気付き
次の日、俺は一日ぶりに学校に来ていた。俺には一緒に通学してくれるような友達は一人しかおらず、そいつは別方向なので、ボッチ通学である。
俺は男女で仲よさそうに通学路を歩いている学生を見て、ため息をついた。
(はぁ、俺も修行がなければなぁ。)
心なしか内気功が意図せず弱まった気がする、きっと気のせいだろう。
いつも通り下駄箱で靴を履き替えていると、声が聞こえた。
「おーい、律!昨日はどうしたんだ?」
振り返ると何人かの学生と一緒に健二が入ってくるところだった。
「あー昨日はな、ちょっと調子が悪くて……」
と少し歯切れ悪くこたえると、
「嘘つけ、この野郎!どうせまた修行でもしてたんだろ?」
と健二が靴を履き替えながら、笑いかけてきた。
(修行といえば修行ではある)
「まあね」
「やっぱり」
苦笑いで健二がつぶやいた。
「おいー、夜桜~、修行は良いけど勉強の方は大丈夫なのか、?」
と健二と一緒に入ってきた桐生壮太が絡んできた。
いつも通りの日常に何だか安心したようにしていると、健二が教室行こうぜーと、絡んできたので、そのまま教室へと向かった。
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「なあ律、聞いたか、?昨日の事件の話、北区の方で5人の焼死体が発見されたって、」
健二が後ろを振り返りながら、世間話をふってきた。
「ああ、あったな、そんなの、北区の森の方なんだろ?」
俺が住む東都は日本の首都で、円形をしており、5つの区にわかれている。中央に中央区、その周りを囲うように4つの面積がほぼ同じ区があり、北に北区、東に東区、南に南区、西に西区が位置している。
北区のさらに北には大森林があり、南区の南東側と東区は海に面している。
また、中央区はすべての区に面するため、企業の本社や、省庁が居を構えている。国会議事堂も中央区に位置している。
「何か怖いよなー、森で五人の焼死体って。ここ北区だしなおさら」
「そうだなぁ。たしかまだ原因不明でなにもわかってないんだろ?」
なんて話しているとチャイムが鳴ったので健二は前を向き、いつも通りのだるい授業がスタートした。
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学校が終わり、テレビをつけると、また朝も聞いたようなニュースをやっていた。
「またか?」
ニュースによると、今度は南区で二人、西区で三人、、と次々と変死体が発見されているらしい。
さらに、このキャスターが言うには日本全国、さらには世界中で同じようなことが起きているようだ。
「なんだろうな」
さすがにここまでくると偶然の一致にしてはできすぎているだろう。
不審に思いつつも大して気にしていなかった俺は日課のランニングのために外へ出た。
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「ん?」
(なんか光ってないか?)
ランニングで丁度良い具合の負荷が体にかかってきはじめたころ、俺は遠くの方に大きな光を見つけた。急いで駆け寄ると
「これは」
あの時の青い光が人が多い場所から少し外れたところにあった。
(あのときはただの光だと思ったが、今ははっきりと気として存在感を感じるな。)
ためらいながらも光に触れてみるが、今回は触ってみても何の変化もなく、ただただ莫大な『気』が佇んでいるだけである。
「どういうことだ?」
(どうして誰も光に気づいてないんだ?)
「気は普通の人には見えないのか?だが俺ははじめから見えたが」
ずっとここにいても仕方がないと考えた俺は、ひとまず帰宅することにした。
家に帰っても謎が深まるばかりで、結局何も分からず、俺はこのことを考えるはやめにして、さっさと眠りについた。
その後も変死体発見事件は続き、ランニング中に巨大な気を見つけることが何回か続いた。
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<東都所轄警察署>
「五十嵐先輩、またっす」
田代が連絡を受け、五十嵐に言った。
「またか、これで何件目だ……」
あの少し奇妙な五人の遺体発見から、急激に変死体発見が増え、数も増えていった。
事態を深刻にみた本部が各区の協力体制を作り事に当たっているが、特になにも進展がないのが現状である。
「おい、田代、現場近くのカメラ映像もってこい、もう一回洗うぞ」
五十嵐は何とか新たな糸口を見つけようと、ほかの者にまかせっきりにしていたカメラ映像のチェックをしようと田代に声をかける。
「了解っす」
田代と五十嵐がPCを起動し、カメラ映像を確認していると、田代があることに気づく。
「この人、前の現場の5時ごろのにも映ってたような」
「どうした?」
「いえ、関係ないかもしれないっすけど、このランニングしてる少年、数時間前までさかのぼるといくつかの現場の映像にもいるんすよ。しかも毎回なんというか、丁度現場のところで立ち止まって何かを見てるんすよね」