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【嵯峨 卯近/2001年~2018年】執筆した過去小説

帰郷の桜

作者: 嵯峨 卯近

 改札口を過ぎると、海の匂いが鼻孔をつんざいた。

 観光客がよく口にしていた言葉が、今ようやく分かった気がする。

 この故郷を離れて、どれほどの歳月が過ぎ去っただろう。

 駅前は――随分と変わったらしいが、過去の情景はまだ、くっきりと脳裏に浮かぶ。

 うららかな日差しが肌を撫でる。そろそろ桜が咲く季節か。

 これから向かう場所は、桜の名所として知られた神社である。さぞかし綺麗なのだろう。


 待つ事、十分少々。

 私が、杖を頼りにバスへ乗り込んだ時――。

 おそらく若い女性の方が、難儀している私の手助けをして下さった。

 いくら時は経とうとも、一向に変わらない故郷の人情が身にしみた。

 かつての己は、利益ばかりを追求していた。そんな事など考えた事も無かった。

 世の中全て、カネなのだと。

 カネがモノを言う世界なのだと。

 今思えば、自分はなんと、愚かしい人間だったのだろう。

 そのように我が身の所業を振り返っている時、まもなく目的地に到着するというバスのアナウンスが流れた。


 杖を頼りに、幼少の頃に幾度も通った神社の石段を登ってゆく。

 不摂生を繰り返して年月を経た身体の節々から、悲鳴があがる。

 それでも止まる訳にはいかない。呻き声を上げる事もしたくない。

 私は、生来の負けず嫌いである。

 中途半端で投げ出した事は、これまでの人生において全く無い。

 男が一度決めたからには、最後までやり通すのだ。

 この性格のおかげで、過去に色んな人と火花を散らしたが、それについては後悔していない。


 ようやく、神社の境内にたどり着いた。

 夢でしか見れない風景。

 懐かしの故郷。

 春の香りが混じった優しい風を、肌で感じ取る。

 もはや、この目は何も映さないが、我が心には確かに見えていた。


 生命の限りを燃やして咲き誇る、満開の桜が――。



二ヶ月ぶりの更新になりました。

文学っぽい短文で、もちろんフィクションです。


作者は文学がまったく分かりません^^;


それでもよろしければ、拙い文章ですがお楽しみ下さい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 文章が美しいです。 文学としての日常性も兼ね備えています。 [気になる点] 主人公の心情がいまいち掴めないような気がします。もっと掘り下げた独白をも、取り入れていいのではないでしょうか。 …
[一言] 拝見しました。 かなり筆力のある方だとお見受けしましたが、それでも一次や二次で落選してしまうとは世の中厳しいですね。 「海の匂いが鼻孔をつんざいた」の部分は「海の匂いが鼻孔をくすぐった」の方…
2010/05/14 17:29 退会済み
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