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【第四回・弐】召しませ玉子酒

雨の中を濡れたままで帰ってきた京助が馬鹿のくせに風邪を引いた

そんな京助に母ハルミが作ったのは玉子酒

それをもってきた緊那羅きんならが玉子酒を飲んで…

「えーぃっきゅしゅ!!」

秋晴れの空に高らかに響いたのは京助のでっかいくしゃみの音だった

物置の中から縁側の外戸を運び出していた京助はズッと鼻をすすった

「京助風邪?」

母ハルミが京助の額に手を当てる

「あ~ちゃうちゃう; 埃っぽく…て…ひ…ひぇくしょっ!!」

「汚ッ!!」

再びくしゃみをした京助に母ハルミが手を引っ込める

昼間は残暑が厳しいといっても朝晩はかなり冷え込むようになってきたということで縁側に外戸を取り付けることになった栄野家では母ハルミと京助が夏に物置にしまいこんだ外戸を運び出していた

「アンタこの間濡れて帰ってきたでしょ? だから風邪引いたんじゃないの?」

肩で鼻水を拭っている京助に母ハルミが言う

「だから違うって; 埃が…ほ…ひ…ぃえっきゅしゅっ!; …すまん;」

母ハルミにかからないよう後ろを向いてくしゃみをした京助だったがそこには緊那羅きんならがいて緊那羅きんならにくしゃみがかかった

「京助昨日からくしゃみしてるよ~?」

緊那羅きんならの後ろにいて京助のくしゃみの洗礼を免れた悠助がひょっこり顔を出す

「馬鹿は風邪引かないっていうけど念のため熱測ってきたら?」

母ハルミが腰に手を当て言った

「大丈夫だっての;っとに…」

そういって京助は外戸を持ちあげた

「…ふ…えぃっきゅしょぃっ!!」

ゴス

京助の足の上に外戸が落下した


たり…ズズズ…

…たり…ズー…

「京助…;」

「あ?」

ひっきりなしに鼻をすする京助に緊那羅きんならが声をかけた

「…やっぱり風邪ひいてるんじゃないんだっちゃ?」

緊那羅きんならがティッシュの箱を渡すと京助は勢いよく鼻をかんだ

「引いてねぇって;」

フンと鼻を鳴らしてテイッシュをゴミ箱に向かって投げたが外れ結局立って拾ってゴミ箱に入れた

「でも顔赤いっちゃ」

緊那羅きんならが立ち上がり京助の額に手を当てる

「…熱…あるんじゃないっちゃ?」

緊那羅きんならは京助の額から手を離すと自分の額にも当て温度を比べる

「お前の手が冷てぇからだろ~?; 熱なんてねぇって;」

京助が苦笑いで緊那羅きんならの横を通り過ぎた

「…京助~」

「あ”? ん”んんっ」

悠助に呼ばれて返事をした京助だったが声がかすれている

「…声変だよ?」

悠助は心配そうに京助の顔を覗き込むと

ゴン

「…悠;痛ぇんだけど;」

熱を測ろうとしたのか悠助がいきなり頭突きをかましてきた

「熱いよー!! 熱あるーー!!」

「ねぇっ…ひ…ふくしゅっ!!」

反論しようとした京助だったがくしゃみで出来なかった

「風邪ね」

「風邪だっちゃね」

「かーぜー!!」

母ハルミ、緊那羅きんなら、悠助に【風邪】と判断された京助は三人によって自室の布団に強制連行された

「明日は学校休みなさいね」

母ハルミが振り返っていった

「な…明日はダメだっ; 絶対休めんっ!; …ひくしょっ!!」

掛け布団を押し上げて京助が起き上がる

「寝ないとダメっ!!」

起き上がった京助の上に悠助がのしかかる

「珍しいわね学校いきたいとか」

「明日最終打ち合わせなんだよ;」

「最終打ち合わせ?」

悠助に布団に強制的に寝かされ(倒され?)た京助に緊那羅きんならがきいた

「文化祭。ソレのクラスの屋台の最終打ち合わせあんだよ…俺焼き係りだから絶対参加なんだ」

京助が悠助を自分の上からどかす

「総合で勝てば焼肉食えるんだぞ!? 全学年対抗だから気合いれねぇと勝てねぇんだ」

鼻水をすすりながら京助が燃えている

「…なら…きちんと寝て明日までに熱下げるのね」

母ハルミが呆れ顔に笑顔を浮かべて言った

「ホラホラ悠ちゃんも緊ちゃんも風邪うつったら大変よ? さぁ出て出て」

母ハルミが言うと悠助が立ち上がって戸口に小走りで向かい振り返って

「あとでお見舞いに来るからね?寝ててね?」

そう言って部屋から出ていった

「…ちゃんと寝てるんだっちゃよ?」

緊那羅きんならも立ち上がり笑ってそういうと部屋から出て行く

「後で玉子酒作って来るから」

母ハルミはそういいながら戸を閉めた

上を向くと鼻が詰まって息苦しくかといって横を向くと鼻水が垂れてくる

そして何より暇でしかたない

「こーゆー時ってどうして眠れないものかね;」

もぞもぞと布団にもぐりこんで目を閉じても眠気が来ない

そして浮かんでくるどうでもいいようなくだらない考え

アトムはどうして十万馬力なのかとかどうして世界制服を目論む悪者は東京しか襲わないのか別に田舎からせめてもいいと思うとかそんな本当にくだらない事を京助の頭は考えていた

そしてソレがだんだん【=(イコール)】式に換算されてくる


『悪者=敵=矜羯羅こんがら=でも今は敵じゃないらしい』


この間…乾闥婆けんだっぱのエプロン姿がちょっと笑えたあの日

迦楼羅かるらの腹の虫が絶好調だったあの日

自分を叩けと言って来る制多迦せいたかにあったあの日

緊那羅きんならを攻撃してきた時とは雰囲気が違った矜羯羅こんがらにあったあの日

そしてその矜羯羅こんがらが言った一言


『まだ【時】がきていないからね』


【時】…そういえば迦楼羅も言っていた


『お前達兄弟は何としてでも【時】までに守らねばならないのだ…そして【時】が来たならば、更に守ら

なければならない…』


「…【時】ってなんなんだ…?」

【時】と自分と悠助の関係式がまったく成り立たない

でも少しだけわかったこと

「…【時】が来なければ…あいつらは敵じゃないんだよな…」

「京助?」

緊那羅きんならの声にハッとして布団をはぐった

「…寝てた…っちゃ?」

湯気の立ち上るコップを持った緊那羅きんならが戸口に立っていた

二つもっていたうちの右手のほうのカップを京助に手渡すと緊那羅きんならが布団の横に腰を下ろした

「玉子酒。ハルミママさんが熱いから気をつけて飲めって言ってたっちゃ」

体育座りの様に膝を抱えて座った緊那羅きんならが玉子酒を息で冷ましはじめた

「そんな子供じゃねぇんだからんなこと言わなくてもわかってるっつーの;」

京助も鼻をすすりながら玉子酒に息を吹きかけた

「…コレ…【ソーマ】に似てるっちゃ」

玉子酒を一口飲んだ緊那羅きんならが呟いた

「…ソー…マ……あぁ!! 思い出した!!」

京助が大声を上げると緊那羅きんならが驚いて目を丸くした

「あのクッソ不味いヤツ! 乾闥婆けんだっぱのもってた だろ?」

京助の問いかけに緊那羅きんならはまだ目を丸くしたままコクリと頷いた

「一体何なんだ? その【ソーマ】って」

ズッと玉子酒を一口飲んで京助が聞く

「【ソーマ】は…薬…みたいなものだっちゃ…私は【ソーマ】を使ったあといつも気持ち悪くなるんだっちゃ;」

緊那羅きんならが苦笑いを浮かべる

「そして…普通の人には…何の効き目もないらしいっちゃ」

付け加えた一言はかなり小さかった

「ふぅん…【ソーマ】ねぇ…」

だいぶ冷めた玉子酒を京助が一気に飲み干した

それを見た緊那羅きんならもぐいっとカップを傾けて飲み干す

「あ~;あっつぅ~;」

アルコールと玉子酒の温かさで体温が上がった京助がシャツの襟元を引っ張って手で仰ぎ始める

「…けふっ」

玉子酒を一気した緊那羅きんならが小さくゲップをした

その音を聞いて京助が緊那羅のほうに目を向けると緊那羅きんならがカップを持ったままポーっとしている

「…緊那羅きんなら?」

緊那羅きんならに声をかけるとゆっくり瞬きをした後いきなり涙を流した

「な…?!;」

「ぅ…えぇえええ」

緊那羅きんならが滝の様に涙を流して泣き出した

「ごめんだっちゃー」

耳まで赤くして謝りながら泣き始めた緊那羅きんならに京助はどうしていいかわからずただうろたえる

「お…おーい; 緊那羅きんならー;」

京助が声をかけると一瞬泣き止んだが再び泣き出す

「私はまた守れなかったんだっちゃー…うぇええ」

涙を拭おうともせずただ声を上げて涙を流す様はまるで幼稚園児だった

「守れなかった…って…何が?; 何からよ;」

京助が再び声をかけるとまた一瞬泣き止んで京助を見て

「風邪」

「は?;」

きっぱりと『風邪』と言った緊那羅きんならに京助が口をあけたまま止まった

「…風邪…から守れなかったのか?;」

「そうだ…っ…ふぇええええ」

「いや…ソレ…何だか…;」

【風邪】から京助を守れなくて悔しいらしくそれで泣き喚く緊那羅きんならに京助が顔を引きつらせる

「ごめんだっちゃー…」

「てか…風邪からどうやって守る気だったんだよ;」

京助が聞くと緊那羅きんならはまた一瞬泣き止んで

「…さぁ?」

と首をかしげた

「…さぁって…なぁ;」

はあぁと溜息をついて京助が俯いて肩を落とす

「…怒ってるっちゃ?」

いきなりどアップで顔を覗き込まれた京助が固まる

「ねぇ京助。怒ってるっちゃ? 怒ってるちゃ?」

「ちょ…; な…緊那羅きんなら!;」

ずずいと迫ってくる緊那羅きんならに京助が後ずさる

「怒ってる…?」

とうとう壁に背中がついた京助に緊那羅きんならが迫る

「…お前酔ってるだろ;」

「酔ってないっちゃっ!」

酔っているといわれた緊那羅きんならが京助に頭突きを食らわせた

「いっ~…;お前なぁっ!;」

しかし自分も痛かったらしく緊那羅きんならが頭を押さえて小さく震えている

「…大丈夫か?;」

自分の頭をさすりつつ京助が緊那羅きんならの頭に手を置いた

ガラッ!!

窓の開いた音がした

窓の開いた音につられて窓の方を見た京助ががっくり肩を落とした

「な…なななななな…」

窓の外には両葉をわなわな震わせながらヒマ子がいた

「何をなさってるのですかーーーーッ!!?」

ヒマ子が大声を上げると緊那羅きんならがヒマ子を見た

「き…緊那羅きんなら様!! 一体何を…っ!! 京様とな…とにかくお離れになってくださいッ!!」

声を荒げて騒ぐヒマ子に

「やだっちゃ~」

といって京助にくっついた

「ぎゃぁああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

ヒマ子が今だかつてない悲鳴を上げる

「オイコラ;」

その緊那羅きんならを京助が引き離すと緊那羅きんならがまた目を潤ませた

「京助が嫌う~…」

「あのなぁ…;」

「なっ泣けばいいてものじゃありませんわよ! 緊那羅様きんならっ!! 京様がお困りではありませんかっ!! 離れてくださいっ!!」

泣き出す緊那羅きんならにわめくヒマ子

「やっぱり怒ってるんだちゃー」

うわーんと幼稚園児並の泣き方で緊那羅きんならが泣く

「いい加減京様から離れてくださいましッ!! 緊那羅きんなら様ッ!!」

ヒマ子が窓の枠に捕まって身を乗り出しわめく

鉢が壁にぶつかっているのかたまにゴンゴンという音も聞こえる

「…俺一応病人なんスけど;」

たり…と鼻水をたらしながら京助が呟く

緊那羅きんなら様ッ!! 今すぐ京様から離れてくださいませッ!! さぁッ!!」

ヒマ子が再び京助から離れるよう緊那羅きんならに言った

すると緊那羅がピタッと泣き止んでヒマ子を見てにーっと笑った

「…いやな笑顔だなぁオイ;」

京助のいやな予感が大当たりした

「い・やだっちゃっ」

「ぐはっ;」

「ぎょえぇえええええええええーーーーーーーーーーッ!!;」

ヒマ子に見せ付けるかのように(見せ付けたんだろうが)緊那羅きんならが京助に勢いよく抱きついた

途端に響き渡るヒマ子の悲鳴はまるでラスボスに捨て駒として使われて挙句役立たずといわれて消された部下の断末魔のようだった


…ゴトリ

ヒマ子が窓から消えた…というか気を失って窓枠から落ちた

「…お前酒癖トコトン悪ぃのな;」

ヒマ子の消えた窓を見ながら満足そうに笑みを浮かべる緊那羅きんならを見て京助が呟く

「ひ…へぇくしょッ!!;」

窓から流れ込んできた秋の涼しい風にせっかく玉子酒であったまった体が冷えたらしく京助がくしゃみを連発した

「あ~…とに…; …いい加減離れろ;風邪うつるぞ」

緊那羅きんならを引き離そうと緊那羅きんならの肩に手をかけようとした京助の手を振り払い緊那羅きんならが立ち上がる

「…許しませんわ…」

窓の外から聞こえた震えるヒマ子の声

窓枠に葉がかかりヒマ子がゆっくりと姿を現した

その様はまるで井戸から這い上がってきた某ロン毛の女ばりの怖さだ

緊那羅きんなら様!! お覚悟!!」

カッ! と目を見開いたヒマ子が自分の種を勢いよく緊那羅きんならに向かってマシンガンの様に飛ばしてきた

「甘いっちゃ!!!」

緊那羅きんならがそういいながら ダン!! と畳を強く足で踏むと畳が立ち上がった

ズガガガガガガ という音と共に畳に種が突き刺さる

「…やりますわね…」

ヒマ子の右目がキラーンと光った

「…お前らなぁ;」

京助が咳とくしゃみをしながらいい加減にしてくれと肩を落とした

「今度はこっちからいくっちゃ…」

フラフラしながら緊那羅きんならが足を一歩踏み出した

ざく

「あ」

ヒマ子と京助が同時に声を出した

緊那羅きんならが蹲って震えだした

さっきヒマ子の放った種が刺さった畳をモロに緊那羅きんならが踏み種が足に刺さったらしい

相当痛かったのか声も出さずただ震えている緊那羅きんならに京助が静かに近づいた

「…お前実は馬鹿だろ」

足を抑え目を潤ませている緊那羅きんならに京助が言った

「…京助…」

潤んだ目のまま緊那羅きんならが京助に顔を向け

「…京助に…」

唇を震わせながら何かを言おうとしている

「馬鹿京助に馬鹿って言われたっちゃー!! 私は馬鹿以上の馬鹿なんだっちゃーー!!」

「オイコラ;」

またも声を上げて泣き出した緊那羅きんならに京助が関西突っ込みをする

「だから【宝珠】もないんだっちゃ-!! 京助の馬鹿---!!」

「いやソレと俺の馬鹿って関係あるのか?;」

京助の言葉に緊那羅きんならが泣き止む

「関係ないっちゃ。私が未熟だからまだないだけだっちゃ」

さらりと何事もなかったにかのように緊那羅きんならがいった

「未熟? お前が?」

京助が聞き返す

「そうだっちゃ。私はまだ未熟だから【宝珠】がないんだっちゃ」

緊那羅きんならが肩を落とす

「【宝珠】があれば【天】とこっちの扉も自分で開けられるし…なにより強くなれるんだっちゃ」

「へぇ…だから鳥類が必死こいて探してたのか…」

鼻をすすりながら京助がヒマ子を見た

ヒマ子の鉢の中には迦楼羅かるらの【宝珠】が埋まっている

それでヒマ子が動いているのだった

「…強くなれば…京助も悠助も守れるっちゃ…私…ふ…ぇぇええええ」

緊那羅きんならが再び幼稚園児泣きをし始めた

「あ-!! 京助が緊ちゃん泣かせてるー!」

悠助が戸をあけて京助を指差して言った

「…俺が悪者デスカー?;」

たり~っと鼻水をたらして京助が呟く

「大丈夫? 緊ちゃん…」

悠助が緊那羅きんならに近づいて頭を撫でた

「…悠助~…」

緊那羅きんならが悠助に抱きついた

「…緊ちゃん…お酒臭い…」

緊那羅きんならの頭を撫でながら悠助が言った

「…玉子酒で酔っ払ってるんだよ; ソイツ;」

種の刺さった畳をどかしながら京助言った

「酔ってないっちゃっ!! 京助のば-か」

緊那羅きんならが悠助に抱きついたまま京助に向かって舌を出した

「まぁ! 京様に向かってなんてことを!!」

ヒマ子が緊那羅きんならに向かって叫んだ

「私はよって…ない…っちゃ」

緊那羅きんならの声がだんだん小さくなっていき悠助の体から手が離れそのままぱたりと倒れた

「緊ちゃん?」

「すー…」

悠助が名前を呼ぶと寝息が返ってきた

「緊ちゃん寝ちゃったよ京助~」

足元ですーすーと寝てしまった緊那羅きんならを見て悠助が京助に言った

「…みりゃわかる; …ひ…っくしっ!;」

開けっ放しの窓、一枚だけはがれた畳

「…俺病人なんだけどなぁ…ちく…しょ…へ…へくしょっ!!」

「京助汚い~;」

唾が飛んできたらしく悠助が顔を服の袖で拭う

「まぁ! 京様! お風邪を召しておられたのですか!! まぁ…それならば早くお休みに…」

「や・す・ん・で・た・ん・だ・よ・ッ!!;」

ヒマ子が顔に両葉を当てて慌てると京助が怒ったように区切り区切り言った

「京助~緊ちゃんどうするの? 起きないよ?」

悠助がしゃがんで寝ている緊那羅の頬や髪を突付いている

緊那羅きんならは起きる気配はない

幸せそうな顔してすーすー寝息を立てている

「緊ちゃんも風邪引いちゃうよ~京助~」

悠助が緊那羅きんならの頬をみょーんと引っ張りながら京助に『どうする~アイフル~♪』のCM犬のような眼差しで訴えてきた

「…しゃぁねぇなぁ…;」

ゴホっと一回咳をして京助は寝こけている緊那羅きんならの腕を引っ張った

「京様」

ヒマ子に名前を呼ばれて京助は緊那羅きんならの腕を持ったままヒマ子を振り返った

「…私は…京様にご迷惑をかけているのでしょうか…」

「は?」

いきなり『迷惑か』と聞かれて京助は思わず緊那羅きんならの腕を放した

「痛い~」

その緊那羅きんならの腕が悠助の足の上に落ちて悠助が膨れる

「…私がいなければ京様は緊那羅きんなら様とラ…」

「ハイ!! ソコ!! それそこから強制終了!!;」

ヒマ子の言葉を京助が止める

「…とにかく私は京様にご迷惑をかけているのではないかと…そして…京様はそんな私のことはお嫌いなのではないかと…」

ヒマ子が窓枠から姿を消した

悠助が窓に駆け寄り下を覗き込む

「ヒマ子さん…京助…ヒマ子さんが…」

悠助が京助を振り返って眉を下げる

「…あのなぁ…;」

ズッっと鼻をすすって京助が窓に近づく

「一回しか言わないからな」

京助が窓の下で小さくなって泣いているヒマ子に言った

「俺は嫌いなヤツにはこんな風に声かけたりしねぇよ…たしかに多少呆れたり手ぇつけられないようなことされてるけど…それはそれで…まぁ何とかなってるし…楽しいっちゃ楽しいし」

そう言いながら京助は垂れてきた鼻水を服の袖で拭う

「僕も!! 僕も楽しいよ? ヒマ子さんがいて緊ちゃんがいてみんないて!! 迷惑じゃないよ? 全然! 大丈夫だよ!!」

悠助が身を乗り出して笑いながら言った

「…京…様…悠様…」

ヒマ子が顔を上げるとちょっと呆れ顔で笑う京助と思いっきり笑顔の悠助がヒマ子を見ていた

「…ってと…俺は緊那羅きんなら部屋に連れて行ってくるか」

京助が寝こけている緊那羅を振り返ると緊那羅きんならが寝返りを打って襖にぶつかった

「…酒癖最悪」

京助が緊那羅きんならに近づいて再び緊那羅きんならの腕を持った

「悠ちょっと戸開けてくれ」

緊那羅きんならをおぶった京助が悠助に言うと悠助が駆け寄って戸を開ける

「京様!!」

部屋から出ようとした京助にヒマ子が叫んだ

「私! やはり貴方様を愛しておりますわ!!あきらめませんわッ!!京様っ!!愛しておりますわーーーーッ!!」

ヒマ子のラヴラヴフラッシュをモロに受けた京助がおぶっていた緊那羅きんならを落として固まった


「…頭痛いっちゃ…気持ち悪いぃ~…;」

翌日青い顔をして緊那羅きんならがふらふらしていた

「二日酔いだな」

京助が鼻水をすすりながらベルトを締める

「お前酒弱いし酒癖悪いし」

本日文化祭最終打ち合わせということで珍しく早くから京助が起きていた

まだ完全ではないもの一応は復活ということで母ハルミに登校許可を得たらしい

「…玉子酒って…【ソーマ】じゃないっちゃ?;」

壁に寄りかかりながら緊那羅きんならが聞いてきた

「玉子酒は玉子酒だぞ?」

京助が鞄を肩にかけながら緊那羅きんならに言った

「【ソーマ】飲んだ後にもこうなるっちゃー…;」

ずるずると壁伝いに緊那羅きんならが下がる

「…【ソーマ】って酒か…?」

京助に問いに答える気力もないらしい緊那羅きんならがそのまま蹲った

「…おだいじに」

蹲った緊那羅きんならにそう声をかけると京助は玄関に向かった

「…そういや…あん時…乾闥婆けんだっぱ緊那羅きんならに【ソーマ】飲ませたんだよな…」

靴を履きながらふとそんなことを思い出した京助は迦楼羅かるら達が緊那羅きんならを【天】に連れて行った後【ソーマ】のせいではっちゃけている緊那羅きんならをどうしていたのか少し気になった


挿絵(By みてみん)

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