笑って
(メイテイはもう行ったか。相変わらず足が速い)
セキラは天使の解析をするため、ひとり噴水のある広場に残っていた。中はぐちゃぐちゃになっているが、そこからでも分かることはある。
自分の魔力を流して相手の身体を正確に把握する。他種の神と比べても魔力の量と質を兼ね備えている水神だからこそ出来る技だ。
(頭と腹と…手かな)
異常な程に魔力が貯め込められる器官がある。容量は自分2人分ぐらいだろうか。これだけあったら大抵のことはできてしまうだろう。
(わたしの固有魔法はかなり燃費の悪い自信があるけど、これなら3回ぐらいは連続で使えそうだな。ん?)
自分の固有魔法書持って来るの忘れてたな、と思っているとあることに気づいた。
何かが天使の体内中に刻まれているようだ。小さく上下にぐねった紋様。隙間が無い程びっしりとシワのようにある。これは…
あ
「…」
——カツン
後ろから誰かが歩く音がする。男、歩幅は広い。背は180ないぐらいだろう。足音の響きからして革靴でも履いているのだろうか。
(気づくのが遅かったか、隠れられない。いや、…まさか!)
セキラが後ろを振り向くと、そこには見慣れた顔があった。
「やぁ、セキラ。昨日ぶりだね」
緑の髪が揺れ動く。少し風が吹き始めた。
「…どうしてここに?来月の、“イエコト祭”の準備はいいんですか?」
(よりによって今かよ)
じんわりと額に汗をかく。
「メイテイに問い詰められるとか悪夢以外の何物でもないからね」
「それはそうですが。視たんですか?」
「ははは、ちょっと居眠りしちゃってね」
「大変ですね色々と」
「知りたいことがあるなら出来る限り答えるよ?」
彼の目は天使を見ていた。いつも見ている笑いが不気味に感じてしまう。
「そんなに冷たくされるとか悲しいな。最初の頃を思い出すよ」
ビフェリオはいかにも悲しそうな顔をした。
(この表情をわざとらしく感じるのは心の底で彼を信じていないからだろう。だが、それは嫌だ。)
「そこまで言うならいくつか聞いても?」
(俺は、ビフェリオを信じていたい)
「もちろんさ!」
ビフェリオはいつものように口角を上げた。




