幕間2(3)
ガラガラと音が鳴ったかと思えば、何かに引っ張られて、あったかい何かに包まれた。
私はそうしてゆっくり目を開ける。
「ん…」
「あぁ、起きた。良かった。キミ、平気かい?あ!怪我が酷いから動かない方がいい。ボクはキミのお父さんに頼まれて探していたんだ」
目の前にいたのは、サラサラと風に靡く若緑の髪を持った青年だった。
「お父様に…どうも、ありがとう」
まだ意識は朦朧としていたが、普段の教育の成果が出ていた。見知らぬ風神でもメイテイは感謝を伝える。
「怪我って、今どんな感じかしら…?」
夢見心地の気分だった。
「そうだね…どれも大事には至っていないよ。瓦礫の破片が少し体に刺さってるぐらいかな」
グン、と体が持ち上がった。確かに体は痛い。瓦礫が刺さってると聞いて納得した。
「でも痛いよね、あとちょっとの辛抱さ」
青年に担がれた。見た目からして風神であることに加え、背は高いのに筋肉はなさそうなのでメイテイは少し不安だった。
(私結構重いのに。落ちゃわないかしら)
「———私が背負おうか」
気付かなかったが近くに女性も居たようだ。凛とした声が聞こえる。これまた小柄な人だった。こちらは火神だろう。
口論するわけでもなく、2種の神が揃っているのが変な感じだった。
「私、自分で歩けるわ」
(火神たるもの、これぐらい…)
「遠慮しないで、ボクが運ぶから」
彼は目を細めて笑った。
メイテイが必死に動かそうとしていた足を、彼は言葉ひとつで止めてしまった。
「…」
少女の危機を助けたヒーロはやはり格好良く見えるものだ。
「ねぇ、貴方達。お名前聞いてもいいかしら。お礼がしたいの」
風神は言った。
「ビフェリオだよ」
火神は言った。
「クルエッタです」
「ビフェリオさん、にクルエッタさん、ね。覚えておくわ。火神の血に誓って必ず、この恩は…」
段々と瞼が重くなってきた。
「今はゆっくり寝てください。メイテイお嬢様」
なぜ自分のことをアンドンでもないのにお嬢様と呼ぶのだろうと疑問に思ったが、そういえば彼女は火神だった。メイテイが現長の娘ということぐらい知っているだろう。
「キミが次目覚めたときは、お父上の腕の中さ。…ところで、お父上に伝えておきたいことはある?」
頼まれたといえど、知らない娘を瓦礫の中から見つけるのは至難の業だ。きっと彼女が協力してくれたのだろうと考える。
「えぇと、そうね」
耳に彼らの言葉が入ってきているはずだが、思考がそれについて行っていなかった。
『今まで』を考えていて、『これから』と現状を考えていなかった。
「んーと…」
自分がもうすぐ事切れるということまでメイテイは考えられない。死への自覚がまるでなかった。
「火神の地は、民は、無事かしら?」
長たる器を幼いながら持っている彼女を失うのは、火神としても痛手だろう。
「無事さ。キミたちはとても強いから」
「本当?」
「ああ」
「ね、ビフェリオさん」
「なにかな」
「…なんでこんなことになったの?」
これを聞いたのはただの気まぐれだった。大人に聞いてみたかっただけだ。
返答は返ってくる。
「…ごめんね。ボクが責任を持って、必ず解決するよ。どんなに時間をかけてもね」
「まるで自分がやったみたいに言うのね。ふふ、変なひと」
とてもとても眠かった。
別に彼を疑っても良かったが、ヒーローはヒーローでいて欲しかった。
メイテイは眠ることにした。




