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キーパーという名のステージ
給食が終わり、昼休み。
廊下の片隅で、ひとり踊る男がいた。
男の名は鷹野健一。
クラスいちのイケメン――だが、クセが強い。
たけるは踊っている健一にそっと近づいた。
「ダンス、どう?」
「これはこれは伊坂たける君。順調ですよ」
「それは良かった。ところでさ、体育の投票って、どっちに入れる?」
「どっちでもいいよ。私の夢はアイドル。だけど汚い汗はかきたくないのよ。体育なんて、ないほうがいいわ」
「あれ? 今、汗かいてない?」
「これは美しい汗よ!」
健一はキメ顔でポーズをとる。
(……クセ強っ)
たけるは心の中でつぶやいた。
佐太郎の情報通りだ。健一は踊り以外の運動が大の苦手。
だが、ひとつ提案がある。
「じゃあ健一、キーパーになったらどう?」
「キーパー?」
「そう。動かなくて済むし、ボールを一度でも止めたらヒーローだ。しかも超目立つし、歓声も浴びられる!」
健一の目がパッと輝いた。
「それ、最高じゃん! ステージみたいじゃん!」
「じゃあ、金曜の投票はサッカーでよろしく」
「まかせなさい!」
健一は右手で自分の胸を力強く叩いた。