幕間(2)
「はぁっ…はぁ……」
どれ程の時間走っただろうか。出血を止めずに走り続けてきたので血が止まらなくなっている。左腕はもう使い物にならないだろう。
「聞いてませんよ。あんなに大量にいるなんて…」
神都には黒い影が落ちている。それも日の光が当たるところが無くなるほどのの広さだ。
(前に見た個体は7桁の数字が付いていた。今メイテイが壊しているのを含めると実際はそれ以上。もしや、あの時からずっと生産され続けているのか?)
上空には無数の天使が羽ばたきながら下に向かって弓を引いていた。
空には耳障りな羽音が響き、地上では神達の叫び声が聞こえる。建物は崩れ植物は燃える。
端的に言ってこれは地獄だ。
…わたしの親ももう死んでしまった事だろう。
最後まで他種の神の力を借りて避難しようとしなかった。命より矜持が大事らしい。地面に散らばった死体を見る限りそういう人は多いようだ。
(そろそろ合流して言わなければ。時間がない)
メイテイはずっと逃げなかった人を助けるために地上まで降りて来た天使を片っ端から倒している。少し辺りを見渡せば目にも止まらぬ速さで移動し、天使を家や地面に叩きつけている人影がある。あれだ。
「メイテイ」
“何?”とこちらを振り向いた。
「…わたしはあなたの事が嫌いでした。自分勝手で傲慢で、誰よりも神らしいあなたが嫌いでした」
“らしくないわね。嬉しいけれど”
手も足も天使を散々壊したお陰で血が出ている。
それでも、いつものように笑った。
そういうところが嫌いなんだ。いつもわたしにはできないことをする。なんて羨ましい。
「でも、両親を説得する際あなたの事を肯定し友人と呼びました」
目を見開き、驚いた。
「言ってましたよね、友人と思えたらわたしとビフェリオの出会った時の話を聞かせてくれと」
“今するの?”
もっともだ。神都は今滅びかけている。
だが手遅れになる前に、言っておかねばならない。
「わたしにはやりたい事があります。これ以上は協力できません。なので今のうちに」
頷いた。たったこれだけの理由で。
“貴方は気に食わないんでしょう?”
と分かったような口ぶりだ。
実際当たっているが。
どれだけ阿呆の神であろうが死んでしまうのは嫌なのだ。だから、救う。他でもない自分の為だ。ビフェリオのことも気がかりだが、メイテイに任せておけばどうにかなる…いや、どうにかするだろう。
俺はきっと夢を見ているのだろう。死んだ人を生き返らせるだなんて子供のように綺麗で無邪気な馬鹿げた夢を。
それを叶える方法があるのもまた滑稽だ。
奇跡も偶然も今だけ信じてやろう。
「俺の願いを叶えてくれ」
誰よりも神らしいあなたに願う。友人の救済を。
「言われずとも」
彼女は言った。願われたら身勝手に叶えるのが神だと。




