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たけるの投票裏工作〜金曜日の体育は絶対にサッカーがやりたい!〜  作者: ameumino


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8/9

投票、決着のとき

翌日、金曜日、投票当日



投票は4時間目の学級会の時間でやるので

動けるのは中間休みのみ


「佐太郎、権蔵に気づかれないよう、クラスの男子に言ってくれないか?」

「何を?」

「権蔵が暴れない秘策がある。だからサッカーに投票してくれって」

「秘策って?」

「それは……」

たけるは佐太郎の耳元で何かを言った。

「なるほどな、それだったらもしかしたら……」

「うん。じゃあ頼んだ」

「おう!」

佐太郎は勢いよく席を立ち男子達のもとへと向かっていった。


たけるは教室の前にある時計を見あげた。


さぁ勝負はすぐそこだ。


---


4時間目 学級会の時間


「では、投票を始めます!」


担任の福崎が宣言すると、長方形の小さな紙が一人ひとりに配られていく。

やがて、たけるのもとにも紙が回ってきた。


そこには「サッカー」と「ソフトボール」、二つの選択肢が並んでいる。

たけるは迷うことなく、「サッカー」に◯をつけた。


数分後――


「それじゃあ、順番に投票箱に入れてください!」


福崎の合図で、廊下側の列から順に、教卓に置かれた投票箱へと票が投じられていく。


(みんな……頼むぞ)


たけるは静かに目を閉じ、心の中で祈った。


やがて、全員の投票が終わる。


「じゃあ学級委員、お願いします!」


福崎の言葉で、男子1人と朝宮涼香が教壇の上に移動した。


「では、投票結果を発表します!」


涼香の声が響き、たけるは緊張を紛らわせるように窓の方を見た。


「ソフトボール1票、サッカー1票、ソフトボール1票……」


涼香が一枚ずつ票を読み上げ、もう一人の学級委員が黒板に「正」の字で数を記していく。


「サッカー1票、サッカー1票、ソフトボール1票……」


教室には涼香の声だけが響き、誰もが固唾を飲んで見守った。


---


「では、4時間目を終わります」


福崎の言葉に合わせてチャイムが鳴った。


福崎が教室を出て行くと、クラスはざわつきはじめた。

たけるは黒板に書かれた投票結果を見つめる。


結果は――ソフトボール12票、サッカー18票!


(よっしゃ!)


たけるはガッツポーズを取る手に力を込めたが、それを目立たないよう静かに収めた。


だが、その安堵もつかの間だった。


「どういうことだ!」


教室の後ろから、怒気をはらんだ声が響いた。


権田山権蔵が、ギギッと椅子を引いて立ち上がる。

その瞬間、教室の空気が一気に凍りついた。


「誰だ……裏切ったのは!!」


怒声が響き渡り、男子たちは目を逸らし、誰も言葉を発せなかった。


いよいよ権蔵が暴れ出すか――


そのときだった。


「ちょっと待って!」


パッと席を立ったのは、学級委員の朝宮涼香だった。

次々に、他の女子たちも立ち上がる。


「なんだよお前ら!」


権蔵が女子たちを睨みつける。


「権田山君」


涼香は静かな声で呼びかけた。


「朝宮……なんだよ」


睨む権蔵と、真剣な顔で見つめ返す涼香。

一瞬、教室の時間が止まったかのような静寂。


だが、次の瞬間――


朝宮涼香はふっと笑って言った。


「私、権田山くんがサッカーしてるところ、見てみたいな」


「……えっ?」


権蔵は一瞬、目を丸くした。


「うんうん、走ってる姿とか絶対カッコいいって!」


「ゴール決めたらヒーローだよ!」


「キャー!想像したらヤバい~!」


他の女子たちも笑顔で権蔵を見ながら口々に言う。


「なっ……お、お前ら……」


権蔵は顔を赤くし、目を逸らした。


そして、ひと呼吸置いて――


「……仕方ねぇな。サッカー、やるか」


その瞬間、ピリついていた教室の空気が一気に和らいだ。


(ふぅ、良かった良かった……)


たけるは机に両手をついて、そっと深呼吸した。

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