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神に祈って  作者: ロヒ
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違いに気付いて

まるで虫のようだ。

すばしっこく飛び回り、しぶとく生きる。数が数だから羽音も耳障りだ。


「あーもう!邪魔よ邪魔!」


ちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返す。


「どこか体が欠損しても、神都内であれば再生できるので、ご安心なさって下さい〜!」


スレンドは飛行魔法を使い、メイテイのサポートをしていた。


なお、飛行魔法はその利便性からいろんな人に回し読みされているため、多くの人が子供の頃に覚える。分類的には遺伝魔法に区別されている。


彼女の使う魔法が回復系な時点である程度の予想はついていたが、やはり戦闘は厳しいらしい。


だが、仙人であることは決して飾りではなく、自身に降りかかる火の粉ぐらいは払えるようだ。


(なんだったかしら…エネルギーの凝縮ができるのだっけ)


仙人の主だった特徴は不老長寿だが、そこへ行き着くための過程で“気”というものの感覚を掴むらしい。凝縮もその延長だろう。


あいにくそこらの記憶は曖昧だ。仙人にさほど興味がなかったのがよく分かる。

ともかく、今は手と足と目を動かさなければいけない。


神都は大騒ぎになっていた。


「うわっ、あの白いの何だ!?」

「まさか天使!?矢に気をつけて!」

「なんだそれ?」

「長様たちの宮に近づけさせるな!」

「あの事件の二の舞にならないようにするんだ!」


住民はすぐさま連絡をとり、臨戦体制になった。既に天使と戦っている者も居る。


(…火神はマシな方ね)


過去、天使からの被害を一番くらったのは火神だ。直に体験した世代はもう数が少ないし、子や孫にそのことを伝えた人はごく少数で、天使を知らない者はザラに居る。


メイテイが脅威である彼らのことを、祖父である“最初の火神”からですらよく教えられなかったように、未だ触れてはいけない話題だからだ。


だが、普段何があっても動じない彼らの取り乱した様子は、昔のことをよく知らない世代が危険性を感じさせるのには充分だった。


皆あの時のような地獄にさせまいと協力している。長優先なことは気掛かりだが。


「火神様〜!天使が地面に何か書いてます」

「!?」


下を見ると至る所で天使が地面に文字を書いていた。残念ながら知らない言語だ。


「あれ…魔力を感じるわ。印方式ね」

「遠隔起動か、時間差か、呪文の省略目的か…どれにせよ、魔法であることには変わりありませんね〜」

「どんな魔法か分かる?」

「ん〜私は近くで解析しないと詳細はなんとも。でも…」

「爆発系でしょうね」


2人の考えが重なる。


地面に書かれている言語自体は知らないが、印式の魔法というのはある程度の定型文があるのだ。それに照らし合わせるとある程度予測がつく。


さっきの揺れは感じた衝撃的に天使が地下から出るために使った爆発の影響だろう。


(町もどきには更に下があったんでしょうね)


「地雷の可能性もあります。地面は踏まないようにした方がよろしいかと〜」


急に神都は危険地帯になった。


「水神、風神はどうなっているの…?」


水神はスレンド同様、戦いに不向きな人が多い。だが、何かを護るための魔法が多いと聞いた。セキラの固有魔法のような感じだろう。攻勢に出る事はないが、死人は少ないはずだ。


風神は…未来を視てそれ通りに動いているのだろうか。


(運命に従って、意味はあるのかしら。きっと、前考えたみたいなペナルティがあるのね)


誰も自分から死にたいと思う人はいないだろうから。

そうメイテイは考えながらも、体全体を使って都を駆ける。天使を踏み台にしたり、家の屋根を伝って行ったり。


イエコト祭が近いので提灯や楽器が置いてあった。きっと練習していたのだろう。時にはそれも足場にした。


地面を踏まないように。

目に付いたやつから頭を殴る。


数は減らない。むしろ増えてるように見える。

拳がヒリヒリする。彼ら彼女らはとても頑丈で、機械であるため大破しても血肉は飛ばず、鉄クズが舞うだけだが生き物はそうはいかない。殴れば殴るだけ拳が傷つく。


まだ出血こそしてないが10分もせずにそうなるだろう。早く仙人を見つけて、戦力にしなければならない。


「にしても、火神様たちはよく避けますね〜。天使の矢もかなりの速度でしょうに」


天使は矢をつがえて神めがけて放つ。

火神は天使が矢を撃つことを知っているので警戒している上に、身体能力が高いため中々当たらない。


メイテイはそれを横目で見る。


「神めがけて…?」


狙っている。意図している。

彼ら彼女らには殺意があった。だが、それは神都を消すことに繋がるのか。


「———神都を消す」


ビフェリオがたびたび言っていた言葉だ。彼はそれしか言っていない。


目標は“神”ではなく、“神都”なのだ。

目的は“殺す”ではなく、“消す”なのだ。


言葉の綾かもしれない。偶然かもしれない。


彼の目的は神そのものではなく、この都じゃないのか?

だとすれば、天使はビフェリオが仕向けたモノではないんじゃないか?


メイテイの勘は、彼女は、囁く。


“意思は3つ。”消滅“と”検証“と”妨害“。大樹が燃えるよ”


それを聞いても意外と冷静になれた。


(そうなのね)


「スレンド、貴方は私と別行動を取りなさい。天使は完全無視して逃げていいわ。連れの仙人引き連れて神都から出なさい」

「?それはどういう意図でしょうか〜」

「神都から出て、ここの真下…”ペクト国“の国境に壁を築きなさい。雲より高く、私より丈夫な」


「…意味が分かりかねます〜。貴方様は生き物ですから、このままだと大変な出血量になりますよ〜?本当に収拾がつかなくなります〜」

「できるわよね?」

「できると思いますが…」


スレンドは渋る。意味が理解できないからだ。唐突に話されて困惑している。


「渋るようなら、こう言った方が良いかしら———やれ」


彼女は神で、仙人は人間だった。

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