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起床


 朝、律が中庭に出て刀を振っていると、昨日のように蓮が出てきた。今日も少し慌てた様子なことから、昨日と同様に飛び起きてきたようだ。


「おはよう。」


「おはようございます!」


 蓮は木刀を手に取ると律から少し離れたことろで素振りをはじめた。律は刀をしまい、その様子を観察する。蓮は彼自身は夜桜流所属だが、姉が麗梅流である。

 小さなころから夜桜流の道場へ通っていたとはいえ、その剣はやはり姉の影響か普通の夜桜流の剣士よりは、スピード重視の麗梅流に寄ったものとなっていた。


「やっぱり基礎のところが少し雑な感じがあるな。」


 律は素振りをする蓮のもとへ近づくと自分も木刀を取り出して、構えるように言う。


「そのまま間合いを詰めてみてよ。」

お互いに構えを取ったところで律は蓮に向かってつぶやく。


「は、はい」


 蓮は言われた通り間合いを詰めようとして、なかなか踏み込めないことに気づく。律の木刀が蓮から見ると点になるように構えられていて長さがつかめず、間合いを詰めることができない。


 なかなか踏み込めずにいる蓮を見て、律はそのままの姿勢でじりじりと蓮の方へと近づいてゆく。蓮はそのまま押されて中庭の端まで来てしまった。困った蓮をみて律は木刀をおろす。


「なかなか間合いをつかめなかったです。」


「そう。正しく構えることができれば自然とこうなるはずだよ。真剣勝負では実際に剣を交えている時間より、にらみ合いの方が長かったりするらしいからね。今はスキルがあるし、魔物相手だと事情が違うけど………」


 律は話の途中で蓮の後ろを見て少し目を見開く。



「………おはよう。」


 蓮の後ろには律が馬車から連れてきた少女があくびをしながら立っていた。白みがかった銀髪は太陽に照らされて輝く。


 律は珍しい容姿よりも、少女が纏う『気』が少し弱くなっていることを感じて驚いていた。


「おは、よう?」


 少女は首をかしげながらつぶやくと律のもと寄って、隣に立つ。


「具合はどうかな?」

蓮は律の隣にいる少女に問いかける。少女は蓮と同い年くらいの見た目だが、そのしぐさからはどこか幼さを感じさせるものがあった。


「ねむい………。」


「三日ちかく寝てたのにか?」


「覚えてない。ここどこ?」

少女は律の服を軽くつまむとどこか不安そうな顔でつぶやく。


「ここは中央府管轄の下沢郡というところの街だよ。俺の名前は夜桜律という。」


「あ、僕の名前は飛鳥馬蓮です。よろしく………。」


「…………どうも」

少女はそう言って軽く頭を下げる。


「私の名前は………リオン。」


「そうか。リオンはどこから来たんだ?俺は馬車の中でリオンを見つけたんだが。」

律は隣でムムムと唸りながら首をひねっているリオンにきく。


「馬車?覚えてない………。それより律………さん、私のこと知ってる?どこかで会ったことある?」

少女はやはり首をかしげながら質問に答えると、律の服を引っ張った。


「いや。会ったことはないと思う。」


「いや。会ったことある感じがするの。」


「そう、かな?」


「律さんの力を感じているんじゃないでしょうか?」

蓮は律が『気』を感じたと言っていたことを思い出してつぶやく。


「『気』?」


「『気』って言うのは俺やリオンを覆ってるふわふわした力のことだよ。」


「これ、『気』?」

リオンは律の周囲の『気』を見つめてつぶやく。


「そうそう。」


「やっぱり僕には全く見えません………。」


「夜桜の本部に行った時もこれに気づく人は五十嵐さんくらいだったよ。」

律は初めて夜桜の本部に行った時のことを思い出してこたえる。


「五十嵐桜聖だけ、ですか。」


「みんなはこれ分からないの?」

リオンは蓮の方をちらちら見ながら問いかける。


「僕は分からないかな。」


「ほとんどの人はこれが分からないみたいなんだ。『気』を感じている人間に会ったのはリオンで初めてだよ。」


「そう。私は律さんと一緒だね。」

リオンは律の方を見て笑いかける。その表情はとても幼い少女のものとは思えない美しさを感じさせるものだった。


「そうだね。それと、律、でいいよ。」


「わかった。律。」


 何だか不思議なものを見るような顔で二人のやり取りを見守る蓮であった。



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