訊いて
「あ、いくらでも質問して良いけど誰かのプライバシーに関わることとかは言わないからね」
思いがけず、気になる事を聞ける機会ができた。知りたいことは山ほどあるが、嘘をつかれる可能性も十分にある。慎重に見極めなければ。
「まず、ここは何ですか?」
セキラは真っ白な地面を指差した。
「この町もどきの事かい?それなら前にも言ったはずだ分からない、と。なにせ、“最初の風神”様の所有物だからね。誰も追及できなかったんだ」
やれやれ、と言ったふうに近くの鉄柵に腰掛けた。
(詳しいお人柄は知らないが、かなりの独裁者で束縛が嫌いだったらしい。好奇心を満たすのと命だったら比べるまでもないだろう)
「そうですか。じゃあ、この噴水の水はあなたが仕掛けたものですか?」
「違うよ。あくまでボクは止めてくれと頼んだだけさ。ここの物には何も触れていない」
「何なら入ったの800年ぶりぐらいだしねぇ」
(ん?)
「その時はまだ長はあなたじゃないですよね。しかもわたしにここを紹介したときに『長になった時に前任者に教えてもらった』と言っていました。」
「あーそれね、初めてここに入った時はここがどこだか分かってなかったんだ。正式に教えられたのが長になった時さ」
(ますます分からない…ここに入る用はないだろうに)
ここに来るまでにまず大樹の下まで行く必要がある。神都の中心にあるが一応、風神の長の管理下だ。今はビフェリオの意向で解放されているが、当時は一般人がそうそう近づけるものではなかった。通路は迷路の様だったし、間違えて入ることもないだろう。
(素直に訊くか)
「800年前になぜ立ち入ったのですか?」
すると、少し悩み始めた。
「うぅ〜ん、これは…プライバシーに、引っかか…るかなぁ」
どうやら駄目らしい。
それからいくつかの問答を重ねた。
「そろそろボクはお暇させて頂こう。てっきり天使の事を訊くのかと思ったよ」
「…いくら情報があろうともわたしたちはこれに対抗できません」
また少し風が強く吹く。
一番大事な答え合わせだ。
「どうして、そう思うんだい?」
彼はなんだか嬉しそうだった。そこで確信する。それと同時に絶望した。もう、ビフェリオは信用出来ない。
「天使の内部にびっしりと何かが刻印されていました」
「あれは…文字です。しかもただの文字じゃない。魔法の起動に必要な呪文でした」
「しかも、膨大な魔力が蓄積できる部位も見つかりました。一体につき、水神2人分」
ビフェリオは黙ったままだ。
「魔力の保管にもエネルギーが必要です。水神は神である事と、睡眠を多くとる事でなんの障害もなく生活していますが、天使は違う。これは生物ではなく、決められた動きをする機械です」
彼はうんうんと頷いた。
「エネルギーを何かしない事で代用するのが難しく、生きる分…起動している分だけ相応のエネルギーが必要になります」
風に揺らぐ植物の音がいつもより大きく聴こえる。
「人型の硬過ぎる身体、多過ぎる魔力の容量。この個体は試作品でしょうが、完全にオーバースペックです。捨て駒のような寿命でしょう」
「これを踏まえて、わたしは天使を神都を…神を殺すための自立型の魔法書だと推測しました」
そして、
(これが一番聞きたいこと)
「ビフェリオ…あなたは…天使、ですか?」




