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「フェリア。ちょっと時間いただいてもいいかしら?」


ドアをノックされて、顔を出したのはノーズ・ルッコラ。

男性召喚師……なのだが、事情から女性として生きている先輩だ。

何故か後輩のフェリアをも巻き込んで召喚獣の世話をしている。

召喚獣のうち、小型の子たちがフェリアの部屋を占拠しているのだ。

先日の危険回避もこの子たちのおかげで救われたフェリアは、今日も周りで遊ぶ召喚獣たちとゆったりとした時間を過ごしていた。


この部屋を例えるなら『召喚獣専用保育園』だろう。

ここは王家の子女が入寮した際に使われる特別室のひとつ。

召喚獣たちがフェリアの部屋から出ていかないため、ふた部屋ある室内が完全に占拠されてしまったのだ。

寝室も、寝るときはフェリアひとりだったのが朝起きると雑魚寝状態になっている。


そのため、学園側から特別室の使用を許可されたのだ。

部屋数は広く、応接室に勉強や研究のための私室、リビングに小さいけどテラス。

寝室に備え付けられたベッドもクイーンサイズで広い。

侍従侍女専用の個室も隣にあり、内扉で繋がっている。

王家の子息子女が入寮する予定が今後10年以上ないことも貸し与えられた理由だ。

空き室を作るより誰かに住まわせた方が部屋は傷まないし、王城から掃除婦を呼ばなくてもいい。

掃除婦を呼ぶ費用も学園持ちなのだから、()()()()()があって掃除費用が浮くのであれば、喜んで貸し与える。


「どうぞ」


そういったフェリアにノーズが一歩足を踏み入れる前に、蝶々やトンボの羽を持った小人たちが何十人も入ってきた。

妖精という種族である。

みんな、一斉にフェリアを取り囲み、ペタペタと触りだす。


「先輩、これは一体……?」

「ごめんなさいね。先日の騒動を知った妖精たちが、あなたに不調があらわれていないか心配になったみたい」

「あ、セリーナ……が魔術に興味を持っていたから?」

「ええ、そのとおりよ」


『すでにセリーナは廃籍となったため、あなたは彼女を姉と呼んではいけません』


貴族院から使者がたち、学園でそう口頭注意を受けた。

存在が消されたのだという。

それは奴隷として身を落としたということ。

……使者が持ってきた話はそれだけではなかった。


それでもクセは残るもので……

言いかけると召喚獣の誰かがツンツンと教える。

罰則はないが、すでにサンドビエッター侯爵家とは他人である以上、フェリアに姉は存在しないのだ。


「大丈夫です」

「あら、もう調査済み?」

「はい、まずフェリア様には『(まじな)い返し』の銀糸を縫い込んだ衣装を身につけていただいております」

「あら、気付かなかったわ。どの衣装に?」

「すべてです」


さらりと事実を告げる侍女に、フェリアもノーズも驚くしかなかった。


「……すべて?」

「はい、いま着てらっしゃるワンピースもそうです」


左手首を思わず持ち上げるフェリアに気付いた妖精の一人がスカートの裾をめくった。

そこには銀の細い糸で5センチの()()()()が施されていた。


「え?」

「これだけ?」

「はい、これだけでフェリア様をどんなことからも守られます」

「……これって光を束ねて作られた糸じゃ……!」

「それが、なにか?」

「なにかって……ああ、そうだったわ。あなたの()()()()だったわね」


ノーズがフェリアの侍女を見返してから思い出したように苦笑する。

彼女はサンドビエッター侯爵家の侍女ではない。

元々、フェリアには侍女がつけられていない。

サンドビエッター家にとってフェリアはどうでもよい存在だったから。


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