幕間(4)
『まあ、まあ、まあ、ひとりできたのね。深淵まできたひとは…えぇ、700年ぐらいまえかしら。あのこはあなたとよくにていたわ、どこからかもってきた、くろい、くらい、かんじょうをかかえていたの』
(700年前…クルエッタが死んでしまった時?黒い、暗い、感情を持ってきた?)
辺りは少しずつ明るくなってくる。
周りには数えられないほどの書物が漂っていた。どの本もいつも利用している表層にある書物とは違い、既に使われていない昔の言語で書かれているのが分かる。
深海のような場所はさらに明るくなってくる。
“脳”は今まさに形を変えようとしていた。
それを構成している迷路のような線は圧縮されているのかのように、ボールのような形になって、どんどん小さくなっていく。隙間からは黒い液体が漏れていた。
ついには青空に囲まれた。
『このすがたのままじゃ、れいぎがなってないわ。さいしょでさいごのおはなしだもの、ほんとうのすがたであわなくちゃね』
ボールはセキラの背丈と同じぐらいになり、突然光と共に消えた。それと一緒に黒い液体も姿を消す。
現れたのは———
見るもの全てを惚けさせるような美しい美貌を持った女性だった。
サイドで束ねたラピスラズリのような青い髪が新雪のような白い肌に少しかかる。
そして髪と同じ青い眼差しをこちらに向けた。
『さいしょで、さいごだものね』
(美しい)
ただ、それしか考えられない。たとえ今、大量に出血していても。
セキラはひとつ、勘違いをしていた。
脳を呼び出す時だけに魔力を使うのではない。
深淵まで行く時だけに魔力を使うのではない。
魔力を使い続けないと、深淵では生きられないのだ。
セキラは油断した。魔力の使いすぎで死んでしまった。
(美しい)
外傷は無い。ただ内から崩れていく。
バラバラと灰のように散っていく。
『わたくしとせっしょくをはかったじてんであなたはもう、しぬしかなかったの』
ここは水の記録庫、“最初の水神”の脳が保存されている———と、されている場所。
実際は、
『フェガイドあなたは、なにがしたいのかしら。こんなこをよこして、【天】にあらがう?ちがうでしょう。あなたは“ひと”をつくりたいだけでしょう?このこへのてだすけはどうせ、きまぐれでしょう?』
“最初の水神”の魂が眠る場所。
『あなたができない、ゆいいつのこと。あなたのおともだちがしんでから、くるったようにおいもとめているわ』
ゆっくりと彼女は歩き出す。
『そこまでやっきになるのなら…いいわ、おのぞみどおりかいにゅうしてあげる。』
『これはじゅうだいな、るーるいはん。せいぶつのそうぞうなんてさせないわ』
幕間はここで終わる。




