考えて
(今ごろ2人は天使の残骸を見つけただろうか。そうじゃなきゃ少し困るなぁ)
ゴーン、ゴーンと響くのは鐘の音。
遅刻はしたが無事に鳴らすことができた。
「お待たせいたしました」
続々と扉から料理が運ばれてくる。大半のものは少し冷めているようだ。長い卓の上に料理が置かれては人が出て行きの繰り返し。
(ボクの仕事はやっとひと段落ついたし、久しぶりに自由に動こうかな…やめておこう。油断は禁物だ。まさか、忘れた訳ではないだろう?)
まだ鐘の余韻が続いてる。
卓にもう置き場が無くなった頃に数十人の少年少女が続々と席に着く。次の風神候補だ。
(代わりなんていくらでも居る)
「さて、遅れてすまないね。いつもの様に『明日も同じ食事が出来るように願おう。今日も天使はボクらを見ているよ』」
それで一斉に食べ始める。溶けるように料理の数々は無くなっていった。
「…ご馳走様でした」
みんながいなくなってから小さい声で呟いた。舞の練習をしなくてはいけない。2人には言ってなかったが当分大樹の元には行けなそうだ。なんだかんだでやるべき事は溜まっていくのが悲しい所。
ふと、部屋の中にコンコン、とノックの音が響いた。
(誰かな?)
「どうぞー」
「失礼いたします。」
入って来たのは見知らぬ人。薄緑の髪に黄色い目というよくある色素を持った男だった。
「私はメイと申します。実は未来の見える風神様にご相談したい事がございまして」
「あぁ、ごめんね個人の相談は受け付けてな…」
先程の言葉が引っ掛かる。
(未来の視える風神?それじゃあまるで自分は視えないと言っているみたいだ。)
「大変無礼な事とは思いますが魔法で姿を変えさせていただきました。そうでもしないと神都には立ち入れないと思いましたので」
そう言って彼は自らの色素を変化させた。神として生まれたならばなりようのない色素に。
「私の師匠の未来を観て欲しいのです」
続けて彼は言った。死因が知りたいのです、と。
彼の耳は長く、平均よりかなり高い魔力を持っていた。
そんな種族をボクらはエルフと呼ぶ。