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【第五回・四】履くモノ・履かれるモノ

正月町にとうとうふった雪

喜んでるヤツもいればそうでないヤツもいる

物置の中で半年間眠っていたストーブの封印を解く日がついにやってきた

洗濯機が洗濯終了の音を響かせた土曜の午前

変な寝癖のついた頭のまま歯ブラシを動かしていた京助を押しのけて母ハルミが洗濯機の蓋を開けた

「おそよう」

母ハルミが洗濯物をカゴに移しながら京助に言った


【解説しよう。「おそよう」とは「おはよう」の反対の意味で遅く起きてきた人に対して使う言葉である】


「ほひゃひょ」

歯を磨きながら返した京助の口の端から液体となった歯磨き粉が垂れた

「ちゃんと拭いて来なさいよ? ソコ」

母ハルミが顎で床を差し洗面所から出て行く

「あら緊ちゃん…最近お寝坊さんしてるわね」

廊下から母ハルミの声がする

「目は覚めてるんだっちゃ; だけど…布団から出られないんだっちゃ;」

続く緊那羅きんならの声

「わかるわぁ…最近寒いものね」

笑って言う母ハルミの声が遠のいて

「あ…おはようだっちゃ京助」

髪を解いたままの緊那羅が洗面所に入ってきた

「おそようだろ」

口を濯いで顔を上げながら京助が言う

「…すごい寝癖だっちゃね;」

緊那羅きんならが四方八方に跳ねている京助の寝癖を見て笑った

「俺髪硬いからな~…まぁすぐ直るんだけどさ」

蛇口をお湯の方にして頭からお湯をかぶり手で撫で付けるといつもの髪形になっている

「私は髪が柔らかいから寝癖がつかない代わりにこんんがらがるっちゃ」

緊那羅きんならが傍にあったゴムで髪をゆるく一本に束ねて歯ブラシを手に持った

「まぁソコまで長けりゃそうだろな」

タオルで顔と髪を拭きながら京助が言う

「あれ~? ハルミママは?」

悠助がひょっこり洗面所を覗いて言った

「母さんなら洗濯物干してると思うぞ?なした?」

使ったタオルを洗濯機の中に入れて京助が悠助に近づいた

「踵が痛いの」

悠助が片方の足で片方の足の踵をさすった

「踵? 見してみ?」

京助が悠助に言うと悠助がその場に座って足を上げ踵を見せた

「あ~…乾燥してカサカサ…ところどころ切れてるし…こりゃ痛いわな」

悠助の踵を撫でて京助が言うと歯ブラシを咥えたままの緊那羅きんならも悠助の踵を見て撫でる

「くすぐったい~;」

眉を下げて悠助が笑うと京助が更に足の裏をくすぐる

「にゃー!! やー!!」

悠助が声を上げて笑い出す

ゴン

「あ」

暴れた悠助の頭が壁にぶつかった

「…スマン;」

京助が悠助を抱き起こして謝る

「とにかく踵何とかしねぇとな~…」

悠助を抱き上げて京助が言う

「…話そらしたっちゃ…」

歯ブラシを口から出して緊那羅きんならが呟いた

「母さん」「ハルミママ~」

京助と悠助が同時に母ハルミを呼んだ

「なぁに?」

茶の間の隣の部屋に洗濯物を干していた母ハルミが後ろは振り向かず声だけで返事をした

「悠が…」「踵が…」

兄弟がまたも同時に言った

「悠ちゃんの踵がどうしたの?」

兄弟それぞれの言葉をたして何が言いたいのかわかるところがさすが母親

「かさかさで切れてんだ」

京助が悠助を下に降ろした

「痛い~…」

床に座った悠助が自分の踵をさする

「あぁ…京助。テレビの横の引き出しに雪の元かケラチナミン軟膏入ってるはずだから塗ってあげて?悠ちゃんはきちんと靴下履いてね」

肩に京助のシャツを掛け悠助のパーカーをハンガーに掛けながら母ハルミが言った

「雪の元-雪の元~」

変な歌を小さく歌いながら京助が引き出しの中を探し始める

「悠助大丈夫だっちゃ?」

身支度を終えたらしい緊那羅きんならが悠助に声を掛けた

「歩くと痛い…」

悠助が眉を下げると緊那羅きんならが悠助の踵を優しく撫でた

「毎年のことなのよね」

洗濯物を干し終わった母ハルミが悠助の隣に座って踵を見た

「ほいよ雪の元」

京助が母ハルミに雪の元とかかれた軟膏を手渡した

「何だっちゃ? それ」

緊那羅きんならが雪の元を見て言う

「これはねお薬よ。昔ながらの…はい悠ちゃん踵出して」

母ハルミが雪の元の蓋を開けて指で掬い悠助の踵に刷り込む

「京助悠ちゃんの靴下とって」

悠助の足を持ったまま母ハルミが京助に言った

「コレでいいか?」

京助が畳んだばかりの洗濯物の中から悠助の靴下を取って放り投げると緊那羅きんならがソレをキャッチする

「あとはお風呂入ったときによく揉んで寝る前にまた雪の元塗って」

悠助に靴下を履かせながら母ハルミが言う

「きちんと靴下を履いていれば治るわ」

靴下を履かせ終わると母ハルミが悠助の頭を撫でて立ち上がった

「僕靴下履くのなんか嫌…」

悠助が靴下を引っ張って呟いた

「まぁ…夏の間ずっと裸足だったしな~…何となくわかるっちゃわかるけどさ~…痛いよりはマシだろ悠」

京助の言葉に悠助が頷いた

「コッチの着るものって面白いっちゃ」

緊那羅きんならが悠助の靴下を摘んで言った

「あのな;ソレは俺らにとってのお前らの格好にもいえることだぞ?;」

京助が言う

「文化祭ん時とかそれがよくわかったんじゃ御座いませんこと?」

京助が言うと緊那羅きんならが何処となく頬を膨らませた

「人を見世物にして…」

緊那羅きんならがボソッと言った

「使えるものは使うのだ」

京助が緊那羅きんならに指を突きつけて言う

「でも僕緊ちゃんの服好きだよ?」

悠助がにっこり笑って緊那羅きんならを見上げた

「まぁ俺も嫌いじゃないけどさ…面白いしコスプレみたいで」

京助も言う

「面白いってなんだっちゃ…;」

褒められてるのかけなされてるのかまたはからかわれているのかわからない京助の言葉に緊那羅きんならがジト目で京助を見た


「とうとう降りやがったか…」

教室の窓から外を見ながら坂田が言った

五時間目と六時間目の境の休み時間窓の外にははらはらと雪が降り始めた

「なんでこう帰るようになってから狙ったように振りますかね」

窓を開けて降っているものが本当に雪なのかと確かめるように坂田が手を伸ばし空から降ってくる白い物体を掌に乗せるとソレはすぐに溶けて消え雪だということが証明された

「やだなぁ…アタシ今日塾なのに」

阿部が坂田の隣に立ち窓から顔を出す

「結構積もりそうだよナァ…」

坂田も顔を出し空を見上げた

「京助お前ん家ストーブ変えるんだろ? 今日帰りにやるか?」

六時間目に提出するプリントを阿部から借りて写している京助に坂田が言った

「あ~…そうだナァ…雪降ったなら薪じゃ寒みぃしなぁ…」

写すのを一旦止めて京助がシャープペンを回しながら言う

「中島と南にも俺言ってきてやるからよ。ハルミさんが風邪でも引いたら大変だしな」

坂田がそう言うや否や早歩きで教室を出て行った

「何? 京助ン家ストーブ変えるって…」

阿部が自分の席に座って京助に聞いた

「あぁ。俺ん家今薪ストーブなんだけどさ石炭…ってかコークスストーブに変えるんよ。雪降ったら…それを毎年あいつ等に手伝ってもらってるんだわ」

写し終わったプリントを阿部に返しながら京助が言う

「ふぅん…ね! アタシも行っていい?」

阿部が聞いた

「は?; だってお前塾…」

「いいの! ね! いいでしょ?夕飯支度くらい手伝えるし…煙突とか掃除するの見たことないんだもん…プリント写させてあげたよね?」

阿部の言葉に京助が困ったように考えて溜息をついた

「…まぁ…いいけどさ;」

京助が目をそらして承諾した


「あっれ? 阿部ちゃん…と本間ちゃん?」

玄関にやってきた南と中島が+αでいる女子二人を見て言った

「何? この二人も行くの?」

中島が言うと

「悪い?」

本間が半ガン飛ばしで中島を見る

「…滅相も御座いません;」

中島が本間から顔をそらした

「おし!! じゃぁメンツも揃ったことだし…行きますか」

坂田が床に置いていた鞄を肩に掛けて言った

「毎年スマンねぇ…」

京助も立ち上がり歩き出す

「ソレは言わねぇ約束でしょおとっつあん」

南が京助の肩を叩いて言った

「おお! 微白銀世界!!」

アスファルトの上にうっすらと積もった雪の上に先に帰っていった生徒の足跡がチラホラと残っている

「こりゃ本当積もりそうだわな」

南が空を見上げて言った

「変えないと緊那羅が喚くよナァ;」

京助がボソッと呟いた

「…イトコ?」

阿部がその呟きを聞き取り聞き返す

「あ~…まぁ…そんなトコ;」

京助が苦笑いで返した

「…栄野ってすぎゅ顔に出るタイプだよね」

本間が阿部と京助の間に割って入ってボソッと言い歩き出す

「…アタシもそう思う」

阿部が京助をチラッと見た後本間の後を追いかけた

「……女性を侮るなかれ」

中島がそう言いながら京助の肩に手を置くと坂田、南も同様に京助の肩に手を置き大きく頷いた

「…なぁお前等寒くないんか?; いや…俺に取っちゃ嬉しい限りなんで御座いますが生足」

南が前を歩く阿部と本間に言った

「寒いよ?」

本間がそれにさらっと返す

「…女ってわかんねぇ;」

京助が言う

「寒いのにどうして出したがるんだ?;」

京助の言葉に本間と阿部が顔を見合わせる

「なんでって……別に」

ほぼコートに隠れている短めのスカートとブーツの間から出ている二人の女子の足は少し赤くなっている

「女心少しわかって欲しいよね」

本間がボソッと言った

「俺等男だし…一名片足女に突っ込んでるヤツいるけどな」

坂田が南をチラ見して言った

「突っ込んでナイナイ;」

ソレを南が力いっぱい否定する

「お! アレに見えるは…」

坂を上っていた中島が何かを見つけた

「キンナラムちゃ------ん!」

南がぶんぶんと手を振って叫ぶとソレに気づいた緊那羅きんならが小走りで坂を駆け下りてきた

「ラムちゃん…?」

阿部が呟くと坂田がほくそえみながら

「そ! 京助のイトコ (仮)の金名羊子で通称キンナラムちゃんだ」

と説明する

「…ふぅん…まぁそういうことにしておくわ」

本間が何か感づいているように言ったが阿部は何も言わなかった

「…お前寒がりのクセに何してんだ?;」

完全防備でやってきた緊那羅に京助が聞いた

「石段の雪払いしてたんだっちゃ; …私の仕事だし」

そういう緊那羅きんならの手には竹箒が握られていた

「えらいわねぇラムちゃん鼻水まで垂らして」

南が緊那羅きんならの頭を撫でた

「…はい」

緊那羅きんならの目の前にポケットティッシュが差し出された

「鼻水拭いたら?」

阿部が差し出したポケットティッシュを恐る恐る緊那羅きんならが受け取る

「あの…」

「アタシは阿部郁恵あべいくえでこっちが本間香奈(ほんまかなって言うの。文化祭とかセブンで会ってるよね? …羊子さん?」

羊子らむこ】と呼ばれて緊那羅きんならが止まった

その後ろで京助と3馬鹿が声を殺して笑っている

「っ…京助ッ!!;」

緊那羅きんならが振り返って叫んだ

「だははははははは!!」

途端に大声で四人が笑い出した

「あ! 京助だ-!!」

石段の方から悠助が顔を出して走ってきた

「悠助~!」

阿部が両手を広げて悠助を抱きしめた

「ちみッ子は役得ですなぁ…」

笑いすぎて流れた涙を拭いながら中島が呟いた

「阿部ちゃん~!」

悠助が阿部に抱きしめられたままピョンピョン跳ねる

「みんな何しに来たの?」

悠助がぐるり見渡して聞く

「スト-ブ取替えに来たんよ」

坂田が一息ついて言った

「スト-ブ変えるんだっちゃ?」

緊那羅きんならがどこか不安そうに聞いてきた

「あぁ。薪だとさすがに雪降ると寒みいから…安心しろ今よりあったかくなるから;」

【あったかくなる】という京助の言葉に緊那羅きんならの顔がぱぁっと明るくなった

「あったかくなるんだっちゃ? 今より? もっと?」

緊那羅きんならが尋問するかのように京助を問い詰める

「そうそう;…めっちゃ嬉しそうだなお前;」

箒とポケットティッシュを握ったまま緊那羅きんならが嬉しそうに笑顔を浮かべた

「…阿部ちゃん?」

緊那羅きんならと京助のやり取りを黙ってみていた阿部に悠助が声を掛けるとはっとして阿部が悠助に笑顔を返した

「…ちゃっちゃと取り替えようよ」

今まで黙っていた本間が仕切りの一言を言った

悠助を除いた一同石段の上を見てしばしの沈黙

鳥居の丁度真ん中あたりに二人の人影

カクンと首が下がった人影の頭をもう片方の人影が叩いた

「…ねぇ…あの…」

「言うな;」

本間が石段の上の人影を指差して京助に何か言おうとしたのを京助が遮った

「タカちゃんときょんがらさんだっ!!!」

悠助が人影の名前を言いながら石段を駆け上がる

「…何しに来たんだと思う?」

坂田が呟いた

「暇つぶしという理由にヨッちゃんイカ5枚」

南が答えた

「俺もその方向で同じく5枚」

中島も言う

「じゃぁ俺もその方向で3枚」

「少なッ!」

京助が言うと南が突っ込んだ

「…で? 何しに来たんだ? …一応聞くけど」

石段を登って制多迦と矜羯羅こんがらに聞いた

緊那羅きんならが宝珠持ったって聞いたから」

矜羯羅こんがらに名前を呼ばれきょとんとする緊那羅きんならに向けて矜羯羅こんがらがにっこり微笑んだ

「…にきた」

悠助を肩車したまま制多迦せいたかが言った

「…これは【暇つぶし】の部類に分けてOKですな」

中島が言う

「で? 緊那羅きんなら宝珠は…あぁそれ?」

「…シカトで-すか-」

中島の言葉には反応せず緊那羅きんならの腕についている腕輪に矜羯羅こんがらは反応した

「キレ-…何処で買ったの?」

阿部が緊那羅きんならの腕輪を見て緊那羅きんならに聞く

「え…っと…もらったんだっちゃ;」

慌てて緊那羅きんならが答える

「誰に?」

更に阿部が突っ込んで聞く

「え? え…っと…;」

「彼氏?」

返答に困っていた緊那羅きんならに本間まで聞いてきた

「…彼氏…って?」

本間の言葉に緊那羅きんならが首をかしげる

「ボ-イフレンドのことだラムちゃん」

坂田が緊那羅きんならの肩を叩いて教える

「ボー…?;」

緊那羅きんならがまた首をかしげて考え込む

「直訳で男友達」

坂田が更に補足で教えると緊那羅きんならが少し考えた後

「まぁ…そう…だっちゃ…?;」

阿部と本間にそう答えた

「…彼氏いるみたいで何より」

本間がにっこり緊那羅きんならに笑顔を向けた

「…まぁ…鳥類も乾闥婆けんだっぱもオスだしなぁ…モノは言い様だな」

京助がヘッと口の端で笑った

「…だ色はついてないんだね…」

制多迦せいたか緊那羅きんならの宝珠を見て言った

「あ…うんもらったばっかりなんだっちゃ」

緊那羅きんならが自分の宝珠を見て言う

「…に色になるのか楽しみだね」

制多迦せいたか緊那羅きんならに笑いかけた

「あら? おかえりなさい…どうしたの?」

自宅から境内に向かう途中の母ハルミが鳥居の下の集団に声を掛けた

「はるみさ…っ!」

坂田がその声にいち早く反応する

「毎年恒例のスト-ブ変え!」

京助が叫んだ

「あらぁ! そうなのー? 御願いね-! 晩御飯食べていって頂戴ねー!!」

母ハルミはそう返すと境内の裏に歩いていった

「よっしゃー! 張り切っていきますかッ!!」

坂田が気合を入れた

「若、士気上昇」

雪がまたチラチラと降ってきた

「とりあえず物置から本体出してー…煙突替えて…」

京助がガタガタと物置の引き戸を開けながら言う

「アタシ等は?」

阿部が京助に聞いた

「あ~…悠と遊んでてくれ。ストーブ本体結構重いし…」

引き戸が開けられて少し埃っぽい匂いが物置の中からする

虫取りアミやら何やらすでに今年の役目を終えた季節を感じる物体があちこちに置いてある物置の一番奥に約半年の眠りについていたストーブがあった

「そういや今年は泳がなかったナァ」

南が吊り下げられていた浮き輪をポスポス叩きながらいった

「男ばかりの水泳大会って…嫌だナァ;」

中島がストーブの上に乗っていた箱を下におろした

「じゃぁ誘ってよねぇ香奈?」

阿部が戸口からそう言った

「阿部ちゃんビキニ一丁で御願いします」

南が手を上げて言う

「馬鹿いってねぇでそっち持て;」

京助と坂田が向き合ってストーブを持ち上げようと手を掛けている

「ヘイヘイホー」

軽く返事をして南と中島も空いていた二辺に立ち手を掛ける

「…何してんの?」

戸口に手を掛け腰に手を当てて矜羯羅こんがらが物置の中に声を掛けた

「見りゃわかるだろ; コイツを…」

「…こべばいいの?」

「のーーーーーーーッ!!?;」

坂田の言葉の途中に言葉を掛けてきた制多迦せいたかに4馬鹿が驚いて飛びのいた

「いきなり現れんな阿呆ッ!!;」

中島が叫ぶ

「…こに運ぶの?」

制多迦せいたかがストーブに手をついて聞く

「…まずは庭の…ってオイオイオイオイ;」

京助の言葉を最後まで聞かないうちに制多迦がヒョイと片手でストーブを持ち上げた

「…やっぱ雑技団なんじゃ…」

南がボソッと言った

「…アイツらはもう人の域越えております」

坂田も言う

物置の外に出ると降り続いていた雪が結構いい具合に積もっていて悠助と女子2人が雪玉を転がして雪だるまを作ろうとしている

「積もるの早ぇえなぁ;」

その光景を横目に男一同はギュイギュイと鳴く雪に足跡を付け庭に向かう

「…なぁ…」

南が前を歩く矜羯羅の足元を見て声を掛けた

「何?」

矜羯羅こんがらが足を止める

「足…真っ赤ですが」

南の言葉に傍を歩いていた坂田と京助が矜羯羅こんがらの足元を見た

「…今時期にこんなズッパみたいなヤツじゃなぁ;寒くねぇのか?」


【解説しよう。【ズッパ】とは【スリッパ】、【サンダル】系の履物を指す用語で靴の踵を潰して履く履き方のこともたまにこ

う言うのである】


坂田が聞くと矜羯羅こんがらが片足を上げて

「冷たいといえば冷たいよ? 感覚ないし」

と言った

「でもまぁ我慢できない程度じゃないし」

そう言うとにっこり笑う

「アカギレるぞ?;」

京助がしゃがんで矜羯羅こんがらの足に手を置いた

「うっわ冷てぇ!;」

「どれどれ…おぉ! 氷じゃん!;」

坂田と南も矜羯羅こんがらの足を触って言った

「…僕の足に群れないでくれる?」

矜羯羅こんがらが見下ろして言う

「京助靴下か何か貸してやれば?」

南が立ち上がり京助に提案した

「…靴下ねぇ…」

京助が矜羯羅こんがらの足を見て顎に手をやりながら言う

「…あの京助」

後ろにいた緊那羅きんならが京助に声を掛けた

「ハイ! ソコ! 発言は手を上げて!」

南が緊那羅きんならに向かって言うと緊那羅きんならが半ば呆れ加減で手を上げた

「ハイき…んな羊子さん」

坂田がソレを緊那羅きんならではなく羊子として指名した

「……靴下って靴の上にはいてるのにどうして靴下って言うんだっちゃ?」

少しの間坂田をジトッと見ていた緊那羅きんならが京助に聞いた

「くつ…の上…」

南と坂田そして京助それにつられてか矜羯羅こんがらまで各々の足元を見る

「ソレは…」

「それは…」

「…そ-れ-は-」

京助、坂田、南の三人がかわるがわる【それは】を言いそして

「…なんでだっちゃ?」

緊那羅きんならのその一言に揃って回れ右をして歩き出した

「そういやもうすぐアレだな」

坂田が言う

「そうそう! アレだよな!」

京助がソレに返す

「アレかぁ…じゃぁアレしないとな!」

南もその会話に乗る

「…【アレ】ってなんだっちゃ…」

緊那羅きんならが箒を握ったまま庭へと向かう京助立ちの後姿を見て呟く

「逃げたね」

矜羯羅こんがらが溜息混じりに言った

「遅い!; 何してたんだ馬鹿め!!」

制多迦せいたかの後を一人追いかけて一刻早く来ていた中島が大股で近づいてきた

「コイツ何言ってんだか微妙な話し方するから会話できねぇしよッ!!;」

中島が制多迦せいたかを指差して怒鳴る

「…みょうって…;」

制多迦せいたかが苦笑いを浮かべた

「モノは慣れだ慣れ。何事も経験だ中島君」

そんな中島に対し【ハッハ】と笑いながら京助が中島の肩をポンポン叩く

「せめて誰か通訳つけてくれよなぁ…; スッゲェ気まずかったし! ばか---!!」

中島が泣き真似をしながらしゃがみこむ

「…しよし」

そんな中島の頭を制多迦せいたかが撫でて慰める

「…オマエ…実は激しくいいヤツなのか?」

中島が制多迦せいたかを見上げて言うと制多迦せいたかが【ぐっじょぶ】というカンジに親指を立てた

「心の友ーーーーーッ!!!」

中島が大声で言いながら制多迦せいたかに飛びついた

「青春だけど…塩加減がしょっぺぇ…」

勢いで庭に倒れた制多迦せいたかと中島を見て京助が言う

「…何してんのさ…」

お決まりのあのポーズをした矜羯羅こんがらが庭に倒れた二人を見下ろして言った

「…ころの友だって」

制多迦せいたか矜羯羅こんがらを見上げながら嬉しそうに言う

「…心の友でもなんでもいいけど…何かするんじゃなかったの?」

チラリと庭に放置されているストーブを矜羯羅こんがらが見ると一同ストーブの存在を思い出す

囲いの外からは楽しそうな女子二人と悠助の笑い声が聞こえている

「…寒いっちゃ…;」

緊那羅きんならが鼻水を啜った

「…重いっちゃ;」

寒いと言った緊那羅きんならの体には3馬鹿と京助の上着が掛けられていた

「寒いって言うから掛けてやったのに今度は重いか…我がままさんめ」

その上に更に京助が制服の上着を乗せた

「限度ってものがあるんじゃないっちゃ?;」

ずり落ちてきた上着を押さえながら緊那羅きんならが言う

「おーい! 京助ー! コレ外していいんかーー?」

屋根の上から南が叫ぶ

「おーー! オッケイだー!」

南と坂田が軍手をはめた手で煙突を外した

「俺らはコッチだ心の友!」

「…ッケイ」

中島が親指を立てると制多迦せいたかもソレに返す

「僕らはどうしようか…」

緊那羅きんならの肩から落ちそうになっていた上着を取って矜羯羅こんがらが言った

「どうしよう…って…言われても私もわからないっちゃ;」

鼻水を啜りながら緊那羅きんならが言う

「まぁ僕あんまり体動かすの好きじゃないから手伝う気はないんだけどね…っ」

一歩足を踏み出した矜羯羅こんがらがピクッと何かに反応したのに緊那羅きんならが気づいた

「…矜羯羅こんがら?」

自分の踵に目をやっている矜羯羅こんがら緊那羅きんならが声を掛けそして矜羯羅こんがらの踵を見た

「…悠助とおんなじだっちゃ」

一箇所だが結構深く切れている矜羯羅こんがらの踵をそっと緊那羅きんならが触る

「…うしたの?」

「何だ何だ?」

制多迦せいたかと中島が煙突ブラシを持ったままやってきた

「うっわ! アカギレか?; いったそー…裸足でいるからだぞー;」

中島が身震いして言った

「…カギレ?」

制多迦せいたか矜羯羅こんがらの踵に触る

「だから…僕の足に群れないでくれる?」

矜羯羅こんがらが溜息をつく

「コーラー!! ソコとソコとソコとソコ!! サボるな!」

屋根の上から坂田が叫ぶ

「名前のいいずらいヤツがアカギレの攻撃受けてるんだけどさー!!」

中島が屋根に向かって叫び返す

「…矜羯羅こんがらだよ」

矜羯羅こんがらが不機嫌そうに言うと制多迦せいたかがプッと小さく笑いソレに対して矜羯羅こんがらが玉を飛ばした

「…たい;」

玉の当たった頭を制多迦せいたかがさする

「アカギレ?」

梯子を降りて京助が矜羯羅こんがらの踵を見た

「おぉお!; 結構さっくりいってるな;」

京助が矜羯羅こんがらの踵に触ると京助の手についていた煤で踵が少し黒くなった

「この雪ん中裸足でいるからだろ~? だから忠告したのによー」

そう言いながら南と坂田も屋根から下りてきた

「アカギレですね。ええコレは確かにアカギレです」

坂田も矜羯羅こんがらの踵を触った

「…あのさぁ…だから群れないで欲しいんだけどくすぐったいし」

矜羯羅こんがらの足元にしゃがみこんでいる一同を見下ろして矜羯羅こんがらが言う

「痛くないっちゃ?」

緊那羅きんなら矜羯羅こんがらを見上げた

「………」

矜羯羅こんがらが黙って緊那羅きんならを見る

矜羯羅こんがら?」

何も言わない矜羯羅こんがら緊那羅きんならが首をかしげた

「…少し…痛いかな」

矜羯羅こんがらが目をそらしながらボソッと言った

「京助あの…ほら悠助の踵に塗った薬…」

緊那羅が京助に言う

「雪の元か? 塗ってみるか…物は試しで」

京助が立ち上がった

「…僕で試さないで欲しいんだけど」

矜羯羅こんがらが溜息をついた

ストーブを小脇に抱えて制多迦せいたかが廊下を歩く

「お前力あるんだな~すげぇな」

ソレを中島が褒め称えると制多迦せいたかがにっこり微笑んだ

「薪ストーブどかしてあるからソコに置いてくれ。お前はこっち」

茶の間の方に向かおうとしていた矜羯羅こんがらの布をチョイと引っ張って京助が隣の和室に入る

襖を開けると茶の間に繋がっていて制多迦せいたかと中島が見えた

「そうそうそこに置いてくれ。雪の元雪の元…めっけ~」

京助が制多迦せいたかに指示しながら引き出しから雪の元を取り出し矜羯羅こんがらのいる和室に向かった

「…変わった着物だよね…」

干してあった洗濯物を矜羯羅こんがらが引っ張って言う

「俺らからすればそれが普通の着物! お前等の着てる物の方が変わってる着物なんだっつーの; ホラ! 座って足出せ」

京助が先に座って矜羯羅こんがらに言うと膝をつき矜羯羅こんがらが京助に向かって足を出した

「…流血してるじゃん; 中島ーティッシュ取ってくれ」

茶の間で制多迦せいたかとストーブのガタつきを調整していた中島がテレビの上にあったティッシュの箱を京助めがけて放り投げる

「血…赤いんだな」

京助が呟いた

「…一応ねがっかりした?」

目を細めて矜羯羅こんがらか笑う

「いんや…俺らと同じなんだナァと安心いたしやした」

京助が血を拭いたティッシュを丸めて横に置いて雪の元の蓋を開けた

「着る物とか何だかんだ違っても血の色は一緒だったし生きてるんだなぁと」

矜羯羅こんがらの踵に雪の元を塗りながら京助が言う

「面白いこというよね…京助は…だから用がなくても来たくなるのかもしれない…」

雪の元を塗られた自分の踵を矜羯羅こんがらが撫でた

「悠助と京助に僕らは何かを求めているのかもしれないね…今までを変える何かを」

矜羯羅こんがら制多迦せいたかに目を向けると制多迦せいたかが中島に何かを教えたれていた

「君達になら制多迦せいたかを…僕らを…」

「…矜羯羅こんがら…?」

顔をゆがめた矜羯羅こんがらに京助が小さく呼びかけた

「…これ以上言うと迦楼羅かるらに怒られるね」

矜羯羅こんがらが立ち上がり歩き出す

「ちょ…待てって矜羯羅こんがら;」

京助が慌てて声を掛けるも矜羯羅こんがらはそのまま廊下に出て


ズルッ

ドターーーン!!


滑って仰向けに倒れた

「…だから待てって言ったのに…;」

仰向けになって倒れている矜羯羅こんがらに京助だけではなく制多迦せいたかと中島も近づいた

「雪の元塗ったばっかりだから滑るぞ」

「…早く言ってくれない?」

矜羯羅こんがら制多迦せいたかに起されながら京助に言う

「いや…言おうとしたのにお前が聞かなかったんじゃん;」

京助が矜羯羅こんがらに返した

「…かじま人間タンカしたほうがいい?」

制多迦せいたかが中島に向かって言うと

「この場合は一人人間タンカ、いわゆるお姫様抱っこでいいと思うぞタカちゃんや」

中島が制多迦せいたかに言うと制多迦せいたかがヒョイと矜羯羅こんがらを抱き上げた

「お前等何コンビ組んでんだよ;」

いつの間にか親密度が上がっていたらしい中島と制多迦せいたかに京助が突っ込むと二人して親指を立てた

「僕自分で歩きたいんだけど」

抱き上げられて何だか何処となく不機嫌そうに矜羯羅こんがらが言う

「んじゃコレ履け」

頭の上に干してあった洗濯物の靴下を外して京助が矜羯羅こんがらに差し出した

差し出された靴下を摘むように受け取って上下左右から矜羯羅が靴下を見る

「…なにこれ」

片方ずつ手に持って矜羯羅こんがらが京助に聞く

「さっきも話してた靴下ってぇヤツ。足に履くんだ」

京助が制服のズボンの裾を少し捲くって靴下を矜羯羅こんがらに見せた

「ちなみにこんな使い方もできる!」

中島が矜羯羅こんがらから靴下を奪い取って両手にはめた

「パペットマペッッ!!」

中島が靴下をはめた両手を動かし始めると矜羯羅こんがらを下に降ろして制多迦せいたかが拍手する

「…何だかナァ; 凸凹コンビ成立か?」

やたら盛り上がっている制多迦せいたかと中島を見て京助が呟く

「京助煙突ー…って何しとん?;」

顔に煤をつけた南が煙突を抱えて茶の間に入ってきた

「中島君の一人パペマペ劇場In栄野家」

京助がヘッと笑いながら言う

「今日はしゃぶしゃぶらしいぞ!」

ドタドタという足音とともにやってきた坂田が大声で言った

「マジ!?」

京助が目を輝かせる

「さっきハルミさんと悠たちが買い物行ったんよ!」

「イェーイ!! 肉ーー!!!」

坂田の言葉に中島も靴下をはめたまま両手を挙げて喜ぶとそれを制多迦せいたかが真似した

「何の騒ぎなのさ」

喜々としている3馬鹿を見て矜羯羅こんがらが京助に聞く

「今日の晩飯がしゃぶ…まぁ結構豪華なんで喜んでるんだ」

京助が笑顔で言う

「…ふぅん…」

視線を制多迦せいたかに移した矜羯羅こんがらがフッと微笑んだ

「本当…面白いね…こんな小さなことでココまで喜ぶなんて」

そして今度は京助に微笑みながら言う

「どんなに小さなことだって嬉しいから喜ぶ。あたりまえじゃん」

ソレに対して京助はニッと笑いを返した

廊下から鼻をかむ音が聞こえて京助が顔だけを廊下に出した

「寒いか? 緊那羅きんなら

廊下で鼻をかんだティッシュを丸めていた緊那羅きんならに聞くと緊那羅きんならが大きく頷いた

「まだつかないんだっちゃ?;」

鼻をかみすぎたのかそれとも寒いせいなのか緊那羅きんならの鼻の頭が赤い

「もうしばらくお待ちあれ」

京助が言うと緊那羅きんならが溜息をついた

「そこ! そうそこにコレはめて」

「中島~もうちょっと左」

「針金! 針金とって」

ワイワイ騒ぎながらしかし確実にストーブを取り付けていく3馬鹿と京助を制多迦せいたか矜羯羅こんがらが見ている

「…面白い? ソレ」

靴下を両手にはめてパペマペっている制多迦せいたか矜羯羅こんがらが聞いた

「…や…よくわからないんだけど手はあったかい」

制多迦せいたかが靴下をパクパクさせながら言った

「ソレ…足に履くものらしいけど」

矜羯羅こんがらが言うと制多迦せいたかが靴下を見つめる

「…んがら履いてみる?」

制多迦せいたかが手から靴下を外して矜羯羅こんがらに差し出した

「…変な形」

靴下を摘み上げて矜羯羅こんがらが呟いた


「取り付け終ー了ー!! ご苦労様でしたッ!!」

南が言うと坂田、京助と中島が歓声を上げて手を叩き合わせる

「着火着火チャッカマァ~ン」

変な歌を歌いながら京助がストーブに火をつける

「ラムちゃん火ィついたぞー」

中島が廊下に向かって声を掛けると緊那羅きんならが顔を出した

「ねぇ緊那羅きんなら

茶の間に入ろうとした緊那羅きんなら矜羯羅こんがらが呼び止めた

チョイチョイと手招きをされて緊那羅きんならが首をかしげつつも矜羯羅こんがらの傍に歩み寄ると耳に顔を近づけてきた

「…君は…【時】がきても受けいれられる?」

耳元でそう囁かれて緊那羅きんならがバッと矜羯羅こんがらを見る

「また繰り返すのかな…前みたいにさ…そっくりだよ」

目を細めて微笑んだ矜羯羅こんがらの笑みはどことなく憂いていて緊那羅きんならは目をそらした

「今の君は…昔の迦楼羅かるらと一緒だね」

矜羯羅こんがら緊那羅きんならの頭を撫でて通り過ぎた


ズルッ


「…すげぇ…;」

何かが滑る音に目を向けた南が呟いた

「体柔らけぇ…;」

中島がゆっくり拍手をし始めるとそれを制多迦せいたかが真似て拍手をする

「だから靴下履けっていったのによ;」

足を前後に思いっきり開脚して座っている矜羯羅こんがらに京助が言った

「履けって言われても履き方教えてくれてないじゃない?」

矜羯羅こんがらがゆっくり立ち上がる

「だーかーらー; …ったく面倒臭ぇ;」

京助が自分のはいていた靴下を片方脱いだ

「いいか? こう…手繰ってつま先突っ込んで…上げる!! OK?」

矜羯羅こんがらの目の前で靴下を履いて見せるとフンフンと何かを納得したのか矜羯羅こんがらが服の裾を捲り上げて京助の履き方を真似して履き始める

「…お前すね毛ないのな」

坂田が矜羯羅こんがらの脛をみて言った

「俺はあるぞ」

京助が再び脛を出す

「俺も薄いながら一応生えてます」

南もズボンを捲り上げた

「甘い! 男ならコレくらいのモジャッティがナイス!!」

中島が誇らしげに脛を出す

「うっわ!! 濃ッ!」

中島の脛を見て坂田が爆笑する

「中島って全体的に存在薄い代わりにすね毛濃いんだなー」

京助がボソッと言う

「やかましいよ栄野君」

京助の脛に自分の脛をこすりつけて中島が言った

「のーーーー!!;」

京助が後ろに飛びのくと制多迦せいたかにぶつかった

「わりぃ;…失敬」

京助がなんとなく制多迦せいたかの服の裾を捲くった

「…に?;」

いきなりの京助の行動に制多迦せいたかが戸惑っていると

「タカちゃん! こんな時は【キャー! イヤーン!! エッチー!!】とでも叫んでやれ!!」

と中島が制多迦せいたかにアドバイスを送る

制多迦せいたかに変なこと教え込まないで欲しいんだけど」

いつの間にか中島の後ろにいた矜羯羅こんがらが中島の肩を叩いて言った

「…ャー!! イヤーン! エッチー!」

中島に言われ頷いた制多迦せいたかがいわれたとおりに実行する

「おぉ!! 何だか可愛らしいぞ! 眠そうだけど」

制多迦せいたかが中島の言った通りに真似をすると南が笑いながら言った

「ノリいいじゃん! タカちゃんとやら! 眠そうだけど」

坂田が言う

「結構やるじゃん! 制多迦せいたか!! 眠そうだけど」

京助も言う

3馬鹿と京助に讃えられて何処となく照れている制多迦せいたか矜羯羅こんがらが玉を当てる

「…たい;」

玉の当たった箇所をさすって制多迦せいたかが呟いた

「…緊那羅きんなら?」

茶の間の馬鹿騒ぎから離れて隣の和室にたたずんでいる緊那羅きんならに京助が声を掛けると緊那羅きんならがハッとして顔を上げる

「どうした? 寒くて固まったか?」

京助の言葉に緊那羅きんならは首を横に振って

「なんでもないっちゃ」

そう言って笑顔を作って返した

取り替えられたばかりのストーブの上でヤカンの蓋がカタカタと小さく音を立て始めていた


「あッ! てめぇそれ俺の肉!!」

鍋を二つそしてテーブルを二つつなげての本日の夕食は寒い季節にはもってこいのしゃぶしゃぶ

育ち盛りが集まれば決まって起こるのが肉争奪戦

3馬鹿と京助が寄って集って肉を奪い合っている

「座って食べなさいよ座ってッ!」

大騒ぎの男子のテーブルに向かって阿部が言う

「京助~僕もお肉~」

悠助が皿を差し出して言った

「…食べないんだっちゃ?」

湯気のたっている鍋を挟んで反対側から緊那羅きんなら矜羯羅こんがら制多迦せいたかに声を掛けた

「お皿貸して?」

緊那羅きんならが手を伸ばして制多迦せいたかの皿を取り鍋の中の野菜とさっと湯に通した肉を持って差し出した

「…りがと」

ソレを制多迦せいたかが受け取ると今度は矜羯羅こんがらの皿にも同様に盛り付ける

「さっき…」

皿を矜羯羅こんがらに手渡しながら緊那羅きんならが口を開いた

迦楼羅かるらと一緒って言ってたっちゃよね? …私は私だっちゃ…迦楼羅かるらじゃなく。昔 迦楼羅かるらに何があったのか知らないけど…【時】がきても私が迦楼羅かるらと同じ行動を取るのかなんてわからないっちゃ…でも」

隣のテーブルはあいも変わらず肉を巡っての仁義なき戦いが続いている

「…でも?」

それと反対にクツクツと静かな鍋の煮立つ音しかしない緊那羅きんならたちのテーブル

途切れた緊那羅きんならの言葉に矜羯羅こんがらが声を掛ける

「京助と悠助は私が守るっちゃ。何があっても」

緊那羅きんならが真っ直ぐ制多迦せいたか矜羯羅こんがらを見て言った

「…二人とも?」

矜羯羅こんがらが聞き返すと緊那羅きんならが強く頷いた

「…てるよ…やっぱり」

いつの間にか空になった皿を置いて制多迦せいたかが呟いた

「…るらもそうだった…でもあの人たちが許さなかった…そしてまた繰り返そうとしてる…」

タレだけが残っている皿を箸でつつきながら制多迦せいたかが言う

「【時】がきたら僕らはそれに従うしかできない…それが当たり前で使命なんだと仕方がないと思っていたよ」

矜羯羅こんがらの腕の輪がカチャリと鳴った

「京助~お肉~!!」

「この肉は俺んだからな!」

「うっわ!! 三枚同時かよ!!」

「野菜も食べなさいよ! 野菜! 煮えすぎて透明になってるじゃない白菜ッ!!」

隣のテーブルからとめどなく聞えてくる【肉肉肉!】という肉連呼の声

「…でもそれがおかしいと思う様になってる」

矜羯羅こんがらの言葉に緊那羅きんならが顔を上げて矜羯羅を見た

「僕も君と同じ考えになってきてるってことだよ緊那羅きんなら

矜羯羅こんがらが言うと制多迦せいたかも頷いた

「…私と…同じ…?」

緊那羅きんならがきょとんとして聞き返す

「僕もあの二人を守りたい」

そう言って矜羯羅こんがらは隣のテーブルで肉を争奪している京助と悠助に目をやった

「…くも…あの二人は守りたい」

制多迦せいたか矜羯羅こんがら同様二人に目をやると緊那羅きんならも顔を向ける

「……何だよ;」

かなりの集中した視線を察知したのか京助が隣のテーブルで自分を見つめている三人に言った

その京助の一言で茶の間にお互い見つめあっての沈黙の時間が流れた

「おッ! ってかそっち肉大量にあまってるんじゃんかッ!」

その沈黙をうちけしたのがやはり【肉】の一言

3馬鹿と京助がやれ奪え!! との勢いで肉に箸をかける

「アンタ達まだ食べるわけ?」

その様を見て阿部が呆れて言う

「京助~僕もお肉~!!」

悠助も隣のテーブルに移動して京助の服を引っ張りながら肉をねだる

「ちょ…京助;」

緊那羅きんならを押しのけて鍋に群がる3馬鹿と京助

「タカちゃん食ってるか?」

制多迦せいたかの隣に無理矢理居座った中島が肉を鍋で泳がせながら制多迦せいたかに言った

「…君らがきたら食べれないじゃない?」

矜羯羅こんがらが微笑みながら言う

「こーいうもんは早い者勝ちなんだ!! 弱・肉・強・食!!」

坂田が自分の皿に肉を取りながら力説する

「京助~!」

後ろで悠助が足をバタバタさせる

「…ごちそうさまでした」

今まで一言も話さなかった本間が箸をおいて両手を合わせた


挿絵(By みてみん)


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