悪役から見て
ぱちん
「うわっ!…何で、」
冷や汗がたらりと流れ落ちる。ビフェリオは先ほどまで自室で寝ていた。
誰だよ天使をこのタイミングで目覚めさせた奴。目覚めた影響で神都が揺れたじゃないか。
ビフェリオが気にしているのはその揺れで友人達が怪我しないかだった。
(ボクの予定ではもっと後のギリギリにするつもりだったのに。このルートかぁ)
勝率は六割を切った。
頭を抱えたくもあるが良い結果も同時にある。
(セキラは“顎”に行く。…大丈夫だこれが正しい。少なくとも死なない)
あとの不安はメイテイだろう。
神都を消しつつ、どう逃すか。
(変なところで怖がりだから、少し敵意を見せれば大人しくすると思ったのに)
中々上手くいかない。にしても演技がバレなかったかが心配だ。ここら辺のくだりを既に何百回かやったが、何度やっても慣れない。心が痛む。
にしても問題は仙人だ。
特にスレンド・フレンデックという奴。あいつは嘘をついた。信用を勝ち取るためか、その場しのぎの思い付きか。そうでもしないと火神は人間と話さないと思ったのかもしれない。それはそうだけれども。
(…)
この感情をどこに置けば良いか分からず、頭を掻きむしる。
何にせよ勝率に大きく関わる人物だ。できればそのままメイテイ達に従って欲しいところ。
万が一のため、“最初の風神”様に監視と対処をお願いしよう。仙人達と出会うのは今回が初めてなのだから、事態の予想がつかない。
【天】が介入しない以上、風神はもう未来を視れなくなっているのだから。
必ず成功するために、今回の条件は今までとは大きく変えた。
まず、自分の立ち位置。長という立場だ。前任であり、父親であるファレオに話を通し、今回の輪廻で失敗したらボクの役割を強制的に他の長候補に受け継がせる、というのを条件に受け持った。
あの人は今何をしているのだろうか。
地上にいるんだとは思うが、とにかく、神都には来ないことを願おう。アンスリオールくんに余計なことを言いそうだ。
次にクルエッタの存在。
彼女がセキラに関わる前に対処した。そして彼女の思いを受け継いだ。
今回失敗したら…運命通りに、【天】の考え通りに、セキラが神都を滅ぼすことになる。
まさかクルエッタもボクと同じ思考だったとは思わなかった。こうなることが分かっていたら最初から事情を話していたのに。冥土の土産に教えて良かった。
「魔法書をくれるなんてね」
ビフェリオは本棚の中に紛れている真っ赤な本を見た。
ボクが死んで、
神都は消えて、
間もなく地上は人間が頂点に立つ世界になる。
文句のつけようがない終わりだろう。
(十分だよね、それでいいよね。やらなきゃいけない。僕は神だから)
自分言い聞かせるように思う。しかし、いつだって否定せずにはいられない。
ビフェリオは頭痛とともに再び目を閉じた。




