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神に祈って  作者: ロヒ
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貴方様のために(2)

「抵抗するに決まってるでしょう」


先ほど創った槍はいつの間にか数が増えていた。1つだけだった物が———今は50に増えている。槍先の全てがホースに向けていた。


ぎゅん、と引っ張られたかのように一気に加速して敵の背中を狙う。


「ヤモリの串刺しはどうかしら。きっと不味いけれど」


風を切る音が聞こえたと思えば槍先がすぐそこまで迫っていた。


だが彼は衰えたといえど、混乱の時代を生き抜いてきた者だ。ペクトを、神を守るため、皇帝として戦ってきた。そんな彼がこの程度の単調な攻撃に反応できない訳がない。太い尾で薙ぎ払おうとした。


頑丈な鱗にぶつかって、槍は砕かれる。呪文と杖を使わない弊害が出ていた。早く生成できるぶん、耐久性は無いに等しい。


50の槍を段階的に分けて放ち、その隙にまた新しい槍を生成する。たまにタイミングをずらして放つのでそれがまたうざったい。完全に嫌がらせ用だった。ホースもそれを理解しているので、ルキネの次の動きに注視する。


(間違っても杖を出させたり、詠唱をさせたりはしてはいけない)


「はぁ…長なんかなるんじゃなかった」


ぼーっとその様子を眺めながらルキネは呟いた。壁にぶつけた箇所を触り、怪我の程度を確認する。


(血…思ったより傷が深い)


出血は大量だが思考は明瞭だ。正直、当たりどころが悪かった。今でも視界がぐらついている。倒れないだけ幸運と思えるほどの状態だった。


(ホース・フロウト・スレンデック、“最初の水神”様のお気に入り。名前だけは知っているけれど、まさか本当に生きていたなんて)


自分を運ぶドラゴンを選ぶとき、めんどうだったので一番近くに居た者を選んだ。それが偶然、たまたま、ホースだった。


(偶然ではなく、必然でしょうね)


多分、ルキネが選別をめんどくさがると思って、ずっと近くに居たのだろう。


「あーあ、水神の長の行動を傾向から判断するとかねぇ…老人はめんどうねぇ」


だんだんと怒りが湧いてきた。水神の長という役割も忘れて、暴れたくなってきた。


そんな精神状態だからか、“嫌がらせ”は更にヒートアップし始める。


「くっ!」


槍は大小様々になり、蝶のような不安定な軌道を描く。速度もまちまちで、途中で加速したり減速したりする。


はたから見ればコントロールも出来ていない、素人の魔法に見えるが、だからこそ達人である彼は対応しにくくなっている。


それに加えて術者の性格の悪さが滲み出ているため、槍は5本に一度眼球目掛けて猛スピードで飛んでくる。


他のものとは比べ物にならない速さなので、その緩急差について行くのがギリギリだった。体ならまだしも目に当たれば重症だ。不老長寿の呪いを受けてはいるが、治癒能力に影響はない。


目が見えない状態でルキネを殺すのは不可能。炎を吐いて一掃するにせよ、溜めの時間が作れない。防戦一方に思えた。


「…ワタシは直前まで決めかねておりました。本当に長に手をかけてしまっても良いのかと」


槍を処理しながらも神妙な面持ちでホースは話始める。


「引き金は何だったのかしら?」


ルキネもそれに合わせた。


「“最初の水神”様がお目覚めになられた。何故、どうやってはともかく、今ここの時代におられるというのがワタシにとっては重要なのです。ワタシはあのひとが眠られるとき、一緒については行けなかった。今度は共にと思ったのです」


「死にたいってことですの?でしたら、わたくし関係ないでしょう」

「それもありますが…話はまだ終わっておりません。“最初の水神”様はあの事件———イエコト事件とでも呼びましょうか、それが起こる前に体内の魔力が全て枯渇して眠られた」

「そうですわね。自らの保管庫を造ることで魔力が枯渇してしまった。よく知っておりますわ」


そこまでしてなぜ保管庫を造ったのか。その疑問は本人に聞かなければわからない。


「また少し話は変わりますが、水神の権能は元々何があったかご存知でしょうか」


(話がコロコロ変わるのクソウザいですわー)


と思いながら眉間に皺が寄る前に答える。


「…権能は6つ、あなた方ドラゴンに渡した【言語を理解する力】、ドワーフに渡した【万物を固める力】、スノーマンに渡した【自己再生する力】。わたくし達に完全な状態で残っている【水を生み出す力】、【遠くを見る力】…あと一応【生物の成長を促す力】ですわ」


権能は分けるモノなので分けた3つは今も、劣化しているが使えないことはない。だが使い勝手が大変悪くなる。自己再生も固めることも時間をかけなければいけないし、扱えない言語も生まれてきた。


(分けていない権能でも、完全かと疑うほど使い勝手の悪いモノがありますけれど)


【生物の成長を促す力】は水神が生死の管理者と呼ばれる起因となった権能だ。もちろんそれは昔の話。奇妙なことに、必ず遺伝するはずの権能は“最初の水神”が眠ると同時に扱えなくなったらしい。


(太古の昔と言っても差し支えないほどに昔のことだもの、随分前にここの水の記録庫を利用したときも、その辺りの記録は無かったからもう誰にも分からない———)


ホースは知っている。

太古の昔から水神に仕えてきたドラゴンなら。


「権能を分けたのは3つではなく4つなのです」

「そんなの聞いてないですわ」

「最初の神様の方々の秘密ですから」


じゃあ何でお前は知っているんだという話にはなるが大方、“最初の水神”様が言ったのだろう。それしか経路がない。


「でしたらわたくし、そのお話聞きたくないですわ」


ルキネは拒否する姿勢を見せたが、ホースは口を閉ざさない。


「天使に分けたのです」


「え」


槍が一瞬、身じろぎした。

ルキネに隙が生まれた。

ホースはそれを見逃さない。

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