表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

道徳心と道義心の狭間で

作者: 桂虫夜穴


何故こんな事が起きるのか?

不思議でならない

何故道徳心を持ち合わせない輩が

存在するのか?

そもそも道徳心とはなんなのか?


 

 久しぶりに家族でドライブに出かけた。ダンナと小学一年生の一人娘と一緒に。…と言っても行き先は近場のお寺だ。SNSで話題になり気になっていたが距離的にいつでも行けると言う思いから数ヶ月が経ってしまった。

 何気なくスマホ見ていると、そのお寺を紹介する動画が再び流れてきた。

 以前見た時より参拝客が明らかに増えている。出遅れた感がして早る気持ちを抑え切れず、ダンナと娘を誘ったのだが


「ええ⁉︎ お寺ぁ?」


と反応が鈍い。動画を見せたが、それでも乗り気になってくれない。

 却下されそうで不安になったので日帰り温泉とセットという事で交渉に臨んだ。二人は、それならばと渋々承諾してくれた。

 

 最近は週末になると雲行きが怪しくなる。悪天候がわざとの様にやってくる。

 どこぞの国の仕業か悪巧みかと都市伝説の様な妄想をするが、まぁ、それはあり得ない事なのだろうが。

 幸い今週末は晴れの予報通り、お天気に恵まれた。意気揚々と私がハンドルを握り出かけた。

 鼻歌なども自然に出て気分上々だったのだが、目指す、お寺からまぁまぁ距離のある地点から渋滞が始まっていた。

 

 お寺専用の駐車場は第二、第三と用意されているのだが、そのキャパを遥かに越える参拝者が押し寄せているのだ。これではもう参拝者と言うよりも見物客と呼んだ方が良いのではないかと、そう思えてしかたなかった。かく言う私もその群衆の一人なのだが…。

 

 30分程すると、やっとお寺の外観が見えてきた。ガードマンが数人で車の誘導をしている。

 駐車場の前には押しボタン式の信号と横断歩道があるのだが駐車場から降り立った歩行者が隊列を成して渡るのだ。

 信号が赤になっても渡り続ける輩が続出する。中にはスマホを眺めながら横断する者もいた。

 散々渋滞で待たされたドライバーの中には、その様子を見てブチ切れてクラクションを打ち鳴らす者もいた。ガードマンが注意をするが逆切れされて口論になっていた。

 我が家もやっとの事で駐車できて横断歩道の後列に並んだ。すぐに赤色信号に変わったので前列の進行を待ったが後からきた輩からの嫌な圧を感じた。

 

「早く行けよ!」


そう言われている感じがしたのだ。

前列はと言うと皆早足から一気に走りへと変わった。スーパーのレジ待ちの様にはいかないものだ。

順番も譲り合いも一才存在しない。早いもん勝ち。弱肉強食の世界がそこで繰り広げられた。

後ろの輩も我が家を追い越し横断歩道を渡ってしまった。出遅れた私達には車の激しいクラクションがお見舞いされた。


 境内は大きく二箇所に分かれていた。これは私の見解だが。要するに無料地域と有料地域とからなる、ここは観光施設だと言う事だ。

 普通にお参りするなら無料区域で充分だろう。しかし有料地域にはSNSで話題になった。苔生す庭園や茶室、恋人達の聖地、縁結びの神様など若い世代にも訴え掛ける映えスポットが多数存在するのだ。

 しかし、この大混雑で大人千円の料金を払う気にはならなかった。チケットを購入するのにさえ長蛇の列に並ばなければならないのだ。

 それに縁結びなど今のところ私達夫婦には無緑の事だ。早々に引き上げ日帰り温泉に向かう事にした。

 

 しかし入り口付近から、そうだったが、あちこちで撮影を行うので中々歩が進まない。境内まできて渋滞にさらされたのだ。

 SNSにアップでもするのだろうか?

女性が一箇所で様々なポーズをとっているのを男性が一所懸命撮影している。しかも時々スナップの写り具合を確認する念の入れ様だ。

 プ口のモデルやカメラマンでもあるまいしと思うが今や自称モデルや自称アイドルが巷に溢れている時代だ。致し方無い事なのだろう。

 邪魔をしない様に待ったり除けたりしながら人通りの少ない細道から出口に向かった。

 車に乗り込むとこれは失敗したなと思い。

ダンナと娘に対してバツが悪かったので


「ごめん。」


と一言、短く謝った。しかしダンナと娘の反応は意外なものだった。


「今日は温泉がメインだけど

次は、ゆっくり見て回りたい。」


と言うのだ。期待し過ぎてガッカリした私と、その気が無いまま付いて来た二人との受けた印象が真逆過ぎて驚いた。

 でも、その反応で少し救われた気がした。


 車は裏道を走らせた。人気の無い田舎の景色を眺めながらつくづく思った。

 話題性と個人の趣味嗜好など、そもそも一致しないものだ。その事を痛い程思い知らされた気がした。

 しかも皆、一人一人受け取り方は違うのだ。同じ事象でも良い印象を持ったり最悪と判断したり、同一環境でも条件が異なれば同一人物であっても違った回答をするかも知れない。それ程、人の感情や意識はあやふやなものなのだ。


 温泉に着いた。駐車場は既に大量の車が停っている。この界隈の温泉アワードで年間一位の栄冠に輝いた事もあるのだ。人気の程が伺えると言うものだ。

 靴をロッカーに預けフロントで受付をした。ダンナとはここでお別れだ。

 娘が小さい頃は家族風呂などを利用していたが最近は一般風呂を利用している。家族水入らずは良いのだが、やはり大きな風呂に入りたい。その欲望には勝てない。

 ダンナは初めは一人で寂しそうだったけれど、慣れると思いっ切り羽を伸ばせて今は快適なようだ。


 娘を連れて女風呂の、のれんを潜った。大浴場は駐車場の大量の車のイメージとは違い、それ程混んでいなかった。

 食事や休憩、マッサージにエステに岩盤浴と多種の施設があるのだ。人がバラけてしまっているのだろう。こちらには好都合だ。

 かけ湯だけでは物足りないので髪も身体も給麗に洗ってから湯船に入る事にしている。

 さっぱりしてから入りたいし、勝手にマナーだとも思っている。垢の浮いた風呂に入りたいとは思わないからだ。

 娘も隣で髪と身体を洗っている。ちゃんと一人で出来ている。娘の成長が嬉しい。


 あれは小学校入学前の事だった。娘が突然髪を切りたいと言い出したのだ。肩を越える程の長さがあったのだが髪を洗ったり結んだり、その手入れを自分でしたいと言い出したのだ。

 私はせっかく伸ばしたのにもったいないと躊躇したのだが娘の意思は堅かった。その想いを尊重して美容室でカットする事にした。

 私は美容師のハサミが娘の髪に掛かる時点で涙がこぼれそうになったが娘は新たな船出の様に瞳を輝かせ満面の笑みを浮かべて鏡に映る自身のショートカット姿を眺めていた。

 そして今はその宣言をちゃんと実行している。


 身体を洗い終えて湯船に向かった。泡風呂と電気風呂でマッサージ効果。炭酸泉もある。もちろん天然温泉で効能もしっかりある。最近は女性にも人気のサウナも然りだ。

 私は大量に汗をかくのは苦手なのでパスだが、好きな人はサウナと水風呂をハシゴして気持ち良さそうだ。


「整った!」


と言う事らしい。

 私のお気に入りは、やはり露天風呂だ。施設は小高い森の一角にある。そこと連なった様に庭園の植木を配してあるので、まるで天然露天風呂の様な趣をかんじる事ができる。

 浅めの湯に身を投げ出し脚を伸ばして空を見上げると木漏れ日がチラチラと輝いてなんとも癒されるのだ。

 大きく深呼吸をすれば澄んだ空気をたっぷり堪能できる。まさに天国か楽園と呼べる場所だ。

 

 瞳を閉じるといい気分になり眠気がしてきた。ついウッツラしていると、いきなり腕を掴まれ揺さぶられた。

 何事かと身体を起こすと娘が私の背後に隠れるようにして耳打ちしてきた。


「男子…」


一瞬何を言ってるのか飲み込めなかった。


「何?」


そう聞き返すと娘が後ろから、すがり付く様にもう一度耳元で呟いた。


「男子がいる。」


「えっ⁉︎ ダンシッ!」


 男の子がいるのか?

でも母親に連れられた幼い男児か極たまにいる事はある。

 しかし昭和の銭湯ではないし、それ程見かける事は少ない。しかし娘はこうして異変を感じているの

だ。

 娘の指刺す方を見ると丁度大浴場のドアを勢いよく開けこちらの露天風呂に小走りで子供が向かってくるところだった。

 確かに男の子だ。隠しもせずプラプラ揺れるポークウィンナーもどきが確認できた。

 身長は娘より少し大きめだ。女風呂に入るには少しきびしいサイズだろうか。アレのサイズではない。身長の事だ。

 しかし何故に、この男の子が、この女風呂に入湯出来たのか?

 その時点では謎だっが風呂上がりに食事をしている時にスマホで検索すると驚くべき事実が浮き彫りになってきた。


 銭湯では混浴制限年齢7歳以上と言う条例が各自治体で定められているらしい。

 ややこしいが6歳までなら親と一緒にと言う条件で異性の風呂に入浴OKなのだそうだ。

 しかし驚くのは令和4年まで年齢制限が10歳以上だった点だ。ごく最近まで小学3年までの男女が銭湯でバッタリ出会うと言う可能性があったと言う事だ。

 異性を意識し始めた年齢で真っ裸で対面する事を想像してほしい。自分の小学生時代を思い出して欲しい。もし相手が同級生だったら...。ゾッとする光景だ。

 双方どちらにしても良い結果は望めないだろう。

二度と学校に足を踏み入れる事はできなくなるかもしれない。

 

 さらに各自治体と言うところが問題だ。一律7歳以上と言う訳にはいかないらしい。8歳や未だに10歳以上と言う自治体も存在するとの事だ。

 大人目線で子供の生態を見てはいけない。女風呂に見ず知らずの大人の男性が突然入ってきたら騒然として皆パニックに陥るはずだ。

 それと同じ感覚で子供達の事も見てあげなければ子供はきっと深刻なトラウマを抱える事になってしまうだろうなと私は思った。

 

 しかしこの時点ではまだ疑問だらけでどう対処すべきか思案していた。

 当の男の子は壺型一人風呂で飛んだり跳ねたり周囲に水飛沫を上げ年配のおばさんに注意されているが全く意に返していない。

 母親は、どこにいるのだろう?全くの野放し状態だ。

 みんな迷惑を被っているのだ。なんとか手を打たないといけないと思うが本人に言っても拉致があかない。こちらは、さっさと母親に息子を連れて退出して欲しいのに…。


 すると男の子が勢いよく壺湯を飛び出しまた大浴場の方に向かった。一度濡れたタイルで滑り転んだがケラケラ笑いすぐに起き上がった。

 そして、そのまま冷泉に飛び込んだ。先に入っていた女性が叱りつけているが、これも気にせず男の子はその女性に抱きついた。

 どうやらこの女性が男の子の母親らしい。子供をほったらかしてサウナを満喫し冷泉で身体を冷ましていたのだろう。

 しかし意外にも湯船で暴れる息子をちゃんと叱っていた。と思ったが、それはお門違いの様だった。

 他の大きめの湯船で息子が泳ぎ出したのは知らんぷりだ。さっきの叱責は息子が飛び込んできた時に自分にしぶきがかかった事を咎めたらしい。他人に及ぶ害には無頓着らしい。

 

 この母親、若くてかなりの美人だが性格はキツそうだ。注意をすれば逆ギレされるのは目に見えている。触らぬ神に祟りなしだ。

 ここは浴場スタッフに伝えて注意してもらうのが得策だろう。そう思い娘に、ここを動かない様にと念を押して大浴場の方に向かった。

 すると丁度女性スタッフが入って来た。誰かが先に通報したようだ。


「先を越されたぁ!」


と思ったがそんな事はどうでも良かった。

しかし思った通りだ。注意を受けた母親は女性スタッフを逆に恫喝している。見かねた年配の女性客達もスタッフに味方したが母親は興奮して怒鳴り散らした。

彼女の言い分はこうである。


「ウチは母子家庭だ。私は朝から晩まで働き尽くめでクタクタだ。子供を遊びに連れて行く事もままならないが久しぶりの休みが取れたので息子と、この温泉に来た。でも息子を一人で男湯に入らせる訳にはいかない、だから一緒に入浴したのだ。」


 この様な内容だと思ったが順番はバラバラだった。

母子家庭と言うのは同情の余地はあるかもしれないがスタッフの話では、ここの年齢制限は、やはり7歳以上。息子は7歳と言う事だ。ギリギリアウトだ。

 母親は年齢制限など知らないと叫んでいた。それは私も同じだが然りとて娘をダンナと一緒に男湯に行かせようとは思わない。

 年齢制限をクリアしていてもだ。娘も絶対それは望まないだろう。それは、道徳心からくるものだ。

 昔とは違うのだ。親子で入浴する姿は微笑ましい。しかし単純にそれを受け入れる事が、できない事情もあるのだ。

 現に娘は嫌がっている。嫌なら来るなとはならないだろう。当たり前に入浴しているのだ。年齢制限というのは特例の措置だろう。どちらを優先するべきかは明らかだ。

 幼女を含め男の子も、(しか)りだが性被害事件の多発する今の世の中で性の問題は大きな社会問題となっているのに、この自治体の統一性の無さと遅れはどうなっているのか?疑問符しか浮かばない。

 結局、もう一人年配のスタッフが現れて母親を説得したが彼女は納得がいかず店長を呼ベとフロントの方に向かった。大騒ぎだった。散々だと、その場を後にするものもいた。

 私は娘の元に戻り壺湯に二人で入りしばらくして浴場を後にした。



 食事をする為に併設するレストランに入ると、あの母親と息子がいた。テーブルに座りスマートタバコを出したところを店員に注意されている。

 相変わらず道徳心のない事だ。しかも隣にはご主人らしき男性と女の子が座っている。母子家庭ではなかったのか。

 まあ未婚のパートナーか親戚兄弟という可能性もあるが、わざわざ温泉に一緒に来る様な中だ。ただの友達ではないだろう。

 それにしても何故男性が抱っこしている女の子を母親は連れて行かなかったのだろう?

 男の子と女の子を入れ替えて入浴すれば済んだ話ではないか。男は男同士。女は女同士。

 そうすれば何の注意もお咎めも無かったのだ。わからない?

 この男女の思考回路がわからない?


溺愛する息子とただ純粋に一緒に入浴したかっただけなのか?

それとも周囲の反応を楽しんだのか?

わからない?

それこそ私の単純な思考回路ではわからない事だらけ

だ。



 食事が終わりフロントで料金を払い車に向かうと

もう日が暮れていた。散々な一日だったなと思いながらバックからキーを出していると駐車場から何やら音楽が聞こえてきた。

 黒い軽自動車からガンガン激しい音楽が聞こえてくる。今時、車の外に聞こえる程大音量で音楽を鳴らす者がいるんだなとダンナと苦笑いしたが、その後厄介な事に巻き込まれた。

 車を駐車場から出してしばらく走っていると一台の車が猛追して来た。黒の軽だ。

 こちらに追いつくと吸い付くように煽ってくる。ぶつかるんじゃないかと気が気でない。バックミラーを覗くと何とあのバカップルだ。もうそう呼ばせて貰おう。

 運転しているのは男性の方だ。男女共、道徳心の欠片もない事がこの瞬間、確定したのだ。

 私は早々に左にウインカーを出しゆっくり車を左に寄せハザードを灯した。


「早く行っとくれ!」


 そう願ったが黒軽は、ゆっくりとこちらの車の横を通過し助手席の母親がじっとこちらを睨んでいる。

 何故睨まれているのかわからない。道を譲ったのだ。感謝されるべきだろう。わからない???

 私は無視を決め込み真っ直ぐ前を向いていた。娘がいるのだ。何が起こっても困る。

 煽り運転をされた挙句。高速道路で死亡事故に会った被害者もいるのだ。何が起きるかわからない。

 道徳心ゼロの輩と対峙する勇気はない。話が通用しないのだから。


 黒軽の赤いバックライトが見えなくなり後続車を数台やり過ごしてから発進した。完全に関わりを絶ちたかったのだ。



 帰宅途中に、あのお寺の前を通った。もう参拝時間も過ぎ、通行人もまばらだ。

 お寺の前に差し掛かると赤信号になり横断歩道の前で止まった。

…と、その時だ。突然フラッシュバックが起きた。今日一日の事が脳内を駆け巡った。

 車の渋滞と境内の混雑。有料地域のチケット売り場の行列。いや違う。そうだ。信号待ちの行列だ。そこで後ろから圧をかけ追い越して行った。あの横顔と服装。


「そうだ!あの母親だ!」


浴場ではわからなかった。裸では記憶と繋がらなかった。レストランでも服装は今思えば一致したが、その時は考えもしなかったのだ。

 それが今、お寺と横断歩道と行列と、あの横顔に、あの派手な服。それが全て重なり一致して記憶が鮮烈に蘇ったのだ。

 結局、同一人物に一日で三度も嫌な思いをさせられていたのだ。赤の他人にだ。

 もう二度と会いたくないと思ったが、あの温泉に再び行けば会う可能性はあるのだ。

 一つ自分にとって大切な場所を失う事になるのだろうか。

 こんな理不尽な事があるのか。被害を被ったものが退かなくてはならないなんて。

 

 しかし思えばこれも、みんな、私に道義心が無さ過ぎた故、起きた事かもしれない。道徳心は持ち合わせていると思うが…事勿れ主義は否めない。

 現に男の子に注意をしスタッフに加勢をしていた年配の女性達がいた。

 年齢の問題ではないだろう。世代の問題だ。私達世代は他人に遠慮して、お節介を焼く事を躊躇する傾向にあると思う。

 昔は親戚のおばさんあたりに必ずお節介焼きがいた。お見合い話なども持ってくるので今の様にマッチングアプリで自分の相手を探すなどと言う苦労は少なかったと聞く。ある程度で治っていたのだ。

 お節介の中には道義心も含まれていただろう。自分が何とかしてやりたいと言う。思いやりの心が本質だ。

 それが最近はお節介が重い槍と受け止められているようだ。心の重荷がチクリと胸に刺さるようで、今の世の中では敬遠される傾向にあるらしい。

 しかし家族感では、そんな事はないと思う。親は子供に対してどこまでもお節介で良いと思う。ただ子供時代と言う括りは必要だが。

 親は子供に道徳心を教え道義心で子供を守らねばならない。

 思い起こせば、もし、あの男の子が、あの浴場で裸の娘に指一本でも触れたら私は絶対に許さなかっただろう。

 例え子供であってもだ。あの母親に猛烈にに抗議しただろう。例え逆ギレされても興奮して引き下がりはしなかったはずだ。

 何故ならそれが母性だから。それが女性の本能だからだ。子供を守る為なら我が身も命も惜しくない。それが親と言うものだ。

 今日は中途半端に道徳心が頭をもたげ、他人に注意するなんて…人前で騒動になったらどうしようなどと要らぬ邪心が湧いたけれど。いざとなれば私だって…そう込み上げてくる熱いものがあった。

 あの母親もねじれてはいたがあの瞬間溺愛する息子を守ろうとしたのかもしれない。

 息子に対する道義心は人一倍なのだろう。ただ道徳心だけは親子共々学んで欲しいものだ。


そして私は彼女から


子供に対する道義心を


少しは学ぶべきなのかもしれない。


道徳心などかなぐり捨てて


娘を守る事を最優先するのだと。


道徳心と道義心の狭間で私の心は揺れていた。





終わり

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ