運はなくて
「はぁ、見つからない…」
金の三つ編みに、白の着物。魂のシルエットが筒状の帽子に描かれている。
「そうそう。どこだろうなーぁ」
夏の草木のような生き生きとした緑色の髪と目。白いシャツには汚れひとつ無い。
2人は風神の領域内を彷徨っていた。メイという者を探すために。
彼と彼女は会合していた。
風神と仙人は出会っていた。
出会ってしまっていた。
「風神様…領地まで招き入れてくださり、ありがとうございます。これ以上お手を煩わせるにはいきませんので…」
「うんうん、ここは風神の領地。だから風神様、なんて呼ばれても皆が皆当てはまる。是非オレのことはファレオと呼んでくれたまえ」
ファレオは仙人の言葉を遮った。これ以上一緒に行動したくないという彼女の意思は伝わらない。
「いえ、そういうわけにはいきません」
「ご縁があるのは怖いかい?なんら問題は無いぜ?」
「あなた様は神様ですが、私はただの人にございます」
「オレは色んな人と縁を紡ぐのが好きでね。その一環だ。取って喰ったりなんてしない」
両手を挙げてわざとらしく首を横に振った。
(面倒な…)
そう考える間にも、神は『呼んでよ〜』という視線で見ている。惚れ込まれているわけでは無く、本当に軽い気持ちで言っているのが分かるが困る。
うちには更に面倒なエルフが居るのだ。
あらゆる危険な可能性は取り除くべきであり、それを怠った結果、神様に矛を向けることになれば、私たちは殺されるだろう。
(最高はスレンド達が既にメイを見つけていることだ。
ひたすらに願おう。まぁ、もしそうならベルランが連絡に来ているが…)
最高の状況ではないことを把握し、再び風神の領地内を見る。
なんと奇妙なことだろうか。
風神達は皆動いていなかった。
「驚いた?だろうな。オレらは自分だけで動けないのさ」
近くに座っている、男性の肩を叩く。一度、ファレオのことを見たかと思えば、そのまま固まった。
「どういうことでしょうか」
彼らは動いていないが生きている。瞬きも呼吸もしているようだ。
「この時においては風神はこうなんだ」
引っかかる言葉だ。
(この時?あなたは例外なのか?長は?)
「オレらは圧倒的指示待ち神さ。今までそう生きてきたからね。何の行動が正しいか判断出来ないんだよ」
「行動に正しさがあるのですか?」
「少なくとも風神には」
そう言ってにっこり微笑む。
「オレらは正しく在りたいんだ」
「にしても飽きてきた。何か…ん、おやおや」
飽きたならついてこなければ良いが、そうしない。
少し体を伸ばし、上を見上げた。そこにあるのは大樹だ。葉と葉の間から光が漏れ、風によって形が変わる。
「大樹が枯れ始めているな」
「私にはそう見えませんが」
幹も根も異変は見当たらない。
ファレオは更に上の葉を指差す。
「てっぺんさ、大樹は上から枯れるんだ。ところで大樹の役割って知っているかい?」
「…太陽の直射日光を避けるためでしょうか」
現に神都は適温に保たれている。人が暮らしやすい環境だ。
「ん、まぁそれもある。この際だ、教えてやろう」
大樹はな、と続けて、
神都を浮かせている動力源なんだ。
それが全部枯れたらどうなると思う?




