9話 どうにかするために
「ほんっとうに……! やってくれたわね、どうするのよもう周りにも言ってしまったのに!!」
お姉さまが馬車で白龍と去っていった後、お母様は烈火の如く怒り狂っていた。
怒鳴りながら手近なものを破壊する。
この惨状にお姉さまの婚姻の祝いの為に家に来ていたセイガ様は早々にこの場を離れていた。
セイガ様と結婚してからは家を出て一緒に暮らしている。
最初は放っておいて一緒に帰ろうと言われたけどこの状態のお母様を置いては帰れなくてわたくしはこの場に残っていた。
「お母様、落ち着いて……? この家にはセイガ様もいらっしゃるから……」
「ネリネさん……もう少し考えてから発言なさい!」
「っ……」
わたくしはいつも通りのバカみたいな甘い作った口調で声をかけ、肩に手を置くけどお母様はそれを振り払って怒鳴る。
初めて自分に向けられた怒声に身体が小さく萎縮する。
「蒼龍と白龍の加護、どちらのほうがいいかなんて言わずとも決まっているでしょう!!」
「お母様……」
お母様の発言にどうかこの言葉がセイガ様にまで届いていませんようにと願うことしか出来ない。
家が決めたこととはいえ今は彼はわたくしの旦那。
変に傷ついて欲しくはないし龍の逆鱗に触れるのは避けるべきだ。
「どうにか、どうにかしてスミレさんをこの家の子だと分かっていただかないと、そうしないと加護が受けられない……あ、そうだわ! ネリネさん」
「な、何かしらお母様……?」
何か妙案を思い付いた、といった様子のお母様に内心嫌な予感しかしない。
「謝りに行きましょう、スミレさんが今まで気に入らなかったことがあったというならそれを! ねぇ、セイガ様に頼めばどうにか会えないかしら……?」
「お母様……」
わたくしは哀れむように口から漏らす。
気に入らないことがあったとするなら、この人は本気で言っているのだろうか。
わたくしは別に姉のことが好きではない、意図して嫌がらせもしていたし、気に入らないことがあったのか、なんて口が裂けても出てくる言葉ではない。
「お願い! 貴女達が頼みの綱なのよ」
お母様は言いながらすがるようにわたくしの服を掴む。
「……分かったわ、聞いてみる」
また、お母様の頼みを断れなかった自分に落胆しながらわたくしは足早にセイガ様の元へ向かった。




