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神に祈って  作者: ロヒ
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少し待って

神都を離れて数分。4人は空を飛んでいた。


「ここで私は“仙楼”の方向へ向かいます。私から言えることではないですが、あとはよろしくお願いいたします。風神様」


仙人はこれから“仙楼”へ向かい、スレンドの住民票を確認するつもりだ。


「ばっちり任せてくれ。何も心配はいらないぜ」


どん、とファレオは胸を叩いた。


「…私は不満ですぅ〜お師匠〜私もついていきますぅ〜」


ずん、と沈んだ空気を漂わせているのはメイだ。


「それと、ベルラン」


すん、とした顔で無視されるのはいつものこと。


「もうすぐスレンドもここに着く頃だろう」


複雑な気分だった。嘘をつかれたという不信感はそう消えることがない。理由がわからないから尚更だ。


「魔法のこと、聞いてみてくれ」


だがわからないままにはしておけない。


「…はい」


“仙楼”では魔法の詳細の提出が義務とされている。もちろん詐称なんてしたら重罪であり、それ相応の刑罰が待っている。


特に治癒形の魔法の管理は厳重だ。もし、スレンドの魔法が“自身の再生”だけでなく“自他の再生”であれば最低でも“仙楼”の追放は免れないだろう。


「じゃーオレらは待機だ」

「ペクトへ行って魔法を使うのでは?」

「任せてくれと言った手前であれだが、完全に忘れていたことがある」

「なんでしょう」


「オレ杖ないと魔法使えないや」


(今それを言うか)


「…お貸ししましょうか」


杖は素材に魔力耐性があれば、基本的になんでも杖として使える。誰の所有物であろうが関係はない。


「いや、風神の長(オレ)は長が使う扇形の杖じゃないと魔法が一切使えない」

「なぜですか?」

「オレ、物心ついた時から長候補だったからな。扇を通してでしか魔法を使ったことがない。というか長候補はみんな、杖無しでの魔法の使用が禁止されている」

「それは不思議な文化ですね?」


特定の杖でないと魔法が使えないのは、ベルランには想像しにくい感覚だった。だが理解はできる。

やったことがないことをイメージするのは難しい上に、多分ファレオの魔力の出力の仕方は、扇に合うように訓練されている。


現に今の飛行はとても不安定だ。


(神様も万能ではない)


「さっき、ビフェリオいたろ」


「アイツ当代の長」

「え…」

「アイツが扇持ってる」

「先言ってくださいよ…」

「アイツが今回の神都消滅どうこうの原因」

「本当にもっと早く言ってくれません!?」


本当にポメラニアンではなかった。ここまで人を見誤ったのは初めてだ。


「無礼だぞ、ベルラン」

「それはすいませんでした!!」


ファレオは自分の心情の処理で手一杯だったので、細かいところまで考えられていなかった。


発言も全部、8割がた上の空で返していた。それっぽい反応はかなり得意だった。


「だから、オレの杖に一緒に乗ってるんですね」


ベルランの杖は最大まで連結しても二人乗りはキツイぐらいのサイズだが、ファレオは「まあまあ」と言って無理矢理乗ってきた。そのため、メイは悠々自適に一人乗りだ。一番大きい杖に乗っているにも関わらず。


「でもオレがいなきゃ空飛べないだろ。キミの魔力はもうカツカツなんだから」


その通りだった。今は完全にファレオの魔力で飛んでいる。熱風への保護も頼りきりだ。


「はは…すいません、ありがとうございます」


「よし、じゃあペクトに着き次第、時が来るまで待機!それまでオレは寝てるからよろしく」


ファレオの言う時はビフェリオがペクトまで来る時だろう。きっとそこから扇を奪い取るつもりなのだろうが、果たしてそんな時は来るのだろうか。


「ベルランくん、神様のこと信じられる?」


ファレオは器用なことに、魔力を供給を絶やすことなく数秒で眠りについた。

それをきっかけに無口だったメイが口を開く。


「神様の前でする話じゃないです。メイさんは信じてなさそうですね」

「風神は未来が視えるって聞いたのに、案外役に立たなかった…」

「メイさん!?黙って!?」


ベルランは口をよく滑らせるが、悪意はない。反対にメイは明確な悪意をもって口を滑らせた。


「そうだ、メイさん!貴方の身勝手な行動に仙人様結構お怒りでしたよ」


話を逸らそうと、必ず食いつく彼の師匠の話を持ち出す。


「今更だね、ベルラン。もうこってりお叱りを受けた後だ。次やらかしたら私の魔法書は燃やされることにもなったから、さすがに反省している」


その言葉とは裏腹にメイは恍惚として表情をしていた。今にも涎が出てきそうだった。むしろ燃やされたら燃やされたで彼は喜ぶのではないのだろうか。


これは見ないふりをしなければならない。


「燃やされるぐらいなら俺にくださいね。メイさんの魔法も結構常識外なので。解読してみたいです」


たった一度だけ見たことがあるが、アレは綺麗で一風変わった魔法だった。

2度と使うところは見たくないし、使いたいとも思えないが。


「君は本当に魔法好きだよね。神の魔法が欲しいとは思わない?」


ちらっとファレオの方を見る。


「とんでもないこと提案しないでください」

「私は提案のつもりで言ったんじゃないんだけど…君には提案に聞こえたんだ。心の深ーいとこじゃ選択肢の一つだと思っていそうだね」

「思ってない!」


ベルランは強く反論した。


「魔女なんだから、あるでしょ。人並外れた好奇心と探究心」

「メイさん。仙人様に言いつけますよ」

「神のこと気になるでしょ。神都が混乱してる今がチャンスなのはわかるでしょ」

「…神都で仙人様と合流するまで一体何してたんですか」


話をやめないメイにベルランは苛立ちを覚える。


「“最初の水神”様に会った。お師匠の未来、変えられるって」

「は…?」


神都に来てから頭が凍るような感覚に陥ることが多い。


「ベルラン、私の一生のお願いだ。魔法書の提供でも、魔法の手解きでもなんでも協力しよう。だから…お師匠が今後も生きられるように、一緒に協力してくれない?」


メイは閉じていた両目を開き、嫌厭されるオッドアイの目を見せた。


瞳はギラギラとした輝きを放っているようにみえる。

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