミが鳥倶婆迦うぐばかの頭を撫でた

「でもねおばさん…もちろんうぐちゃんも坂田君も悠ちゃんや京助…みんな好きだけど一番好きな人がいるの」

母ハルミが静かに言った

「…竜?」

鳥倶婆迦うぐばかがボソッと言うと母ハルミが頷いた

「…ハルミ…」

「なぁに?」

少し間を空けて母ハルミに鳥倶婆迦うぐばかが呼びかけた

「…お母さんって呼んでもいい?」

また少し間を開けて鳥倶婆迦うぐばかが言う

「うんいいわよ?」

母ハルミが言うと鳥倶婆迦うぐばかが躊躇いながら母ハルミの首に腕を回した

「おかあさん…」

鳥倶婆迦うぐばかが小さく言うと母ハルミが鳥倶婆迦うぐばかを抱きしめた

「おいちゃんのお母さんも…ハルミみたいなだったらいいな…」

お面の顔とは対照的な鳥倶婆うぐばか迦の声を聞いた母ハルミが鳥倶婆迦うぐばかを更に抱きしめた


「臭いよ」

矜羯羅こんがらが煙を上げて燃えている落ち葉の山を見ていった

「仕方ないじゃん;」

そんな矜羯羅こんがらに中島が言う

「知ってる? 煙っていい女とかいい男の方にいくって」

南がまたしょうもないトリビアを言った

「それ多分ガセ!! 俺の方に来ない」

坂田が言う

「いやまさにトリビアだろう」

まだ頭にイガを乗せている京助が突っ込んだ

「どうでもいいけど臭いよ」

矜羯羅こんがらが手で煙を払いながら言う

「さっきから矜羯羅こんがらの方にばっかり煙がいってるっちゃね」

緊那羅きんならが言った

「煙は正直なんだやな」

ゴがウンウン頷きながら言う

「見てくれはいいんだやな」

ゼンが矜羯羅こんがらを見て言う

「…なんかムカってきました」

京助が手を上げて発言した

「そういやタカちゃんは?」

南が制多迦せいたかの姿が見えないのを尋ねた

「悠助と慧喜えきと…庭にいる」

矜羯羅こんがらがまた手で煙を払いながら答えた

「ほっといていいのか?」

中島が矜羯羅こんがらに言った

「…もう僕だけじゃないから」

矜羯羅こんがらがふっと笑った

制多迦せいたかには僕だけじゃないから」

矜羯羅こんがらが言うと3馬鹿と京助そして緊那羅きんならが顔を見合わせた

「【みんな】がいるしね…ッケホ;」

にっこり笑って言った矜羯羅こんがらが最後の方で煙に咽た

「ゲホッ; カハッ;」

モロに煙を吸ったのか矜羯羅こんがらが激しく咽る

「こんの色男さんめ ザマァみろリン」

南がわざとウチワで矜羯羅こんがらの方に煙を差し向ける

「ウ~ラウラ」

中島もシャツをバフバフさせて煙を差し向けた

「怒るよ…ッ;」

涙目で矜羯羅こんがらが睨む

「男の嫉妬って醜いわァ~ん」

南がフッと溜息を吐きながらそれでも仰ぐのはやめずにいった

「コレは嫉妬じゃないさ!! 天罰だ天罰」

中島が更にバフバフしながら言う

「…何してるんだっちゃ…;」

落ち葉を補充しながら緊那羅きんならが呆れ声で言った


「うわー!! 凄い煙ー!!」

悠助の元気な声が聞こえてきた

「おーぅ! 悠!!」

中島が悠助に手を振った

「ケホッ;」

頭に巻いている布で顔を押えた矜羯羅こんがらが数歩後ろに下がった

「…んがら大丈夫?」

咽ている矜羯羅こんがらに悠助と一緒にやってきた制多迦せいたかが声をかけた

「お前等 矜羯羅こんがら様になにしてんだよッ!!」

慧喜えきが中島と南に向かって怒鳴った

「いやぁ? 別に何もしてないよ~ん? ただ煙さんがいい男の方にいっただけのことで」

南がハッハと笑いながら言う

「そうそういい男の方に」

中島もハッハと笑う

「そりゃ矜羯羅こんがら様は綺麗だけどお前等今わざとやってたろッ!!」

慧喜えきが怒鳴る

「そんあこたぁないですぜぃ」

中島が言う

「嘘つけッ!!」

慧喜えきが更に怒鳴った

「…もういいよ慧喜えき…」

制多迦せいたかに背中を摩られながら矜羯羅こんがらが言う

「でも…ッ!!」

慧喜えき矜羯羅こんがらを見ると矜羯羅こんがらの隣の制多迦せいたかが嬉しそうに頷いた

「…わかりました…」

ぷぅっと膨れつつ慧喜えきが返事をした

「大丈夫? きょんがらさん」

悠助が矜羯羅こんがらの顔を覗き込んで言う

「…大丈夫だよ…」

何故か嬉しそうに矜羯羅こんがらが言った

「…れしいんだね矜羯羅こんがらも」

制多迦せいたかが言う

「…こじゃ僕等もみんな一緒だからね…みんな同じに見てくれる」

矜羯羅こんがらの背中から手を離した制多迦せいたかが頭の上にいるクロを乗せ直しながら言った

「…別に」

矜羯羅こんがらがふっと笑って顔を上げた

「君達…覚えておいてね」

中島と南ににっこりと笑顔を向けた矜羯羅こんがらが言うと中島と南が顔を見合わせた後揃って三歩歩いた


「オット!! しまったァ!!」

そして三歩歩いて立ち止まったところで中島が叫んだ

「どうしたの?」

悠助が聞く

「いっやぁ~…俺等トリ頭だから三歩歩いちゃったら忘れちゃった」

南が【イッケナーィ】的に自分の頭を軽く小突きながら言った

「…自分で自分のこと悪く言ってるような気がするっちゃ…;」

また落ち葉を補充しに来た緊那羅きんならがボソッと言う

「馬鹿だね」

慧喜えきが悠助の肩に手を置きながら言った

「馬鹿はおいちゃんッ!!」

家の方から聞こえた鳥倶婆迦うぐばかの声に一同が振り返る

「お!! ばか」

南が手をヒラヒラと振った

「上の名前を抜かすなって言ってるだろうッ!!」

鳥倶婆迦うぐばかがキーキーと喚く

「ホラホラ! うぐちゃん危ないからね?」

アウトドアコンロを二人で運んできた母ハルミが鳥倶婆迦うぐばかに言う

「あ、ごめん…えと…お母さん」

鳥倶婆迦うぐばかが躊躇いがちに言った

「…おかあさん?」

鳥倶婆迦うぐばかが言うと一同がきょとんとして止まる

「どうしたの皆しておかしな顔になってるわよ?」

アウトドアコンロを下ろした母ハルミが一同を見て言う

「今…うぐちゃんハルミママのことお母さんって言った…」

悠助が言うと一同が頷いた

「そうよ?」

母ハルミがにっこり笑って言う

「じゃあうぐちゃんも家族?」

悠助が聞く

「…駄目…だったかな…おいちゃん…」

一同の視線を受けた鳥倶婆迦うぐばかが母ハルミの後ろに隠れるようにして言った

「ハルミみたいなお母さん…いいなって…でも…」

「悠助…」

鳥倶婆迦うぐばかがボソボソと言っている途中で矜羯羅こんがらが悠助の頭の上に手を置いて悠助の名前を呼んだ

「僕のお願い聞いてくれるかな」

矜羯羅こんがらが悠助ににっこりと笑顔を向けた


「生臭いんだやな…」

ゴが自分の手をクンカクンカと嗅ぎながら言う

「しゃぁねぇだろ; 魚なんだから」

母ハルミの捌いたサンマを水洗いしてソレをゴに手渡しながら京助が言う

「栗ご飯もうすぐだぞ」

「手伝え;」

坂田が炊飯ジャーの前でジャーに表示される時間を見て言うと京助が突っ込む

「ハルミさんとならともかくなんで俺が男と肩並べてサンマ洗わんとあかんねん」

坂田がヘッと笑って言う

「…ダイコン流星剣やったろか;」

京助がボソっと呟いた

「ゼンと一緒にダイコンでもおろしてろ」

京助が言うと坂田とゼンが顔を見合わせた


「ヘイ!!」

「よっしゃなんだやな!!」

坂田がダンっと勢いよく置いたボウルの上にはおろしがね

「うぉりゃぁああああああああ--------------!!!!」


ジョリジョリジョリジョリジョリジョリジョリジョリジョリジョリジョリ


「いっけェ-----------------------!!」

坂田の押えるボウルとおろしがねにダイコンを付けて勢いよくすりおろすのはゼン

「半分に切ってやるとか考えなかったんかぃ;」

ダイコン(LLサイズっぽいでかさ)を丸まんま一本を両手で持ってすりおろすゼンを見て京助が言う

「男なら妥協を許すなゼン!!」

坂田がわけがわからないんだけど妙に説得力のあることを言った

「わかったんだやな-----------------ッ!!;」

ゼンがそう言って必死でダイコンをすりおろす

「飛び散ってるんだやな」

勢いよくおろしているせいか辺りに飛び散っているすりおろしダイコンを見てゴが言う

「男なら細かいことは気にするな!!」

坂田がまたも言う

「後から掃除しろよお前」

京助が坂田に言った


「お願い?」

悠助が矜羯羅こんがらを見上げた

「そう」

矜羯羅こんがらが微笑みながら頷いた

「なに?」

悠助が聞く

「僕のこともみんなの様に呼んで欲しいんだ」

矜羯羅こんがらが言う

矜羯羅こんがら様?」

慧喜えき矜羯羅こんがらを見た

「みんなと…って?」

悠助が首をかしげる

「悠助は僕のことなんて呼んでる?」

矜羯羅が聞くと悠助が少し考えた後

「…きょんがらさん…」

躊躇いがちに答えた

「そうだね…じゃぁ制多迦せいたか慧喜えき緊那羅きんならは?」

矜羯羅こんがらが聞いた

「え…っとタカちゃん…慧喜えき…緊ちゃん…だよ?」

悠助がそれぞれの顔を見て言う

「僕だけさんがついてるよね」

矜羯羅こんがらが言った

「え…? あ…うん…」

悠助が頷いた

「…さんって…つけないで欲しいんだけど」

矜羯羅こんがらがしゃがんで悠助と目線を合わせた

「じゃぁ…なんて呼べばいいの?」

悠助が聞く

「コンちゃん」

「いやこんがらっちょだろ」

「君たちには聞いてないよ」

南が言うと中島も言いそれに矜羯羅こんがらが否定の言葉を投げた

「…悠助の好きに呼んでいいよ」

にっこりと笑って矜羯羅こんがらが言う

矜羯羅こんがら様…」

鳥倶婆迦うぐばかがボソッと言う

「じゃぁ…コン…ちゃん?」

悠助が小さく言うと矜羯羅こんがらが悠助の頭を撫でた

「ありがとう嬉しいよ」

矜羯羅こんがらが立ち上がって鳥倶婆迦うぐばかを見た

「ハルミママさんは鳥倶婆迦うぐばかに【お母さん】って呼ばれるのは…嫌?」

矜羯羅こんがらが母ハルミに聞く

「ううん? 嫌じゃないわ? むしろ嬉しいわよ?子供が増えたみたいで」

母ハルミが笑って鳥倶婆迦うぐばかの方を見た

「…ハルミ…」

鳥倶婆迦うぐばかが母ハルミを見た後悠助を見た

「うぐちゃん…ハルミママ好きなの?」

悠助が鳥倶婆迦うぐばかに聞くと鳥倶婆迦うぐばかが頷く

「おいちゃんハルミみたいなお母さんだったらいいなって…でも悠助が嫌だって言うならおいちゃん…」

鳥倶婆迦うぐばかが無駄に長い袖をぎゅっと握って俯いた


「ダーイコーンおーろぉーしィ~♪」

京助が六甲おろしの替え歌を歌いながらサンマを持ってやってきた

「おーキタキタ!!」

中島が京助を見て言った

「お? どうしたばか」

京助が袖を握って俯いている鳥倶婆迦うぐばかに声をかけた

「あのね京助…」

悠助が京助を見た

「…京助はおいちゃんがハルミをお母さんって呼ぶの…嫌?」

「はぁ?」

鳥倶婆迦うぐばかが言うと京助が疑問系に聞き返す

「ってか…みんな呼び方ちゃうけど母さんのこと【ママ】って呼んでるじゃん」

京助が言う

「そういやそうだよね~…ハルミ【ママ】さんって…【ママ】って【お母さん】って意味だしね」

南が言った

「そうなんだっちゃ?」

緊那羅きんならが中島に聞く

「そうそう【ママ】ってのは日本語にすると【お母さん】なんよ」

中島が答えた

「だから今更」

京助がサンマをザルごと地面に置いた

「…ハルミママ」

悠助がハルミを見ると母ハルミがにっこり微笑んだ

「…うぐちゃん…」

そして次に鳥倶婆迦うぐばかを見る

「あ…あのねっ」

悠助が少し大きな声を出した

「ハルミママは僕と京助のお母さんだけど…でもうぐちゃんもハルミママでいいよ?」

悠助が言う

「だってハルミママはハルミママだし…みんなハルミママって呼んでるしうぐちゃんだけ呼ばないって…変だし…だから…あのね…」

悠助が必死で何かを伝えようとしているのを見て母ハルミが鳥倶婆迦うぐばかの背中を軽く押した

「…ハルミ…?」

ソレに少し驚いた鳥倶婆迦うぐばかが母ハルミを見上げると母ハルミが頷く

「だから…あのね…みんな一緒で…」


「ヘーィ!! くりごっハァーン!!」

タイミング最悪なところで坂田が炊飯ジャーを持ってやってきた

「待つんだやな坂田ー」

その後から割り箸と紙皿を持ったゼンゴがかけてきた

「…何だよ?;」

静まり返っている上突き刺さるような視線を向けられた坂田が言う

「なんなんだやな?;」

ゼンゴも坂田の後ろに隠れながら言う

「…場の空気読もうね坂田君」

そんな坂田の肩を南が軽く叩いて言う

「だから何なんだっての;」

坂田が南に聞く

「ハルミさんはみんなのお母さんって話」

中島が言う

「は? ハルミさんがなんだって?」

坂田が真顔で聞き返した

「ハルミママさんはハルミママさんなんだやな」

ゴが言う

「だから…えー…まぁ…お母さん?;」

説明が混乱してきた中島が言った

「だからハルミさんがママでなんだって?」

中島に坂田が更に詰め寄って聞く

「…ぐばか」

坂田にタイミング悪く話を折られて止まっていた鳥倶婆迦うぐばか制多迦せいたかが声をかけた

「…のね…コレがウニでコッチが栗」

制多迦せいたかが傍にあった棒で地面になんだかさっき京助が書いたのとさほど変わらない二つの絵を描いた

「…なじに見える? けど違うんだって」

制多迦せいたかが微笑みながら言う

「…制多迦せいたか様?」

鳥倶婆迦うぐばかが首をかしげた

「…も似てるんだよねウニと栗」

制多迦せいたかが地面に書いた二つの絵を丸で囲んだ

「…ルミママさんは悠助と京助にとってお母さん…でも僕等もママって呼んでる」

制多迦せいたかが言う

「…からハルミママって呼んでいいと思う」

鳥倶婆迦うぐばかにヘラリ笑いを向けながら制多迦せいたかが言った

「…制多迦せいたか様…」

鳥倶婆迦うぐばかがお面の顔を制多迦せいたかに向けた

「…すいませんわけがわかりません」

鳥倶婆迦うぐばかが言うと制多迦せいたかがヘラリ笑いのまま首をかしげた


「…矜羯羅こんがら様…;」

しばらく間を空けた後困った鳥倶婆迦うぐばか矜羯羅こんがらを見上げた

「同じに見えても違ってこと」

矜羯羅こんがらが言う

「ハルミママさんって呼んではいても…本当のお母さんじゃない…ってこと」

矜羯羅こんがら制多迦せいたかを見ながら言うと制多迦せいたかがヘラリ笑ったままで頷いた

「ハルミママさんから産まれたのは京助と悠助だけ…」

矜羯羅こんがらの言葉に京助と悠助が顔を見合わせる

「…わかってます…」

鳥倶婆迦うぐばかが俯いて言う

「…でもおいちゃんは…」

顔を上げた鳥倶婆迦うぐばかが母ハルミをチラっと見た

「でも私もハルミママさんって…呼んでるっちゃ…」

緊那羅きんならがボソッと言う

「…だから呼ぶだけならいいんじゃないって言いたい…とか?」

南が制多迦せいたかを見る

「そうだと思うよ」

矜羯羅こんがらが言うと制多迦せいたかが頷き頭の上のクロがずり落ちそうになった

「まぁ…アレだな」

京助の声とかぱっという音と共に落ち葉が燃える煙とは打って変わっていい匂いの煙…もとい湯気が上がる

「あッ!!; 京助ずるいんだやなッ!!;」

栗ご飯が入っている炊飯ジャーを開けた京助が紙皿にソレを盛る

「悠」

そしてジャーの蓋を閉めると悠助を手招きして呼んだ

「…何?」

悠助が京助に近付くと京助が悠助になにやらボソボソと耳打ちをし始める

「さぁ! じゃサンマ焼いちゃいましょうか!!」

パンッと手を打って母ハルミが言う

矜羯羅こんがら君とタカちゃん」

母ハルミに名前を呼ばれた矜羯羅こんがら制多迦せいたかが自分に向かって指を差すと母ハルミが頷く

「働かざるもの食うべからず!! 手伝って頂戴」

にっこり笑った母ハルミの手には二本のウチワがあった


「イモ~イモイモ~ホックホク~」

中島が火バサミで落ち葉の中からアルミ箔にくるまれたイモを探し始める

「隊長!! 第一村人発見です!!」

「でかした! 早速取り掛かれ!!」

同じく火バサミでイモを捜索していた坂田が発見したというと南が命令口調で言った

「蝶の様に舞い…」

坂田がどこからともなく割り箸を一本取り出した

「蜂の様に刺す-------------------------ッ!!」

そしてその箸を見つけたイモにブッ刺した

「…どうだっちゃ?」

しばしの沈黙の後 緊那羅きんならが聞く

「…スムージング」

坂田が爽やかな笑顔で親指を立てた

「第一村人合格!! 次探せ次!!」

どうやら中まで火が通っていたらしいイモを退けると3馬鹿がまたイモを探し始めた

「ゼン等のでっかいイモを早く見つけてほしいんだやな」

ゼンが尻尾を振りながら中島の背中に負ぶさった

「あんだけでっかいならたぶんまだ生」

中島が落ち葉の山を崩しながら言う

「ぶー」

ゼンがむくれる

緊那羅きんなら何してるの?」

悠助が京助に呼ばれたためにヒマしていた慧喜えきが煙に巻かれながらもその場から離れない緊那羅きんならに聞いた

「ここあったかいんだっちゃ…ぷ;」

手で煙を払いながら緊那羅きんならが言う

「さっきからラムちゃんの方にばっかり煙いってるねぇ…」

イモを見つけては箸を刺すを繰り返していた南が言う

「俺の方にはこねぇしよ」

坂田が言う

「煙は正直なんだやな」

ゼンが中島の背中でボソッと言う

「自然は嘘をつかないんだやな」

坂田の隣にいたゴも言う


「…オットォ!! 手が滑っちゃったァ!!」

「だっ;」

坂田が笑顔で火バサミでゴの頭を叩いた

「あらコッチはもっと激しく手が滑ったー」

「だっ;」

中島が坂田と同じく火バサミで背中にいたゼンを叩いた

「痛いんだやな--------ッ!!;」

ゼンゴがハモって声を上げた

「…何してるんだっちゃ…;」

煙に巻かれながら緊那羅きんならがボソッと言った

「…いつまでやればいいわけ?」

矜羯羅こんがらがウチワをハタハタと動かしながら呟く

「サンマが焼けるまでよ」

母ハルミがアウトドアコンロの上でサンマを焼きながら答えた

「…制多迦せいたか…クロ焼かないようにね」

制多迦せいたかの頭の上からずり落ちてきたクロを見て矜羯羅こんがらが言うと制多迦せいたかが慌ててクロを支えた

「楽しいわぁ~…大家族ってきっとこんなカンジなのね」

母ハルミが嬉しそうに言った

「ハルミママ様こっち焦げてる」

悠助を京助に取られた慧喜えきが真ん中のサンマを指差して言う

「あらあら大変;」

母ハルミが長箸でそのサンマをひっくり返した


「…矜羯羅こんがら君達って家族は?」

母ハルミが突然聞くとハタと矜羯羅こんがらが仰ぐ手を止めた

「…いない」

慧喜えきが答える

「僕等もそうだけど…緊那羅きんなら達にもいないよ…」

矜羯羅こんがらがゆっくりウチワを動かし始めた

「あら!! じゃあ丁度いいじゃない」

ソレを聞いた母ハルミが手を叩いて笑顔で言った

「…ハルミママ様?;」

母ハルミが大きな声を出し驚いた慧喜えきが母ハルミに声をかける

「みんなうちの子になっちゃいなさい」

母ハルミがにっこり笑って言う

「…は?;」

母ハルミの言葉に矜羯羅こんがらが再び手を止めた

「無理だよ…」

そしてしばらく間を開けた後静かに言った

「あら? どうして? 別に私が産んだわけじゃないけど息子みたいなものだわ」

にっこり笑顔を矜羯羅こんがらに向けて母ハルミが言う

「僕等はコッチに住めないからね…」

「住めなくたっていいじゃない」

矜羯羅こんがらが言うと母ハルミが少し大きな声ですぐに言った

「いつでも帰ってきなさい? いいわね? 決まりッ!! ハイ!! お皿ッ」

母ハルミが一人で勝手に完結させて慧喜えきに皿を取るように言う

「もちろん慧喜えきちゃんもタカちゃんもよ? みんな私の子供になっちゃいなさい」

慧喜えきが差し出した紙皿にサンマを取りながら母ハルミが言う

「いいわね?」

母ハルミが顔を上げて制多迦せいたか矜羯羅こんがらを見た

「返事は? お母さんの言うことは聞くものよ?」

腰に手を当てた母ハルミが言う

「…わかったよ」


スコーン


矜羯羅こんがら様!!;」

矜羯羅こんがらがふっと笑って言うと箸が一本華麗に飛んで矜羯羅こんがらの額にジャストヒットしたのを見て慧喜えきが声を上げる

「返事はハイと一回! 元気よくッ!!」

母ハルミが言う

「…い;」

ソレを見ていた制多迦せいたかが恐る恐る返事をした


ワイワイそれぞれやっているサンマチームとイモチーム

そのどれにも入れない鳥倶婆迦うぐばかがぽつんと立っている

「……」

風で飛んできた落ち葉が鳥倶婆迦うぐばかの足に絡んだ

「うぐちゃん」

不意に名前を呼ばれて鳥倶婆迦うぐばかが顔を上げるとそこには悠助と京助

「食え」

京助が皿に盛られた栗ご飯をずいっと鳥倶婆迦うぐばかの前に出した

「え…?」

鳥倶婆迦うぐばかが栗ご飯を見てそれから京助を見上げた

「俺等味見班」

ニーッと京助が笑った

「さっき僕も食べたの~おいしかったよ」

悠助が笑って言った

「…いいの?」

鳥倶婆迦うぐばかが恐る恐る皿を手にする

「駄目だったら持ってこねぇって」

京助がしゃがんで言う

「そん代わり感想を率直に簡潔にわかりやすく述べることッ」

そう言って京助が鳥倶婆迦うぐばかのお面の額に書かれた【笑】を突付いた

「お前外見インパクトあるくせにツッコミが弱いんだよなぁ…突っ込め」

皿を持ったまま止まっていた鳥倶婆迦うぐばかに京助が言う

「お面外さないと食べられないよ? うぐちゃん」

悠助が言う

「あ…でもおいちゃん…」

悠助の言葉に鳥倶婆迦うぐばかがどもりながら何かを言おうとすると京助が悠助の背中を押して二人して鳥倶婆迦うぐばかに背を向けた

「京助?」

悠助がきょとんとして京助を見る

「はよ食え」

悠助の頭を押えた京助が鳥倶婆迦うぐばかに言った

「…う…ん」

鳥倶婆迦うぐばかが小さく頷いた

「…おいしい」

鳥倶婆迦うぐばかが言うと京助がゆっくり振り向いた

「そっか」

そして口の端を上げて京助が笑った

「でしょ?」

京助に頭を押えられていた悠助も鳥倶婆迦うぐばかの方を見て笑いながら言う


「ぅおーい!! イモ焼けたぞー!!」

中島が叫んだ

「サンマもだいぶ焼けたわよー」

そしてそんな中島に対抗するかのように母ハルミ言った

「…だってさ」

京助が悠助と鳥倶婆迦うぐばかをチラッと見る

「…焼けたって」

今度は悠助が鳥倶婆迦うぐばかをチラッと見た

「…焼けたの?」

鳥倶婆迦うぐばかが京助と悠助をチラッと見返した

「じゃ…行きますか」

京助が言って歩き出した

「うぐちゃん」

悠助が鳥倶婆迦うぐばかの長い袖を引っ張った

「早く行かないとおっきなイモなくなっちゃうよ」

びろ~んっと鳥倶婆迦うぐばかの袖を悠助が引っ張ると鳥倶婆迦うぐばかが片足を一歩前に出した

「あ…うん…」

どことなく遠慮しているような態度で鳥倶婆迦うぐばかがもう一歩踏み出すのを見た京助が頭を掻いた後 鳥倶婆迦うぐばかの後ろに回った

「言っただろ~…突っ込めよな…ッ!」

「うわっ;」

「あ~! ずるい~!!」

京助が鳥倶婆迦うぐばかを肩に担いで小走りで走り出すとその後ろを悠助がついてきた

「ヘイ! ハンコお願いします」

母ハルミの傍に鳥倶婆迦うぐばかを下ろしながら京助が言う

「イモ判ならヘイ! お待ち!!」

アルミ箔にくるまれたイモをカゴに入れた南が笑って言った

「ゴ等のがないんだやな」

ゴがカゴの中を見て言う

「だぁからでっかくてまだ生」

坂田が軍手を履いた手にイモを持ってソレをカゴの中に入れながら言う

「ぷー!!」

ゼンゴが揃って頬を膨らませる

「サンマから食べるからいいんだやな」

ゼンが尻尾を振って母ハルミを見た

「ハイハイ」

母ハルミが紙皿に焼けたサンマを乗せてゼンに手渡した


「いいにおいなんだやな~…」

ゼンゴが揃ってサンマから上がる素晴らしき秋の香りを犬嗅覚全開で吸い込み思い切り幸せそうな顔をした

「うぐちゃんもいる?」

母ハルミが鳥倶婆迦うぐばかに声をかけると鳥倶婆迦うぐばかがビクッとした

「え…おいちゃん…?」

「栗ご飯もあるっちゃ」

鳥倶婆迦うぐばかが自分を指差して言うと緊那羅きんならが紙皿に乗った栗ご飯おにぎりを差し出した

「お!! 緊那羅きんならナイス! コレだと食いやすいな」

中島が親指を立てた

「自分の分は自分で作ってくれっちゃ」

鳥倶婆迦うぐばかに差し出したおにぎりを取ろうとした中島に緊那羅きんならが言う

「ぶー!!」

緊那羅きんならが言うと3馬鹿と京助が揃って頬を膨らます

「悠助、はいあーん」

「あーん」

その横でラブラブっぷりを炸裂させている慧喜えきと悠助を見て制多迦せいたかがヘラリ笑う

「おいちゃん…」

「うら」


スパン


鳥倶婆迦うぐばか緊那羅きんならが差し出された栗ご飯おにぎりの皿を持ったまま呟くと京助が新聞紙で即席で作ったハリセンで攻撃した

「人をむやみに叩くんじゃないッ!!」

スコーン

そして次の瞬間母ハルミの手から吹っ飛んできた一本の箸が京助の後頭部に刺さった

「…ハルミさん素敵だナァ…」

坂田が明後日の方向を見ながらボソっと呟いた

「お前一回眼科行ってこい;」

京助が坂田に言った

「…どしたんソレ」

「別に…」

南が矜羯羅こんがらの額が一点赤くなっているのに気付き聞くと矜羯羅こんがらがボソッと答える

「…お母さんって…みんなこんな?」

額を押えながら矜羯羅こんがらが聞く

「は? …お母さん…?」

南が聞き返した声で中島と坂田も矜羯羅こんがらを見た

「俺はハルミさんが母さんだったら手となり足となり…」

坂田が語り始める

「母親だから」

南が突っ込むと坂田が止まった

「近親相姦できません」

中島が更に突っ込む

「…他人でよかった…」

坂田が額の汗を拭いながら安堵の息を吐い


「コレやる」

京助が新聞紙で作ったハリセンを鳥倶婆迦うぐばかの前に差し出した

「え…?」

栗ご飯おにぎりののった皿を持っていた鳥倶婆迦うぐばかが京助を見上げた

「さっきも言ったようにお前は外見インパクトあるのにツッコミがヨッワーイ!! つーことでハリセンを授与」

京助がパスパスと手にハリセンを打ち付けならが言う

「突っ込みイコールハリセン」

京助が言う

「…あ…りがとう…」

鳥倶婆迦うぐばかが躊躇いながら京助にお礼を言う

「いらなかったらちゃんといらないって言わないと駄目だっちゃよ?」

そして緊那羅きんならが突っ込む

「ナイス突っ込みラムちゃん」

おそらく自分で握ったであろう栗ご飯おにぎりを片手に南がナイス! と親指を立てた

「…本当お前突っ込み上手くなったよな…」

京助がボソッと言う

「そりゃ…コレだけボケがいれば誰かが突っ込まなきゃでしょねぇ?」

母ハルミが栗ご飯をにぎりながら言った

「ですよねッ!!」

母ハルミの横で同じく栗ご飯おにぎりを作成していた坂田が声を高めて言う

「坂田も立派なボケ要員に数えられてると思うんだやな」

サンマを食べ終わったゴができたてのおにぎりに手を伸ばしながら言った


「…スッゲェワイルドな食い方してるヤツがいるし」

ふと顔を上げた中島が言った

「…何?」

サンマの頭を尻尾を持ち噛り付いていた矜羯羅こんがらが中島の言葉と視線に反応して手を止めた

「…お前なぁ; フランス料理を食べてますってぇ顔してんのにそおぃう食い方しますか…」

中島が言う

「悪い? だってこの方が食べやすいし」

矜羯羅こんがらがもくもくと食べながら答えた

「…美形になりきれてない美形カァ…俺と一緒だな」

矜羯羅こんがら様とお前を一緒にするなよ」

南がふっと髪をかき上げながら言うと慧喜えきが間髪いれずに突っ込んだ

「ナイス突っ込み慧喜えき!!」

京助が親指を立てて言う

「本当ボケばっかだっちゃね…;」

ぽかんとしている鳥倶婆迦うぐばかの隣で緊那羅きんならが言った

「ぅおーぃ出遅れてるぞばか」

坂田が鳥倶婆迦うぐばかに声をかけた

「ッ…おいちゃんはばかじゃなく鳥倶婆迦うぐばかだっ!!」


スパァ-----------------------ン!!


秋空高く響いたなんとも気持ちのいいハリセンの音

「…いいねぇ…」

「風流だな」

「これぞ突っ込み」

南と中島そして京助がしみじみと言い頷く

「…やるな貴様…」

後頭部に思い切りツッコミを食らった坂田がずり落ちたメガネを上げながら鳥倶婆迦うぐばかを見た

「あら大丈夫? 坂田君」

そんな坂田の後頭部を母ハルミが撫でた

「あ、固まった」

南が呟く

「あ、震えだした」

中島がソレに続く

「…阿呆だ阿呆;」

京助が口の端を上げて言う

「だッ…だだだだいじょうブイですハルミさんッ!!」

坂田がかなり動揺した口調で言った

「駄目ようぐちゃんむやみに人を叩いちゃ」

母ハルミが鳥倶婆迦うぐばかの頭を軽く小突いた

「あ…ご…めんなさい…」

謝った鳥倶婆迦うぐばかの声はどことなく嬉しそうにも聞こえた

「あ…制多迦せいたかさ…」


スッコ-----------------------ン


慧喜えきがコックリと船を漕ぎ出していた制多迦せいたかに声をかけている横からお約束に飛んできた玉が制多迦せいたかの額に見事ヒットする

「凄いんだやな…」

口の周りにお弁当兼非常食といわんばかりにご飯粒をつけたゼンが呟いた

「ほぼ真ん中なんだやな」

同じようにご飯粒を口の周りにつけながらまだモフモフと栗ご飯おにぎりを食べながらゴも言った

矜羯羅こんがら君も!!」

矜羯羅こんがらが指で玉をはじいたのを見たのか母ハルミが言う

「人に物をぶつけちゃ駄目よ!?」

母ハルミが少し声を大きくして言った

「…わ…」

溜息交じりで何か言おうとした矜羯羅こんがらがふと言葉を止めて母ハルミを見た

「…はい…」

そして小さく返事をしたのを聞いた母ハルミがにっこりと笑った


「うっまっ」

黄色くそしてやわらかく火が通ったイモに噛り付いた坂田が言った

「ウマウマ」

南が熱いのかハフハフとしながらイモを頬張る

「コレでみんなして屁ブップーだねぇ」

やっとのことで熱いイモを飲み込んだ南がイモを食べている一同を見て言った

「ゼン等のはまだ焼けないんだやな~…」

もうくすぶりだした落ち葉の山をゼンゴがじーっと見ている

「欲たけてでっかいの取るからだろが;」

京助が最後の一口を口に放り入れて言う

「ぶー!!」

京助の言葉にゼンゴがそろって膨れた

「私の半分あげるっちゃ;」

そんなゼンゴに緊那羅きんならが自分のイモを半分差し出した

「あ…おいちゃんもあげる」

お面の下から口だけを出していた鳥倶婆迦うぐばかがお面を直して緊那羅きんならと同じくゼンゴにイモを差し出した

「いいんだやな?」

ゼンが鳥倶婆迦うぐばかを見上げると鳥倶婆迦うぐばかが頷いた

「もうお腹いっぱいだからおいちゃん」

けふっとゲップまじりに鳥倶婆迦うぐばかが言う

「いいやつなんだやなー!!」

ゴがイモを受け取るとキラキラした眼差しで鳥倶婆迦うぐばかを見た

「ありがとなんだやなー!!」

ゼンが鳥倶婆迦うぐばかに抱きついた

「うゎ;」

「おっと;」

反動でよろけた鳥倶婆迦うぐばかを中島が支えた

「危ないでしょ! メっ!!」

南がゼンゴに向かって言う

「愛情表現なんだやな」

鳥倶婆迦うぐばかに抱きついたままでゼンが言った


「…お前はまだ食ってたのか;」

ゲップをしながら指を舐めていた京助が今だもくもくと皿に避けてあったサンマを食べている矜羯羅こんがらに言った

「悪い?」

サンマから少し口を離した矜羯羅こんがらが言う

「いいのいいの!! 残っちゃ勿体無いでしょ?」

そんな矜羯羅こんがらに母ハルミが三個残った栗ご飯おにぎりを差し出した

「沢山食べなさい」

そしてにっこり笑う

「…はい」

少し間を開けて返事をした矜羯羅こんがらを見て制多迦せいたかが微笑んだ

「…れしい? 矜羯羅こんがら

そして頭からずり落ちてきたクロを抱いて矜羯羅こんがらに聞く

「…何が」

矜羯羅こんがらが綺麗に骨と頭と尻尾になったサンマを食べカスが詰まれた皿の上に置くと今度はおにぎりを手にとった

「…くは嬉しいよ…お母さん」

制多迦せいたかが言う

「…そう…」

おにぎりに口をつけた矜羯羅こんがらがボソッと言った

「コンちゃんもタカちゃんもうぐちゃんも家族って本当?」

誰から聞いたのか悠助が嬉しそうに慧喜えきと共にやってきた

「…ん」

制多迦せいたかが頷く

「じゃぁお兄さんだねー!! 京助よりお兄さん!」

悠助が言う

「俺は?」

慧喜えきが聞く

「僕のお嫁さん~」

悠助が答えると慧喜えきが本当嬉しくて仕方がないってカンジで悠助を抱きしめた

「かるらんもけんちゃんもみんな家族っ」

慧喜えきを抱きしめ返しながら悠助が言う

「…大家族化計画;」

京助がボソッと言った

「あら…いいじゃない? 寂しくないし…」

母ハルミがサンマが乗っていた焼き網のコゲをガリガリと箸で落としながら言う

「お帰りが言ってもらえることとお帰りが言えること…家族がいないとできないでしょ」

母ハルミが言うと京助が嬉しそうな悠助を見て頭を掻いた

「…だな」

京助が小さく言うと母ハルミが笑った


プ-------------------------------------------------…


「…長っげェ…;」

坂田がボソッと言うと制多迦せいたかがヘラリ笑って頭を掻いた

「長さじゃタカちゃんがダントツだったねぇ」

南が笑いながら言う

「臭さはドッコイドッコイだったな」

京助が言う

「えー…京助のが臭かったよ」

悠助が慧喜えきの膝の上から言う

「俺もそう思う」

慧喜が悠助に賛同した

「…何の競い合いしてるんだっちゃ…;」

「屁」

緊那羅きんならが聞くと3馬鹿と京助が揃って答えそして制多迦せいたかが頷いた

「さっきの匂いまだこもってるんだけど」

矜羯羅こんがらが器に入ったカリントウと齧りながら言った

「…お前はまだ食うのか」

頬杖をつきながらカリントウをボリボリ齧る矜羯羅こんがらを見て中島が言う

「コンちゃんの胃袋四次元ポケット~」

南が旧ドラえもんの声真似をして言う

「…似ってねぇ~…」

坂田が突っ込んだ

「…突っ込めったろ;」

「えっ;」

京助が黙っていた鳥倶婆迦うぐばかを小突いた

「何のためにソレやったと思ってんだ」

京助が鳥倶婆迦うぐばかの膝元においてある新聞紙で作られたハリセンを持って言う

「…何のためなの?」

鳥倶婆迦うぐばかが聞いた

「突っ込み」

南と坂田がハモって言う

「コレはハリセンって言ってさ~…なんだ…アレ…漫才の剣…いわば漫才剣だ」

坂田がまたまどろっこしくわけのわからない説明をした

「漫才剣?」

鳥倶婆迦うぐばかがハリセンを見て言う

「…おんまえはまたわけのわからん名称をつける…」

京助が言うと坂田がまかせろといわんばかりに胸を張った

「言ったろ? 突っ込め。少なくてもココ…俺ン家じゃ突込みが弱いとやってけねぇぞ」

京助がハリセン(漫才剣)を鳥倶婆迦うぐばかに差し出した

「キャラを立てないとねぇ」

南がハッハと笑う


プ------------------------------------------------------------------…


「…さっきより長っげぇ…」

中島が言うと制多迦せいたかがヘラリ笑って少し照れながら頭を掻いた

「汚いよ」


スコ---------------------ン


カリントウを食べつくした矜羯羅こんがらが指ではじいた玉が制多迦せいたかに直撃した

「いいじゃんいいじゃん~…出るもの拒まず!!」

坂田が言う

「…臭くないと良いんだけどね」

矜羯羅こんがらがチラッと京助を横目で見るとソレにつられるように一同の視線が京助に注がれた

「…なんだよ;」

複数の視線に一人で対抗しながら京助が言う

「それだけ臭かったんだと思うっちゃ」

緊那羅きんならがボソッと言った

「臭いよね京助のは」

「俺も同感」

「ドリフの世界だよな…こう…家が壊れますってカンジに」

3馬鹿がテンポよく京助の屁の臭さを語る

「やかましいッ!;俺だって好きで臭い屁出して……」


ブゥ---------…


「クッサイッ!!!!;」


スッパァ------------------------------------------ン!!


怒鳴ったことで肛門様が緩んだのか京助が屁をすると一番近くでソレをかいだ鳥倶婆迦うぐばかが手にしていたハリセンで勢いよく京助の頭をぶっ叩いた

「ナーイスツッコミング!!」

坂田が拍手する

「その調子その調子!!」

南も同じく笑いながら拍手をする

「できんじゃんツッコミ」

中島が手で臭気を払いながら笑った

「…さい;」

制多迦せいたかが言ってハタハタと手で臭気を払う

「…なんでこんなに臭いのさ…」

頭の布で鼻を覆った矜羯羅こんがらが顔をしかめて批難する

「俺の腸に聞け;」

京助が言った

「くしゃい~;」

鼻をつまんだ悠助を慧喜えきが自分の胸に埋めた

「同じもの食べても何で京助だけこんなに臭いんだっちゃ…;」

緊那羅きんならも手で臭気を払いながら言う

「だから! 俺の腸に聞けっつーの!!;」

批難ゴーゴー言われまくりの京助がガッテム!! ポーズで怒鳴った


「…なんだかたのしそうなんだやな~…」

家の中から聞こえてくるギャーギャーという騒ぎ声を聞いてゴが言った

「まだ焼けないんだやな~…」

ゼンが燃えカスとなりつつある落ち葉の山の中に割り箸を突っ込んで呟いた

「…ぷ-------…」

まだ焼けない大きなイモを見てゼンゴが揃って頬を膨らませた


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