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最後の切り札
5時間目、6時間目が終わり、掃除の時間になった。
教室の隣の廊下で、たけると佐太郎は並んでほうきを動かしていた。
「なぁ佐太郎、今の状況ってどんな感じだ?」
たけるが声を落として聞くと、佐太郎はほうきを止めて小さく息をついた。
「うーん……みんな、ソフトボールに入れそうな空気だな。やっぱり、権蔵がキレるのが怖いんだろうな」
「そっか……」
たけるは肩を落とした。
「で、どうするんだよ?」
佐太郎がたずねると、たけるはしばらく黙ってから答えた。
「……女子の票を集める」
「女子? 俺、女子の情報とか全然知らないぞ?」
佐太郎は苦笑いを浮かべ、首を振った。
「俺もだよ。でも――」
「でも?」
「ひとつだけ、切り札がある」
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掃除を終えたたけるは教室に戻ると、自分の席に座り、机の引き出しから自由帳を取り出し、1枚の紙をビリリとちぎった。
そして、その紙にペンを走らせはじめた。