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神に祈って  作者: ロヒ
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判って

「この町どうやって壊そう…?」


解決が非常に難しい目下の課題である。


(メイテイならいけるか…?というかビフェリオの練習場に行ってから、かなりの時間がたったぞ)


これで全て解決してたら、対話に意味がなかったということで悲しいが、そんなことはないだろう。

“最初の風神”は普通にしていたし。


となれば、メイテイは普通に遅いだけになる。結果が何であれ、情報の共有の重要性は分かっていそうなのでこちらに来るかと思っていたが、来ない。


足止めを喰らっているのだろうか。


「まさか、殺し…」


そう思ったところで感情が否定した。


(てはないか。神都を消してもそれはない。度胸がない。そんなクレイジーじゃない。彼に限ってあり得ない。そもそも会っているとも限らないし…)


いやまぁ、間違いなく出会ってはいるだろうが。ストレスを増やしたくないので考えないことにする。


(わたしの知っている彼は———)


10時間睡眠のおかげか分からないが、昔の思い出が甦る

メイテイと知り合ってからまだ間もない頃、ビフェリオから一度、相談されたことがあったはずだ。

確か、最近のビフェリオの挙動がおかしいと指摘した時。


◾️


『ビフェリオ、最近のあなたは少し…いいえ、かなりおかしいですよ』


大樹に寄りかかりながら読んでいた古書を閉じ、その上で笛を吹いていた彼に話しかける。


『…どのあたりかな?』


と、彼はにこやかに笑う。


『自覚があるようで何よりです。顔、引きつってますよ』


笛を普段の上着の中に仕舞ったかと思えば、そのまましゃがんで両膝で顔を隠した。


『分かりやすい?』

『少なくとも、俺は分かりましたよ…好きなんですか?』

『すーぐそうやって色恋に結びつける!よくないと思うなー!』


ビシッとセキラに向かって指を指した。


『否定は?』


指した指先は揺れて、静かにビフェリオの元へ戻る。

自分の頭上では、緑の髪が赤くなった彼の顔をカーテンのように隠していたのが見えた。


『この純粋が』

『違うし。赤くないさ』

『ぜひ鏡の前でそのセリフを言って欲しいものです』


『…相談してもいいかな?』


セキラは無言の肯定をした。


『キミがさっき言ったように、ボクは…まぁなんか、あれなわけなんだけど、本当にいいと思う?だってあの子はただ少し、運が悪かっただけなんだ』


◾️


(うわ、懐かし)


嘘が下手で、照れ屋で、ビビりで、運動も頭の良さも魔法も魔力も平均以下だが、歌と楽器と舞の腕は最上。幼い子をここに案内したことを後悔しているような優しいやつ。


(これがわたしの知っているビフェリオだ。…本当に今と違うなぁ)


いつ変わったのだろうか。それに気付けなかった自分が情けなくなってくる。


(わたしは何か大事な事を忘れているのだろうか)


コツ、コツ。


(誰だ?)


下の居住区で誰かが歩き回っていた。

ビフェリオとはまた違った緑の髪はひとつに束ねられていた。見慣れない、柄の多い着物を何枚か重ねて着ており、いずれかの神で無いことは明白だった。


(…魔力から推測して、魔女…か?)


きっとそうなのだろうが、違う気がする。


「———いますかー」


何かを探しているのだろうか。辺りを見回っているようだった。


(なぜここに来れたんだ?)


ここは神都の中心である、大樹の下にあるものだ。隠し通路を通って来なければ辿り着けないし、何より入口は魔法で巧妙に隠されていた。


「メイさぁーん、いますかー。…どこだよ!早く帰りてぇ」


(…でも害は、なさそうかな。どことなくビフェリオと似ている。周りの人に振り回されていそうだ)


「誰を捜しているのですか?」


鉄柵に手をかけ、前へと乗り出して高台の上から声をかける。

見知らぬ男はこちらを見て、驚いていた。


「うえっ!えと、水神…様、ですか?」

「はい」


「すいまっせーん!!」


それは何とも綺麗で素早い土下座だった。


「!?」

「身内のバカ連れ出したら、帰るんで!いや本当すいません!決して、決して、貴方方に危害を加えようとか微塵も思っていないので!帰ります!お邪魔しましたっ!」


(声がでかい!)


舞台役者並みの発声で謝罪をしたのち、綺麗に素早く土下座し、畳み掛けるように再度謝罪。


(手慣れている!)


それらの動きには一切の無駄がなく、多くの経験を積んだ熟練の技だった。

そんなことを思っているうちに、男は出入り口へと足を運んでいた。


「ストップ!ちょっと待ってください。怒ってない、怒ってないので!話を聞かせて下さい」

「ひぃ…」


怯えた表情でゆっくりとこちらへ近づいた。


(そんなに怖いか?)


男の名前はベルラン・アンスリオールと言った。

予測通り種族は魔女だそうだ。今は仙人を先生としているが、仙術は学んでおらず、魔法について研究しているらしい。


(好青年だな。顔立ちも良いし、……背も高いし。自力で入口を見つけたと言っていたのだから、魔法の腕は魔女の中でもトップクラスだろう。もしかしたら、協力してもらうかも知れない)


「…それで、メイというエルフの仙人が何かやらかす前に連れて帰ろうとしているのですね」

「はい。そうです」

「今そのために神都に来ているのは、あなた含め3人。あなたの師匠とメイという方の師匠が来ていると」

「はい。俺の先生は水神様の領地で、仙人様は風神の領地の方へ行っています。俺は大樹付近を捜していました」

「にしても自分の師匠の死を阻止するだなんて…」


(メイとやらは怖いもの知らずなのか)


「…やっぱり、悪いことですよね」


ベルランは俯いた。


(無駄足だ。“最初の水神”様なき今、そんなことをするには3種の長の承認の上に、水神の長が各地の保管庫を開錠しなければならない)


外部から単身で来た人が到底クリアできる手順ではない。そもそも会議で却下される。


できるできないはともかく、この青年をセキラは慰める気持ちで言った。


「悪いことではありませんよ」


「え」


「彼のその気持ちは尊重すべきものです。本当に行動に移すかどうかは置いておいて、度が過ぎている気持ちでも——」

「…」

「その中にある“優しさ”を否定したら、私たちは人で無くなる」

「———あぁ」

「義理人情は大事だと思いますよ」


少しの静寂が辺りを包んだ。


「そう、ですか。ありがとうございます。…あの、貴方様も——」


ベルランは今にも泣きそうな顔をしていた。慰めは上手くいったのだろうか。内心焦った。


「ありますよ。わたしの知らない所で、きっと何度も助けられている」


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