近づいて
とりあえず天使を水の中から取り上げたは良いもののこの後どうしようかと考えていた。
(セキラずっと観察してるわね。)
一旦放置してここに行くように促したビフェリオに聞きに行くのを提案したが断られてしまった。彼との接触は今は避けた方が良いとのこと。
かなりの信頼を置いていたのはさっきの会話で分かったのでかなり意外な判断だった。
(…きっと天使があるのは知っていたのね。重要なのは何故私達に教えたか、それに何の意味があるのか、今私達に求められている行動は何か。)
大前提として、ビフェリオは風神だ。神だ。
【未来を視る力】という権能を有した風神、その長だ。
昔、彼から少しだけ聞いた事がある。いつだったかもう覚えていないが、確か『未来には強制力がある』とこぼしていた。
強制力とはどのようなものなのだろう。
(自分の意思とは関係なしに動くのかしら?そうだったら今考えるのは無駄ね。知りようがないんだもの。それか、未来で視たものはそのまま再現しないといけないとか?“しなければならない”なら何かしらのペナルティはありそうね)
そうじゃないと自分に都合の悪い未来を回避する人が続出してしまうし、強制とは言えない気がする。
(でも、ペナルティは誰が下すのかしら。その線引きはどう判断するの?)
何となく、セキラの方を見た。その近くには天使が横たわっている。
……怪しい奴がいるじゃないか。
あれはいつも大事件が起こる時にいる。
たったそれだけの理由とも言えないものしか今はないが、それを補えるだけの存在の不透明さがある。
あの大事件は2つとも風神には関係のない話だからきっとペナルティとは関係ないだろう。まだ未来を破った人が居ないのか、そもそもそんなものは無いのか。
(強制力…風神…天使…行動……都合の悪い未来。それからペナルティ)
線は未だぼやけている。当たり前だがメイテイたちはただ、噴水から災害の象徴と言える天使を見つけただけだ。
まだ何も起こっていない。
そんなことを考えているうちにセキラに声をかけられた。とても小さい声で。
「…って……い」
「何?聞こえないわ」
表情を見ると強張っている事が分かる。何か重要な事でも言うのだろうか。
「て…って…ださい」
「もっと大きく!」
少し躊躇い、それから大きく息を吸った。
「手伝ってください!」
そんな大声も出せるのかという驚きと火神に協力を申し出てくれる嬉しさが私の中で混ざり合った。
「ふふふふふ」
「ニヤニヤするな!」
「照れなくても良いのよ」
「照れてませんし!わたしには不向きな作業であなたなら得意だろうと思っただけです。そうじゃなければ頼んでいません!」
そう言っているが、少なからずメイテイの言った事も影響しているだろう。
なるほど、これがツンデレの良さか。
「それで良いわよ。ふふ、さて私に何をして欲しいのかしら?」
「天使を解体してください。先程分かった事ですがこれは生物ではなく機械です。それも数ある1つの」
そう言ってセキラは天使の髪を分けて首の後ろに刻印されてある7桁の数字を見せた。




