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救助


 少し焦りながら俺は夜の街を家に向かって駆け出した。

「くそっ、どうなってるんだ!」

 じいさんはあり得ないほど強いが、初見殺しのような力を持つ狼たちに囲まれればどうなるかわからない。

 

『ーー!!!ーー!ーー』

ところどころから悲鳴が聞こえてくる。


「たすけて!」


進んでいる道に面した家から悲鳴が聞こえた。


「くそっ!入るぞ!」

 家の前まで駆け寄り俺は声を上げた。そうして突き破りやすそうな窓を探し、急いで割って入った。人の気配を二階に感じる。狼の気配は相変わらずつかめない。


「おい!」

(生きてるのか?)


「「こっちです……!」」

少し弱ったような声が二階から聞こえてきた。


「少し待ってろ!」


すぐに階段から二階へ上がり、気配のある部屋へと駆け込んだ。


「キャッ!」

狼の返り血のついた俺の姿を見て、部屋の中にいた小学校高学年くらいの少女が小さく悲鳴を上げた。


 部屋の中には少女がおり、その両親と思われる男女が少女をかばうようにして立っていた。

 男性は右腕に怪我をしているようで、顔を苦痛にゆがめながらも、もう片方の手には、はさみをもって身構えていた。

 

「これは狼の血です」

俺の言葉に少し安心したのか男性は少し体の力を抜く。


「それより狼はどこに?」

俺は疑問に思っていたことを問う。


「それが、私と妻が娘の名前を呼んだ時に、娘がとっさに部屋の電気を付けてしまって。

 そうしたら狼は娘の部屋には入って来なかったんです。」


「なるほど……とりあえずすぐに止血しましょう」

(どういうことだ?)

俺は男性の腕を見て駆け寄る。


「はい、すみません、娘の部屋に入る直前に噛みつかれてしまって」

苦悶に顔をゆがめながらも男性はつぶやく。


(狼は光が苦手なのか?)


 俺は手早く部屋にあったもので止血を終わらせると、自分が考えていたことを話した。


「狼は光が苦手なのかもしれませんね」


「え、ええ、そうなのかもしれません」

男性は戸惑いながらも返事をする。


「あ、私は丹野 昭(たんの あきら)と申します。本当にありがとうございました、

こちらは妻の恵美(えみ)と娘の真凛(まりん)です。」

男性が少し早口で言ってきた。


「いえ、俺は何も、僕は、夜桜 律(よざくら りつ)っていいます。」


『ーーー!!ーーー!』

そうしてる間にも警報が鳴り、遠くの方がどんどん騒がしくなってゆく。


「はやくじいさんのところに行かないと……」

俺は段々と焦ってきて、つぶやいた。そのとき


『家の電気を付けろー!!!!!今すぐだぁ!!!』

と区内放送のようなもので大きな声が流れた。


「今の声は……」

放送の声があの時の刑事のような気がしたが、そんなことを気にしてる場合ではない。

 丹野さんたちの家から出た俺は、ぽつぽつと電気がつき始めた街を横目に、家へと駆けた。


ーーーーーーーーーーーー


「じいさん!」

すぐに家に着いた俺は、じいさんの気配が道場にあることに安堵し、叫び、道場へと駆けて行った。


「なんじゃ、大声を出すでないわ」

俺が道場についたとき、じいさんは何事もなかったかのように道場に立っていた。


「無事か?」


「どこに行っておったんじゃ、わしがこんなんで死ぬわけなかろうが、

 それより、わしは諸々確認のためにこれから北署に行く。(りつ)もついてこい。」


「あ、ああ」

俺はぎこちなく返す。そう言っていると東の空がだんだんと明るくなり、朝日が道場の中から縁側、庭にかけて、大量に横たわっている狼を照らした。


 軒先(のきさき)の影でじいさんの表情は見えず、じいさんが持っている刀の切っ先だけが陽光を反射し、(きら)めいていた。


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